呪霊廻戦 〜呪霊で教師になります〜   作:れもんぷりん

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 さて、やっと土台が出来上がって来ましたね。
 あと2話ほど修行をして、シンジくんを迎えに行こうと思います。



次案

 

 黒い光が止み、辺りに静寂が訪れる。

 

 三人が放つ全力の黒閃を受けた呪霊は辛うじて生き延びていた。

 真希は全身に傷を負って体力を消耗していたし、狗巻は腕が抉られたことによる重心の不安定があった。パンダも最後に核が貫かれなければ結果は違ったかもしれない。

 

 呪霊は嘲笑った。

 自分の勝利だと、やはりこいつらは雑魚だったと。

 

 倒れ伏して呻く三人に近づき、どう甚振ってやろうかと思考する。

 まずは一人殺して絶望した顔を見てやろう。

 そう考えて腕を振り上げたその時。

 

 気がつけば目の前に白い呪霊が座り込んでいた。

 こちらに背を向け、倒れている三人に何か話しかけている。

 

 だがそんなことは関係ない。

 こいつごと叩き潰してやると腕に更に力を籠めた。

 

 白い鬼がこちらを振り向く。

 その表情は憎悪、憤怒。

 

 身に走る激痛と共に呪霊の意識は潰えた。

 

 何が起こったのかも分からず、彼はその一生を終えた。

 

 

 

 

 戦いは決着した。

 

 三人は黒閃を放ったが、祓うまであと一歩足りなかったようだ。

 その場で呻く三人を抱き寄せ、そして頭を撫でた。

 

「よく頑張った」

 

「えらいえらい」

 

「かっこよかったよ」

 

 簒奪法を発動させた。

 愛しい三人の傷が、痛みが、欠損が、全て私に移される。

 

 こんなものを感じていたのか。

 痛かったね、苦しかったね・・・

 

 本当にすごい子達だ。

 流石は私の自慢の生徒。

 

 自然と眼から涙が零れ落ちた。

 無理させてごめん、そんなことは言わない。

 

 それは彼らを侮辱する行為だ。

 今はただ褒めて、称えて、労って。

 そうして誇らしく感じるのだ。

 

 後ろに近づく呪霊へ振り向く。

 

 三人を成長させてくれた感謝もある。

 それでも今は。

 

 

 

 怒りだけ。

 

 

 

 この程度の呪霊では捉えることも出来ない速さで肉薄する。

 そうして心臓に手刀を突き刺した。

 

 

 

──贈与法「贖罪(ブラックサンタ)

 

 

 

 お前も味わえ。

 

 私に移った全ての損傷が呪霊へと移される。

 その全てを刻みつけ、呪霊は塵と化した。

 

 

 

 

 真希が目を覚ますと、そこは病室だった。

 

 どうなった?

 呪霊は祓えたのか?

 黒閃は成功したのか?

 

 様々な事が頭を巡り、そして気がつく。

 

「なんだこれ・・・」

 

 今までとは生きている世界が違うようにすら感じる。

 呪力がこれまでになくスムーズに廻り、操作も桁違いに楽になった。

 

 それに何だか体がおかしい。

 今なら何でもできる気がするのだ。

 

 戸惑うことだらけだが、それでも一つ分かること。

 自分は黒閃に成功したということだ。

 

 

 

 そうして3日が経過した。

 三人の体はすっかり調子を取り戻し、やる気万端だ。

 

「おはようございます!」

「おはよう」

「しゃけ」

「おう」

 

 いつも通りの挨拶から久しぶりの授業が始まった。

 少しずつ築かれた信頼は強固なものとなり、もはや亜鬼を呪霊だからと差別する者もいない。

 

「皆良く頑張りました!」

 

 そう褒めると皆少し誇らしそうな顔をする。

 だがやっとこれで本格的な修行を始めることが出来る。私が考えている通りに育つことが出来れば、二年生になる頃には全員特級術師並の強さになっているかもしれない。

 

「では、今日からは個別指導になります」

 

 ここから三人にはそれぞれ別の方向へと成長して行ってもらう。

 基礎となる呪力増加と呪力操作の練習は続けるが、それ以外の時間は各々別の修行だ。

 

 早速行こう。

 胸の前に右手を出し、精神世界の明希がそれを右手で掴んで絡ませる。

 

 そう、これは私の印。

 属にいう恋人繋ぎだ。

 

「領域展開」

「おい嘘だろ・・・」

「こんぶ!」

「いきなりだな」

 

 いきなりの私の領域展開に驚く生徒達。

 だが説明するより見てもらった方が早いだろう。

 

 

 

──奏死双哀

 

 

 

 世界が真っ白に塗り替えられていく。

 ここは私の、私達の生得領域。

 

 これは術式を付与しない領域展開。

 原作では初めて登場した宿儺の指を取り込んだ特級呪霊が広げていたのと同じ物だ。だがあちらは未熟で未完成の領域展開だったからこそ術式が付与されていなかったのであって、私はこの領域を完璧に掌握している。

 

 間違えて術式を付与しちゃって皆消し飛ばしちゃった・・・という事は起こり得ない。

 なぜこんなことをしたのか?

 その理由は一人の少女。

 

「よく来たな」

 

 明希の力を借りる為である。

 

 

 

 

 私は毎晩自室で生徒三人の指導法を考えていた。

 

 黒閃は恐らく習得出来るだろう。

 あの子達にはそれだけの才覚がある。

 だがそこからが問題だった。

 

 例えば真希ちゃん。

 彼女には羅刹流習得の為に「理」を扱えるようになって貰わなければならない。

 

 それは常人が練習したからといって習得できるものなのか?

 結論から言うと不可能だ。

 

 あれは明希という世界に愛されし神才だけが持つ感覚。私が使えるようになったのは明希の記憶を追体験したからに過ぎない。

 更に、私の体は「理」を扱える程の才能を備えていたことも理由の一つ。

 

 真希ちゃんは体術に関しては突き抜けた才能を有している。

 「理」の習得に必要なのは取っ掛かりだけ。一度でも体験すれば真希ちゃんの才能でモノにするだろう。

 

 

 例えば狗巻君。

 

 彼には反転術式の習得が必須だ。

 だが、反転術式とは呪力操作の極地。ほんの一握りの術師しか扱えない高等技術だ。

 

 原作では宿儺でさえ反転術式を難しいことだと語り、領域展開すら覚えつつある伏黒恵は反転術式を扱えない。

 

 これもまた天才独自の感覚と呪力の核心の把握が必要である。

 この反転術式を扱う感覚さえ掴んでもらう方法はないか?

 

 

 

 例えばパンダ君。

 

 彼に覚えて貰うのは3つある核の利用方法だ。

 彼が持つ武器で、他より明確にアドバンテージだと言えるのは3つ核がある事のみ。

 

 それでも充分過ぎる切り札になる。

 

 三人の中で呪力量が一番増えるのは彼だろう。

 その分呪力操作は難しくなる。

 短期間で爆発的に増える呪力を制御する術を学ばなければならない。

 

 その感覚を覚えてもらうのもそうだが、彼が持つ全てを活かしきるにはそれだけでは不十分だ。切り札となる手段を習得してもらう必要がある。

 その為のきっかけが欲しい。

 

 

 これらの役に立つ術式は持っていない。

 だが、閃いた方法は全てを一挙に解決しうる物だった。

 

 即ち、明希が私に行なった記憶の追体験を生徒達にしてもらえばいいのだ。

 明希に協力をお願いし、了承を貰った。だがここで問題がある。

 

 三人を明希の本体である精神体に会わせる方法が無かったのだ。

 

 生得領域に三人を引き込む必要があった。領域展開が真っ先に思いつき、それでは三人を殺してしまうとすぐ否定した。そこで原作を1から思いだし、術式を付与しない領域展開の存在を思い出したという訳だ。

 

 明希に生得領域内に三人を呼び込む事を伝えると、慌ててお片付けを始めたのは面白かった。

 

 

 そうして迎えた今日。

 私と二人きりの時とはまるで違う威厳たっぷりな様子に思わずニヤけてしまう。うちの娘は可愛いなぁ。

 

 さて、早速始めるとしようか。

 

 





 これぞ教育チート!

視点質問!

  • 原作の視点で進めて欲しい。
  • 今のままの視点で進めて欲しい。
  • それぞれ半々くらいで進めて欲しい。
  • 閑話で他視点をもっと追加してほしい。

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