呪霊廻戦 〜呪霊で教師になります〜   作:れもんぷりん

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 修行が後2話あると言ったな。
 あれは嘘だ!

 マンネリ化を防ぐ為、戦闘時の過去回想に使う!

 結果、シンジ君入学。



編入

 

 明希は早速三人の頭にぽん、ぽん、ぽんっとそれぞれ一秒ずつ手を置いた。

 

 そして倒れ込む皆をその場に寝かせる。

 というか記憶を見せるのっておでこをごっつんこさせなくても出来るんだ。

 

 どうやら明希はこの空間に他人を入れるのが好きじゃないらしい。

 さっさと終われと思っているのが伝わってきた。

 見せる記憶は事前に相談してある。

 

 真希ちゃんには羅刹天の常態で放つ全ての羅刹流。

 見せるためにわざわざ収録した。

 

 狗巻君にはひたすら反転術式を使う記憶。

 

 パンダ君には呪力操作の感覚。

 そして本命の私と明希が羅刹天へと成る時の感覚を掴んで貰っている。

 

 その間に私は明希と積み木でもして遊ぼうと思う。

 呪力の壁を張って隠蔽してあるが、実は毎日コツコツとブロックを積み上げ、大きなお城を作っているのだ。

 

 これが中々面白い。

 

 始めるきっかけは私の一言。

 真っ白なこの空間を味気ないと思った私は明希と共に色々作ることにした。

 

 遊具やベッド、簡単な部屋などは作ったがまだ寂しい。

 そうだ城を造ろう。明希に相応しい威厳たっぷりな城を。

 その言葉から5年間、既に城は完成しつつある。

 

 明希といちゃいちゃしながらする作業が堪らなく好きだ。寝る前の日課に最高の趣味だろう。

 

 三人の脳に負担をかけすぎないようにするため、6時間じっくり記憶を追体験してもらう予定なので時間はたっぷりある。

 

 一緒に遊ぼうか、明希。

 

 

 

 

 

 そうして二ヶ月が経った。

 

 7月の始め、ある朝。

 

「ここか」

 

 白い呪霊が一つのドアの前で足を止める。

 

 

 去年の11月頃、ロッカーの中に数人の生徒が箱詰め状態で発見された。

 明らかに呪霊の仕業。

 残穢から見て特級案件。

 調査に乗り出した五条はすぐに事情を把握。

 一人の少年を高専へと迎え入れた。

 

 特級仮想怨霊"折本里香"を身に宿す気弱な少年。

 乙骨憂太、呪術高専一年生への編入が決定。

 

 そこまで決まった状態で五条は一年生担任の亜鬼へと話を通した。

 彼は機密の存在であり、秘匿死刑の瀬戸際にいたので話せなかったのだ。

 

 亜鬼は快く了承。

 色々と段取りを済ませた。

 

 そうして遂に、初対面。

 

 

 

 

 ノックをし、扉を開ける。

 

 御札だらけの部屋の中心に黒髪の少年が一人。

 乙骨憂太だ。

 

「おはようございます!」

 

 まずは元気に挨拶する。

 それにしても原作で見たまんまの格好だ。

 特に目の下の隈が酷い。

 

 彼がゆっくりと頭を上げ、こちらを見る。

 その瞬間、呪力が膨れ上がった。

 

「ダメだ!」

 

 

 

里香ちゃん!

 

 

 

 乙骨君の背後から出現する濃密な呪力の塊。

 どこぞのエイリアンのような姿形をした彼女。

 

 特級過呪怨霊"祈本里香"だ。

 

 

「ゆ゛るせなぁぁぁぁぁい゛!」

 

 

 凄まじい迫力でこちらへと向かってくる里香ちゃん。

 彼女は底なしの呪力を持ち、変幻自在という特性を有する。

 それだけではなく膂力も一流。

 特級呪霊の中でもトップクラスの戦闘力をもつだろう。

 

 でも、相手が悪かったね。

 

 ここに断言しよう。

 

 

 

最強は“私達”だ。

 

 

 

 振るわれる拳に対して軽く腕を上げる。

 私の小さな掌は里香ちゃんの拳を難なく受け止めた。

 

 この程度では10体いたところで私は祓えない。

 

 驚愕する里香ちゃん。恐らく格上と相対したのが初めてなのだろう。

 明確な恐怖を感じる。

 

 しかし、私は力で抑え込む気なんてまるでない。

 優しく腕を握り、こちらに引き寄せた。

 流されるように私の前へ来た里香ちゃんを抱きとめる。

 

「お~よしよし、いい子だから落ち着くんだよ?」

 

 そうしてひたすら撫でまわした。

 実は里香ちゃんは真希ちゃんに続く私の推し。

 こんなに健気で可愛い乙女がいるだろうか?

 今のだって、他の女に乙骨君を渡したくない気持ちの表れだろう。

 

 あぁ、なんて尊いんだ・・・

 

「私は応援してるからね!」

 

 そう耳元で囁くと、途端に静かになった。

 うんうん、良い子だね。

 またよしよしと頭を撫でてやる。

 

 すると私の事を信用したのか、私とがっちりと握手を交わしてから乙骨君の中へと戻っていった。

 

「え、えっと・・・」

 

 強く目を瞑っていた乙骨君が恐る恐る目を開いた。私が無事な事を確認するとほっと息をつく。里香ちゃんは彼の意思で完璧にコントロールされている訳では無い。

  恐らく関係自体はあくまで対等。里香ちゃんは自分の意志で彼の言うことを聞いているのだ。

 

 これこそ愛だろう。

 

「改めておはよう!担任の亜鬼と言います!」

「お、おはようございます。乙骨です」

 

 うん、呪術界では本当に珍しい礼儀が正しい子だ。

 この呪術界に生きる呪術師、呪詛師、呪霊はどいつもこいつも我が強く、個性的だ。

 そして礼儀を知らない。

 

 そんな中、彼は今までずっと現代に生きてきた普通の高校男子。

 少々根暗だが、人間としては五条先生より出来ている。

 

 うん、気に入った。

 

「じゃあ早速、教室に案内するね?」

「は、はい。よろしくお願いします」

 

 喋り方が若干どもり気味だ。

 これは自分に自信がないからか、それとも癖なのか。

 出来れば直して欲しいところだね。

 

 教室に向かうまでの間、色々と話した。

 原作の通りなら五条先生は乙骨君に何一つ事情を説明していないことだろう。

 そう思って学校の事や呪霊の事を軽く教える。

 

 そうするとやっぱり、あの適当教師は何一つ説明していなかったようで新鮮な反応が返ってくる。

 

 そうこうしている内に教室へと辿り着いた。

 三人には事前に乙骨君の事情を説明しており、私の時と同じ様に襲い掛かってくることはないだろう。

 

「じゃあ中から呼ぶから待っててね」

「分かりました」

 

 まずは場を温めてあげないとね。

 扉を開き、指示していた通りに呪力操作の練習をしていた三人に挨拶する。

 

「おっはよーございまーす!」

「おう」

「しゃけ」

「いつにも増して元気だな」

 

 しっかり返ってくる返事に満足満足。

 

 三人には修行の中で呪力感知も鍛えさせている。

 そのせいか先程から視線が外に釘付けだ。転校生が気になるのは当然だよね。

 

「おい先生、聞いたところじゃそいつ、問題児らしいじゃねーか」

 

 そう聞いてくるのは真希ちゃん。

 まあ問題児といえば問題児だけど・・・

 

「皆と同じ様に彼にも色々と事情があるんです」

 

 乙骨君に憑いている里香ちゃんは元々彼の彼女のような存在だった。

 小さい頃から共に遊び、将来は結婚を約束するような深い関係。だが、里香ちゃんは乙骨君の目の前で車に轢かれて死亡。

 現実を受け入れられない彼が里香ちゃんを引き留めようとした結果、特級過呪怨霊"祈本里香"は生まれた。

 

 それから里香ちゃんは乙骨君を害する者全てを排除するようになった。今回ロッカーに詰められていた人達は乙骨君をいじめていた人達だったのだ。

 

 呪いの御し方どころか存在すら知らない彼にそれを解決しろと言うのは無茶振りだ。

 

 仕方のない事だったと思う。

 強いて言うならいじめっ子が悪い。

 

「どうか、仲良くしてあげて下さい」

 

 友達というのは良い。

 共に学び、遊び、競い、高め合う。

 

 大事な青春の一頁を彩る存在となる。

 真希ちゃんは何処か納得していないような顔をしていたが、吹っ切れたように少し笑った。

 

「しゃあねえな」

「しゃけ」

「素直じゃねえなぁ」

 

どうやらいい感じに場は温まったようだ。

 

 





 誤字報告めっちゃ嬉しいです。
 凄く勉強になるし、読者さんと一緒に物語を描いている感じがして堪りません。

 因みに私は乙骨君より里香ちゃんの方が好きです。
 乙骨君の編入時期が正直分からなかったので捏造しました。

視点質問!

  • 原作の視点で進めて欲しい。
  • 今のままの視点で進めて欲しい。
  • それぞれ半々くらいで進めて欲しい。
  • 閑話で他視点をもっと追加してほしい。

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