強さ表出して良かった!
読者さんに色々と教えてもらえて楽しかったです
取り返しがつかないミスを犯すところでしたし・・・
それでは百鬼夜行編スタート!
始動
呪術界の上層部、頭の固い老害達の集まり。
今、乙骨の扱いに関しての会議が行われていた。
「特級過呪怨霊“祈本里香”の顕現が日常的に行われていると聞いたぞ」
「これは明らかに契約違反だろう」
「申し開きの余地はないぞ、五条悟」
亜鬼が乙骨のカリキュラムを組むことはないが、組み手や術式の指南は行っている。
これは単に亜鬼が体術、呪力操作共に五条より上だからだ。その際、里香は常に顕現状態である。
乙骨憂太という術師は里香と共に戦うのが自然の状態であり、訓練においてもそうすべきだという考えである。
実際、体術においても里香との連携は必須であるし、術式においても然りである。
しかし上層部からしたら気が気じゃない。
いつ暴走するか分からない呪霊が自由に顕現しているというのは見逃していい事態では無かった。
「知らないよそんなの」
だが五条は開き直る。
彼が考えた授業内容ではないし、万が一里香が暴れる事があっても亜鬼なら問題無いと確信しているからだ。
確信というより純然たる事実、里香は逆立ちしても亜鬼には敵わない。それだけの実力差があり、彼女らの間に育まれた信頼関係も見受けられた。
つまり問題視する必要が皆無なのである。
「文句は彼女に言ったらどうだい」
上層部は亜鬼に逆らえない。
彼女は呪霊であり、全くと言って良い程しがらみがない。
それ故、上層部の老害など消そうと思えばいつでも消せる。その事を理解しているからこそ彼らは亜鬼ではなく五条を呼び出したのだから。
それ以上言い返されることもなく、五条はその場を後にする。
「・・・・乙骨の秘匿死刑は保留だということを忘れるな」
苦し紛れに上層部の一人が口にした言葉。
五条は振り向きすらせず、鼻で笑った。
そうして小さく呟く。
「できる訳ないでしょ」
乙骨の側には常に亜鬼がいる。
彼に憑く里香のことを明希が気に入っている。
それだけで充分だ。
たったそれだけで世界中の誰であろうと乙骨に手出しすることは叶わない。
「ま、僕ならやれるけどね」
五条は唯一の例外と言えるかもしれないが、彼は絶対に生徒の味方だ。上層部程度では既に手出しができない環境が整ってしまっている。
乙骨に手出しすることは誰であろうと不可能だ。
◆
「誰であろうと乙骨に手出しすることは不可能と言っていい」
袈裟を纏う男、夏油傑は家族にそう言い放った。
非術師を皆殺しにし、呪術師だけの世界を創る。かつて誰より弱者のことを考え、守り、戦った男は現実に絶望した。
非術師は屑だ。
自分本位で他人のことなどまるで考えず、守られていることすら知らない。
彼らは猿だ。
自分達呪術師と同じ人間ではない。
彼は家族が、仲間が、自分の大切な人間が傷つけられない世界を願った。
仲間を集めた。
信頼でき、志を共にする頼もしい家族。夏油の考えに賛同し、彼こそ王だと信じる者達。
呪霊を集めた。
彼の武器である呪霊操術は呪霊を取り込み、操ることができるという並外れた性能を持つ。取れる戦略の幅、手数、殺傷力、どれをとってもトップクラス。
これ以上無いほど準備を整えた。
だがこのまま世界を変えようと動いても意味はない。
五条悟がいるからだ。
夏油を含め、家族全員で束になってかかっても足元にも及ばないような強さ。
聳え立つ最強の壁。
彼がいる限り夏油が望む世界が来ることはない。
そこで見つけた最後のピース。
それが“亜鬼”だった。
教師の真似事をしているあの呪霊ならば五条にすら勝てる。あの呪霊一体で何もかも全て事足りる。それだけの力を感じた。
だが、亜鬼を呪霊操術で取り込むことは不可能だということも察していた。あれほどの強さになると、かなり弱らせなければ取り込むことは出来ないだろう。
“亜鬼”を弱らせる。
この一点に目標を絞っても不可能。もうひとつ何かピースが必要だった。
ぐるぐると回る思考の渦。
そこに差し込んだ一筋の希望。
乙骨憂太、彼に憑く祈本里香の存在だ。彼女がいれば亜鬼を弱らせることは可能だろう。
祈本里香だけでは五条に勝つことはできないかもしれない。
だがあの甘い呪霊なら?
仲良くなった里香を祓うことができない彼女なら?
彼が考える世界を創る為に必要なピースが全て集まった。
祈本里香を取り込み、彼女を利用して特級呪霊“死風”を手に入れる。
この作戦なら行ける。
逆にこの作戦以外では無理だ。
そうなってくると問題が一つ。乙骨から里香を奪うことがまず難題なことだ。
「どうするのですか?夏油様」
「そうだね、簡単なことだ」
乙骨の周りには必ず亜鬼か五条のどちらかがいる。
ならば彼らを引き離せば良いだけの話。
「宣戦布告といこうじゃないか」
その言葉に彼の家族達の顔が引き締まる。
「猿の時代に幕を下ろし」
夏油から凄まじい圧が発される。
それは呪力ではない。
彼が持つ純然たる王の資質。
比肩する者無き圧倒的なカリスマ。
「呪術師の楽園を築こう」
美々子と菜々子、生まれた村で虐げられた双子が頷く。
夏油に王を見たミゲルが微笑む。
彼に心酔するラルゥが拳を握りしめ、彼に救われた祢木は決意を新たにした。
夏油の考えに賛同した菅田はただ噛み締めた。
これが夏油だ。
彼こそが自分達の王に相応しい!
「まず手始めに呪術界の要・・・」
──呪術高専を落とす
◆
呪術高専の校庭には今日も鍛錬の声が鳴り響いていた。
真希が六尺ほどの棒を振り回し、亜鬼へと飛びかかった。
頭上からの振り下ろし、かと思いきや棒の先端が鞭のように軌道を変えた。まるで読めない軌道を描き、左下から抉るように放たれたその一撃を見切り、身を捻って反撃を加える亜鬼。
常人では残像すら見る事すら叶わない拳を軽やかにいなし、避けられた棒が真希の手足のように操られて速度を増しながら亜鬼を追撃する。
そこから繰り返される近接戦の応酬。間合いが近ければ満足に振ることすら難しい長さの棒を巧みに操る真希、極限まで洗練された体術で応戦する亜鬼。
両者とも身体能力は異常を超えて超常の域まで達しており、目で追うことすら困難だ。
真希が打ち、亜鬼が払う。
亜鬼が攻め、真希が躱す。
腹を狙い、意識がそこに集中したことを感じ取っては頭を狙う。
読み合いと得意分野の押し付け合い、その頂点。
入学から八ヶ月、真希は羅刹流を習得しつつあった。
羅刹流とは力の使い方という面が大きい。
素手でも武器でも何にでも使える流派である。
真希が今使っているのはただの棒ではない。
一級呪具“如意棒”
亜鬼が真希へのお土産にと世界各地を回って見つけきたお土産の一種だ。
伸縮性が高く、呪力を込めれば伸びるというだけの特性を持つ呪具である。もちろん普通の武器よりは遥かに丈夫であり、呪力も通しやすい。
真希はこのシンプルな武器を好んで使っていた。
そうして十数分にも渡る組み手が終わる。
時間を決めておかないと楽しくて永遠に終わらないのだ。
「ありがとうございました」
真希はこの組み手の後、必ず礼を言って頭を下げる。これは亜鬼を師と慕っているからである。
「うんうん、益々強くなってるよ。流石だね」
亜鬼は満足げに頷き、真希と感想戦へと突入する。
呪力操作を鍛えつつそれを見ていた乙骨は感嘆の息を吐き出した。
「いつ見ても凄いや」
「ああ、あれは真似できないな」
パンダも乙骨の言葉に同意した。
体術は四人の中でも真希が飛び抜けている。
次点でパンダ、乙骨、狗巻と続くだろう。
だが、そう言葉を交わす二人にしても身に纏う呪力は圧巻の一言。
乙骨は言わずもがなだが、パンダは入学前とは別物と言っていい。
見た目は変わらないが、圧が違う。彼もまた、亜鬼に鍛えられた内の一人。
「狗巻君は?」
「いつものとこだ」
狗巻は一人、伸び悩んでいた。
パンダより呪力が増えることもなく、体術の才能は皆無。
何よりも未だに反転術式が上手くいかないのだ。
それでも呪力量としては一級術師の域を逸脱しているのだが。
毎日集中できる場所で反転術式の修行を行っていた。
「大丈夫かな?」
乙骨としては心配だ。
どうにも狗巻が無理をしているように感じるのだろう。
その表情は不安気だった。
「安心しろ、棘なら心配ない」
パンダは自信を持ってそう言い切った。
狗巻なら問題ない。
そう信じているからだ。
「パンダくーん!」
「おーう」
パンダが指導を受ける番になり、乙骨はまた呪力操作に注力することになる。
だがその心は晴れやかで、みんなに対する尊敬の念が溢れて止まなかった。
狗巻は一人、いつものように反転術式の練習をしていた。
いくら呪力量が増えたところで喉がやられてしまっては術式は使えない。反転術式を習得しないことには先へと進めないのだ。
だが彼に焦りはない。少しずつ、少しずつではあるが何かを掴んでいるような感覚がある。黒閃を経て分かった呪力の本質。
それだけでは足りないのだろうか?
反転術式とは呪力操作による技術。
四人の中でも呪力操作の練習を人一倍しなければいけなかったパンダにも感覚を聞き、助言を受けているのだがそれでも至らない。
「また悩んでいるんですか?」
後ろから聞こえる優し気な声に振り向くと立っていたのは亜鬼。
「しゃけ」
「そうですね、こんな感じですよ」
亜鬼は狗巻の体に触れ、正の呪力を軽く流した。
反転術式を他人ヘと行使するという絶技をいとも容易く行う先生はやっぱり凄い。
そう思いながら感覚を掴むのに集中する。
「こんぶ」
「確かにそうですね、ひっくり返すという感覚が近いかもしれません」
一緒に過ごす期間が増える中、亜鬼は狗巻の言いたい言葉を完璧に理解することができるようになっていた。
共に歩み、励まし、高め合う。
生徒は亜鬼を何よりも誰よりも信頼していたし、それは亜鬼も同じこと。彼らの中に秘める才能を誰よりも正確に感じ取り、信じていた。
◆
ある朝、四人はいつも通り校庭へと向かっていた。
亜鬼は一日中依頼で埋まっているので高専にはいないが、指示されている訓練はある。いつもは深夜や早朝に依頼を済ませる亜鬼だが、流石に依頼の量が多すぎたらしい。
四人の中で一番後ろを歩く乙骨がぞくりとした寒気を感じ、後ろを振り向いた。
「なんかちょっと嫌な感じが・・・」
「気のせいじゃないのか?」
「いや、確かに嫌な予感だ」
「しゃけ」
呪力感知に疎い真希以外がその場に立ち止まった。
空から巨大なペリカンのような呪霊が降りてくる。
その距離まで近づいてやっと真希も振り向いた。
「珍しいな、憂太の勘が当たるなんて」
そう話しながらポケットに忍ばせている呪具収納呪霊から如意棒を取り出す。
この呪霊も亜鬼が捕まえてきて真希のために躾けたものだ。主従関係は真希に移してあるので取り込まれる心配もない。
そうして鳥の呪霊から飛び降りる一人の男。
「関係者じゃねえよな」
「見ない呪いだしな」
「すじこ」
「わーでっかい鳥」
それぞれが緊張感なく話し合う。
高専に飛び降りた一人の男は高専を見回し、懐かしそうに目を細めた。
「変わらないね呪術高専は」
男の名前は夏油傑。
途轍もなく大きな何かが今、始まろうとしていた。
みなさん薄々察しているかもしれませんが、私は夏油傑がめっちゃ推しです。
呪術廻戦において宿儺と並ぶ程のカリスマを持っているのは彼だけだと思っています。
私の中では彼もまた“最強”なのです。
視点質問!
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原作の視点で進めて欲しい。
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今のままの視点で進めて欲しい。
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それぞれ半々くらいで進めて欲しい。
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閑話で他視点をもっと追加してほしい。