呪霊廻戦 〜呪霊で教師になります〜   作:れもんぷりん

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 活動報告にも書いたのですが、ITパスの試験勉強の為に投稿頻度が大幅に落ちると思います。少し経てば元に戻すのでどうかご了承下さい。


正義

 

「変わらないね呪術高専は」

 

 夏油傑は辺りを見回してそう呟く。

 ペリカンのような呪霊の口から他の呪詛師達も現れた。

 明らかな異常事態。

 

「うぇ〜夏油様ぁ本当にココ東京ぉ?田舎くさぁ」

 

 少女が軽口を叩きながら地面に飛び降りる。

 

「菜々子・・・失礼・・・」

「えー美々子だってそう思うでしょ?」

 

 双子が軽口を叩き合う。

 その様子は村で迫害されていた頃とは似ても似つかない元気さだった。

 

「んもう!さっさと降りなさい!」

 

 ラルゥが注意し、その言葉にまた言い返す。血は繋がっていなくとも、彼らは紛れもなく家族だった。気安く言い合える信頼で築かれた関係。

 なんと得難く尊いものなのだろう。

 

「アイツら・・・何?」

 

 美々子が不思議そうに首を傾げる。菜々子は気にせずパンダにカメラを向けて無邪気に写真撮影を始める始末だ。

 

「オマエらこそ何者だ。侵入者は憂太さんが許さんぞ」

「こんぶ!」

 

「え!?」

 

 パンダと狗巻が冗談混じりに侵入者へと注意する。

 

「憂太さんに殴られる前にさっさと帰んな!」

 

「えぇ!?」

 

 真希もそれに乗って叫ぶ。

 この学年は存外ノリが良い。

 困ったように驚く乙骨もどこか楽し気だった。

 

 だが次の瞬間、夏油が動く。

 消えたように見える速度で乙骨の前まで移動したのだ。

 

 真希が反応し、如意棒を振るった。

 下から上へとカチ上げるように振るわれたそれを躱す夏油。躱すことを読んでいたようにパンダが拳を突き出す。

 

 その一連の攻撃の鋭さに夏油は目を見開き、少し微笑みながら拳を受け止めた。

 

 

──動くな

 

 

 狗巻の呪言が炸裂する。

 それでもやはり遥か格上。

 すぐに動き出した夏油は一歩後ろに飛び、距離を取る。

 

「素晴らしい」

 

 夏油はぽつりと呟いた。

 

 今の攻防は軽いジャブのようなものだ。夏油だって最高速ではないし、真希もパンダも牽制の意味合いが強い。それでも夏油は特級。

 並の術師が反応できるような速度ではない。

 

「想像以上の逸材揃いじゃないか」

 

 喜色を滲ませた声色で上機嫌に笑う夏油。

 彼は間違いなく悪であり、数え切れない程の殺人を犯した犯罪者でもある。

 だが非術師が嫌いでも呪術師が嫌いな訳では無い。

 

 素晴らしい呪術師の存在というのはそれだけで彼を心から喜ばせるのだ。

 

「禪院家の落ちこぼれと聞いていたが、どうやら間違いだったようだ」

 

 夏油は少し痺れる手をさすりながらそう言った。

 禪院真希は呪力のない猿だ。そう考えていた彼からすればこれは驚くべき事態であり、同時に喜ばしいことでもあった。

 

「どうだい君達、私と共に来ないか?」

 

 夏油が大げさな身振り手振りで辺りをぐるりと見渡した。

 良い反応を返さない周囲を見て溜息を吐く。

 

「こう考えたことはないか?」

 

 深い悲しみと抱えきれない程の怒りを孕んだ底が見えない深淵の瞳を輝かせて彼は叫んだ。

 

「この世界は間違っている!なぜ我々強者が弱者に適応しなければならない!」

 

 彼は一般社会の秩序を守るために呪術師が暗躍するこの世界を許せなかった。

 

 非術師を守るために死んでいく仲間がいた。

 笑顔で話していた友人が明日には亡き者となっているかもしれない。

 

 そんなことも知らずにのうのうと笑顔で暮らしている猿共をどうしても憎まずにはいられなかった。

 

「我々が猿共の為に傷つき、死を迎える時、彼らは無為な事に人生を費やしている。」

 

 こんなに馬鹿なことがあるか?

 命を懸けて必死に守った者は全く持って何の価値もないカスだったのだ・・・

 

「万物の霊長が自ら進化の歩みを止めている。何の意味も無い行為に命と時間を懸け続けている」

 

 語る、語る。

 

「そろそろ人類も生存戦略を見直すべきだ、そう思わないか?」

 

 話の本質が見えてこない。

 結局夏油が何を言いたいのか理解できない四人は揃って首を傾げた。

 

 夏油が纏う雰囲氣がおちゃらけた軽いものから重々しく変化していく。

 絶望を煮詰め、濾して希望を取り除いたらきっとこんな色だろう。

 ドス黒い呪力が辺りを渦巻く。

 

「だからね、君達にも手伝って欲しいんだ」

「何をだよ」

 

 真希の疑問を聞いて心底愉快そうに彼は笑った。

 

 

「非術師を皆殺しにして呪術師だけの世界を創るんだ」

 

 

 それこそ彼の悲願。

 何を失っても、外道に堕ちても叶えたい一つの夢。

 

 彼が持つ正義の形だった。

 

 

 

 

 場は完全に夏油が支配していた。

 四人は彼の狂った発言に言葉も出ない。

 

「僕の生徒にイカれた思想を吹き込まないでもらおうか」

 

 そこに歩いてくる銀髪の男。

 呪術界最強、五条悟。

 

「悟、久しいね」

 

 懐かしそうに目を細める夏油。彼らは同じ時に入学し、机を並べた親友同士だ。

 お互いに思うところも多いのだろう。

 

「この子達、君の受け持ちかい?道理で素晴らしい訳だ」

 

 五条は答えない。

 相手に要らぬ情報を与える必要などないからだ。

 

「呪力のない猿をここまで育てるとは・・・」

 

 

──飼育員の方が向いているんじゃないか?

 

 

 その言葉を聞き、乙骨が顔を顰めた。

 

 仲良くなる中で真希の事情は聞いている。

 彼女に呪力がなかったことも、それでも彼女が目指す夢のことだって。友達を侮辱されるというのは彼が一番好かないことだ。

 

 それに彼は意図せず四人の地雷を踏み抜いたのだ。

 

 彼らにとって、亜鬼は母のような存在だった。

 道を示してくれ、落ちこぼれや爪弾き者の自分達を優しく導き、愛してくれた。

 

 それがどんなに嬉しかったか・・・

 

 

「何の真似だい?」

 

 乙骨が抜き身の刀を夏油の首筋に当てる。

 真希が夏油の胸ぐらを掴み上げる。狗巻もパンダも臨戦体勢へと移行していた。

 

「てめえの言ってることは分かんねえけどよ」

 

「夏油さんの言うことはよく分からないけど・・・」

 

 

「「先生を侮辱するのだけは許さない」」

 

 

 夏油はそこでようやく自分が地雷を踏み抜いていたことに気がついた。

 恐らくこの学年の受け持ちは五条ではなく、“死風”だということも察した。

 

「すまない、君たちを不快にさせるつもりはなかった」

 

 慌てたように謝る夏油。

 彼としては呪術師と争うのは本意ではない。

 

「じゃあ一体、どういうつもりでここに来た」

 

 夏油と真希の間に入り、威圧感を放つ五条。

 それを見て夏油は薄く笑う。

 

「宣戦布告さ」

 

 それを聞いて驚く五条を尻目に夏油は告げる。

 

 

「聞け!」

 

 

 その声には人を惹きつける不思議な力があった。

 場は静まり返り、夏油の独壇場と化す。

 

 

「来たる12月24日、日没と同時に我々は百鬼夜行を行う!」

 

 

 響き渡る声は絶望の始まりを示していた。

 

 

「場所は呪いの坩堝、東京新宿!」

 

「呪術の聖地、京都!」

 

「各地に千の呪いを放つ。下す命令は“鏖殺”だ」

 

 かつてない程大規模なテロとなるだろう。

 それも呪力を持たない者は絶対に対処が不可能という悪質なものだ。

 

「地獄絵図を見たくなければ死力を尽くして止めにこい」

 

 特級術師の彼にしか成し得ないだろう。

 放っておけば世界中の人間が殺されてしまうかもしれない。

 

 

「思う存分・・・」

 

 

呪い合おうじゃないか

 

 

 

 放たれた圧は五条が放つものと拮抗した。

 

 比類なきカリスマ。

 

 これこそ現代に放たれた魔王。

 

 

 

「あー!夏油様お店閉まっちゃう!」

 

 その余りの気迫に息を呑む周囲を気にせず菜々子が叫ぶ。

 自由奔放な彼女らしい無邪気な態度。抑圧され続け、存在すら許されなかった彼女は今、幸せを噛み締めていた。

 

「もうそんな時間か、すまないね悟」

 

 夏油にとって家族とは何よりも優先するものだ。

 彼ら家族の間に築かれた絆は本物で、誰も邪魔することなんてできやしない。こんな状況であってもそれは変わらない。

 

「彼女達が竹下通りのクレープを食べたいときかなくてね、お暇させてもらうよ」

 

 ペリカンの呪霊へと乗り込む家族を追い、夏油も背を向ける。

 

「このまま行かせるとでも?」

 

 五条が威圧する。実際、ペリカンの呪霊が飛び立った瞬間に虚式でも打ち込んでしまえばそれで終わる話だ。

 

「やめとけよ」

 

 夏油の影から数えきれない程の呪霊が姿を現す。

 中には特級に思えるようなものさえ紛れ込んでいた。

 

「可愛い生徒が私の間合いだよ」

 

 そう言われてしまえば五条としても見逃すしかない。

 

 飛び立っていく呪霊を見ながら五条は決意した。

 十年前、夏油を殺す判断が出来なかったのは五条だ。

 

 なればこそ、この手で決着を・・・

 

 

 

 

 

 任務から帰ると高専が騒がしい。

 何かあったのだろうか?

 

「どうしたんですかね、阿瀬比さん」

「うーんちょっと分からないなぁ」

 

 私が移動する際の運転を引き受けてくれている“窓”の阿瀬比さんだ。

 すっごく仲良くしてくれるし、任務に出向いた先で一緒にご飯を食べることも多い。

 

 “窓”の中で一番仲が良いと言ってもいいだろう。

 今日はもう12件も依頼をこなしたので時間も遅いのに、高専では明々と電気が灯っている。

 

「じゃあ今日はお疲れ様。ゆっくり休んでね」

「はい!ありがとうございました!」

 

 阿瀬比さんと別れ、高専に入るとそこに居たのは五条先生だ。

 明らかに私を待っていた感じがする。

 

「やっと来たね」

「何かあったんですか?」

 

 明らかな異常事態だ。それでも一つ心当たりがある。

 時期的にそろそろだと思っていたが私がいないところを狙われたか・・・

 

「傑が来た」

「詳しく話して下さい」

 

 今日はまだまだ眠れなさそうだ・・・

 

 

 

 

 

「総力戦だ。今度こそ夏油という呪いを完全に祓う!」

 

 夜蛾さんの言葉でやっと会議が終わった。

 OB、OG、アイヌの呪術連など、協力してくれる全ての場所から呪術師を集めるらしい。

 

 原作通り乙骨君と真希ちゃんは高専に残ることになった。これは乙骨君を戦場に出すのが危険なことと、真希ちゃんが未だに四級術師なことが起因している。

 

 真希ちゃんの等級はまだ今のままでいいと判断した。

 それはひとえに危険だから。

 絶対に特級呪霊と出会っても勝てるようになるまでは四級で良い。

 

 原作知識で夏油が高専に襲撃を仕掛けてくることは知っているが、敢えて口にしないことにした。

 

 夏油は基本的に呪術師を殺さない。

 これは呪術師を殺すということが彼の目的に反するからだ。

 だが四人はそんなことを知らず必死で立ち向かうことになる。

 

 これは何よりも経験になるだろう。

 絶対に必要な戦いだ。

 それに今の彼らの実力で夏油に一方的にやられるというのは考えにくい。

 

 勝てないにしても五条先生が間に合う程度の時間は絶対に稼ぐことが出来る。

 私が手助けしてもいいのだが、格上と戦う経験は必要不可欠なのでここは皆んなに頑張ってもらおう。

 

 私の振り分けは京都になる。

 五条先生と違う戦場にいた方がいいという判断だ。

 どちらに夏油が来たところで確実に勝てるということだね。

 まあ来ないんだけど・・・

 

 私は大人しく京都で結果報告を待つことにしよう。

 

 

 

 夏油よ、私の愛する生徒達は強いぞ・・・

 

 

 

 

 

 夏油は高専への道を悠々と歩く。

 

 全ては彼の計画通りに運び、五条もあの理外の呪霊も乙骨から引き離した。

 百鬼夜行とは全て里香を手に入れるための囮に過ぎない。

 

 

 

 

「さあ、新時代の幕開けだ」

 

 

 

 

 高専の地へと一人の巨悪が足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なーんかとんでもないことになっちゃったなぁ」

 

 乙骨は一人教室で呆けていた。

 そこで扉が開かれる。

 

「真希さん」

「何してんだ、今週は休講だろ」

 

 彼らは居残り組の為、教師もいない今は休講期間だ。

 それを言うなら真希も何をしているのかという話だが。

 

「何だか落ち着かなくて・・・二人は大丈夫かな?」

「あん?大丈夫だろ、あいつら舐めんな」

 

 真希は消化不良といった感じで机に腰掛けてため息をついた。

 彼女の珍しい姿につい問うてしまう。

 

「どうしたの?」

「私も京都に着いて行きたかったんだ」

 

 それを聞いてなるほどと納得した。

 京都は亜鬼先生の担当地だ。

 

「私はあの人に救われたんだ、返しても返しても返しきれねえ恩がある」

 

 そう言って強く拳を握りしめる真希。

 それは乙骨も同じ気持ちだった。

 

「だから決めてんだ。あの人が大変な時、今度は私が助ける番だってな」

「先生が大変なとこなんて想像できないよ・・・」

「それもそうだけどよ」

 

 たわいもない話で盛り上がり、教室を出ていく真希。

 

「部屋戻るわ」

「うんまたね」

 

 そう言って扉を閉めた真希はふっと笑った。

 色々言っても彼女も狗巻とパンダが心配だったのだ。

 乙骨と話したことでそれが少しでも紛れた気がする。

 

 その時、空が黒く染まった。

 世界が夜に塗り変えられていく。

 

 

「これって帳?一体誰が・・・」

 

 

 

 

 

 

「君がいたか」

 

 

 高専を我が物顔で歩く夏油が足を止める。

 否、目の前の彼女が止めさせた。

 

「いちゃ悪いかよ」

 

 彼女は禪院真希。禪院家の落ちこぼれにして、天与呪縛のフィジカルギフテッド。

 

「悪いが君と話す時間はない」

 

「奇遇だな、私も丁度用があるんだ」

 

 夏油と真希の全身に呪力が漲る。

 お互いに油断など無い。

 相手が強者だと正しく理解していた。

 

 張り詰めていく空気、研ぎ澄まされていく殺気。

 

 

「さっさと終わらせるとしよう」

 

「準備運動には丁度良い」

 

 

 斯くして、二人は激突する。

 

 

 お互いにどうしても守りたいものがある。

 守る方法は違えどその気持ちは同じ。

 

 これは戦争だ・・・

 

 戦争とは得てしてお互いの正義のぶつけ合いである。

 

 




推しVS推し

どんな戦いを魅せてくれるんだ?

視点質問!

  • 原作の視点で進めて欲しい。
  • 今のままの視点で進めて欲しい。
  • それぞれ半々くらいで進めて欲しい。
  • 閑話で他視点をもっと追加してほしい。
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