呪霊廻戦 〜呪霊で教師になります〜   作:れもんぷりん

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 書くの楽し〜!
 私は正直にわかなので色々ツッコミどころがあると思いますが、できる限り考えているので許してください・・・


死守

 

 パンダが足止め、狗巻が治療。

 口数少なく意思疎通を終わらせたパンダは夏油へと立ち向かう。

 

 今のパンダは体躯が普段の姿より遥かに大きい。

 これは亜鬼の意見によるものである。

 呪力量が増える中、戦闘で呪力を扱うとなるとどうしても制御が追いつかなかった。

 そこで呪力回路を太く、長く、大きくする必要があった。

 

 パンダ核とゴリラ核の同時使用。

 結果的に辿り着いたのがこの結論であった。

 こうすることで呪力操作も圧倒的にしやすくなり、扱える呪力も単純計算で2倍に増える。

 

 

パンダ"双核駆動(デュオ・ドライブ)"

 

 

「面白いね」

 

 パンダの変化を見て笑う夏油。

 夏油が振るう遊雲とパンダの巨大な拳は何度も何度もぶつかり合い、硬質な音を響かせていた。

 

 今のパンダの総呪力量は特級に匹敵する。

 それを惜しみなく効率の良い身体強化に注ぎ込み、巨大な体格から放たれる一撃は隕石の衝突を思わせる。

 

 実際、通常の打撃の威力は真希の上をいく。

 それに加えてパンダには鍛えられた体術がある。

 周りに二人も体術の天才がおり、様々なことを仕込まれた今のパンダは体術という点でも他を引き離す。

 

 パンダの巨体からは想像もできないほど俊敏な動きで避け、躱し、打ち込む。

 実践的で的確な素晴らしい身のこなしである。

 

「ほい!」

 

 パンダが放つ拳がいなされ、地面へと突き刺さった。

 砕けた大地の破片が飛び散り、砂埃が巻き起こる。

 

「バレバレだよ」

 

 夏油はパンダが背後へと回り込むのを呪力感知で察知し、背後へと遊雲を叩きつけた。

 

 だがそこには何もない。

 

「囮か!」

 

 そう叫ぶも遅い。

 パンダが放つ隕石の様な一撃が夏油を真正面から捉えた。

 

「あぁ、これが得意技でな」

 

 パンダはデコイを作ることを得意とする。

 これは呪骸の核の位置を誤認させるための技術だったが、それで終わらせるのは勿体ないと亜鬼に諭され、一つの技まで昇華された。

 

 未だに砂埃が舞う中、パンダの呪力が希薄になる。

 そこから3つ気配が別れる。

 

 夏油の左右から迫るものと真正面から突貫してくるもの。

 

 全く見分けが付かず、その技術の高さに舌を巻く夏油。

 

「どうするか・・・」

 

 結論、全て叩く。

 全て叩けばデコイなど関係ない。

 その通り、左右のデコイを消し飛ばし、正面のものも叩き割った。

 

「やはり全て囮か」

 

 予想通りだ。

 直感でそう判断していた夏油は不思議に思う。

 では本体は?

 

 

──動くな

 

 

 だからこそ意識の外にあった呪言が刺さる。

 夏油の体がその場に縛り付けられる。

 圧倒的格上である夏油を止めておける時間は一秒に満たない。

 

 だが二人にはそれで充分すぎた。

 毎日毎日理不尽なほど強い教師と組み手をする中で育まれた絆、そこから生まれる完璧な連携。

 

「おらああああああ!」

 

 パンダが夏油の上から拳を叩きつける。

 防御姿勢を取ることすら許されず、一撃をもらう夏油。

 だがここで緩めはしない。

 

「ふん!ふん!ふん!ふん!」

 

 地面に沈み込む夏油へと容赦無く繰り出される追撃。

 何発もの拳が夏油へと叩き込まれ、地震が起きたかのように大地が鳴動する。

 

 攻撃の手を緩めないパンダに砂埃の中から飛び出した巨大な蛇が噛みつき、引きずり倒した。そのまま絡みつき、体の自由を奪う。

 

「ほ!」

 

 パンダは自分に絡みつく蛇を力任せに引きちぎり、頭を握り潰してトドメを刺した。

 その隙に距離を取った夏油が反転術式で回復に入る。

 

──吹っ飛べ

 

 回復を許さず、狗巻の呪言が放たれる。吹き飛ばされ、壁に激突する夏油。

 だが真希への回復と夏油への攻撃で酷使された喉が遂に限界を迎える。

 

「げほっ」

 

 大量の血を吐き出し、体がふらつく狗巻を見てパンダは覚悟を決めた。

 これ以上狗巻に呪言を使わせる訳にはいかないと考え、壁に叩きつけられた夏油へと肉薄。

 

 自分の体全体を使ってタックルを仕掛け、壁ごと夏油を吹き飛ばした。

 

 吹き飛ぶ夏油を追って全力疾走。

 空中で体勢を立て直した夏油と真正面からぶつかり合う。

 

「君もそろそろ限界なんじゃないのかい!」

 

 游雲が振るわれ、しかしパンダはそれを最低限の防御で受け止めた。

 ひしゃげる左腕を気にせず攻撃後で隙のある夏油を右手で掴み、地面へと叩きつける。

 

 そして地面を削りながら疾走!

 夏油を使って地面を削る荒技に出る。

 

「残念、落とし穴だ」

 

 パンダの足元が突然消え、奈落の底へと落ちていく。

 夏油は緩んだ手から脱出し、パンダを踏み台に穴から抜け出す。穴は底が見えないほど深く、ここから落ちて生存するのは不可能に近いだろう。

 

「いやはや、ここまで梃子摺るとは思わなかったよ」

 

 呪霊操術は取れる手札の広さが強みだ。

 対策されても対応されても別の方向から攻めることができる。奈落の穴もその一つ。

 

「急ぐとしようか」

 

 正直、乙骨以外に障害がいることが想定外であり、その障害がここまで厄介だとは思わなかった。いずれも素晴らしい術師だ。

 夏油をして将来、自分に並ぶ可能性を感じる者ばかり。

 

 反転術式で回復を終え、服の汚れを振り払った。

 

 その時、奈落を背に歩き出す夏油は何かを感じ取った。

 

 振動が伝わってくる・・・

 

 

「っあああああああ!」

 

 

 奈落から這い出したパンダが夏油へと殴りかかる。

 落とされた瞬間に壁を掴み、凄まじい速度で上り詰めたのだ。

 

「本当に素晴らしい」

 

 パンダの双核駆動は著しく呪力を消耗する。呪力による身体強化以外に二つの核の繋がりを高める為の呪力を必要とするからだ。

 今のパンダでは双核駆動を維持することが出来るのは五分にも満たない。

 

 その状態で更に身体強化を限界以上に掛け、本来以上に自身を引き上げた今、もはやパンダの変身時間は限界だった。

 

 パンダが縮み、限界を把握していたパンダはそれに合わせて地面を踏み締め、低姿勢でタックルを放つ。

 殴りかかる様子に対して対応していた夏油はその変化に驚き、対応が遅れる。

 

「っはあ!」

 

 パンダが放てる最後の一撃が夏油を引き倒す。

 

 だがそれまでだ。

 

 

「終幕としようか」

 

 

 力が抜け、無防備なパンダを游雲が弾き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 狗巻は自分が不甲斐なかった。

 

 同期の二人がこれ以上ない成長を見せる中、自分はずっと反転術式すら習得できない。

体術の才能も無く、呪力量が飛び抜けて増えた訳でもない。

 

 このままでは置いてきぼりだ・・・

 

 

 でもそんなことを嘆いているのではない。

 

 今、腕の中で痛みに呻く真希がいる。

 必死に戦い抜き、見事に憂太を守って見せた。

 

 今、夏油とぶつかり合うパンダがいる。

 傷だらけになり、突破口がなくても全力で時間を稼いでいる。

 

 

 ああ不甲斐ない。

 

 

 役に立てない自分が不甲斐ない。

 

 

 皆んなを守る力が無い自分が不甲斐ない。

 

 

 今この時喉が裂け、呪言を使うことすらままならない自分が不甲斐ない・・・

 

 

 壁をぶち破り、パンダが吹き飛ばされてくる。

 体はおかしな方向へと捻じ曲がり、立つことすら出来ないだろう。

 

 狗巻は自分の中に何かが灯るのを感じた。

 

 これほどの激情は感じたことすらない。

 

 抑えきれない怒りが身を焼き焦がしていく。

 

 

 嘆いている暇ではない。

 今、反転術式を習得すればいい話だ。

 

 そうして真希もパンダも憂太も守ってみせる。

 

 だが喉は一向に治る気配がない。

 

 地面へと手を打ちつけ、ただ無力さに嘆いた。

 

 

 せめて・・・

 

 

 せめて一撃だけでも・・・

 

 

 一撃だけでも届いてくれ・・・

 

 

 こちらへと歩いてくる夏油へと手を伸ばし、それを力なく握りしめた。

 

 

 

 

 

 

バキ、ボキッ・・・ぐちゃり。

 

 

 

 

 

 

 

 そんな音と共に夏油の体は押しつぶされた。

 

「な、にが・・・」

 

 夏油は慌ててその場から離脱し、反転術式で自身を治癒する。

 全く攻撃の予兆が分からなかった。

 気づいた時には体がひしゃげていたのだ。

 

「あの呪言師か!?」

 

 狗巻は今自分が成したことに驚く間も無く行動に移る。

 遂に掴んだこの感覚を逃したくなかったのだ。

 

 夏油は明確に死を感じ取った。

 このまま狗巻に好きに行動させては取り返しのつかないことになると本能が叫んだのだ。

 

「行け!」

 

 鳥型の呪霊を五体召喚し、狗巻へと向かわせる。

 いずれも二級以上の呪霊ばかり。

 尖った嘴が、鋭利な鉤爪が、狗巻へと襲い掛かる。

 

 俯いていた狗巻が視線を上げる。

 

 その眼光のあまりの鋭さに夏油は思わず冷や汗を流す。

 

 

──失せろ

 

 

 そう呟かれた瞬間、五体の呪霊が跡形もなく消え去る。

 狗巻が本来使えないような強力な言葉であり、一度使ったなら喉が使い物にならなくなるような代物だ。

 

 だが狗巻の喉が枯れることはない。

 反転術式により、完璧に治癒が施されていたからだ。

 

「化けたか・・・」

 

 寒気を感じながらそう呟く夏油は思考を巡らせる。

 今の狗巻はこれ以上なく危険だ。自分ですら殺されかねない気迫を感じる。

 

 先手必勝。

 それが夏油が出した結論だった。

 

「ふっ!」

 

 深く息を吸い、身体強化を限界までかけた状態で狗巻の背後に回り込む。

 遊雲を振り上げ、狗巻を仕留めにかかった。

 

 

──停まれ

 

 

 振り向きもせずに呟かれた一言で遊雲の動きが停止する。

 そうして狗巻の右手が拳銃を形取った。

 

 背後で驚愕する夏油に右手を向け、それをクイっと動かす。

 子供がよくやる銃を撃つフリだ。

 

 そのはずなのに・・・

 

「がはっ」

 

 夏油の右肩は吹き飛ばされていた。

 驚愕に顔を歪めながらも必死に呪霊を召喚する。

 

 一級呪霊“大陀羅坊”

 

 高さ十メートルを越す巨体が現れ、夏油を背に庇う。

 一級の中でも特級に足を踏み入れてもおかしくないような呪霊である。

 

 そんな強敵を見ても狗巻は表情一つ変えることなく、手刀を形作る。

 それを振り上げ、大陀羅坊に向けて真っ直ぐ振り下ろした。

 

 瞬間、大陀羅坊が真っ二つに分かれる。

 血が噴き出し、何が起きたかも分からぬまま祓われた。

 

「馬鹿な・・・まさか行動に呪いが籠められているのか!?」

 

 何とか回復を終わらせた夏油だが右腕はまだ完治していない。

 相手は覚醒し、自分は時間的に余裕がなく、状況はこれ以上なく悪い。

 

 狗巻が左手の指を少しづつ曲げ、鉤爪のような形を作る。

 それを左下から右上へと振り上げた。

 

 放たれる不可視の五本の刃。

 地面を切り裂きながら途轍もない速度で夏油へと迫る。

 

 その勢いから防御が不可能だと判断し、避けようとする夏油。

 

 

──動くな

 

 

 だが許されない。

 ほんの少しの硬直が夏油に絶望を齎す。

 

 何とか呪言を破り、急所をずらした。

 夏油の体に深い切り傷が刻まれ、血が噴き出す。

 

「これは少々まずいね・・・」

 

 今の状況からでも狗巻を倒す方法などいくらでもある。

 だがその後、乙骨と里香を相手にしなければならないのだ。

 それだけの充分な余力を残して勝つのは非常に難しいと言えた。

 

 

 対して狗巻も余裕がなかった。

 反転術式の会得に伴って習得した術式反転は呪言同様燃費が悪い。

 長期戦になれば負けるのは間違いなく狗巻である。

 

 見た目では余裕を保っているが、想像以上に呪力消費が激しい。

 相手に悟られないようにするのが精一杯であり、このまま呪霊を嗾けられるだけで敗北する可能性が高い。

 そのことに気が付かれないように見栄を張るのが今できる唯一のことだった。

 

 

 お互いがお互いを警戒し、一度膠着状態に入る。

 何か一つの要因で結果が変わるであろうこの戦場。

 

 

 勝利の女神が微笑んだのは狗巻の方だった。

 

 

 校舎から出て戦場へと躍り出た一人の青年。

 乙骨憂太である。

 

 

 血濡れで倒れる真希がいる。

 

 

 ボロボロで動かないパンダがいる。

 

 

 今まさに追い詰められている狗巻がいる。

 

 

 

 乙骨憂太はかつてないほどの怒りに身を任せ、愛しい恋人の名を叫んだ。

 

 

 

「来い!!」

 

 

 

──里香!!!!

 

 

 乙骨の背後に凄まじい威圧感を放つ里香が顕現する。

 

 

 特級過呪怨霊“祈本里香”初の完全顕現・・・

 

 

「ブッ殺してやる」

 

 

 最後の激突が始まる。

 

 




 やめて!これ以上敵が増えたら夏油が余りの過労に燃え尽きちゃう!
 お願い、死なないで夏油!
 あんたが今ここで倒れたら、ラルゥさんやミゲルとの約束はどうなっちゃうの?
 呪霊はまだ残ってる。ここを耐えれば、五条に勝てるんだから!


 次回「夏油死す」デュエルスタンバイ!

視点質問!

  • 原作の視点で進めて欲しい。
  • 今のままの視点で進めて欲しい。
  • それぞれ半々くらいで進めて欲しい。
  • 閑話で他視点をもっと追加してほしい。
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