呪霊廻戦 〜呪霊で教師になります〜   作:れもんぷりん

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 本当に遅くなってすみません・・・
 めちゃくちゃ難産でした。


決着

 

 遂に百鬼夜行が始まる。

 

 私は精神世界の明希と遊びながらその時を待っていた。

 放たれる呪霊など全くもって脅威ではないが、高専に残った二人は大丈夫だろうか?

 原作通りに五条先生が夏油の思惑に気が付いたからこそ百鬼夜行の開始が早まったのだろう。

 それならパンダ君と狗巻君が高専へと送られることになる。

 

 今の三人なら夏油を倒してしまうかもしれないなぁ〜

 私の生徒はみんな驚くほど優秀だぞ!

 

 さて、私は私の仕事をするとしようか。

 

 そろそろ呪霊が現れ始めるだろう。

 今回、被害を最小限に留める為に明希の力も借りようと思っている。

 

 お!呪霊が出始めたね。

 

 

 では始めるとしようか・・・

 

 

 明希行くよ!

 

──うん!

 

 

 明希の額に優しく口づける。

 

 溶け合う。

 

 私たちが一つになっていく。

 

 

 さあ明希・・・

 

 

──遊ぼうか

 

 

 

 

 呪霊が出現し始め、その場にいる呪術師達は気を引き締める。

 きっと厳しい戦いになる。

 死者だって相当数出るだろう。

 

 そんな思いを抱えながらも体に呪力を廻して臨戦体制をとる彼らは背後で膨れ上がった呪力に驚き、全員が後ろを振り向いた。

 

 月明かりに照らされ、美しく佇む白き鬼姫。

 

 美しい黒髪は闇を映し、紅き瞳が無邪気に輝く。

 

 彼女から放たれる威圧感にその場にいた者は呪霊、呪術師、呪詛師問わず皆膝をついた。

 呪術師達は驚き、呪霊達は恐ろしさに身を震わせる。

 

 とても立ってなどいられない。

 

 

 跪かねばならぬ。

 

 

 王たる彼女に・・・

 

 

 羅刹天アキ、完全顕現。

 

 

 アキは楽しそうな笑みを浮かべ、その場で跳躍した。

 周りを見渡し、出現した呪霊の位置を全て把握。

 呪力で生み出した板を蹴って加速。

 

 目にも止まらぬ速さで呪霊を祓い始めた。

 

 彼女が腕を振るえばそれだけで何体もの呪霊が消し飛んだ。

 

 彼女が触れるだけで誰も彼もがボロボロと消失していく。

 

 予想されていた戦いなど起こらない。

 呪霊は自分が何をされたのかも知らぬまま祓われ、呪術師はその場を一歩も動けない。

 

 ただ呪霊と呪詛師達の悲鳴だけが響き渡った。

 

 

 

 一人の白い鬼姫は単騎で呪霊の群れに突入。

 

 召喚された呪霊千体を開始僅か六十七秒で鏖殺。

 強い、という言葉で片付けて良いものではない。

 

 亜鬼が呪霊を祓う様子を見ていた呪術師達は後にこう語る。

 

──もうあの人だけでいいんじゃないか

 

 

 

 

 

 戦いは激化していた。

 夏油は手持ちの呪霊を惜しみなく召喚し、狗巻と乙骨へと放つ。

 

「いくら!」

「分かった!」

 

 狗巻の一言だけで自分がすべきことを把握した乙骨はパンダと真希の回収へと向かう。

 背後に倒れた真希とパンダがいる。

 

 それだけで狗巻は戦える。

 

 両手を顔の前へと掲げ、呪霊達を視界に収める。

 それらを叩き潰すようにして手を大きく打ち鳴らした。

 

 パン!

 

 何かが破裂するような音と共に呪霊が左右から見えない何かに押しつぶされ、祓われていく。

 

「やはり行動がトリガーになっているようだね」

 

 夏油はそれを見て狗巻の術式反転を完全に把握。

 その恐ろしさに冷や汗を流す。

 

 狗巻が稼いだ時間で真希とパンダを回収した乙骨は反転術式を使った治療に入る。

 他人に反転術式を施すというのは並外れた才能がなければ不可能である。

 それを既に習得しているのだから彼の恐ろしさが分かるだろう。

 

 この間に狗巻を仕留めなければ勝ち目はない。

 そう思考を纏めた夏油が狗巻へと肉薄する。

 

 狗巻は体術が大の苦手だ。

 それ故近接戦に非常に弱い。

 だが呪言が満足に使えるというなら話は変わってくる。

 

 夏油が繰り出す遊雲は凄まじい速度で狗巻に迫るが、理不尽なほど近接戦が強い教師が放つ一撃に比べれば躱せないほどじゃない。

 体を低くして避け、夏油の足を払おうと下段蹴りを繰り出した。軽く跳躍して躱されるが、それは想定内だ。

 

 呪言の強いところは手数がもう一つ増えることでもある。

 蹴り、拳、それを躱された後の追撃に非常に向いている。

 

──吹き飛べ

 

 狗巻はそれを“遊雲”に対して命令した。

 当然夏油は自分に命令してくると思っており、反応できない。

 遊雲は呆気なく手から飛ばされ、夏油は武器を持っていない状態になった。

 

 だが夏油の恐ろしい所はここからである。

 彼は素手でも強い。

 何をやらせても強い。

 

 彼ほどオールマイティに戦える男など存在しないだろう。

 

 狗巻の呪力量は少なくなってきており、無闇矢鱈と呪言を連発する訳にはいかない。

 となると夏油の独壇場である。

 

 夏油の蹴りが狗巻の体を打ち、反撃に出ると力を利用して投げられる。

 防戦一方の狗巻の元へと助けが舞い降りた。

 

 

 治療を終えた乙骨である。

 彼は怒りを滾らせながら夏油へと肉薄、刀に呪力を込めて下から切り上げた。

 

 夏油は呪霊を召喚してそれを受け止め、わざと後ろに飛ばされながら距離を取る。

 そうして地面へと降り立ち、自分の影から遊雲を回収した。

 夏油が持つ呪霊の術式である。

 

「なかなかやるじゃないか」

「上から目線はまだ早いと思うけど」

 

 乙骨の返答と同時に夏油の背後から怒りで顔を染め上げた里香が姿を現した。

 亜鬼の方針で普段から頻繁に顕現していた里香はもちろん三人とも交流していた。

 同じ時間を過ごす中で仲良くなった友達三人を傷つけられたという事実は里香にも怒りを齎したのだ。

 

「き゛ら゛あ゛ぁぁぁぁい゛!」

 

 里香が放つ拳が夏油の頭上から放たれた。

 咄嗟の防御を間に合わせる夏油だが、そんなものでは抑えきれない。

 

 防御の上から夏油を叩き潰し、地面に突き刺さったその一撃は大地を穿った。

 

 息も絶え絶えな夏油が砂埃から現れる。

 服は血まみれで、顔からも疲労が伺えるが、まだ余力を残している。

 

 

「純粋に驚いたよ」

 

 

 ぱちぱち、と手を叩き二人へと賞賛の言葉を贈る夏油。

 そこに演技の気配は感じられなかった。

 

「君が里香を使いこなす前に殺しに来て本当によかった」

 

 夏油は心底そう思っていた。

 乙骨だけではない、真希もパンダも狗巻も。

 後一年、半年、一ヶ月遅ければ・・・

 

「こちらも全霊をもって君を殺すとしよう」

 

 夏油が手を抜いていた、とはいえない。

 彼は常に本気の戦いを強いられていたし、それに応えていた。

 だが後のことも考えなければならない。

 里香を仲間にするというのはゴールではなくスタートライン。

 

 今となってはそうも言っていられない。

 里香を仲間にできなければどの道詰みであることは間違いないのだから。

 

「知っているかい?特級を冠する人間は四人、呪いだと十七体存在する。これはその内の一体」

 

 夏油の背後に凄まじい呪力を纏った呪霊が現れる。

 呪霊の頂点、十七体の別格。

 

 特級仮想怨霊“化身玉藻前”

 

 美しい黒髪に煌びやかな衣を纏った四つ目の女。

 ニヤリと歪められた口元が邪悪さを示す。

 

「更に、私が今所持している4452体の呪霊を一つにして君にぶつける」

 

 夏油は背後に数えきれない程の呪霊を召喚した。

 その数は数えきれず、千や二千ではきかないだろう。

 それら全てが渦を巻き、集まり、莫大なまでの呪力が凝縮されていく。

 

 底が見えない程高められたドス黒い呪力の塊。

 

 

──呪霊操術“極ノ番”「うずまき」

 

 

 乙骨はそれに対抗する為、里香に自らを生贄とした呪力の制限解除という最終手段を使う決断をする。

 だがその行動を止める者がいた。

 

「どうして・・・狗巻君・・・」

 

 里香へ触れようとした乙骨の手を握り、鋭く睨みつける狗巻。

 彼は自分を犠牲にして勝とうと考える乙骨が、それに甘える自分が許せなかったのだ。

 

 

──合わせろ

 

 

 その言葉によって自分がどう動くべきなのかを理解した乙骨。

 里香の口元に呪力が凝縮されていく。

 そして乙骨自身も身体強化を施し、刀へと出来る限り呪力を込めた。

 

 狗巻はそれを一瞥して二人を背に庇う。

 

 今から行うのは亜鬼と狗巻が必死に考えた彼の秘策。

 考案されてから一度も成功することはなく、不可能だと諦めた切り札。

 

 狗巻は全身の呪力を喉の一点に集中させ、常時反転術式を廻す。

 

 準備はこれだけ。

 

 そして彼は心から叫んだ!

 

 

 

──従え!

 

 

 

 

 夏油から破滅の光が放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 百鬼夜行は幕を閉じた。

 京都と東京に現れた呪霊は全て祓われ、その隙に呪詛師集団は撤退。

 

 主犯者である夏油傑は私の生徒に撃退されたところを五条先生が発見。

 その命を散らした。

 

 私には原作の知識がある。

 このままでは夏油傑の体はメロンパンに乗っ取られてしまうだろう。

 絶対に私が処理すべきだった。

 

 それでも私はあの尊い友情が溢れる関係に気安く手出しするつもりは無かったのだ。

 それに原作通りに進んでくれれば全てをハッピーエンドで終わらせることが出来るかもしれない。

 

 それまではお別れだ、夏油傑。

 

 

 

 私は高専の地下へと足を運んでいた。

 そこには死刑ではないが外に出すことは出来なかったり、死刑を待つ呪詛師を収容している場所がある。

 

 呪術界の刑は基本的に極端だ。

 頭の固い腐ったみかんな上層部は自分に害があるか、利があるかの二つで判断する。

 少しでも自分に害がある呪詛師はどんな犯罪かに関わらず死刑。

 利があるなら生かす。

 例えそれが冤罪だったり、何らか事情があっても関係ない。

 

 ほんとカスだなこいつら。

 

 そんな中、私の力で死刑を無期懲役まで抑えた呪詛師が一人だけいる。

 五条先生が虎杖悠仁の死刑執行猶予を得たのと同じことだ。

 

 高専の一番地下深く。

 真っ暗闇で地面は剥き出し。

 いくつも封印と結界の札が貼られている。

 

 そこは特に危険な者だけを収容する隔離施設。

 特級に近しい者だけが捕らえられる場所だ。

 

 現在ここに収容されているのは一人だけ

 

「調子はどう?」

「悪くねえが、酒がねえのは頂けねえな」

 

 私が声を掛けると驚くこともなく返してくる。

 近づいて来ていることなどとうに気がついていたのだろう。

 

「縛りを結んで欲しいの」

「聞かせろ」

 

 私がこんな場所まで来たのはこの縛りを結ぶ為。

 これが未来を一歩楽にする。

 

「対価は日本円で二千万、ここからの釈放」

「内容によるが・・・大抵は受けてやるぜ」

 

 その言葉を聞いて安心した。

 きっと彼はこの縛りを受けてくれる。

 

 

 

「内容は・・・」

 

 

 

 

 

「かんぱーい!」

 

 真希、パンダ、狗巻、乙骨はいつもの焼肉屋で宴会を開いていた。

 とは言ってもビールではなく烏龍茶だし、ワインではなくぶどうジュースだが。

 

「先生はまだこねえのかよ」

「なんか用があるんだってよ」

「しゃけ」

「確かに遅いね・・・」

 

 もう宴会を開いてから二十分は経っている。

 これは流石に心配になるというものだ。

 亜鬼は更にそこから五分後に到着した。

 

「ごめんごめん遅くなって!」

「遅えぞせんせー」

 

 それを笑って出迎える四人。

 無事に百鬼夜行を終えた四人を褒め称えつつも夜は更けていった。

 

 来年、遂に原作が開始する。

 出来る限りの用意はしてきたし、私一人で全員祓うことすら容易い。

 絶対にこの光景を守ってみせる。

 

 改めて決意し、今はこの時間を楽しむことに決めた。

 

 




 これにて百鬼夜行編完結!
 次からは一気に時間を飛ばそうかなと思っています。

 狗巻の切り札とはどんなものなのか?
 夏油の明日はどうなるのか?
 最後の縛りとは一体・・・

 最後まで楽しんで頂けたら嬉しいです。

 次編「原作開始編」

視点質問!

  • 原作の視点で進めて欲しい。
  • 今のままの視点で進めて欲しい。
  • それぞれ半々くらいで進めて欲しい。
  • 閑話で他視点をもっと追加してほしい。
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