読んでくれたらすっごく嬉しいな〜
毎日夜に2時間ほど執筆しますので、投稿頻度は悪くないかと。
ある町の住宅街の一角。くいあぶれた野良猫達の鳴き声が響き、中身がぶち撒けられたゴミ袋を不潔なカラスがつつく。
そんな典型的な裏路地で今、逃げ回る一匹の呪霊が居た。
◆
(くそが・・・どうしてこんなことに!)
大型犬のような形をした一級呪霊は右前足の一本を損失し、体を半ば引きずるようにしながらひたすら逃げる。
犬の呪霊は最近になって自我が確立した。暗い場所にノコノコとやってくる人間達を毎日の様に食し、つい最近になって近隣の住民の間で影のある場所に行くと影犬に食べられると噂になって恐れられた。
そのことで力も知恵も増し、狡猾に獲物を狙ってきたというのに。
その日もいつもの様に暗闇にやってくる人間を食べようと暗闇に潜伏していた時だった。
不思議な格好をした真っ白な少女がその場所にやってきた。
美しい銀髪は微量の光を反射し、白く輝いている。人間の間ではワンピースと呼ばれる黒い服を着てその上からフード付きの白い外套を纏い、そのきめ細やかな肌をうなじから肩にかけて露出させている。
だが、その脆弱そうな見た目とは裏腹に紅く輝く瞳は形容し難い威圧感を醸し出している。
少し不思議に思ったものの、犬の呪霊はまた新しい獲物が来たと考えた。
姿は見えないだろうが念には念を入れて影を介して少女の後ろに回り込む。どこからどう見ても無防備なその首に背後から噛みついてやろうと後ろ足に力を込めて一気に暗闇から飛び出した。
瞬間。
少女はいきなり後ろを振り向き、その細腕を大きく開かれた呪霊の口に噛ませた。
このまま引き千切ろうと考えた呪霊だったが、驚いたことにその腕に全く歯が通らない。まるで岩でも咥えているかの様だった。
少女は噛ませた腕を上に振り上げることで呪霊の体勢を崩し、空いた右腕を下側から抉る様に呪霊の腹にぶち当てた。
呪霊は冗談のように空に浮かび上がる。
それを追う様にして少女も跳び上がり、呪霊の顔を重点的に狙ってラッシュを叩き込んだ。
呪霊はなんとか右前足を自身の顔と少女の間に入りこませるが、その程度では止まらない。
呪霊は顔をひしゃげさせ、右前足は削られたかの様に消滅した。
だが呪霊も伊達に一級呪霊として生きてきた訳ではない。自らの術式を用いて闇を操り、計5本の闇で出来た槍を創り出して少女に向けて放った。
確実に当たるかと思われたその槍はしかし、少女に触れたかと思われた瞬間何事も無かったかのように霧散した。
唖然とする呪霊だが、もう出来ることはない。
重力に逆らうことなく両者とも地面に降り立つ。かと思われたが少女は当然の様に空を蹴って呪霊に肉薄。
大量の呪力が込められた掌底を呪霊に放った。
黒い稲妻が走り、大気が揺れる。
呪霊の体が波打ったかのように揺さぶられ、粉々に弾け飛んだ。
バラバラになった呪霊の肉片はそのまま少女の掌に吸い込まれ、跡形もなく消え去っていった。
「うん、試運転はこれでいいかな」
少女は満足そうに頷き、右足のつま先で地面をとんとんっ、と2回叩いた。
少し前の自分では考えられないほどの成長だ。さすが私!略してさすわた!天才!
とまあ自分を褒め称えたところで少しこれまでを振り返ろうと思う。
◆
時は1年ほど前に遡る。
猿型呪霊を吸収術式で削り殺した後、暴走する自我と荒れ狂う感情を必死に押さえ込みながらその場から逃げ出した。
軋む胸。決定的に何かが足りていないような、そんな不思議な感覚。
寂しいからとかじゃない。まるで半身が消失しているかのような。自分の存在があやふやで、少しづつ薄れていく感覚。
今すぐにでも胸をかきむしりたい衝動を抑え、必死に走った。
先ほどの騒ぎで、まず間違いなく呪術師がくる筈だ。今遭遇してしまっては、吸収するか大人しく祓われるかのどちらかしかない。和解が不可能になる。
3時間ほど走った結果、洞窟の様な場所を見つけたのでそこを拠点に生活していくことにした。
呪霊に食事は必要ないし、睡眠も必要ない。だから雨風を防げて修行に集中できる場所であればどこでも良かったのだ。
いや、そんなことよりも大切なことがあったというべきか。
猿型呪霊を吸収術式で倒した時から自分の呪力総量が飛躍的に増えているのを感じていた。具体的にいうと三級呪霊の下位に位置する程度の呪力量であったのが二級でも真ん中あたりの呪力量に入るのではないかというほど増えている。
感情を解放することによって解き放った呪力は感情の抑制と共に既に封印済みである。
つまりこれが吸収術式の効果。
「相手の呪力を吸収し、自分のものにする術式か・・・」
正直に言ってチートである。吸収すればするだけ強くなれるということなのだから。頑張れば最強になることも...
楽しくなってきたあああああああ!
強くなるという目的にこれほど合致したものはない。これからは吸収術式を用いて呪霊を狩りつつ、術式反転を行える様にするのが目標である。
あとできることなら呪術師を助けるというのもしておきたい。
理由は簡単である。
先生の視点から考えてみてほしい。ぽわんぽわんぽわん
ある日、あり得ないほど強い呪霊(予定)が呪術高専に来た。すごい威圧感だ!(予定)今まで確認されていなかった呪霊であり、一人でいるのが寂しいから友達を作りにきたという呪霊としてはあり得ない目的。何か裏があると考えられてもおかしくないだろう。というかそう考えられることは明白。
となると呪術高専に行く前からある程度の信頼は欲しい訳だ。
例えば、”人を助ける白い鬼”という噂はどうだろうか?
自称あいきゅうにひゃくの単純思考はここまでの未来予想図を叩き出した。完璧である。うんうん。
では行くぞ!
◆
そう決意して3日経った今、進捗を報告しようと思う。
まず、術式反転だが...ほんの少しもできる気がしない。なんのとっかかりも掴めない。
まあ高等技術だし、そんな簡単にできるはずもないか。
だが素晴らしい発見もあった。
どうやら鬼の種族特性として、体に呪力を回すことで身体能力の強化が可能になるらしい。
これは原作の呪霊達にそのような身体強化をしているシーンがなかったことからの推測だが、本能的に身体強化の仕方を理解できたからこの予想は正しいのではないだろうか?
問題が一つある。
実はこの身体強化、なかなかに難しく、結構繊細な呪力操作が必要になるのだ。
そこでうってつけの呪力操作の練習法を考えた。
「うぐぐぐぐっっっっぁぁぁあああああ!」
洞窟内に、美少女のくぐもった声が響き渡る。
ちなみに私の声だ。
軽く吸収術式の封印を外すことで、暴れ出す呪力を抑えて呪力操作を鍛え、ついでにあまりの寂しさに途中で訓練を諦める気もなくすという一石二鳥の構えだ。
デメリットは死ぬほど辛いことと、毎日あまりの寂しさに寝る時の涙が止まらないことだ。
諦めてたまるか!
絶対友達を作るんだ!
鬼のくだりは完全オリジナル!
この主人公がやってる修行、実は結構やばいです。常人がやったら普通に廃人です。