オリジナル小説の方を書くのが楽しくて・・・
合流
「急に呼び出してどうしたんだよ先生?」
順平君に関連するあれこれが終わり、遂に原作でも大きなイベントの一つである京都姉妹校交流会の日がやってきた。
本来、この時点でまだ生存している真人が侵入係、花御という特級呪霊が注意を惹きつける係だった。だが今真人は私に吸収されて存在せず、花御一体では足止めすら厳しいだろう。
つまり、原作通りの展開になる可能性は限りなく低い。
というか原作通りに来てくれれば花御を祓えるので万々歳なのだが・・・
断言しよう。
“それは無い”
羂索という男はそこまで甘く無い。間違いなく作戦を変えてくる。
それどころか今回の襲撃は行われないのでは無いかと疑っているくらいだ。
少しずつ原作の流れから外れていく。
私の知識が役に立たない様になるまでもう少しだろう。
だから今、まだ余裕のある内にどうしても解決しておきたい事があった。
呪霊陣営襲撃があまりに濃すぎて記憶から薄れている人も多いだろうが、ここでは真希ちゃんとその妹である真依ちゃんの激突がある。
私が思うに、ここが彼女ら姉妹の分水領だった。
ずっと仲が良かった二人。
例え呪術師になって、お互いに気まずくなって、言葉では大嫌いだと嘯いていても。
きっとお互いがお互いを思いやり、愛していたのだ。
だが道は拗れ合い、真依ちゃんが死ぬ時まで戻ることは無かった。
いや、もしかすると死んだ後だって拗れたままかもしれない。
そんなの悲しいよ。
哀しすぎるよ・・・
「真希ちゃん。すっごく難しい事を頼んでも良い?」
「あんだよ?何でも言えや」
明るく笑う真希ちゃんは眩しい。
きっと真依ちゃんもこの笑顔に灼かれてしまったのだろう。
「────────────。」
「・・・分かったよ」
◆
「伏黒!釘崎!」
校門前へと集まる一年生と二年生達に駆け寄る桃髪の少年。
虎杖悠仁、無事修行を終えて合流。
「おっせえんだよ!一回くらい顔見せろや!」
何やかんやでずっと心の片隅で虎杖の心配をしていた釘崎は反射的にそう叫ぶ。
だがそれが照れ隠しというのは明らかで。
「おかえり虎杖」
「おう!」
伏黒の一言で、やっと彼らの時間がもう一度回り始めたのだった。
「で、どうするよ。やっぱ予定通り虎杖を東堂にぶつけるので良いのか?」
「え、俺?」
虎杖が京都姉妹校交流会から復学してくるという情報は既に共有されていた。
だから初めから虎杖の居場所を決めてある。
「それ、何でなんすか?真希さんがやれば良いでしょ」
伏黒は思わず口にした。
だがそれは誰から見ても正論。勝敗が分からない虎杖よりは確実に勝利できる真希をぶつけた方が得策だ。
「先生の指名だ。虎杖の成長に繋がるんだとよ」
それに対して答えたのはパンダ。
どこからどうみても人間とは思えないパンダが喋った事に驚く虎杖を尻目に彼は続ける。
「それに真希にだってやることがある。当初の予定通りで良い」
パンダの言葉を最後に作戦会議は終着した。
「宿儺の器、虎杖悠仁は殺せ」
京都校の学長である楽巌寺嘉伸は生徒にそう命じる。
虎杖悠仁は人間にあらず、故に殺しても事故として処理される。トンデモ理論を展開するファンキーなおじいちゃんである。
呪術師の中では希少な“普通の感性”を持つ三輪は何食わぬ顔の裏でため息を吐いた。
呪術師とは呪霊を祓う仕事では無かったか?何故今自分は人殺しに加担しようとしているのだろう。
人殺しを当然の様に受け入れた様子の他の面々はやっぱりどこかおかしいのだと思う。
普段は優しいし、気遣いも出来るし、頼りになるのに。
恐らく彼らからすればこれは悪い事じゃないのだ。
普段から依頼される呪霊掃討と同じだという認識なんだ。
嫌だなぁ、と言ってみても意味は無い。三輪は貧乏で、二人の弟を食わせる為には働くしか選択肢が無いからだ。
東堂だけは高田ちゃんが出演する番組を見るために会議を抜け出しているが、彼は京都校でも随一の実力の持ち主なので誰も止められない。
いいなぁ。私もこんなに殺伐とした会議からは抜け出したいなぁ。
誰よりも真面目な顔で話を聴きながら三輪はひたすら愚痴を垂れ流していた。
東堂はクソほどつまらない作戦会議を抜け出した。
まずまずあのような会議を作戦会議と呼ぶ事自体が間違っている。
この交流会に無駄な物事を持ち込まれる事が何よりも不快だった。
別に虎杖悠仁を殺す事に対して何か思う訳では無い。
勝利すら危ぶまれる現状で何を悠長にしているのか・・・
あいつらの目は節穴か?
パンダ、狗巻棘、禪院真希。
前回の交流会には乙骨しか出場していなかったが、その時点でもあの三人の強さは見て取れた。
歩き方一つから伝わってくる強者の波動。
東堂が望む血肉沸き躍る闘争に相応しい。
それを前にしてあろうことか上から目線で殺しの相談など・・・
阿保にも程があるだろう。
高田ちゃんの特番が無ければあの場で暴れ回っていたかもしれん。
「東堂君!久しぶりですね」
その時、横から東堂へと掛けられる声があった。
「亜鬼か!」
東京校が誇る現代呪術界の伝説。
いまや呪術師、呪詛師限らず知らぬ者はおらず、呪霊にも関わらず彼女を侮る者はいない。
勿論東堂もその一人。
かつて二人が偶然出会した時、東堂は亜鬼に好みのタイプを問うた。
その時の彼女の輝く目。まさにそれを聞いて欲しかったんだと言わんばかりの表情!
亜鬼は約二時間も自分の娘である明希が如何に凄くて良い子で最高かを語り尽くした。彼女の好みのタイプは娘だったのだ。
東堂も初めはその意見に顔を顰めたものだ。
仕方のないことだろう。世間的に見れば異常、趣味が悪いと言い換えても良い。
だがその反応に亜鬼は溜息を吐き、底が見えない程深い愛を説いたのだ。
東堂は自分を恥じた。
彼女の愛を見ろ!
これこそ自分が目指すべきものだと。
自分は表面上しか見えていなかったのだと・・・
それから東堂は高田ちゃんの良さを外が真っ暗になるまで亜鬼に語り尽くした。
そうして二人は仲を深めた。
今では高田ちゃんの個握に二人で行く事もある程だ。
「今は会議中じゃないんですか?」
「ふんっ、あんな物は会議とは呼ばん。何の意味もないお遊戯会だ」
亜鬼は原作を思い出した。
そういえば今は虎杖君殺害作戦を練っているのだったか。
「それより今から高田ちゃんがゲスト出演する散歩番組がある。共に見ないかマイフレンド!」
「おぉ!良いですねそれ。是非ともご一緒させて下さい!」
そして合計三時間以上高田ちゃんの良さを語られた亜鬼は・・・普通にファンになっていた。
二人仲良く番組を楽しみ、良さを語り合ったとか。
◆
「それで、話って?」
京都校の引率である一級術師、庵歌姫はお茶を用意して五条に話しかけた。
二人は先輩、後輩の関係である。
「?なんでキレてんの?」
「別にキレてないけど」
「だよね。僕何もしてないし」
ちなみに五条が後輩である。
手玉にとられているのは歌姫の方だが。
「高専に呪詛師、或いは呪霊と通じている奴がいる」
少しだけお茶を嗜み、五条は本題を切り出した。
それは何やかんやで信頼している歌姫にしか相談出来ない事だった。
「有り得ない!呪詛師ならまだしも呪霊!?」
歌姫の驚きはもっともだ。
呪霊というのは基本的に意思疎通が出来ない。身近に例外がいるから忘れがちだが、基本的にまともな意思疎通が出来るのは特級でも上位に入る呪霊だけなのだ。
例えば宿儺の指を取り込んだ呪霊は特級相当だが、会話は出来ない。
「そういうレベルのが最近ゴロゴロ出てきてんだよね。本人は呪詛師と通じてるつもりかもね」
特級にも達する呪霊は狡猾だ。
人間以上のスペックを持ち、普通の人間が普通に持ち合わせる道徳のストッパーが無い。
「京都側の調査を歌姫に頼みたい」
「・・・私が内通者だったらどうすんの?」
「ないない。歌姫弱いし、そんな度胸もないでしょ」
到底後輩とは思えない舐め腐った態度にキレ散らかす歌姫だが、ふと冷静になった。
「それって・・・生徒って可能性もある?」
五条は少し言い淀む。
言うべきか、言わぬべきか。
「京都側の生徒に一人、内通者が居る事は確認している」
「え?」
五条は言う事に決めた。
この忙しい時期に隠し事をしてもしょうがない。
「メカ丸、だっけ?」
「嘘でしょ、あの子が!?」
「まぁまぁ落ち着いてよ」
五条は歌姫の驚きを飄々と躱した。
「正確には未遂さ。身柄はこっちで保護してる」
「ちょ!いつの間に?」
歌姫の驚きは止まることを知らない。
今まで全くそんなそぶりを見せなかったメカ丸が・・・
「亜鬼の手柄さ」
「あ、あぁ。まああの子ならやりかねないか」
亜鬼がやったなら納得できる。
そう断言出来てしまうところが恐ろしいところだ。
「亜鬼ちゃんが内通者っていうのは無いわけ?」
そう問われて五条はふっと笑った。
「彼女、最高に不器用だからさ。そんなこと出来やしない」
長い時間を掛けて築かれた二人の信頼関係は伊達では無い。
もはやそこに疑いが介在する余地は存在しない。
「ま!あの子にそんな小細工は必要ないさ」
そう、亜鬼は別に他人の手を借りなくても呪術師全員皆殺しにすることすら容易い。
言うなれば平安の世の両面宿儺。
亜鬼が人間の敵に回る事があれば。
それは世界の終わりを意味するのだから。
いろいろと張りました。
東堂って、多分タイプの趣味が悪いから相手を嫌うだけではないと思うんですよね。
確固たる意思を見せて欲しいんじゃないかと考えたりして。