転スラ二次小説 ~あの時間を、もう一度~   作:てな

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『前夜祭』その3

 

 ギィと別れてからシオンの演奏が始まるまでの間において俺は、それはもう大勢の人と話をした。

 ただ、会った全員を語り尽くすには時間がいくらあっても足りないため、主要な人物とやりとりだけ簡単に紹介しようと思う。

 

 まずはじめに出会ったのは、ちょうど会場に来たばかりのヒナタ達───

 というより、ルミナスを筆頭とするルベリオス・西方聖教会一行だった。

 法皇役のルイ、老執事のギュンターは当然として、枢機卿のニコラウスに、アルノーやフリッツなどの聖騎士団(クルセイダース)の上位陣も揃ってやって来ていた。

 

 ルミナスはあまり人目に付きたくないのか、認識阻害効果の付いた真っ黒なベールを被っており、俺と軽く挨拶を交わすと直ぐにルイとギュンターの二人を連れて自分の席へと行ってしまった。

 一応ルミナスは去り際に、ヒナタや聖騎士団の面々に自由行動を言い渡しており、そこからは各々自由に前夜祭を楽しむ流れとなった。

 ニコラウスさんや聖騎士団(クルセイダーズ)の皆さんは、俺とヒナタに気を利かせてなのか、他国や他勢力との交流や食事などを理由にすぐに離れて行ってしまった。

 そして残された俺とヒナタは、料理を楽しみつつ俺との他愛のない会話に花を咲かせた。

 

 まあ先に言ってしまうと、ヒナタとは大した話はしていない。

 ただ少し、ヒナタは世界会議における西方聖教会の代表の特別出席者であるため、そのことでちょっとだけ相談があったくらいだ。

 

 というのも実は、 “世界秩序守護騎士団(ナイツ・オブ・オーダー)” という、西方配備軍を再編する形で新たに創設される、国際平和維持機関の中枢、 “軍事統括委員会” の総団長にヒナタが就任することになっているのだ。

 

  “世界秩序守護騎士団(ナイツ・オブ・オーダー)” は、西方諸国評議会(カウンシル・オブ・ウエスト)に代わり、明日の世界会議にて創設されるより大きな国際共同体(インターナショナル・コミュニティ)、 “世界連合” の内部構成機関の一つであり、その “世界連合” に配備される治安維持部隊を、一元管理する役割を担っている。

 まあ、その運用形態はともかく、名称と規模が大きく変わっただけで、活動内容そのものは西方配備軍だった頃とほとんど変わりはないんだけどね。

 

 そして当のヒナタは、この総団長就任への指名に対して、当初は自分には荷が重いとあまり乗り気ではなかった。

 しかしながら、一定以上の実力と知名度という条件を満たした上で、就任が可能な候補がヒナタ以外におらず、とある事情も相まって半ば必然的にヒナタが総団長に就くことになったのだ。

 

 少しややこしいのだが、ヒナタが総団長に就任することになった背景には、ルベリオス法皇庁───つまりはルミナス教と “世界連合” の連携協定が絡んでいる。

 

 事の発端は、ルミナス教が天魔大戦終結を機に、魔国連邦(テンペスト)との一件からずっと曖昧になっていた教義を再度明確化したこと。

 そして、新たな教義として『人魔共同で平和と秩序を維持し、共に繁栄を目指す』という内容の発表に始まる。

 ルミナス教の総本山、ルベリオス法皇庁が発表したその教義は、奇しくも(・・・・) “世界連合” の創設及び、その活動目的と一致していた。

 ちょっととぼけた風に言ってみたが、俺とルミナスが裏で結託しているのだから、ぶっちゃけ偶然でも何でもないんだけど。

 

 まあそんなわけで、ルミナス教と “世界連合” は同じ目的のために、ごく自然な流れでより強固な連携を望んだ。

 そして、双方が協議を重ねた結果、ルベリオス国外での布教活動のため絶大な影響力を持つ “西方聖教会” に対して、 “世界連合” の協力機関(オブザーバー)という、各開催される議会や委員会などにおける、特別な地位と権限が付与されることになったのだ。

 

 実のところ、西方聖教会が擁する聖堂騎士団(テンプルナイツ)と、西側諸国の治安維持活動を行う西方配備軍は、都市防衛や災害救助などの面において、互いに活動の一部が被ってしまっており、それについては以前より評議会で度々問題視されていた。

 このままでは、互いに活動目的が一致しているにも関わらず、本来有益であるはずの互いの活動に干渉しあうことになってしまう。

 

 そこで、双方が協議した解決策こそが、 “世界秩序守護騎士団(ナイツ・オブ・オーダー)” の創設というわけだった。

 その “世界秩序守護騎士団(ナイツ・オブ・オーダー)” が統括する軍隊は大きく分けて二つ。

 

 一つ目は、 “守護騎士団(ガーディアンズ)” 。

 これは、聖騎士団(クルセイダーズ)を頂点とする、各国駐在の聖堂騎士団(テンプルナイツ)で組織構成されている部隊だ。

 役割としては、現状においては今までとあまり変わりはなく、戦力を必要とする国や、軍事力の乏しい地域に聖堂騎士団(テンプルナイツ)を派遣、駐屯し、都市防衛や災害救助に当たる。

 仮にもし駐屯する聖堂騎士団(テンプルナイツ)だけでは兵力が不足する事態に陥った場合には、聖騎士団(クルセイダーズ)及び、規模によっては後述する “平和維持軍” が連携して応援に出動することになっている。

 聖騎士団(クルセイダーズ)の団長は今まで通りヒナタであることに変わりはないが、有事の際には聖騎士団副団長のレナードが守護騎士団(ガーディアンズ)の指揮も合わせて代行するため、そのあたりも問題ない。

 

 そしてもう一つの部隊が、 “平和維持軍” 。

 これは、一部の軍事大国や勢力などから派遣された “独立選抜部隊” を頂点に、西方配備軍から再編成した “連合配備軍” を下部に組織構成されている部隊だ。

 こちらの場合、選抜部隊は一つにまとめられているというわけではなく、軍を派遣した国や勢力ごとに存在───つまりは、ヒナタを総団長とする “軍事統括委員会” を頂点に、各選抜部隊ごとに独立した指揮系統が存在しているのだ。

 また、部隊によっては選抜数の関係で他勢力と合同編成している場合もあるが、それぞれ選抜部隊の特色や運用方針に合わせて、連合配備軍から指名や志願によって編成された常備軍を率いる形で、 “選抜常備軍” として組織されていた。

 

 なお、常備軍という点から分かる通り、 “連合配備軍” には、 “選抜常備軍” に編成されている連合常備軍と、必要に応じて運用と派遣がされる連合予備軍の二つが存在する。

 この連合常備軍と連合予備軍の違いは、各選抜部隊の特色や運用方針に合わせた専門教育、技術指導を受けているか、そうでないかという点だ。

 どちらにおいても、工作技術、後方支援、災害救助、要人警護、都市防衛など、共通して基本的な技術指導を受けており、連合予備軍はどちらかと言えば平時における活躍が期待されているのだ。

 

 そしてこれら、 “守護騎士団(ガーディアンズ)” と “平和維持軍” に対する指揮権を持つのが、ヒナタを総団長に据えた “軍事統括委員会” だ。

  “軍事統括委員会” は、各派遣された選抜部隊から指揮能力や作戦立案能力などに長けた代表者らで構成されており、 “世界連合” の要請を受けて、全部隊の作戦運用を行うのだ。

 まあ、 “世界連合” から西方聖教会に管理が委任されている “守護騎士団(ガーディアンズ)” に関しては、実質的にヒナタが常時指揮権を保持するためともかくとして、実際に “軍事統括委員会” の指揮権が発揮される状況というのは、 “世界連合” が出動を要請した場合、もしくは “世界連合” の意思決定を待つ時間もない非常時においてのみだ。

  “平和維持軍” の管理運用にしても、 “連合予備軍” は軍事作戦でない限りは “世界連合” が直接運用と管理を行うが、 “選抜常備軍” は派遣した国家や勢力が、直接 “世界連合” と連携して管理と作戦運用を行うことになっている。

 

 これら以上が、 “世界秩序守護騎士団(ナイツ・オブ・オーダー)” の組織構成となる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 ちなみに余談ではあるが、元々 “総団長” の一番の候補だったのは、知名度とスキルで色々とごり押せそうなマサユキだった。

 当時行われた検討会議において、マサユキは出席者一同に満場一致で支持されるという、すさまじい影響力を発揮していた。

 ただ、マサユキは英雄である以前に一国の皇帝という立場にあり、しかも西側と和解したばかりの東の帝国が、実質的にではあるが国際機関の軍権を握るのは色々とマズいという意見も上がったことで、それはナシになった。

 マサユキ個人に信頼と知名度はあっても、東の帝国という西側にとっての恐怖は、未だ完全に拭えていないのだ。

 まあ、マサユキのスキルがあればでどうにでもなったとは思うが、マサユキ本人の負担を考えれば、国がらみの事情抜きにしてもナシにして良かったと思う。

 なんせ、ちょっと前まではただの高校生だったのに、気付けば異世界に転移して、あれよあれよのうちに大国の皇帝になり、そして最近になって帝国の再建が安定して軌道に乗り始め、ようやく落ち着いて統治者としての勉学に励めるようになったのだ。

 周囲からの期待に流されかけたりもしたが、俺とヴェルグリンドからの説明を受けて、周囲もきちんと納得した形で別の候補者を探すことになった。

 

 そんで、次に候補に挙がったのが、なんと我が魔国連邦(テンペスト)の外交武官、テスタロッサだった。

 候補にはなるだろうと予想していたが、まさかのマサユキに次ぐ二番手とはね。

 テスタロッサを支持するのは、主には西方諸国評議会(カウンシル・オブ・ウエスト)のレスター議長を始めとする、評議会に所属する議員らがほとんどを占めていた。

 評議会における実務面だけでなく、実際に西方配備軍を指揮していたという実績も相まったことで、ここまで高い評価を得たのだろうと予想された。

 ただテスタロッサには既に、 “世界連合” における重要な役職(ポスト)を任せることになっており、テスタロッサ本人代わって俺の方から辞退を表明しておいた。

 テスタロッサの能力を考えればこなせなくも無いが、既に魔国連邦(テンペスト)の選抜部隊には、モスの参加が決まっている。

 ここにテスタロッサも含めるとなると、それはもう過剰戦力になってしまうのだ。

 テスタロッサ自身だけでなく、その配下であるモスの評価も上々であるため、推薦者たちはそれで納得してくれた。

 

 そして最後に、三番目の候補に挙がったのがヒナタだったというわけだ。

 ヒナタが三番目なのは、その時点において聖騎士団の団長(イコール)として、 ”守護騎士団” の団長に就くことが決まっていたためだ。

 

 なお、この検討会議の後で気付いたのだが、この候補に挙がった三名にはとある共通点があった。

 それは、天魔大戦の最中にイングラシアで起きた襲撃事件を、この三人が協力して対処、撃退しているのだ。

 どおりで、三人の支持率が高い訳だ。

 

 

 そんな感じの話もしつつ、俺とヒナタはほんのわずかな一時を楽しんだ。

 まあ、今回用意したパーティの規模に、またしても呆れられてしまったが、むしろ喜んでくれているようで安心した。

 それと、ヒナタとは明日と今後のことで良い感じに意見交換もできたし、ヒナタは色々と話に感心を寄せてくれた。

 

 ヒナタとの交流は、それはもう楽しい時間だった。

 きっとその気持ちは、俺だけではないはず───と、思いたいところだが実際に聞くのはちょっと気が引ける。

 ただ、このまま色々と話が出来ればと思うが、まだ他の者との交流が残っている。

 大戦後の処理で忙しかったため、実務的な協議以外にあまり集まる機会がとれず、ここで色々と自由に交流しておきたいのだ。

 それに、ヒナタも自由に楽しみたい気持ちはあるだろうし、非常に惜しくはあるが俺とヒナタは切りの良い頃合いで交流を終えたのだった。

 

 *

 

 ヒナタと別れてからほどなく───

 俺が再び会場を練り歩いていると、不意にとある人物に声をかけられた。

 

 振り返ってみるとそこには、二人の女性が並んでいた。

 一人は淡い金髪(ブロンドヘアー)をワンサイドアップにした、一見少女にしかみえないほど小柄なピコ。

 そしてもう一人は、ピコとは対照的に背が高く、戦士というに相応しい肉体美を誇る、鮮やかな赤い長髪にやや褐色の肌をしたガラシャだった。

 親子ほどの身長差のある彼女達だが、実際には原初に同じく悠久の時を生きる、ディーノと同じ “元” 始原の七天使の堕天族(フォールン)だ。

 大戦中において、俺達と敵対していた二人だが、現在は色々あって我が国魔国連邦(テンペスト)の一員となっている。

 

 元々彼女達は、自らの意思でフェルドウェイに従っていた訳ではないらしく、ディーノと同様に乗り気ではないが何故か逆らえずにいただけなのだとか。

 そのため、フェルドウェイの支配から脱した際には、あっさりとこちら側に寝返った。

 大戦終結後には、再び人類と魔王の監視に戻るつもりだったらしいのだが、ディーノがとある決断をしたことによって従来とは異なる方法で監視を続けることになった。

 それは、世界の秩序の中心となりつつある魔国連邦(テンペスト)へと所属し、その在り方を見定めるというもの。

 ぶっちゃけディーノに言わせれば、それはあくまでも建前なのだ。

 今までどんなに頑張ってもバラバラだった世界が、一つに纏まろうと急激な変化を迎えている中、今まで通りの世界の監視を続けたとしても、もはや意味はなく、もっと別の形で世界に寄り添うべきだとディーノは考えたらしいのだ。

 

 そもそもの話、 “監視者” という存在そのものが、既に一部の者たちにはその使命ごと完全に露見してしまっており、そういった意味でも監視を続ける意味がないのだと。

 それならいっそのこと、監視ではなく直接関わっていくほうが合理的で効率的だと、ディーノはそう判断したのだそうだ。

 

 と、ここまでが、彼女たちが知っている(・・・・・・・・・・)、ディーノが魔国連邦へ所属することを決めた理由だ。

 実のところ、ディーノがその決心をした本当の理由というのは、それらとはまた別にある。

 

 その真意と経緯については俺以外には決して誰にも明かしておらず、俺とディーノだけ(・・・・・・・・)が共有する秘密だ───

 

 まあそんなわけで、ピコとガラシャはディーノと同じく、仲良く迷宮にある研究施設で働いてもらっているという訳なのだった。

 元よりピコとガラシャも、世界を監視する使命を受けていながら、不本意ながら今回の戦争ではその使命とは全くの逆のことをしてしまったわけで、実際使命の存在意義について色々と思うところがあったようだ。

 

 そのためなのか、ディーノの下した判断を聞いて、それを俺が了承した際においては、二人は少し大げさと思えるほど喜んでいた。

 その当時は、使命から解放されて自由になったことを喜んでいるのだとばかり思っていたのだが、後ほどディーノに聞けば、そうではないらしい。

 ぶっちゃけ、魔王としてあえて世界から注目され目立つようにしていたディーノよりも、人間社会に潜伏して活動する彼女達の方が自由に過ごしていたのだとか。

  

 だとすると彼女達は、一体何に対して喜んでいたのか?

 その答えは、ピコとガラシャの二人に共通する、とある趣味に関係するものだった。

 

 それは、かなり以前より異世界人によって頻繁に齎されていた異世界の文化。

 その一部である “ファッション” や “スイーツ” といった娯楽産業は、ある時を境に───魔国連邦(テンペスト)の台頭とともに急速に発展し、拡大していった。

 人間社会の文化を楽しんでいたピコとガラシャにとって、その文化が大きな発展をみせたのは、とても喜ばしいことだった。

 

 だがしかし、大戦以前においてピコとガラシャは、自分たちの正体が露見することを危惧して魔国連邦(テンペスト)に訪れることが出来なかったのだ。

 そもそも、当時ディーノが魔国連邦(テンペスト)に移り住んだのも、魔王として面識があることを逆手に取った、本当に意味のある潜入活動であったためだ。

 それゆえに、魔国産の多様で、斬新で、最先端なスイーツやファッションといったものは、商人によって流通する一部もの、国外に出店する店舗で販売されるものしか手に入れることしかできなかった。

 

 つまり、その娯楽と文化の中心になりつつある魔国連邦(テンペスト)に所属できるということは、それすなわちファッションやスイーツをこれからは堂々と楽しむことが出来るということだ。

 魔国連邦(テンペスト)への移住を、ピコとガラシャが何よりも喜んだ理由がこれだった。

 

 今日の前夜祭に参加している二人の見事なドレス姿を見れば、どれだけファッションに通じているのかが良くわかるというもの。

 偶然通りがかった俺に声を掛けたのも、着てきたドレスを見せたかったからのようだった。

 実際、本当によく似合っている。

 

 ちなみに、一緒に来ているはずのディーノだが、この場には居なかった。

 案の定、ヴェルドラやらラミリスやらの手伝いにたいへん酷使されたようで、一応会場に来てはいるらしいが、色々と疲れたからと自分の席で休んでいるのだとか。

 なぜディーノが酷使されているのかと言えば、天魔大戦の一件もあって、ラミリスがディーノに対して非常にお冠だったからだ。

 もっと詳しく言えば、ディーノがラミリスに許してもらうために、 “出来る限り何でもする” なんて口走ったのが原因だ。

 そんな感じで、ディーノがいつになく真剣な態度だったこともあり、流石のラミリスも謝罪を受け入れ和解となった。

 

 実際のところ、元よりラミリスはディーノの事情についてあらかじめ俺から聞いていたので、当時本当に怒っていたわけではなかったのだが。

 ただ単にラミリスが、その見事としか言えない名演技でディーノを策に貶めただけの話。そして、未だにディーノ本人は、ラミリスが本気で怒っていたものと勘違いしているのだ。

 思い出す度にディーノが不憫に思えてならないけど、ディーノ本人はなんだかんだで今を楽しんでいるようだし、まあ本人が良いなら良しとすることにしよう。

 もし本当に何か不満があったのなら、最初から俺に言ってくるだろうし。

 

 以上が、ディーノ、ピコ、ガラシャの現状のあらましだ。

 

 とりあえず彼女達とは、ヒナタとの交流以上に大した事を話していないため、交流内容については割愛させてもらうとしよう。

 ただ少し気になったことが一つあって、どうやら彼女達もヴェルドラの出店に何かしら協力しているのだとか。

 詳しくは教えてくれなかったが、スイーツ系の何かを作るらしい。

 これで祭典の楽しみがまた一つ増えたことになり、それを教えてくれたピコとガラシャに会えたのは、ほんとうに運が良かった。

 

 

 さてさて、ここまで結構語った感じがするんだけど──────実際に語った者たちの数はたった二組だけだった。

 あれれ? おかしいぞ?

 簡単に語ると言っておきながら、出会った者たちの現状を語るばっかりで、本筋が全然語れていない。

 しょうがないから、ここからは本当に簡単な紹介だけにして、残りは後日紹介するとしよう。

 

 それでは、どんどん紹介していこう。

 

 ピコ、ガラシャの二人と別れた俺が出会ったのは、サリオンの天帝たるエルメシア皇帝こと、エルさんだ。

 もちろんエルさん以外にも大勢来ており、エラルド公爵やエレンも一緒に来ていた。

 彼らに限らず、大国であるサリオンからは、帝国に次いでかなり大勢の人が参加している。

 肝心のエルさんとの交流だが、裏組織である三賢酔のことも、俺とエルさん、そしてミョルマイルくんが絡む二つの表組織に関しても、既に事前に協議済み。

 そのため、軽く挨拶を交わしただけで、それぞれすぐに別れることになった。

 

 そうして次に出会ったのが、ユウキとカガリ、あとはラプラスにティアの4人だ。

 大戦でにおいては、主にユウキとひと悶着あったが、現状ではとある計画を共同に進める、いわゆる “同胞” と呼べる関係になっている。

 その計画というのは、いちおう “三賢酔” と同様に一般に明かせる類いのものではないので、当然この場で語ることはない。

 そういう訳で、俺はユウキと計画の成功を祈って軽く挨拶を交わすと、特に深い交流もなく別れたのだった。

 

 次に出会ったのは、ミリム一行だった。

 前夜祭には、カリオンやフレイさん、ミッドレイにオベーラといった、いわゆるミリム四天王も参加しており、さらには “三獣士” や “双翼” 、あとはヘルメスなども一緒であり、主要なメンバーはほぼ全員参加しているようだった。

 ただし、肝心のミリムはいない。

 揃っているメンバーからミリム一行だと判断したが、どこをどう見てもミリムが見当たらなかった。

 彼らに聞けば、どうやら会場に来て早々に、ちょうどカウンター席で料理を楽しんでいたらしいヴェルドラとギィの一行を見つけたらしく、そこでガイアを連れて一緒に料理を楽しんでいるのだと。

 つまりは、ドーナツ状の会場ゆえに、俺とミリムは運悪く出会えなかったということだ。

 まあ、ヴェルドラやギィとなら問題ないだろうし、話すのはまた後で会った時でもいいだろう。

 そんなわけで、俺はミリム一行の者達に挨拶を済ませ、その場を後にしたのだった。

 

 次に出会った者の紹介に移りたいが、残念ながら次が最後の紹介になりそうだ。

 一応、俺が交流した者たちはまだ大勢いるのだが、そろそろシオンたちの演奏会が始まりそうなのだ。

 これ以降の者たちに関しては、後日改めて、ここまで語った者達の細かな出来事も合わせて、ゆっくりと語ることにする。

 

 そして最後に紹介する者達というのは、フェルドウェイとザラリオの二人についてだ。

 

 大戦中、自身の敗北を悟って戦況の折をみて降伏したザラリオはともかく、ヴェルダナーヴァ復活に最後まで心血を尽くしていたフェルドウェイの説得は、言うまでも無くとても大変だった。

 ただまあ、フェルドウェイが敗北を受け入れた後も色々と大変だった。

 

 フェルドウェイは何故か、俺のことをヴェルダナーヴァの生まれ変わりだと思っているようなのだ。

 俺の前世は普通の人間だし、竜種であるヴェルダナーヴァなら、たとえ別人格だとしてもその記憶を有しているはずなのだ。

 そのように否定したのだが、それでもフェルドウェイは納得いかない様子だった。

 するとフェルドウェイは、何の脈絡も無く究極能力(アルティメットスキル)誓約之王(ウリエル)』の行方について尋ねてきた。

 それで納得してくれるならと、獲得からヴェルグリンドに譲渡したことまで、きっちり話したわけだが。

 その答えを聞いたフェルドウェイは、何やら合点がいったとばかりに納得した素振りをみせ、突然強い尊敬や忠誠に満ちた態度に変わったと思えば、フェルドウェイは自分の過ちを俺の下で償わせてほしいの申し出たのだ。

 俺にはもう訳が分からなかったが、こういうパターンはアダルマンやディアブロで慣れているため、他に害が出ないうちは放置することにした。

 

 降伏した二人は、大戦終結後に魔国連邦(テンペスト)で預かり保護観察となった後に、正式に我が国に所属することになった。

 そして彼らには、天星宮の直接管理や、未だ異界に残る脅威への対処、かつて侵略した世界の解放と復興を任せることにした。

 ちなみに、残った天使軍や妖魔族たちもフェルドウェイらの指揮の下、復興事業に携わっていた。

 

 そうしてこの場に来てくれているということは、フェルドウェイやザラリオも、今まで異界に残され、触れてこなかったこちらの世界というのを色々と実感し始めているのだろう。

 幸いなことに、フェルドウェイとザラリオが天魔大戦で敵側だったことを知る者は一般には限られており、こうした表舞台でも活動できるのは非常に僥倖だった。

 そんなわけで、彼らの罪が消えたわけではないが、これからは共に平和と繁栄を築く仲間の一員となったのである。

 

 あ、交流に関しては、色々と思いの丈を聞いたくらいだ。

 内容的には、異界の出来事や創世の思い出など、彼ら始原を知るうえで、非常に重要な情報だった。

 

 ただ少し、二人の話を聞いていると無性に懐かしい気持ちを感じたのだが、それはたぶん気のせいだろう。

 おそらく、彼らの鮮やかで楽しく、賑やかな思い出に感化されたからに違いない──────

 

 

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