少女の少女による少女の為だけの術式。 作:再診@ぼちぼち書きます。
小学生迄は、私は普通だったと思う。
社会的に普通だとか、多数決による抑制の普通だとか、そんな難しく回りくどい表現も思いつく気さえ起きなかった、純粋なる無邪気な普通を手にしていた。
中学生に成り始めた時、私の何かが変わった。私に親友と呼べる友人がいたとして、それに分かりやすく伝えるとするなら…………何の変哲もない、誰もが道を譲ってくれるだろうと思いながら交差していく、人が横へと四人並べば埋まってしまう狭い道。
前からは歩行者、後ろからは自転者、何方かが譲らないとぎこちない行き来か、事故へと繋がってしまう瞬間…………私は確か、譲る側の人間だったのに、譲らない側の人間になった。
…………訳分かんないなぁ、そりゃぁ実際に話しているんじゃないし、哲学みたいな変な説明になっちゃうのも分かるけれど…………分かんないなぁ。
私を愛してくれる両親、私を気遣ってくれる友人、心地好く流れて行く日々。
文句は無いけれど、一言言うなら、私は──。
乾いている、気がする。
何が?
昼休み、両親の手作り弁当を食べ終え、次の授業が始まるのは15分後。賑やかな教室、窓際の片隅で両手で広げた本に、目を向けている。
今の私は、あっという間に高校生だ。杉沢第三高校に通っていて、理由は近かったからだ。
成績は全国的に見て、上から数える方が近いけど、優しい両親は私の適当な理由を優しく受け止め、【心身】の好きにやりなさいと言ってくれた。
放任と言えばそれ迄だけど、私がその言葉に救われたのだから、それで良い。
古い、古ーい、昔から続いている一族なのかも…………と、首を傾げて言われたので、私も傾げるしかなかった。
名前の由来は、他人の心と身体に寄り添う人間になって欲しいと、暖かで素敵な気持ちが込められている、私なんかには勿体無い名前だ。
………………そんな両親に申し訳ないんだけど、中学生の頃から自分の心の中で、誰かに語り掛けるのが、癖になっている。
な、なんというか…………寂しい、哀しい? 1人が好き的な…………?
いやいやいやいや!! 友達は居るし、今まで両親から受け継いだ顔と身体のおかげで、何人かに、何十人に告白された事もあるし!!
それもこれもあれもそれも、両親の…………おかげ…………か…………。
「語り得ぬものについては、沈黙しなければならない」
っ!? またやっちゃった!! 趣味から生まれた悪い癖を〜〜!!
私の趣味は、哲学本を読むこと。
そして悪い癖は、無意識にその哲学の一部を声に出してしまうこと。
幸い、誰にも聞こえない小さな声だから、気付かれた事は無いんだけど……これが何時しか大声になったらと思うと、不安でいっぱいになってしまう。
それでも趣味は止められない、癖も止まらない。止めようとすると、止まらなくなってしまうのが人間なのだ…………とっ!! 哲学みたいな事を考えてしまうのも癖!!
感情を上から下へと揺さぶるように、展開していく私だが、それを表には出していない為、周りに怪しまれずに済んでいる。
ワアアアアア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!!!
悲鳴と歓声が混ざり込んだ音が、外から聞こえた。
本に夢中で気付くのが遅れたけれど、随分前から何やら騒がしかったみたいだ。
外に居る人の中で、目立つのは、筋肉ムキムキの先生と虎杖悠仁。
………………人に当たれば即死してしまうであろう砲丸が、サッカーゴールの近くに落ちていて、四角形のゴールの隅っこ一つが酷く歪んでいる。
何方が遠くに飛ばせれられるのか、比べ合いをしていたのだろうか? 貴重な昼休みに、そんな事をやりたかったからする訳が無く、何か個人的な理由を賭けとして使っていたかもしれない。
というか………………え、あそこからあそこまで砲丸投げたの? オリンピックで砲丸投げを見た事あるけど…………あれ、世界取れるんじゃない?
筋肉ムキムキの先生が分かりやすく唖然とした態度を見せ続けている。
見た目で行くならば、この先生がより遠くへ飛ばしそうなのに…………人は見た目によらないを、物理的に行く人って珍しいよね。
虎杖悠仁って、珍しいよね。
学校で一番人気者では無いのに、いつの間にか皆は惹かれていて、楽しそうに噂話をして、そこに悪気なんか欠けらも無いくらいに、それ程までに純粋な優しさを持っているかのような…………なーんか…………。
人間らしくな──。
「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」
うわっどぉっ!? 心の声の途中で呟いちゃうの!? 本当に見境無し、意識的に音沙汰無し過ぎるんじゃないかな〜〜〜!! も──ー!!!!
何か考えすぎてる気がするし、もっとこう単純且つ明確的な、お馬鹿的な、感じで行くべきだと思う!!
虎杖悠仁が優しい!! うん、これで済む話だよ!!
…………………………そういえば、なーんか、変な感じがした気がしなくもなくも…………ない?