少女の少女による少女の為だけの術式。   作:再診@ぼちぼち書きます。

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「変化」以外に永久なものはない

「漸く、理解出来た……君に向けていたのは憧れじゃない、果てた呆れだ」

 

「…………何で? 何でそんなこと言うの? 今まで抱き締めてたのに、こんな時に突き放すだなんて酷いじゃない!!」

 

「酷いのは君に過ぎるんだ、良いかい? 君は」

 

「お、ま、え、は」

 

 

 傀儡に操られる、傀儡何だよ。

 

 

 

 

 

 

「っ、う、う──ん?」

 

 目が覚めた、と、認識するのを忘れてしまう程に、自分が眠っていた事を理解出来ない程に、私は熟睡していたみたいだ。

 

 顔を押し付けていた机には、栞を挟まずに閉じられてしまった可哀想な哲学本………………じゃっ!! な────ーいっ!!!!! 

 

 意識的には暫くして、授業が全て終わった放課後の後、心地好い風に誘われて眠りについてしまった事実を思い出す、そしてとことんに焦り尽くす。

 

 今何時!? 9時!? 門限は無いけど両親は心配してる!! メッセージと着信の数がそれを語っている!! 

 

 もー!! 何でクラスの人達起こしてくれなかったの? 気持ち良く寝てるんだからそのままにしておいてあげなよ理論かな!? 要らないよ、今の心臓の高鳴りと全然見合ってないよ!! 

 

 何て他人のせいにしてる場合じゃない、無駄に頭だけを回している場合でもない、帰ろ帰ろ、今すぐ家に帰ろ!!!! 

 

 

 閉じられた本を手に取り、ぶら下げていたカバンの中へと無理矢理げに押し込むと同時に、踏み出した片足を勢い良く弾ませるという、帰るという選択肢だけに配慮した完璧と言うにも相応しいかもしれない行動パターンで教室から出る。

 

 キャアアアアア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!! 

 

 と、聞こえて来た悲鳴、その悲鳴を出した女は直ぐ近くに居たのだが、明らかに可笑しい状況に対して戸惑っているように見える。

 

 眼鏡をかけた女には、変な部活動をしている先輩としか分からないが、それ以上に、身体が何かに掴まれている様を見せているのに、そこには何も居ないという自分の目には見えない何かが存在しているような、非現実的な錯覚を見ている気分に陥る。

 

 …………どういうこと? 幽霊? ドッキリ? マジック? でもあんな迫真の演技を出来るとは思えないし…………と、とにかく助けないと…………あ、あれ? 身体が動きにくい? な、何? 恐怖で固まっていると言うよりも……これは──。

 

「出ろ!! 玉犬!!」

 

 力強く響いた声は、黒い服装に身を包んだ私の知らない男。

 

 何かを出した、厨二病と言うにはやはり迫真過ぎると思うけれど、何かが出たはずの位置に視線を向けても、何も見えない。

 

 な、なになに? 自分が完全に置いてかれている感覚…………こ、こういう時ってどうすれば、…………えっと、とにかく私は帰らないと? 

 

 グルグルと頭が回転し、結局は帰るという簡単な答えを求めているのだが、何かに押さえ付けられるように動けない、自分の近くにも見えない何かが居て、自分を抑えているのだろうか? 

 

 ……………………あっ。

 

 虎杖悠仁だ。

 

 拳を握り締めている、殴ろうとしている、立ち向かおうとしている。

 

 戸惑いが支配していた筈なのに、感動に近い感情が迸っていく。

 

 どういう事なんだろう? 虎杖悠仁は、何か私にとっての特別なんだろうか? 

 

 先ず最初、先輩や黒服に身を包んだ男には困惑、戸惑い、否定的な感情を向けたのに、虎杖悠仁に関しては肯定の感情が向く…………向いてしまう? 

 

 やっぱり、違和感だ。何かがどうしても、確かに可笑しいよ。

 

 大事な事を、気付くべきことを忘れているような気がする。

 

 だけどそれを、このまま永遠に忘れたままでいるような気もする。

 

 

「吟味されざる生に生きる価値なし」

 

 ………………ここでっ!? 私って、頭がショートすると哲学を口に出しちゃうんじゃないかな……。

 

 因みにソクラテスの哲学です、だなんて誰に語っているのか、いい加減に今起こっている非現実に向き合えと自分に言い絞めたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………うーん、どうしようかな? これはこれは…………厄介過ぎないか?」

 

 ある男に、冷や汗が落ちる。

 

 自分に最強を言い聞かせていた男、親友の真似をしたのに、その親友は自分の真似をしようとして死んだ。

 

 そこから自分は、全てが軽々しく思えていたはずだ…………。

 

 強過ぎる特別な目を隠していた、黒い布をズラす。

 

 まだ自分が立ち向かおうとするかもしれない相手に、出会っていないのに、恐ろしさを超えた、自然的な狂気に怯えてしまったのだ。

 

 五条悟が、最強が、だ。

 

「取り敢えず、何も考えず、流されるがままにするべきなのかな…………いやいや、いっその事、ここから存在ごと…………考えても仕方が無いよね、行こうっ」

 

 最強は、強過ぎるが余りに余裕が有る。

 

 然し、余裕が通用しない何かが現れてしまった。

 

 こうなる筈だったと頭に叩き込まれ、実際にその通りへと進むんだと、頭にただひたすらに、現実が恐れ踊ろしく、肯定されていく。

 

 その何かが持っている力は、純粋で、交差せず、独立を否定し続ける。

 

 術式、何て、領域展開、何て、片手間の力に収まるはずがない、最早概念を想像し続ける力だ。

 

 現に、五条悟のすぐ横で、耳元に綺麗な歯を向けながら声を当てている。

 

「助けてあげようか? 助けてあげるよ? 頼ってよ? ねぇ、頼ろーよ? 助けてあげるよ? 頼ってよ? ねぇ、頼ろーよ? 助けてあげるよ? 頼ってよ? ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ────────!!!!!!」

 

「嫌だね、僕はまだ地獄に渡る気は無いよ」

 

 清純な、化け物の声だ。

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