少女の少女による少女の為だけの術式。   作:再診@ぼちぼち書きます。

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死に至る病とは、絶望のことである。

「不愉快だ、失せろ」

 

「宿儺、そんなこと言わないでよ、そんなこと言うなら私をゴミとして無限に切り刻んでよ、ねぇ」

 

「いい加減にしろ俗物、永遠に凍らせてやろうか」

 

「裏梅、無駄な事をするでない、コイツは森羅万象に観賞、鑑賞、干渉する事が出来る力を持っている」

 

「っ……それは、宿儺様よりも…………つ──」

 

「馬鹿を申すな、代わりにお前を切り刻みたくなるぞ」

 

「も、申し訳ございません!!」

 

「物理ではなく、概念だ、コイツは初めから全てを知り、全てを掴み、全てを離している、故に関わりを持とうとしてこようが、構わなければ良いのだ、無論、途端に殺しては来るが、並行世界の過去と未来を潰して繋げ、瞬に元の状態へと甦らせて来る」

 

「…………それでは、この俗物は、何の為に…………」

 

「死に至る病とは、絶望のことである」

 

「……ケハヒハハッ!! ケヒヒヒッ!!」

 

「……宿儺様……?」

 

「何の為にでも有るまい、ただこやつは──ー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………声が聞こえてる? 視界が霞んで良く分からないけど、大きな音が耳とその中の鼓膜に響いて来て、振動が……存在を証明してくれてるみたいな感じで、心地好くて……あれ、私って確か…………。

 

「帰らないとっ!!!!!!」

 

「うおっ!? びっっくりしたぁ!!」

 

「へっ!? あっ、あっ、虎杖悠仁!?」

 

「……真正面からフルネームで呼ばれるのは、今日で2回目だな」

 

「えっ、ご、ごめんなさい」

 

「あぁ、いやいや!! 全然謝らなくて良い──」

 

 聞こえていたのは音ではなかった、振動でもなかった、得体の知れないものが迫り続けているという衝撃だ。

 

 黒服の男が後退し、何かに掴まれ浮いていた眼鏡の先輩は、私と虎杖悠仁の後ろで、苦しそうな顔をしながら寝ている。

 

 全く今日は、何度不意に意識を失ってしまう日なのだろうかと、動くからの帰るという思考のみが働き、動作には繋げられなかった少し前の自分に嫌気が指しながら、好印象を抱くしかない虎杖悠仁に対して遠慮がちな態度を見せるが、不幸な状況は、私を待とうとはしない。

 

「何をやってる!! 早くその2人を避難させろ!! というかお前も逃げろ!!」

 

「あぁ〜〜!! そうだった、そうだった!! 伏黒、一旦頼んだぞ!! 避難させたら戻ってくるからな!!」

 

「だから戻って来なくていい!! 足手まとい──」

 

 黒服の男、伏黒と呼ばれた男の後ろを、確かに何かが通り抜け、確実に私達の方向へと向かって来るのを感じた…………が、虎杖悠仁はその迫ってくる何かよりも圧倒的な速さで、逃げるという動作を始めた。

 

 速い、速い、速い、とてつもなく速い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 体感速度と言うには速すぎる、実際にその速度が出ていると錯覚してしまいそうな、純粋で綺麗な速さだ。

 

 しかも、私達を持ちながら、合わせて自分の体重以上あるはずの私達を持ちながら、速度を落とすことなく維持し続ける。

 

 人間じゃない。

 

 ……………………そうだ、何で分からなかったんだろう? 何で気付けないという意識が、当然の様に持続していたんだろう? 

 

 

 悪い人でも、良い人でも、どんな人でも、100%に限りなく近い受け答えが出来て…………ありとあらゆる身体機能に、運動神経が鋭く働いていて………………誰からも本気で嫌われず、誰からも本気で好かれてしまう。

 

 そんな人間、居る筈が、居る訳が無いじゃないか。

 

 居なかったじゃないか、今までも、これからも…………。

 

 

 

 

 

 

 

 死に、至る、病、とは、絶望、の、こと? で、である、る…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「取り敢えず、此処まで来たら安心だろ、悪いけどこの人を家まで送って貰えねぇ? はいこれ地図、読みにくいけど」

 

 確かに読みにくい、数秒で書いたものだからそれは仕方無いけれど、このまま私達は何かに関わること無く、家に帰る事は出来る…………けど。

 

「い、虎杖悠仁…………ほ、本当に戻っちゃうの?」

 

「ん、おう、1人で戦わせたくないからな…………というか、何でフルネーム呼び?」

 

「あ、いやその、話した事ないし、それでも周りでは注目されてる人気者的な感じだから…………尊敬、みたいな?」

 

「あはは、何だよそれ、それを言っちゃ黜鉦さんも美人、可愛いって男子から注目の的だぜ? あと名字が難し過ぎる、絶対何も見ずに書けないとか……」

 

「…………ぷっ、ははははは…………」

 

「ははははは………………んじゃ、また明日学校で」

 

「……うん、また明日」

 

 笑顔を見せて、背を向けて、虎杖悠仁は自分の命を気にせずに、他人を助けに行った。

 

 良いな、と思う。

 

 嬉しいな、と感じる。

 

 寂しいな、と感じる。

 

 また明日と言っても、必ず来る訳じゃないのに、その言葉を聞くだけでやっぱり心が、満たされている感じがする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 頼ってよ? 

 

 頼ってよ? ねぇ、頼ってよ? 

 

「頼ってよ? 頼ってよ? 頼ってよ? ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、頼ろーよ? 助けてあげるよ? 頼ってよ? 頼ってよ? 頼ってよ? ねぇ、頼ってよ? ねぇ、頼ってよ? ねぇ、頼ってよ? ねぇ、頼ってよ? ねぇ、頼ってよ? 頼ってよ? ねぇ、頼ってよ? ねぇ、ねぇ、頼ってよ? 頼ってよ? 頼ってよ? ねぇ、ねぇ、頼ってよ? 頼ってよ? 頼っ──」

 

「煩い、今良い所なんだから後にして」

 

 私は、私の声を遮る。

 

「あっ、やっと構ってくれた〜〜寂しかったんだよ〜〜色んな所に叫び散らかしてたんだよ〜〜」

 

「相変わらず悪趣味な私」

 

「相も変わらず救われない私」

 

「どうするの〜? 今は、こうするの〜〜?」

 

「いや、そろそろ気付いてないフリも飽きたかも…………仲良くなりに行こっか」

 

「良いね、良いね、頼られるのならなんでもいいね〜〜」

 

 私と私は、常日頃永遠に同時に交わっている。

 

 今の私は、虎杖悠仁の仲良くなりたいから、そうなる様にしてしまおう。

 

 

 ずっと見えていた、聞こえていた何かの私と私の身体を合わせれば、暗闇よりも暗く、沈む混む様に虎杖悠仁が向かうと決まっている場所へと、飛んだ。

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