斎賀玲生誕祭
楽玲
大学生ごろ
何でも許せる人向け

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贈り物ワンダリング

乱数の女神とはくそである。

あいつ、後少しって所で働きはじめるんだよ。妖怪一足りないは、あのくそ女神の別側面っていうことは世界一有名な事実だ。

この妖怪一足りないもすさまじく害悪だ。

足りないのは一だけなんだ。俺だって、五足りないとかだったら「出直してきますね^^」って爽やかに打ち切れるのに、足りないのは一だけだから「もうちょいで見つかるだろ」とか考えて、結局夜が明けるなんてことは数えきれない。

前置きが長くなったが、つまり。

 

「人生経験が足りねえ……」

 

一だけじゃなくてそれはもう相当に。

桜の花がちらほら咲き始めた頃。俺は、玲さんの誕生日プレゼントという難問に頭を悩ませていた。

にしても、そこのウグイス鳴き方が下手すぎる。俺の方が絶対上手い。

 

「それで、うんうん唸ってたんだ」

「唸ってたか俺」

「うん、こっちの集中が削がれる程度には」

 

マジかあ。

妹の瑠美は、読みかけの雑誌に栞を挟んで俺の方を向き直る。

 

「で、決まったの?」

「決まってたら、こんなに唸ってねえんだよなあ」

「まあ、そうだよね。 だって、中学の時から合わせたら、七回目だもんね玲さんの誕生日」

 

そりゃ、レパートリーも無くなってくるね。

瑠美はなにやらこちらに同情的だが、俺はそっと目をそらした。

 

「そのリアクション…………まさか、お兄ちゃん」

 

ロートーンボイス。

 

「今まで一度も、玲さんの誕生日、祝ったことないなんて、そんな馬鹿なことないよね……?」

「ソノマサカデスハイ……」

「サイテー!」

 

面目次第もございません。

 

「それで、瑠美なら何がほしい?」

 

参考までに。

 

「私じゃ意味ないと思うなあ。 だって、私と玲さんは別の人間だもん」

「そりゃそうだよな」

「まあでも、玲さんなら、お兄ちゃんをあげれば良いと思うよ」

 

何をいってやがるんですか、妹よ。

 

サンプル例2。

よくよく考えれば、俺の妹よりも玲さんに近しい人に尋ねる方が良いに決まっている。

 

「それで、私の方に来たと」

「察しが良くて助かります」

 

サイガ100こと、玲さんの姉である斎賀百を召喚した。

ペンシルゴン経由って言うことがとんでもなく恐ろしいんだが、背に腹はかえられない。

 

「玲が欲しがるもの…………」

 

恋人のお姉さんは、頭を抱え始めた。

そんなに悩むことあるのか。

いや、現にプレゼントを決定できていない俺がいるわけなんだけど。

 

「このままではまるで仙姉さんのように……いや、でも他に思い付くものが……」

「あの?」

「ああ、いや、なんでもない。 玲が欲しがるものだな。 正直、君から貰ったものは何でも喜ぶと思うんだが」

 

一番喜ぶものは確実に、とサイガ100は前置きをし、

 

「君が身体にリボンを巻き付けて」

「あ、もういいです、はい」

 

恋人の親族、お前もか。

 

結局のところ、自分で決めなければならないということだろう。そりゃそうか。

 

「つーことで、何か良いゲーム入ってませんか」

 

べつに、現実逃避しているわけではない。

ほら、頭が混乱してきた時は違うことをして気分転換することで、新しいアイデアが沸き上がることもあるって、親戚の数学ガチ勢が言ってた。

 

「良いゲーム入ってるわよ」

「マジですか…………ラブクロ……2……………え、2出たんですかマジで!?」

「新エンジン搭載よ。 攻略対象が五人も増えていたわ」

 

えー、それ要するにピザる確率も十倍ってだけなんじゃ。やらなきゃ…………やりたくねえな……。

 

「で、それは置いといて、玲ちゃんのプレゼントはどうするつもりなのかしら」

「うっ」

 

あっさりと、現実に引き戻されてしまった。

 

「色々と考えてはいるんですけど」

「悩みなさい悩みなさい。 さんざん悩んだ方がシナリオ的には美味しくなるから」

 

シナリオって何なんですかね。

それに、と岩巻さんはどこか優しい目で見つめてくる。

 

「玲ちゃんも、さんざん、それはもうさんっざんっ! 色々と悩んでいたんだから、楽郎君も悩んで悩み抜きなさい。 絶対、あの娘が楽郎君が悩み抜いたプレゼントで喜ばないはずがないんだから」

「…………うっす」

 

 

ここにプレゼントがある。

俺はそれを前にして唸っていた。

 

「まーた、唸ってる」

「ああ、瑠美か。 おかえり」

「ただいま。 今度はどうしたの?」

「玲さんに、どうやってこれを渡そうかと」

「普通にデート誘って、そん時に渡せば」

 

それはそうなんだけど。

 

「指がなんか震えるんだよ」

「へたれ」

 

まったくもってその通りです。

 

ポーン、と電子音が響く。

玲はいそいそと、画面を操作する。予想通り、送り主は彼で。

 

『来週の月曜日、時間ある?』

 

彼からのメッセージ。

玲は手早く返信を済ませて、バフンとベッドに倒れ込んだ。嘘である。倒れ込むまでの間に、キャーキャーと内心だけで悲鳴を上げて、ベッドでもゴロゴロゴロゴロー!と動き回っている。

だって。

来週の月曜日は。

 

(四月四日、です)

 

楽郎君、期待しても。

 

「良いですよね」

 

ぷわりと言葉が溢れて、あまくあまく弾けた。

 


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