シンレ館での試練(というか殺し合い)を乗り越えた焔斗。商業街ミカルコに魔界から来たアイドルがいる、という情報をしゃろんから得て出発した。そして到着し
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「みんな〜!今日はライブ来てくれて、あっりがとね〜!」
「次のライブもおたのしみに〜!」
ㅤ結果論から言うと、ミカルコにで二人を探さなければならない、なんてことは無かった。ちょうどライブ中で、めちゃくちゃ目立っていたからだ。流石に、ライブを邪魔してまで声をかけるほど焔斗はアホでは無いので、途中からだったがライブを観ていた。だが問題があった。
(人気あるだろうなとは思ったけどこれはありすぎるでしょ……。声掛けれんの?無理くね?)
ㅤそう、めちゃくちゃ人気があり、おびただしい観客に、ステージ付近には恐らく警備の衛兵。めっちゃ厳重だった。しかし、そんな心配は不要だった。魔界の人物である以上、魔力は高いし、感知能力もある。そんな彼女達が、異様な魔力を纏う焔斗に気づかないはずもなく、向こうから興味を示してくれたからだ。
「さて……どうしたもんかな……。」
ㅤ途中で焼き鳥のような何かを買って食べ歩きをしながら、焔斗は考える。あの二人にどうやって話しかけるべきなのか。
(それにしてもうめぇなこれ……)
ㅤ何故かは分からないが、この世界には前の世界と似たような料理が沢山ある。さすがに完全に同じとまでは言わないが、味の特徴などよく似ているのだ。例えばこの焼き鳥っぽい何か。炭火で焼いたのだろうか、炭火焼ならではの美味さを感じることが出来た。肉は驚く程にジューシーである。歯を使わずとも食える、とまでは言わないが、噛めば噛むほど味が出てきて美味しいのだ。ついているタレも、程よい甘辛さで食欲をそそり、何本でも食えると思える一品だった。塩の方も絶妙な塩加減が最高だ。この世界の食事が、全部こんな感じなのであれば、焔斗は妹と再会したあと食いすぎて太るかもしれない、と少し不安になるのであった。
「あ、やべ、ここ来るとこ間違えてね?」
ㅤ気づくと人通りの少ない道に来てしまっていた。彼女達に会いたいのなら、恐らくこのまま進んでも意味がないだろう。引き返そう、と焔斗が振り返り歩こうとした次の瞬間。右からピンク色の影が飛んできて、焔斗諸共路地裏に吹き飛ばした。
「かはっ!?」
「捕まえたーーーーー!あなた何者!何しに来たの?」
「んな、あんたは……!」
ㅤピンク髪のロングにパッチリとした緑がかった目。スタイルは抜群で、大体の男なら絶対に目を奪われるだろう。服装はピンクのアイドル衣装。そう、この街でライブしていたアイドルの1人である。名前は来羅(ライラ)。
「君の魔力はおかしい……。私たちを狙ってるなら、白状しなさい!」
ㅤ紫髪のロングにキリッとした少しピンクがかった目。すらっとしたスタイル。服装はピンクのアイドル衣装で、やけに太腿の露出が多い。名前は闇華(ヤミカ)。
「い、いや、俺はたしかに君達に用はあったけど、そんな物騒なことは考えてないって!魔界のむぐっ!?」
ㅤ魔界のことを知りたいだけ、と言おうとした焔斗の口が来羅によって塞がれた。よくよく考えれば今は来羅に抑え込まれてる状況で、色々と当たっていて危ない。意識しないようにしながら焔斗は塞がれた口を開こうとする。
「私達があっちから来たことを知っている……。場所を変えましょ、ここじゃどこに耳があるか分からないわ。」
「うん!分かったよヤミちゃん!じゃあ、そーれ!!」
ㅤ突然来羅は焔斗の体をぶん回して空の方に投げ飛ばした。街からどんどん離れていき、岩のゴツゴツした荒れ地に落ちていく。
「のわあぁぁあぁぁあぁぁ!」
ㅤ咄嗟に下に向けて魔力を放ち、落下速度を軽減する。充分速度が緩まったところで、足から着地する。
「ふぅっ……あっぶね〜……。」
「わ!この人凄い!生きてる!」
「来羅ちゃん、殺す気で投げちゃダメだよ……。」
ㅤどうやら殺す気だったらしい。この世界には殺すのが好きなやつしかいないのだろうか。勘弁して欲しいの焔斗は心底思った。
「で、私達が魔界から来ているのを知っているのは何故?」
「そうだよ!なんで?しっぽも魔力も隠してるし、ただの人間には分かるはずないんだけどなぁ?」
ㅤ情報源を隠すべきか迷ったが、隠したところで意味は無いだろうと判断して、焔斗はしゃろんから聞いたことを彼女達に話した。ついでに、自分から異様な魔力が流れ出ていることについても説明した。
「しゃろん……?魔女の見た目、黒炎……まさか、魔王様の……」
「え……?」
ㅤ魔王様、そういったのだろうか。あのしゃろんが魔王と繋がりを持っていた……?どっちの魔王だろう、と聞こうとしたが闇華に遮られた。
「いえ、なんでもないわ。あなたの状況はだいたい分かった。それで、知りたいことは魔界のことかしら?」
「……ああ。魔界にいるはずの妹を助けに行くために、行く手段に関してはあてがあるのだが、魔界そのものの情報が少なくてな。もし良ければ教えて欲しい。」
ㅤそう言うと、来羅が駆け寄ってきて思いっきり抱きしめてきた。
「うお!?」
「疑ってごめんね〜!妹思いの優しいお兄ちゃんだったなんて!情報なら任せて!お手伝いもいっぱいするよ〜!」
「く、くるし……」
ㅤ柔らかい感覚もあって、男としては羨ましい状況なのかもしれないが、問題は来羅のパワーだった。強く抱きしめられすぎて体が真っ二つになりそうだ。魔界にはこんなヤツらがうようよいるのか、と思うと少し不安になる焔斗であった。
「来羅……離してあげて……。」
「わ!ごめんね!力加減って難しいね……えへへ。」
「ゴホッゴホッ……だ、大丈夫ですよ。油断した俺が悪いので……。」
ㅤそう言ってから少しだけ焔のオーラを身に纏う。敵意がないのはわかっているが、無邪気に殺されたんじゃ浮かばれない。
「……不思議な焔ね。」
「よく言われます……。」
ㅤ軽く雑談した後、魔界の情報について話をした。要約すると、魔界に人口は少ない。人口と言っても、純粋な人ではなく、自我のある人型の見た目の魔物のことだ。現に来羅はサキュバスらしい。抜群のスタイルにも納得である。
「それに、これは知ってると思うけどもちろん魔王もいるわ。”魔界の紅凍魔王”シハク。紅い氷を使う魔王よ。もし彼に見つかって無礼を働いたのだとしたら、あなたの妹も無事ではないでしょうね。」
ㅤ実際の紫紅は、なんか色々あって魔王の下で修行をすることになるという、どちらかと言えば安全圏にいる。しかし、現界にいる二人にそんな最新情報はもちろん入っていない。
「なるほどな……。もし捕まってるだけなら魔王すら倒さなきゃならないかもしれないわけだ……。こりゃ本気で修行しなきゃヤバそうだな。」
「戦う気、なのね。まあ、そこは自由にしてもらって構わないわ。でも、修行というなら」
「私達が少しだけ鍛えてあげよっか?ふふ。」
ㅤ彼女達曰く、焔斗の魔力の扱い方は荒すぎるらしい。まだまだ本当の威力を出せていないし、魔力効率が悪いらしい。魔界ではほぼずっと戦闘が続くと考えられるため、もっと上手に魔力を使わなければスタミナ切れで倒れてしまうと言われてしまった。そう言われたら、お願いする意外に選択肢はない。
「頼む。」
「……まあ、教えると言っても、私達と戦って、観察して、体で覚えてもらうしかないんだけどね。『暗雷の調べ』。」
「よーし!じゃあ行っくよー!『風の調べ』!」
ㅤ二人の体の周りに、穏やかで規則正しい魔力が漂う。調べ、というワードがあるからか、ちらほら音符が飛んでいる。魔力の流れ、放出するのではなく、自分の中を通じて周りに流れを作っている感じだ。確かにこれなら魔力消費は微々たるものだろう。
「なるほどな……。『紅焔纏装』。」
ㅤ焔斗は、魔力の流れをイメージして魔力を纏ってみた。二人ほど上手くは行かないが、なんとなく感覚は掴むことができた。
「へえ、なかなかセンスあるじゃない。それじゃあ、行くよ!」
「覚悟してね!」
「っ!」
ㅤ少し不思議な見た目をした片手直剣を持った闇華と、緑に光る両手斧を持った来羅との戦闘が始まった。
今回はここまで!いかがでしたか?
今回登場したif民モチーフは
Yamikaさんとララさん!ララさんの方はそのまま出すとあれなので設定を少し考えてもらいました!
ありがとうございました。
次回
第11話『堕天使』
お楽しみに!