平凡メイサーの異世界冒険譚   作:えんてぃ

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魔界にてトモの下で修行をしていた紫紅。
その後春輝とその弟子、君を虜にする系男子サトシが現れ、模擬戦を行うことになる。若干紫紅が優勢にみえたが、サトシの雰囲気が一気に変わる
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第13話『力の代償、紫紅の覚醒』

「.......何、これ。」

 

ㅤ言葉では表せない変な感覚。行動できないほどではないが、空気がガラッと変わった。サトシは謎のオーラを纏ったまま動かない。

 

「っ.......『紫雷球』。」

 

ㅤとりあえず何かしなければと、紫紅は紫雷の球を撃ち出す。しかしそれはすぐに消え、彼女の背中に衝撃が走る。

 

「きゃ!?」

 

ㅤ前に放ったはずの技が、自身の背中に直撃したのだ。自分の技で吹き飛ばされる、それもサトシの方に。

 

「『崩壊ノ鎮魂歌』」(ほうかいのれくいえむ)

 

ㅤ空間が歪む。急な気圧の変化に紫紅は頭痛と目眩、吐き気を催す。

 

「う.......あ.......」

 

ㅤバランスを崩した彼女にサトシの闇を纏った片手直剣が迫る。空間を操り敵を鈍らせ攻撃する。そんな技だった。一応種族的にはただの人間である紫紅には、この空間変化は天敵と言っていいほどに辛く苦しいものだったのだ。

 

「トモ、止めに.......」

 

「不要です。」

 

「え?」

 

ㅤさすがにまずいと思った春輝が止めに入ろうとするが、それをトモが止めた。その顔に焦りはない。つまり紫紅がこの状況を突破できる、そう確信している顔だった。

 

バチィ!

 

「!?.......。」

 

「あっぶないわね.......ったく.......」

 

ㅤ紫紅はバランスを崩しながらも、紫雷をシールド代わりに纏っておいた。何かが当たれば弾けて距離を取れるように。紫紅は再びサトシに接近しメイスをぶつけようとする。が、当たる直前に空間に呑まれた。咄嗟に右腕を減速させつつ左腕の盾を後ろに構えた。直後、彼女の背後の空間から現れたメイスが盾にぶつかった。

 

「やっぱり空間系なのね!めんどくさい!」

 

「わかったところで何も出来ないだろ?」

 

「やってみなくちゃ、わっかんないわ、よ!『紫雷拡散』!」

 

ㅤひとつの攻撃だと空間転移を使って返される可能性がある。そこで、複数を同時に転移できない事を祈っての全方位から攻められる拡散技を選んだのだ。しかし

 

「無駄だよ。」

 

「でしょうね!」

 

ㅤなんと拡散したもの全てが空間転移で紫紅に返された。予想はしていたため何とか対処出来たが、未だに変化したサトシに攻撃を加えられていないのは事実である。このままではいずれやられてしまうだろう。

 

「くっ.......まず.......『亡者ノ嘆』」(もうじゃのなげき)

 

ㅤ今度は紫紅の周りの空間が歪み、ゾンビのような手が伸びてくる。先程と同じように気圧の変化もついている。

 

(なんでこう、遠距離の戦い方をするの?)

 

「何度も同じような手が通じるとでも!?『紫雷纏装・反撃』」

 

ㅤ紫紅は自分の纏っている紫雷の流れを変え、守るだけではなく触れたものにそこまで威力はないが反撃するようにした。この攻撃にはこれで充分だった。雷に弾かれた手が空間の裂け目に戻る。サトシは先程から立っている位置が動いていない。これほどの異常なオーラなら、近距離で攻めてもいいはずだ。先程まで近距離戦だったのだ、それに腕も悪いわけじゃない。

 

「くっ、どうなっても知らないよ!」

 

「来た.......!」

 

ㅤそう思っていた矢先、サトシが動いた。接近したとおもった瞬間、彼が消える。

 

「後ろっ!」

 

「残念!」

 

ㅤ確かに彼は後ろに現れた。しかし、紫紅がメイスを振り抜く瞬間に、もう一度転移し上に移動したのだ。ギリギリを攻めたフェイント。さすがの紫紅も対処しきれなかった。

 

「『時空ノ闇撃』。」(じくうのあんげき)

 

「えっ?今斬って.......きゃあああ!?」

 

ㅤサトシに斬られた、と思ってから直ぐに感覚がなかったため戸惑いがあったが、少しの間を空けて、一気に衝撃が走った。時差攻撃。名前的にもそんな感じだろうか。SAOのベルクーリのような技で、頻繁に使えるとしたらかなりまずいと思った。

 

「さて、もう終わっ」

 

「待ちなさいよ。」

 

「!?」

 

ㅤ先程の攻撃で、完全にダウンしていたかに見えた紫紅。ここで立つのにはトモにも予想外だったようで、珍しく驚いた表情を見せている。ちなみにサトシは、悪魔の力の代償でそろそろタイムアップだ。今使っているのは約二十パーセントで、正気を保てるギリギリなのだ。修行で少しずつ解放できるようにしているが、約五年かかって十パーセント上昇したくらいだ。それほどまでに悪魔の力を宿すというのは大変なのである。

 

「待ちなさいって、いってる、でしょ。」

 

「.......もうやめた方がい」

 

「黙れ!」

 

(早くお兄ちゃんに会いたい.......!こんなところで、こんなザマで、倒れてるわけにはいかないんだっ!)

 

ㅤ異世界転移。兄とは離れ離れになったが、とりあえず住むところが見つかったことで新しい刺激を楽しんではいた。元の世界では出来なかったこともここなら出来る。でも、修行していく中で兄と会いたいという気持ちは日々高まっていた。なぜ、ここより弱い世界に行くために強いボスを倒さなければならないのかは分からない。でも、それが兄に会うための最短ルートなら、やるしかない。早く強くなって、兄に、お兄ちゃんに抱きつきたい。あったことを語り合いたい。だから、

 

「だから、あんたなんかに.......!簡単に負けてやる訳には、いかないんだーーーーーー!『紅雷纏装』!!!!!」(こうらいてんそう)

 

ㅤ紫紅を紫ではなく”紅い”雷が纏う。髪の毛は紫から紅く染まり、目も紅くなる。頬にあったハートマークは少しいかつめの刺繍に変わり、左頬に現れる。所々破れていたメイド服は、まるで戦える王女のような紅きドレスに変わる。紅い雷は紫紅を纏うだけでは飽き足らず、バチバチと周りにも落雷する。

 

「と、トモ!なんなのこれ!?」

 

「分かりません。何せ、私もあのような紫紅さんを見るのは初めてです。」

 

「やるしか.......なさそうだね。.......二十五パー」

 

「馬鹿っ、やめろサトシ!」

 

ㅤ春輝の制止を聞かず、サトシは限界を超えて悪魔の力を解放する。たったの五パー。されど五パーだ。さらに空気が重くなる。紫紅の魔力とサトシの悪魔の影響で空間が揺れる。

 

「これは.......ここ一帯だけでなく、魔界全体が震えています.......!この先が気になりますが止めなくては.......!」

 

「わかってる!けど、サトシの空間魔法のせいで魔法は使えない!接近しようとしてもコントロール出来てない状態だとどこに空間転移が設置されてるかも分からないし、簡単に近づけないぞ!」

 

「ガハッ.......!」

 

ㅤサトシが吐血する。当然だ、本来使える悪魔の力の限度を超えて使用している状態。このまま続ければ、体のどこかに後遺症が残る可能性がある。力の代償、というならば紫紅も同じだ。アレはどう考えても魔力の使いすぎである。いかに秘められていた魔力が解放された、と言っても、この魔力の負荷にまだ体が慣れていない。こちらもこのままだとまずいだろう。

 

「俺が、解放させてしまった、なら.......!俺が止めるんだ.......!もっと、もっとチカラヲ.......!」

 

「あなたを倒して、あたしはもっと強くなるんだ.......!」

 

ㅤ為すすべなしか、もうこうなったら自分たちも隠しておいた力を解放して止めるしかない、そう思った瞬間だった。

 

「はい君たちやりすぎっと。」

 

「あっ!?.......」

 

「うっ!?.......」

 

ㅤ突如魔王シハクが現れ、紫紅の首後ろを手刀で打ち気絶させ、直ぐにサトシにも同じことをする。2人は気を失いその場に倒れる。紫紅の姿は元に戻っているし、サトシも悪魔のオーラは完全消えていた。

 

「シハク様!」

 

「兄さん!」

 

ㅤ突然現れたことも驚きだが、あれに接近できたことに驚いていた。シハクの実力が二人より上、ということは理解出来ているが、実際彼らもシハクの全力は見た事がないのだ。

 

「.......弟子の面倒くらい、しっかり見ておきなよ。あと、サトシは早く悪魔の侵食を止めなきゃね。このままだとまずい。紫紅の方は、ベッドで休ませてやりなさい。.......服がボロボロだからって興奮しちゃダメだよ、トモ。それと、晩御飯は鳥のナンバン仕立てがいいな。」

 

「.......かしこまりました。お任せくださいシハク様。」

 

「サトシ、直ぐに治してやるからな!」

 

ㅤこうして、何とか最悪のケースは逃れたのであった。

 

 




今回はここまで!
いかがでしたか?

今回のif民モチーフは
魔界三銃士の

シハクさん
春輝さん
トモさん

それと、
サトシさん

が登場しました!

ありがとうございました!

次回
第14話『お兄ちゃん、あたしにも妹が出来ました?』

お楽しみに!
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