平凡メイサーの異世界冒険譚   作:えんてぃ

15 / 45
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
サトシとの戦闘後、自部屋で目を覚ます紫紅。風呂などを済ませ、サトシの様子を見に春輝の部屋に行くが、そこで冥界の話を聞くことになる。現在の紫紅は《急性魔力欠乏症》で、魔力が全く使えないのだが、これまでの修行のおかげで魔力無しでも魔物を倒せるまでに成長していた。せっかくなので外の空気をと魔界を散歩していたのだが、そこで謎の少女に抱きつかれ、お姉ちゃんとよばれて
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


第15話『この世界に来てやっと癒しが出来ました』

「お姉ちゃん?え、あたしが?」

 

ㅤ戸惑いながら抱きついてきた少女、のぞみに問いかけると彼女は嬉しそうにコクコク、と首を縦に振る。もちろん紫紅に妹なんていないし、ネットで姉妹みたいな関係を作った記憶もない。だがこの少女は、紫紅のことをお姉ちゃんと呼んで聞き返しても迷いなく肯定するだけだ。

 

「っ!?しまっ」

 

ㅤ突然の出来事に気を取られ、周囲への警戒が弱まっていた。背後から迫る人型の魔物に気づかず、ゴツゴツとした棍棒で殴られそうになる。だが、

 

「おねーちゃん危ない!『地烈衝波』!」(ちれつしょうは)

 

「えっ」

 

ㅤのぞみが紫紅の後ろに飛び出し、メイスを振り下ろす。すると、その魔物はもちろん爆散し、衝撃波で大きなクレーターが出来上がった。それも紫紅が巻き込まれないように、バリア(足場付き)を貼ってくれるという手の込んだ仕様だ。

 

(この子見た目に反して強すぎない……?それに、攻撃と守るべき対象へのバリア付与を同時に……。何者なの、一体。)

 

「えへへ、大丈夫?おねーちゃん!」

 

「え、ええ、ありがと……。」

 

ㅤ紫紅が考えていると、のぞみは戻ってきてまた抱きついてきた。そして頭を胸にすりすりしてくる。トモのペットのアル以外に今のところ癒しのなかった紫紅。そしてこの世界に来て何気に初めての女の子である。もう考えることを放棄して、抱きしめてよしよしすることしか彼女の頭にはなかった。

 

「んー!ありがとうのぞみ!いいこいいこ、よしよし!」

 

ㅤのぞみを抱き返して、頭をわしゃわしゃと撫でて褒める。こんなに可愛い少女にお姉ちゃんと呼ばれる、悪くないいやむしろ良いと紫紅は思った。

 

「えへへ〜。でもおねーちゃん、あだ名で呼んで欲しいな〜。のぞみんって呼んで欲しい!」

 

「あら!そーお?わかったよのぞみん!」

 

「わーい!」

 

ㅤとても、強力な魔物のはびこる魔界で出すような雰囲気じゃない二人。紫紅はのぞみを魔王城に連れていくことにした。道中ももちろん魔物に襲われるが、彼女達の強さには何の意味もなさずに爆散していく。

 

「お、戻りましたか紫紅さ……その方は?」

 

「のぞみん!あたしの妹よ!ふんすっ!」

 

「はじめまして、のぞみと言います!いつも、おねーちゃんがお世話になっております!」

 

ㅤ紫紅が腰に手を当てドヤ顔で紹介し、のぞみは丁寧にお辞儀をしながら、元気に挨拶をした。

 

「ほう……また不思議な魔力の方ですね。一体どこから?それに妹とは、紫紅さんにはお兄さんしかいなかったはずでは?」

 

「あたしにも分っかんない!でももう考えない!この子強いんだよ?こんなに可愛いのに強いんだよ?最高か?」

 

「も〜、おねーちゃん褒めすぎだよ〜!えへへ〜。」

 

ㅤ紫紅がのぞみをべた褒めして撫でる。それを受けてのぞみは幸せそうに微笑む。魔界には似合わぬ、お花畑ワールドが彼女達の周りに開園していた。

 

「それにしてもあたしたち歳近いのかな?あたしは十六歳。のぞみんは?」

 

「わたしは十四歳!えへへ、ふたつ違いだね、おねーちゃん!」

 

ㅤ元の世界だと中学二年生くらいの年齢だった。のぞみは元気にトモの方に行き抱きつこうとする。が、瞬間トモが消え、紫紅の背後に現れる。

 

「あれぇ?」

 

「ちょっと、何逃げてんのよ!」

 

「すみません。可愛すぎてちょっと距離を置きたいと思いまして。彼女のお世話は紫紅さんにお任せします。」

 

ㅤそう言うとトモは完全に消えた。

 

(ロリコンなのかしら、あの人……)

 

「おねーちゃん?」

 

「んー?トモさんはね、急いでやらなきゃいけない仕事があるんだって!だから許せのぞみさん、また今度な。って言ってたよ!」

 

ㅤテキトーに誤魔化しつつ、完全にトモ逃がさないように言い回す。とりあえず皆に挨拶に行こうかと、のぞみを説得して春輝や魔王シハクに挨拶に行く。春輝言わずと知れたいつものアレである。

 

「おお♪可憐なお嬢さんだね♪どうだい?良ければこれから僕と二人で」

 

「『地裂衝波』」

 

「おおっと♪危ないな〜♪」

 

ㅤ声をかけられた瞬間、あののぞみでさえ殺意MAXで攻撃を仕掛けた。しかしその一撃も片手で止められる。嫌な予感がした紫紅は全力でのぞみをメイス含めてこちら側に引き寄せる。

 

「危ない、また武器壊す気だったでしょう!あたしのメイスの時のように!」

 

「えっ!?この人そんな強いのおねーちゃん!?というか酷いねこの人!?」

 

「いや壊そうとしてないし、そもそも先に仕掛けてきたそっちが悪いと思うけどね!?」

 

ㅤどうやら、壊そうとはしていなかったらしい。しかし紫紅にとっては、あの片手でぶっ壊されたのは軽くトラウマになっていたらしい。

 

「まあ、良いけどね♪可愛いから許すよ♪」

 

「おねーちゃん、なんかこの人すっごくムカつく。」

 

「分かる、分かるけど今は抑えて。」

 

ㅤ今にも春輝に全力攻撃しそうになっているのぞみを全力で止める。彼女が強いのは分かっているが、同時に春輝の強さも上限が知れない。もし全力で戦った場合、死んでしまったらどうしようもなくなってしまうのだ。

 

「失礼しま〜す。」

 

「失礼しまーす!」

 

「ん?紫紅さんと、そちらは?」

 

ㅤトモや春輝にした説明をシハクにもした。すると、シハクは顎に手を当て考える。が、すぐに頭を振り考えるのをやめた。

 

「いや、今考えてもわかる事じゃないな。ただ、その子のように猫耳を持つ種族は確かに存在する。ただし紫紅さんとほとんど同じ服装に、その強さ。服装は被ることがあるかもしれないけど、これほどに強い子が居るなら普通我々が気づくはずなんだよね。」

 

ㅤ確かに、のぞみの強さは異常だ。この世界に来たばかりの紫紅なら勝てなかったかもしれないレベルなのだ。そんな存在がいて彼らが認知していないわけが無い。しかし、今はどちらにしろ何も分からないので考えないことにした。

 

「おねーちゃんおねーちゃん。」

 

「ん?なーにのぞみん?」

 

ㅤ三人への挨拶も終わり、とりあえず部屋に戻ろうと廊下を歩いていると、のぞみが顔をのぞきこんで聞いてきた。

 

「おねーちゃんは、何を焦っているの?」

 

「!?」

 

ㅤ気づかれた、と思った。魔力欠乏症のせいで何も出来ないとはいえ、お兄ちゃん、焔斗と早く再開したいのは事実。それなのに修行も出来ないし、他になにか出来ないかと必死に考えつつ動いていたのだ。そしてのぞみはそのことをまだ知らない。それなのに気づかれてしまった、焦っていることに。

 

「えっとね、」

 

ㅤ紫紅はこの際だから全て話すことにした。兄のこと、前の世界のこと。そしてそれは必然的にのぞみイコール妹を否定することになる。それを避けるために言ってなかったのだ。

 

「と、いうことなのよ。黙っててごめんね、のぞみん。」

 

ㅤ説明を終えるとのぞみは目を輝かせて嬉しそうな顔をしていた。予想外の反応に首を傾げる紫紅に、彼女は嬉しそうに語りかける。

 

「え、つまり、わたしにはおにいちゃんがいるってことだよね!?会いたい!めっちゃくちゃ会いたいなあ!」

 

ㅤ紫紅には兄がいる、というところしか聞いていなかったらしく、本当に嬉しそうにはしゃいでいる。完全に理解してショックを受けられるよりかは全然いいので、少し助かった。

 

(というか、のぞみんの本当のお姉ちゃんはどこにいるのよ。)

 

ㅤ急にお姉ちゃん呼ばわりされて抱きつかれただけで、のぞみがどこから来てなぜあそこにいたのかも分からない。たまたま紫紅が姉に似ていた?もしそうなら、すでに違うことに気づくはずである。

 

「ね、ここがおねーちゃんの部屋!?入っていい?いい!?」

 

「ふふ、いいわよ。でもそんな期待するようなものはないわよ?最低限生活できるようなものしか、ね。」

 

ㅤうきうきしながら紫紅の部屋の前に立つのぞみ。こんな無邪気な姿を見せられたら、今考えていることなんかどうでもいいと思えた。せっかく姉として慕ってくれているのだ。こちらから突き放すのも可哀想というものであろう。

 

「はい、どーぞ。」

 

「わー!」

 

ㅤ紫紅がドアを開けてやると、のぞみは両手を上げて中に入る。こういう姿を見ていると、ひょっとすると十四歳より下なのではと思ったりもする。

 

「ふかふかおふとぅん!」

 

「っと、ストップストップ。まずお風呂はいってきなさい、汚れてるでしょ?」

 

「あ、ほんとだ、はーい!入ってきます!」

 

ㅤビシッと敬礼してからのぞみは風呂場に走っていった。この間、誰も入ってこないように紫紅は最大限に警戒する。春輝等はドアから入ってくるが、トモはたまに気づいたらそこにいたりする。なので、ほんとに気を張っていないと気づけないのだ。

 

「おねーちゃーん!」

 

「わっ!?」

 

ㅤ風呂から上がったのぞみが後ろから抱きついてきた。幸い、なぜか身長や体型は同じくらいなので、紫紅の予備のメイド服も違和感なく着れている。あたしって小さすぎない?と少し不安になるが、ここは異世界だからそもそも平均身長も違うはず、と自分に言い聞かせる。

 

「ふかふかおふとぅん!」

 

「ふふ。」

 

ㅤベッドにダイブしてごろごろするのぞみ。それを見て和みながら紫紅は彼女の頭を優しく撫でる。すると、少しして寝息が聞こえ始める。その愛らしさにほっこりしながら、紫紅は今ここで寝られると自分のベッドが無くなることに気づいた。慌てて起こそうとするが、幸せそうな寝顔を見てそんな気も失せる。仕方ない、と毛布を引っ張り出し、部屋の端で眠ることにした。この世界に来てからずっと男としか話してなかったため、はじめて同性と出会って嬉しかった。しかもめちゃくちゃ可愛いため、癒される。トモのペットのアルにも癒されるが、それとこれとは別だ。この世界に来て、やっと癒しができた、思いながら眠りにつくのであった。

 

 

 

ㅤ現界。

 

「いいよ、その調子。落ち着いて、でも激しく魔力を練るのよ。」

 

「はい……!」

 

ㅤ焔斗は闇華と来羅の修行の元、新たな纏装魔法に挑戦していたのであった。




今回はここまで、
いかがでしたか?
今回登場したのは前回に引き続き
魔界三銃士
シハクさん
春輝さん
トモさん。

そして
のぞみさん

最後に少し
Yamikaさん
ララさん
モチーフのキャラが登場しています!

次回
『隠された力を呼び覚ませ!これが新たな紅焔纏装だ!』

おたのしみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。