平凡メイサーの異世界冒険譚   作:えんてぃ

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魔力欠乏によりしばらくまともに戦えなくなった(しかし魔物はワンパン)紫紅。謎に彼女を姉と呼ぶ可憐な少女のぞみ。その可愛さに癒されている頃、現界では焔斗が修行の末に紅焔纏装を極めようとしていた。
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第16話『隠された力を呼び覚ませ!これが新たな紅焔纏装だ!』

 

「そう、そして全身の隅々まで高密度の魔力が行き届いたと思ったら、解放するのよ。」

 

「はい……。」

 

ㅤ闇華と来羅に見守られながら、焔斗は魔力をコントロールして全身に張り巡らせる。徐々に指先などに流れているのを感じられた。

 

「ふぅ……、はあ!!」

 

ㅤそして、魔力を解放する。髪が紅く染まり、ただの紅焔纏装よりも高密度の魔力が彼を纏う。だが、

 

「くっ……!はぁ……はぁ……。」

 

ㅤその魔力はすぐに霧散し、焔斗は疲れきった様子で倒れ込む。一瞬だけ、明らかに違う強力な紅焔纏装になるのだが、それを維持するのがまだ出来なかった。

 

「ん〜。まだ無理か〜、行けると思ったんだけどな〜?」

 

ㅤ来羅が残念そうに呟く。とはいえ、結構無茶ぶりをされているのだ。魔力のコントロールが少し上手くなったと思ったところで、この二段回目の纏装の仕方を教えられ、やってみてと言われたのである。少し前にやっと魔力の効率を考えられるようになったばかりなのに、一発目で成功させるなんてほぼ不可能である。

 

「まあ仕方ないわよ。でも、初めてにしては良いとこまでいってたわ。このまま続ければ、もしかしたらかなり早くマスターできるかもね。」

 

ㅤ焔斗に手を差し伸べながら闇華が呟く。その手を借りて立ち上がる。

 

「すみません、ありがとうございます……。」

 

ㅤその後、すぐに食事をすることにした。いつもはレストランなどでひっそりと食事をするらしいが、たまに見つかると騒ぎになるらしい。それに、今回は焔斗もいる。要らぬ誤解をされては面倒だ。それならと、焔斗は食事は別行動でと提案したのだが、断られてしまう。

 

「待って!私が作るよ!」

 

「来羅ちゃん、落ち着いて。いい?よく考えてみて。そもそも私達が別行動で食事を済ませるのは、ファンに見つかった時に誤解されないためよ?それなのに手作り料理なんて披露して、それが誰かに見つかったらどうするの?それこそ変な誤解を」

 

「わ、わかった!わかったよ闇華ちゃん!わかったからすとーっぷ!」

 

ㅤ自分が料理を作って、それをみんなで食べると提案した来羅に

、闇華が説教じみたことを言い出す。来羅がギブアップしているが、どうにも焔斗には〈来羅が料理を作るとなにか大変なことが起こるから〉止めているように感じられた。気の所為かもしれないが。

 

ㅤそんなこんなで結局、別行動で食事をすることになった。焔斗は、ミカルコで歩いていた時に気になっていた店に行ってみることにした。パッと見た感じステーキ屋で、香ばしい匂いが漂ってきていたのだ。この街に来てすぐは、来羅と闇華を探すのに必死だったためスルーしたが、今は別だ。ちなみに、お金の方は大丈夫である。ここに来るまでの道中で狩ったモンスターの素材を売ったのだ。正直その場の売値が高いか安いかは、まだ焔斗には分からなかったが、とりあえずお金が無いと何も出来ないので売り飛ばしたのだ。その辺の知識は今後身に付けるべきだが、今は妹最優先なのである。

 

ㅤ店に入り、注文を済ませ、料理が運ばれてきた。何の肉かは分からないが、ジュージューと音を立てながら芳ばしい香りを漂わせてくる。前回の食事は怪我していたためお粥だったし、ここに来てからも美味い焼き鳥のようなものは食べたが、まともな食事はこの世界に来てからこれが初めてである。

 

「いただきます。」

 

ㅤステーキをナイフで切ると肉汁が溢れ、鉄板の上でさらに音を立てる。その切ったステーキを口に頬張る。口の中で広がるスパイスの効いた味に、こってりしていない、あっさりとした肉汁。修行の疲れもあり、その美味さが体にしみわたり満腹度と幸福度を満たしてゆく。ステーキを口に入れライスも頬張る。肉汁がライスに絡み、お米の美味さも相まって味覚を刺激する。鉄板の上で肉汁と共に焼かれた野菜。肉汁の染みたこの野菜がまた絶品だった。

 

「ご馳走様でした。」

 

ㅤなるべくゆっくりと思っていたが、気づいたら食べ終わってしまっていた。それほど美味かったのだ。代金の支払いを済ませ、店を後にする。

 

(そういや結局何の肉だったんだろうなぁ。ま、いいか。美味かったし。)

 

ㅤ何肉、というかこの世界の固有名称で書かれていたため、これが牛っぽいのかどうかは焔斗には分からない。しかし美味かったので気にしないことにしたのだ。街を歩いていると、クッキー屋?のような行列のできた店があった。店の名前は『Dream

Canola flower』。

 

(夢の.......きゃのーら?なんだっけ、最後は花だけど。んー、忘れた!まあいいや!)

 

ㅤ焔斗は英語が苦手である。発音は割とカッコつけて言ったりするのだが、英文とかさっぱりなのだ。テストも平均以上は取れるものの、満足いくようなものではなかった。それよりも驚いたのは、この世界に英語が存在するということ。もちろん日本語も通じているので、この世界に来て意思疎通が出来ないと言うことにはならなかったのだ。これも焔斗達をこの世界に送り込んだ(拉致した)神の仕業なのだろうか。それにしても、

 

(きゃのーらは分からないけど、夢の花?って、クッキー屋と言うより花屋って感じがするな.......このネーミングの意図が知りたいぞ。今は行かないけど。)

 

ㅤクッキー屋らしいし、妹と無事再開出来たら一緒に来るか、と思いながら。焔斗は修行していた場所に戻った。さすがに早すぎたようで、2人はまだ戻っていないらしい。食べてすぐ運動するのは、あまりよろしくないので少し座って休憩することにした。したかったのだが。

 

「っ!誰だ!」

 

「あぁん?あたしの匂い忘れたのかい.......?ああ、そうか。普通の人間は匂いで人を判別できるほど、嗅覚が発達していないんだったっね。こりゃ失礼。」

 

「せっ、節狐.......!」

 

ㅤしゃろんのいるシンレ館に行く道中、その時に出会い一戦交えた節狐が岩陰から現れたのだ。もちろん、取り巻きの獣人もいる。

 

 

「久しぶり.......でもないか?まあ、んなこたどうでもいい。」

 

「何の用だ。」

 

「何の用?そんなの決まってんだ、ろ!」

 

ㅤ節狐が、一気に距離を詰めて攻撃を仕掛けてくる。やはりこの獣人の目的は戦闘らしい。

 

「今そんな場合じゃ、くそ、めんどくせえ!『紅焔纏装』!」

 

「はは!そうこなくっちゃねぇ!」

 

ㅤ相変わらず無茶苦茶な戦い方をしてくる。その割に隙がないのだから大したものだ。攻撃は最大の防御、ってことだろうか。それにしても

 

「なんか、前より強くなってないか!?」

 

「そりゃこっちのセリフだよ!あたしも鍛えたってのによ、こんなについてこられるなんてさぁ!」

 

ㅤ節狐は、しゃろんに鍛えられる前の焔斗で互角か少し強いかくらいだった。最後何かをしようとしていたが、結局止められていたので発動していない。しかし今回、それを発動した様子はないため、通常状態でこの強さだということになる。

 

「『螺旋……』」

 

「遅せぇよ!!」

 

「なっ!?」

 

ㅤ焔斗が『螺旋焔』を使う前に、節狐は前回使ったことのある『爆殺炎舞』をほぼゼロ距離で使用した。もちろんこれも威力が上がってはいたが、前より纏装が上手くなっていた上に、一応同系統の(厳密には違うようだが)属性なので、そこまでダメージを受けることは無かった。しかし、ひとつ気になることが。

 

「技名言わずに出せるのかよ……。」

 

「あぁ?何当たり前のこと言ってんだおめぇ。」

 

ㅤ節狐曰く、技名を言いながら戦うのはお遊び、または小手調べの時のみで、本気の戦いや殺し合いの時は言わないのが基本らしい。どうしても言わないとイメージできない技や、特別な詠唱を必要とするものを除いて、だが。

 

「待て待て、その理論で行くと今のこれ殺し合いか!?」

 

「ったりめぇだろ!命かけてえ戦いなんかつまんねえから、なっ!」

 

「くっ!」

 

ㅤ技名を言わなくなる。それはつまり、発動までの時間が短縮されることになり、反応するのが難しくなる。さらに焔斗はこの世界での戦闘にそこまで慣れていない。そんな中、相手の動きを見て次何するか予想し動く、というのは分かっていても行動する時に迷いが生じてしまう。その一瞬の迷いが隙となり、節狐の攻撃が入る。唯一の救いは同じ炎系統(厳密には違うようだが)のため、そこまでダメージが入らないことだろうか。

 

「オラオラどうしたァ!その程度か!?」

 

「ちっ、この、なめるなよ!!!」

 

「うお!?」

 

ㅤ盾を投げ、斬りつけてきた節狐の腕を左手で掴み、思いっきり振り回してなげとばす。節狐は壁に打ち付けられ、その岩壁にクレーターができる。

 

「かはっ」

 

「イメージだけで行けるなら……!」

 

ㅤ節狐が怯んでいる隙に、焔斗は食事前に練習していた纏装を試そうとする。とは言っても、やり方は全く別。張り巡らせるのではなく爆発させる。前の世界で読んでたバトル漫画をイメージし、その漫画でのエネルギーを魔力と思えば何とかなるかもしれない、そう思ったのだ。

 

「はぁあああああ……!」

 

「な、なんだ?何をする気だ?」

 

ㅤ節狐が興味津々と言った様子で見ている。先程の攻撃、さすがにダメージは入ったようだが、まだピンピンしている。しかも、邪魔をしてこない。全力の焔斗と戦いたい、ということだろうか。

 

「かぁっ!」

 

「くっ……!?」

 

ㅤ焔斗は魔力を爆発させる。そして溢れ出る魔力を徐々に纏装して行き、無駄な漏出をなくす。この時点で彼の髪色は紅に変わり、纏装が完了すると、服装も変わった。フードとマントがついてより旅人感が増している。顔の右には謎の刺繍のような痣まで現れていた。

 

「へぇ……!それがあんたの本気ってことかい!おもしれぇ……!」

 

「『獄焔纏装』(ごくえんてんそう)とでも言っておこうか。何せ初めてだからな。魔力切れが怖いからとっとと行かせてもらうぞ!」

 

ㅤこうして、見事に新しい纏装を成功させた焔斗と、未だ力を隠した節狐のバトルが再開したのであった。




今回はここまで!
いかがでしたか?
……お久しぶりです!笑
結構ダラダラ書いちゃいました(の割に長さは変わらないという)

今回登場したif民モチーフは

Yamikaさん(闇華)
ララさん(来羅)

せつこさん(節狐)

でした!ありがとうございました!

次回
第17話『』……タイトル考え中です!
おたのしみに!
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