平凡メイサーの異世界冒険譚   作:えんてぃ

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『獄焔纏装』を新たに会得するも、節狐の本気には全く叶わなかった焔斗。殺されるかと思ったその瞬間、闇華と来羅が到着する。魔力の共鳴による『魔力協奏』をした彼女達ですら、勝てるかどうか怪しいと言う。満身創痍の焔斗に出来ることはあるのか。彼は本来……
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第18話『今の俺に出来ること』

 

━━━ここは天界。俗に言う神や天使の暮らす場所。

ㅤ神々しさ、まさしく天国のような雰囲気。この世界に夜はなく、神々並びに天使も睡眠を必要とせず。そんな世界のとある場所。現界の様子を見る天使たちがいた。

 

「どう?異界人の様子は。」

 

ㅤ雲に囲まれたモニターのようなものを見つめる天使に問いかけるのは、青髪ショートに青目で童顔。そして青と白を基調とした騎士服を身にまとった少女……にしか見えない青年の、ねこま。

 

「やってくれてるよ、ほんとに。もうこの様子じゃあ天界の干渉は確定だね。」

 

ㅤそう答えたのは、銀髪青眼の天使、ロイル。彼は研究も得意としており、天界に住むものが持つ”神力”を使わなければ作れないようなものを作ったりしている。今もある物……いや、生物を製作中だ。

 

「……そっか。もう天界から誰が降り、異界人含め関係者を葬り去るか、決まっちゃってるけど……。ほんとにこれでいいのかな?異界から来たから殺す〜……なんて。ほんとに殺戮を繰り返してたりしてたら分からなくもないけど。」

 

「そうか、お前は前回の降臨を知らないのか。それで文献だけ見て育ち、強くなったわけだ。そりゃ疑問もでるだろうよ。……まあ、かと言って、神様の代表様がお決めになったから従うしかない、としか言えないのだがな。」

 

ㅤこの世界には3つの種族がいる。神、天使、そして、天界の力を宿した天界人。ここにいる2人の場合、ねこまが天界人で、ロイルが天使の部類になる。しかし、種族差で上下関係などはなく、実力主義の世界である。ロイルは研究に没頭するタイプのため、天使でも戦闘力はそこまで高くない。逆にねこまは優秀な戦闘力を持った天界人である。戦闘試験である程度の基準とした序列が決められるのだが(相性などもあるので下の位の者に負けることもある)、ねこまは序列7位である。10位以内に入るのは彼が最年少なのだ。

 

「んー、でも、まあ、仕方ないかあ〜。ところで、さ?前言ってた例のアレ、進捗はどうなの〜?」

 

ㅤ例のアレ、というのはロイルが作っている生物のことだ。今回ロイルは侵攻はしないが、その生物……人間を送り込む手筈で進めているのだ。

 

「順調だよ。神力もいい感じに蓄積されてきた。ベースにしようと思ってた子がいなくなったのは痛かったけど、それでも全然問題はなかったね。」

 

ㅤいなくなった子、というのは、まだ神力すら宿っていない赤子のことである。赤子は集中的に管理され、専用のカプセル(ロイル作)で、ある程度まで育てられるのだが、故障で一機、それも期待値の高かった子が下界に落ちてしまったのだ。幸い、神力も宿っていないため、天界からの干渉というタブーには辛うじて触れなかったものの、結局どこに行ったか分からないのでお手上げである。

 

「”神造人間”、だっけ〜?このカプセルの中の子がそう?女の子ベースなんだね〜。」

 

「ああ、そうだよ。おかしなところが見つからないよう、魔力じゃなくて神力ってこと以外は完璧な人間さ。下界の人間に近づけて神力を宿す。どこまで完璧に出来るか試してるんだ。女の子ベースにしたのは、可愛い女の子の方が注目されやすい上、色々と融通が効いたりする。男はバカだからね。ああ、下界の大多数のことだよ。君じゃない。」

 

ㅤ男がバカと言われてムスッとするねこまをみて、慌てて訂正する。”神造人間”はピンク色の髪をした小さな女の子だ。

 

「この子の名前は?決めてるの〜?」

 

ㅤそう問いかけるねこまに対して、ロイルは果肉の白い果実を食べながら答える。

 

「もちろん。この子の名は……。」

 

ㅤ彼の口から”神造人間”の名前が告げられた。

 

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「『闇雷蓮華』!」(あんらいれんげ)

 

ㅤ闇華の剣撃が華やかに、激しく舞い、節狐に迫る。が、それはいとも容易く全て弾かれてしまう。

 

「はっ!その程度かい?」

 

「そこ!『魔風ノ刃』!」

 

ㅤ死角からの来羅の魔法攻撃も、軽々と受け流される。このような細かい攻撃は、不意打ちだろうが意味を成さないようだ。

 

「『狐火』。」

 

ㅤ節狐が指を鳴らすと、来羅の体の至る所から炎が燃え上がる。瞬時に風の魔力で弾き飛ばしたため、それほどダメージを受けることは無かったが、節狐が遠距離戦も出来るとなると、接近戦を選んだ方が、彼女達の得意分野であるため戦いやすい。

 

「一気に決めるよ!来羅!」

 

「もちろんだよヤミちゃん!」

 

「ははっ!いいねぇ!来いよ!踊ってやる」

 

ㅤ闇華と来羅が急接近する。彼女達のお得意な連携攻撃の始まりだ。威力の高い斧を使う来羅が、範囲的に強く攻撃し、それに対応を追われているスキをついて、闇華が剣で攻める。単純なようで、彼女達の戦闘力でやられたらたまったものでは無い。経験している焔斗も分かる。あの時は彼女達は本気ではなかったが、今回は本気の本気である。どれほど恐ろしいかは想像したくもない。

 

「ちっ、ちょろちょろとめんどくせえな!」

 

「これが私たちの」

 

「戦い方よ!」

 

ㅤ来羅の斧攻撃を無視する訳にも行かず、かと言って生半可な対応ではダメージを受ける。だが、それを防ぐことにより、闇華の攻撃をもろに受けている。そんな状況だった。

 

「調子に乗るんじゃないよ!はぁ!!」

 

「へ!?きゃ!?」

 

「来羅っ!くっ!?」

 

ㅤこの連撃の対処法、節狐は”力でねじ伏せる”ことを選んだ。文字で表すと単純だが、そう簡単にやれることじゃない。来羅の攻撃を受けつつ、力と魔力で動きを抑え込む。そして、スキをついた闇華の攻撃にも対応、反撃するという脳筋プレイにも程があるやり方だった。これも、彼女の体が頑丈だからこそできる芸当だろう。いくら鍛えていても、普通の人間にはできるわけが無い。

 

「今度はあたしの番だ。覚悟しな!」

 

ㅤ連撃というのは流れに乗ればとても強く、流れを止められたらスキだらけになる。それも1人は抑えつけられ、もう1人も迂闊に攻撃できない。彼女達の魔力も多い上、扱いにも慣れているから無駄も少ない。だが、無限では無いのだ。彼女達にも限界が来てしまう。その前に決着をつけなければならない。

 

(師匠達でも、あそこまで苦戦するなんて……。くそっ!俺に、俺に何か出来ることは……!)

 

ㅤその戦いを見ながら、焔斗は何一つ力になれない自分にいらだちを覚えていた。自分にもっと力があれば、一緒に戦えたかもしれない。あの時、調子に乗っていなければ、勝てていたかもしれない。そんなことばかり考えてしまう。

 

「遅せぇよ!あははは!」

 

「ぐっ、この……!」

 

「来羅、だめ!引いて!」

 

ㅤ今まで、力でねじ伏せられたことはほとんど無かったのだろう。来羅は既に心に余裕がなく、引くべきところで攻めに出てしまう。節狐からすればいい的だ。炎を纏った斬撃を来羅に打ち込む。

 

「きゃあああ!?」

 

「来羅!……くっ!」

 

「あんたも突っ込んでくんのか?無駄なのに、な!」

 

ㅤ闇華にも斬撃を浴びせる。さすがに分かっていたため、闇華は対処していたが、それも節狐の連撃の前では限界があった。まともに1発が入る。

 

「うぁっ……。」

 

「もう諦めな!あたしにゃ勝てねーよ、あんたらじゃな。」

 

(『魔力協奏』まで使ったのに、これほど押されるなんて……。この人ほんとに現界勢なの!?平均値的に魔界より数段弱いのが現界のはず……。いや、そうか。”平均値”だから弱い人が多ければ低くなる。稀に強い人がいても何もおかしくはない、わね。)

 

ㅤ闇華は、もうひとつの切り札を出そうか迷っている。それを使えば色々めんどくさいが、このままでは殺されるだろう。しかし、堕天使の力を解放する、『堕天降臨』を使えば確実に勝てる自信があった。もう使うしかない、そう思った瞬間、体の底から力が溢れてきた。

 

「え!?」

 

ㅤこれは来羅も同じようで、驚いた様子だ。この魔力の感じには覚えがあった。というか、覚えしか無かった。彼女達の弟子、つまり焔斗の魔力である。

 

「成功……したのか?」

 

━━━━━数十秒前のこと。自分に出来ることはないか、と考えていた焔斗はあることに気づく。

 

(この世界にもバフスキルがあれば、俺もサポート出来るのに……!……いや、待てよ。想像を具現化したのがこの世界の魔法だよな。と、いうことはまさか、支援魔法も出来る……?)

 

ㅤそう思った焔斗は、慎重に2人の方向に向かって手をかざし、自分の魔力で能力を底上げするイメージをする。上手くいってくれと願いながら、魔法を確立するために唱える。

 

「支援魔法、『焔ノ鼓舞』。」

 

ㅤ焔斗の魔力が、彼女達を包み込んだ。

 

━━━━━そして今、焔斗の支援を受けた2人によって、形勢が逆転していた。

 

「な、なんだ!?あんたら、どこからその力湧いてきたんだ!?」

 

「わっかんなーい!けどお返しだよ!」

 

「このまま押し切る!!」

 

ㅤパワーもスピードも上がった彼女達は、節狐を圧倒していた。反撃を許さぬほどに押し込んではいるが、決定打にはなっていない。節狐も驚いてはいるが、じきに慣れて反撃をしてくるだろう。そうなると厄介だ、今のうちに攻め切らなければならない。

 

「来羅!あれ、やるよ!」

 

「おっけーヤミちゃん!」

 

ㅤ節狐を岩壁に突き飛ばした後、来羅が闇華の隣に行く。

 

「雷よ轟け!」

 

「風よ唸れ!」

 

「「『轟唸風雷』!!!!」」(ごうてんふうらい)

 

ㅤ闇華と来羅の合わせ技、『轟唸風雷』。風の魔力と雷の魔力が合わさり、絶大な威力を持って節狐を襲う。岩壁を消滅させるほどの威力だ。彼女も無事ではないだろう。

 

「ま、まだだ……まだあたしは戦えるぞ……!」

 

ㅤしかし、節狐はまだ立っていた。やる気の消えないギラギラした目で2人を睨みつける。

 

「こっちもまだだよ!」

 

「何!?……!?あんたっ……!」

 

ㅤ今の一瞬で、焔斗は節狐の懐にまで接近していた。既に『獄焔纏装』状態である。支援強化は自分にも効果があったのだ。

 

(俺はバファーだ。なにも支援が嫌いな訳じゃあない。けど、ここぞと言う時に攻めもできる、そんなバファーになりたかった。この世界でなら、そんな存在になれる……!)

 

「仕方ないから、いちばん美味しいところは、」

 

「弟子に譲ってあげるよ!」

 

「我が焔に朽ち果てろ!『終末ノ焔撃砲』!!!!」(しゅうまつのえんげきほう)

 

(俺は……攻撃も支援もこなす、”バーサークバファー”だ!!!)

 




今回はここまで!
いかがでしたか?

今回登場したif民モチーフは
東方ねこまさん(ねこま)←初登場

節狐さん(節狐)

Yamikaさん(闇華)

ララさん(来羅)

です!ありがとうございました!

ロイルですか?あれはオリキャラです!

次回

第19話『魔王再び』

お楽しみに!
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