ㅤ︎︎自称神を名乗る者によって異世界に飛ばされた結翔と紅葉。
「ってぇ……くそ、ここはどこだ……。」
ㅤ気づけばそこは森の中だった。とてもゲームの世界とは思えないリアリティ。森の香り、土の感触、動物の動き。
こんな高クオリティな映像をプレイヤー全員に提供していたら、確実にサーバーが落ちるだろう。つまり……
「ここはほんとに異世界……ってーことになるよな。姿は……ゲーム内と同じ、か。」
ㅤ紫髪のショート、赤眼にに黒の執事服、片眼鏡を装備した完全に執事さん状態。腰には愛用の必死にレアドロップ狙って作った片手棍。これが結翔のアバターで名前は『焔斗』(えんと)。
「どうやらこの世界では焔斗として生きた方が良さそうだな……。」
ㅤ自称神さんが言ってた行けばわかる、というのはこの辺りのことだろう。ちなみに、紅葉の方は紫髪のおさげ(長さは肩につくくらい)に紫眼、メイド服を着たこちらは完全にメイドさん状態。本人には黙っているが焔斗は結構好みの見た目なので一目見ようと後ろを振り返る。
「おい、紫紅〜。ぶ……じ……か……?……あれ?」
ㅤそこに居ると思っていた最愛の妹の姿は……どこにも、無かった。なぜ、と考えたがある言葉を思い出す。
『2人同時に送ったことは無いからなんかおかしくなったらどんまいってことで。』
ㅤなんかおかしく、というのが今のこの現象だとして。最悪のケース、紫紅は転移の際に消滅したという考えたくもないようなことを省く。となると、予定していた座標とは別に送られたと考えるのが妥当か。そもそも同じ場所に転移させるとは言ってないので意図的かもしれないが……
「なんにせよ、俺が転移してきた場所が正規の座標とするなら紫紅はどこに……。まさか、最初に行くべきではないような危険なところにいるのか……?くそっ!」
ㅤそう考えると立ち止まってはいられなくなり、駆け出そうとした次の瞬間。
「ガァウ!」
「なっ!?」
ㅤ森の影から狼型のモンスターが襲いかかってきた。持ち前の反射神経で何とか回避することが出来たが危なかった。しかし狼となると定番は……
「まあ、そうくるわな……。」
ㅤ森の影から次々と狼が姿を現す。彼らの縄張りだったのだろうか、それとも狩りの時間に重なってしまったのか。どちらにせよ、自分がどこまでの力を持っているかわからない状況で群れに囲まれるというのはあまりよろしくないケースだった。
「でも、やるしかねえか。……っ!」
ㅤ見事に連携の取れた動きで狼達が襲いかかってくる。ゲームの時の勘を頼りに何とか躱しながら自慢のメイスでぶん殴って各個撃破していく。
「よし、意外とやれるな……。ふっ!」
ㅤ流石にソードスキルは発動してくれないが、なんとか戦えていた。しかし、優勢の状況は長く続かなかった。狼達の親分と思しき狼が遠吠えをしたかと思うと、焔斗の10倍、いや。20倍程のサイズに巨大化し、2足立ちになったのだ。巨大な人狼……とでも言えばいいだろうか。
「いや、さすがにそれはやばっ!?」
ㅤ驚いてしまったというのもあるが、完全に回避が遅れた。大きく振られた腕に直撃し、吹き飛ばされる。
「ぐがっ……!?」
ㅤ木を何本かへし折りながら吹き飛ばされた俺は、あまりの痛さに声も出せずうずくまった。
(い、痛すぎる……!嫌な予感がしたから攻撃を受けずに戦ってたけどやっぱ痛覚はあるのか……!出血も多い、このままでは……)
ㅤここは異世界、痛覚無効システムなんて都合のいいものは無い。怪我をすりゃ痛いし、出血が多けりゃ意識は朦朧として死ぬ。そして焔斗も意識が薄れゆく中、迫ってくる人狼をうっすらと捉えて、ああ、こんな早くゲームオーバーか。と悔しく思った。そして意識が途切れる少し前、視界に紫の何かが映り、人狼を消滅させた。それがいかに不思議なことかと認識する余裕もなく、意識を失った。
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「……っ!」
ㅤ気づくとそこはベッドの上だった。一瞬今までのファンタジーな出来事は全て夢で、今目が覚めたのかと思ったが違った。見たことの無い部屋、必要最低限のものしか置かれてなく宿屋の一部屋と思われる。しかし……
「なんでだ?俺は確かに……」
ㅤそう、焔斗はあの絶体絶命の状況で意識を失った。つまり生きているわけが無いのだ。もう一度何が起こったか思い返していると最後の光景に違和感を感じた。というより、その一瞬が今生きている理由なのだと確信できた。
「紫の光、消えた人狼……。一体あの時何が……?」
ㅤ戸惑いながらも何故か傷は完治していたため、部屋から出る。宿主さんによれば、昨晩俺を背負った黒マントの人が急に来て、宿代と俺を置いて止める間もなく去っていったらしい。一体誰が助けてくれたのだろう、そしてどうして正体を明かさず消えたのだろうか。
ㅤ分からないことは多いが、とりあえず近くの村を教えて貰って宿を出た。ここは旅人が寄れるように建築された宿で、武器屋等は無いそうだ。資金的な問題らしいが、旅人が寄るのだから道具屋くらい置いて欲しいと思うのは当然のことだろう。
「近くの村は……ジーマ村。この辺は魔物もそこまで強くないらしいけど、気をつけていかないと。」
ㅤいくら相手が弱かったとしても痛覚が遮断されてないこの状況。痛みとはほぼ無縁の平和な世界で育った焔斗にとって痛さに弱いというのは最大の弱点となる。安全に確実に戦うようにしなければ次は本当に死ぬことになるだろう。
ㅤ宿主から聞いたとおりに川沿いを下りに向けて歩くこと約20分。ここまで何度か戦闘はあったが何とか無傷で乗り越えられている。
「……そこに誰かいるか?」
ㅤ魔物とは少し違う謎の気配を感じ木の陰に問いかける。
「……ふん、俺の気配には気づけるのか。なのに何故あんな狼ごときにやられた。それに、予想より回復が早いじゃないか。その身に纏う異色の気配以外ただの人間だったはずだが?」
ㅤ木の陰から黒マントにフードの被った何者かが現れた。この見た目の特徴と言い、先程の言動と言い、まさか……
「あんたがあの時俺を……?」
「正確には違う。あの場所にいるべきではない変異種の魔物が出たから処理しただけだ、お前はたまたま転がってたから助けた。纏う雰囲気もまるでこの世界の人間ではないような感じだったしな。謎の魔力を感じて調べに来たのと関係があるかと思ったんだ。」
ㅤ言ってることはだいたい理解出来た。同時に、焔斗達が転移してきたことは少なからずこの世界の住人知られている可能性が高いということも今の言動でわかった。謎の魔力が出ていた、というならそれを感じ取れるのがこの者だけということは無いだろう。しかし、まだ疑問はある。
「……あんたの言ってることはだいたい理解出来た。偶然とはいえ助けてくれたこと感謝する。だがひとつ聞きたい、なぜ正体を隠してまで俺から離れる必要があった?」
ㅤそう、仮に国からの依頼等で調べに来て助けたのであれば正体を隠す必要は無いはず。むしろその場にいた重要人物を助け、情報を聞き出すチャンスだったはずだ。しかしそんな俺の疑問はすぐに解けた。
「……人間に自分から危害を加える気は無いが、それでも恐れられてる存在だからな。そうするしか無かったんだよ。」
ㅤ人間に恐れられ正体を知られちゃいけないような人型の何か。つまをそれは……
「俺の名前はレーヴァテイン。”現界の放浪魔王”レーヴァテインだ。」
ㅤ彼が本来は人と敵対すると思われる存在であるということだった。
本日はここまで!
いかがでしたか?今回はレーヴァテインっていうキャラがSAOIF民の方のモチーフで作られています!ツイートでタグ付けします。
少し展開を急ぎすぎているかな……?でも自分の好きなようにやるって決めたからいっか!
次のタイトルは
第3話「禁忌の焔剣」
おたのしみに!