平凡メイサーの異世界冒険譚   作:えんてぃ

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色々とありはしたものの、何とかレーヴァテインに認められ、魔界に行けるようになった焔斗。しかし一方で、紫紅はしゃろんの魔の手に堕ちる。再会してからも一波乱ありそうな予感、一体どうなるだろうか……
再会編、開幕!
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〜再会編〜
再会編第1話『魔界への一歩』


 

「……いい加減起きろ。」

 

‌ ‌そう言いながら、レーヴァテインが焔斗の顔に冷水をぶっかける。……バケツ三倍くらいの量だ。

 

「!?っ、ごぼっ!げほっ、!?」

 

「やっと起きたか。」

 

「やっと起きたかじゃねーよ!?目が覚めた瞬間もう一回眠りにつくとこだったわ!」

 

 ‌あの戦いの後(今思い返すとずっと戦ってばかりだ)、レーヴァテインの治療を受け、傷は治ったもののずっと目を覚まさなかった焔斗。暫くは様子を見ていたが、我慢の限界になり、近くの川で水を魔法で収納してここで開放した、ということだ。

 

「……あ?……あー、そうか俺、」

 

「理解が追いついたか?」

 

「ああ、すまない。」

 

 ‌空は暗くなり、明るい月が見える。この世界の月はどうなっているのだろうか。この上に天界があるのだとしたら、この世界の太陽や月とは一体何なのだろうか。そんな疑問も浮かぶが、今はそれどころではない。

 

「……魔界には行ってもいいのか?」

 

「もちろんだ、お前は見事に認められた。案内してやる。」

 

「あー、そりゃどうも。ところで、そのお前ってのやめてくれねえか?焔斗って名前があるんだよ俺は。」

 

 ‌それを聞いて、少し驚いた様子を見せたレーヴァテイン。少し考える素振りを見せた後、口を開く。

 

「長いこと人と話すことなんてなかったから、相手の名前なんて気にしなくなっていた。すまない。じゃあ、そうだな……呼びにくいからえんてぃって呼ばせてもらうよ。」

 

「いやポ○モンかよ。……ま、まあいい。予想の斜め上行きまくった答えだったが。」

 

 ‌学校の友達が付けそうなあだ名を付けられて、少々驚いてしまったが、この際なんでもいいやと割り切ることにした。

 

「じゃあ、早速魔界に行かせてくれ。あんたから妹が危ないって聞いてから気が焦って仕方ないんだ。」

 

「……その割には、ぐっすり寝てたな。」

 

「言わないでくれ、これでも気にしてる。」

 

 ‌ここまでろくに休んでなかったとはいえ、妹がピンチと知りながらあそこまで熟睡してしまった。兄として結構気にしているのだが、疲れた状態で助けに行っても、失敗率が高くなるだけだと自分に言い聞かせた。

 

「まあ、いい。それなら直ぐに出発しよう。なに、ここからそんなに遠くない。おま……えんてぃなら、この辺の景色に見覚えがあるだろ?」

 

「ん?……ここは、最初俺が転移してきた……。」

 

 ‌あの時は昼だったため雰囲気はまるで違うが、確かにそこは焔斗が元の世界から転移させられた場所だ。狼の魔物に負けた、苦い記憶が蘇る。

 

「魔界への扉は、ここからそう遠くない。恐らく、えんてぃが転移してきたのがこの場所だったのも、別世界への扉がある場所の近くだったからこそ、じゃないだろうか。」

 

 ‌確かに、この世界の中でも三個ある世界(普通の人は天界を知らないので二個と思っているが)で、その異なる世界を行き来する扉があるのだとすれば、完全異世界から来た焔斗達を転移させるのにちょうどいい次元の歪み的ななにかがあるのかもしれない。

 

「……こっちだ。」

 

「ああ。」

 

 ‌森の中を歩いて進んでいく。急ぎたいのは山々だが、案内人が歩いているから従うしかない。それに夜の森は危険だ。下手に急いで魔物に襲われたら時間を取られてしまう。もう恐れる相手ではないだろうが、無駄な戦闘は避けたい。

 

「……俺の接し方が急に、普通の人間っぽくなったのに違和感を感じてるか?」

 

「?……あ、ああ。実を言うとそうだな。特に、あだ名の件。」

 

 ‌何故、こんな話を今するのかと疑問に思ったが、突っ込まずとりあえず聞くことにした。

 

「別に隠すことでもないから言うけどな。俺は、人型の魔族でもなんでもない、元は人間だった魔王なんだ。」

 

「なっ、普通の人間だったのか!?」

 

 ‌レーヴァテインから告げられた事実に、焔斗は驚いた。あの圧倒的で、いかにも敵の感じの魔力や技。魔王と言うくらいだから、魔族だと思っていた。

 

「元、な。ある日、俺は理不尽に大切な人を失った。その時の悲しみと怒りと、憎しみ。まあ色々感情はあったさ。それでこの力に目覚めた。まあ、この力を調べてたってのもあるかもしれないがな。」

 

「そう、だったのか……。」

 

 ‌思っていたよりも重そうな過去に、どう返せばいいのか思いつかない。安い同情なんて要らないだろう。

 

「えんてぃは疑問に思ったんじゃないか?いかに特別な力を持っていたとしても、なぜ殺さないのか。」

 

「まあ、な。強くなるやつがどうこう言ってはいたが、どうもそれだけじゃない気がしていたぞ。」

 

 ‌それが何かは分からなかったが、実際に何かは感じていた。妙に優しい気がしたのだ。

 

「今のえんてぃは、大切な人、家族である妹を救うために戦っているだろう?最初の出会いと言い、なんだか他人事に思えなかったんだ。だから最初から殺すつもりなんてなかった。どうにかして協力しようと思ったんだ。でも、優しくしすぎると意味が無い。この世界の過酷さを知ってもらわなければならない。だから、魔王という立場を利用して悪のように振舞った。」

 

「……なるほど、な。実際、そうして貰えてすごく助かったよ。ありがとう、レーヴァテイン。」

 

 ‌素直に礼を言う焔斗に、少し驚いた様子を見せたレーヴァテインだったが、すぐに苦笑する。

 

「礼を言うのは、まだ早いぜ。どうしても言いたいのなら、妹さんを助けてから、また聞かせてくれ。」

 

「ああ、そうだな。そうするよ。」

 

 ‌そんな会話をしながら歩いていると、少し開けた場所に出た。何かあるわけではないが、何となく空気が重い気がする。

 

「着いたぞ、ここだ。」

 

「え?でも何も……。」

 

 ‌てっきり、禍々しい扉が待ち構えていると思っていたため、辺をキョロキョロと見渡す。そんな焔斗を見て、レーヴァテインは呆れたようにため息をついた。

 

「あのなぁ、こんな森の奥、開けた場所に扉だけ置かれててもおかしいだろ?いつ見つけられるか分かったもんじゃない。もしそうなれば、魔界に行こうとする力も無いバカ共が来て終わりだよ。扉と言っても、空間の裂け目を開いて移動するイメージなんだ。」

 

「そ、そうか、それもそうだよな。すまない……。」

 

 ‌異世界に来て少し浮かれていたのか、その辺の判断がにぶっていたようだ。少し恥ずかしくて頭を掻きながら答える。

 

「あと、俺も魔界に行く。気にするな、俺も用があるだけだ。」

 

「用?……分かった、あんたの力に頼りきる気はないが、いてくれると助かる。俺は、魔界の知識もほとんどないしな。」

 

 ‌この世界に来て、大した情報も得られていない。闇華と来羅から聞いた情報はあるにはあるが、地図を持っている訳でもない。そのまま行けば、道に迷うこともあっただろう。

 

「ああ、道案内なら任せてくれ。……えんてぃの妹がどこにいるかはだいたい予想がついてる。恐らく、お前同様に変わった魔力を持っているはずだから、それを辿ることも出来るだろう。」

 

「そうか、なら考えているほど時間はかかりそうにないな。もっとも、今言ったのが外れてたらどうしようもないが。」

 

 ‌そんな会話をしながら、開けた場所の中心へと近づく。ここが魔界と繋がる場所と知らなければ、黄昏れるのにちょうどいいのかもしれない。

 

「さあ、開くぞ。」

 

 ‌レーヴァテインが手をかざし、魔界への入り口を開こうとする。

 

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 ‌魔界。

 

「……ん、あ……?」

 

「紫紅さん!?目が覚めたのですか!?」

 

 ‌しゃろんとの戦闘の後、紫紅を抱えてサトシと共に魔王城に戻ったトモ。色々気になることはあるが、とりあえず目を覚まさない紫紅をベッドで休ませていた。数日は目を覚まさないと思っていたのだが、数時間で目を覚ました。

 

「……トモさん?あれ、あたし、何を……?」

 

 ‌完全に心を失っている可能性も考慮していたが、何事も無かったかのように普通である。一安心したいところではあるが、館から出発する際、”お兄ちゃんを殺さなきゃ”と言っていた点が気になったため、意を決して質問をする。

 

「紫紅さん、急ですみませんが、お兄さんのことについて聞かせてくれませんか……?」

 

「え?お兄ちゃん?……見つけた、訳じゃないよね?なんで?探すの手伝ってくれるの?」

 

 ‌返答も至って普通。に見えるが、少し引っかかったため、質問を続ける。

 

「ええ、早く会いたそうにしていましたし、私もどんな人か会ってみたいです。一度食事もご一緒したいですね。」

 

 ‌そう質問すると、紫紅は少し悩む素振りを見せながら、こう答えた。

 

「んー、会うのは出来ると思うけど。食事?は無理じゃないかな。だって殺すもん。」

 

 ‌やはりこうなったか、と思いつつ、どうにか今の紫紅がどんな思考で動いているのか探ろうと、質問を続ける。

 

「……何故、家族であるお兄さんを殺すのですか?」

 

「へ?助けるためだよ。前にも言ったじゃない、しゃろん様からの教えで、必ず死んでしまうお兄ちゃんの未来を変えるために、蘇生の準備を整えてあたしが殺すの。そして蘇らせれば、その未来を変えられる。」

 

「……!……っ、ああ、そうでしたね。すみません、ちょっと忘れてました。」

 

 ‌もうしっかりしてよね、と言われながら、トモは大体の紫紅の現状を理解した。

 

(なるほど、記憶改竄までしていましたか……。確かにそこまでしないと操るのは難しい。でも、ここで紫紅さんだけの記憶を改竄した所で、様々な矛盾が生まれるはずですが……。しかし、ここで慎重に説得すればもしかしたら解けるかもしれないですね……。やってみましょう。)

 

 ‌そう考え、紫紅を本当の意味で目覚めさせるために口を開こうとしたその瞬間、脳内にあの声が響いた。

 

(余計なことはしない方がいいよ〜?今矛盾を指摘しても、心が、魂が傷つくだけ。それに、もし何かしようとしたら、あたしが仕掛けた魔法が発動して、彼女の魂を完全に砕くよ?あはは!そうなったらほんとにただの機械みたいなもの。お兄さんを殺そうとすることは辞めないけれど、助かる道はもうないだろうねえ……。ま、それはあたしとしても嫌だからやめて欲しいわけ。)

 

 ‌しゃろんだ。どこからかは知らないが、魔力通話を繋いできた。彼女の言うことを信じるなら、下手に刺激しない方がいい。恐らく、普段感じる矛盾位なら大丈夫なのだろうが、追求したらダメだ。

 

(……わかりました、手は出しません。あなたの思うようにならないにしても、紫紅さんが壊れるのは私にとっても最悪の状況です。)

 

(あはは!さっすが執事さん、理解が早くて助かるよ!じゃ、そゆことで〜。あ、ちなみに、その子のお兄さんは近いうちに来るから。こちらから探す必要はないよ〜。)

 

 ‌そう言い残して、しゃろんは魔力通話を切った。どうやら、何らかの手段で、紫紅の兄の状況を把握しているらしい。

 

(紫紅さんのお兄さんが無事、ということは今のでわかりました。そして、ここに来るのであれば、紫紅さんの正気を取り戻すには彼の力が必要になるでしょう。……このまま様子見なんて、嫌ではありますが……。今は我慢です。)

 

 ‌仮に行動を起こすなら、紫紅の兄、焔斗が来てからだと心に決め、普段通りの執事の業務に戻る。

 

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 ‌現界、商業街ミカルコ。クッキー屋《Dream Canola flower》にて。

 

「んー!今日も完売!」

 

 ‌そう言いながら背伸びをするのは、この店の看板娘であり店主の夢菜(ゆな)。身長は百六十センチくらいで、ファンタジー界の精霊術師のような服装に、胸ポケットに二本の菜の花を添えた焦げ茶色のエプロンをしている。肩までの銀髪に薄いピンクの目だ。この菜の花は、ある日常連の親子の女の子が「ぷれぜんと!」と持ってきて以来、さし込んでいる。魔法で落ちないようにしている上、鮮度も保たせている。店の名前から想像がつくだろうが、菜の花は店内にもいくつか飾っている。蜂対策はしているので、その辺は大丈夫だ。

 ‌店内は黄色、オレンジ基調で、差し色に茶色が使われている。暖かい色味だ。客からは実家のように落ち着く、等と評判である。クッキーも高価ではなく、子供がお小遣いで買えるレベルだ。そのくせ美味いので客が途絶えない。多い時は、店の外まで行列ができる。そんな人気店だ。

 

「お疲れ、夢菜。こっちも明日の準備が終わったぞ。」

 

 ‌奥にある厨房から出てきたのは、彼女の兄である魄夢(はくむ)。身長は百六十五センチくらいで、焦げ茶色のパティシエ姿だ。短めの銀髪に、薄いピンクの目をしている。

 

「はーい!じゃあ、あとはこっちの掃除だけだね!すぐ終わらせるね〜。」

 

「いや、急がなくてもいいけど……。ん?おい。」

 

「ん、何?」

 

「どうした?何かあったか?」

 

 ‌いつも通り明るくしていたつもりだったが、やはり兄の目は誤魔化せなかったようだ。いつもと少し違うと感じられたらしい。隠すのは諦めて話すことにした。

 

「うん、あのね……仕事中、三、四時間前かな?に、すごーーーーーーく嫌な夢の気配を感じたの。見てる人の心を壊しそうなレベルの。」

 

「何?それほどまでか。」

 

 ‌夢菜の魔力属性は『夢属性』。ほとんど居ないタイプの魔力なのだが、起きてる間もたまに、他人の夢を感じ取ってしまう体質になっている。もちろん、内容までわかる訳では無いが、幸せな夢、嫌な夢、くらいはわかる。

 

「多分、だけど……。自然に見る夢じゃなくて、人為的に見させられた夢。それで、心が壊れていくのを少し感じたの。気になっちゃって……。」

 

「なるほどな……。でも、それじゃあどこの誰とか分からないし、今考えても仕方ない、としか言えないな。……もし辛いなら明日は休むか?」

 

 ‌夢の気配を感じるだけなので、個人の特定など出来ない。それでモヤモヤしても仕方の無い事だ。それは夢菜も分かっていて、いつもなら全然気にしていないのだが、今回はなんだか違うらしい。しかし、話してスッキリしたのか、ふぅ、と一息つくと、呆れたように返事をした。

 

「もう、私が休んだら、接客はどうするの?あ、もしかして、明日こそ接客の練習してくれるの?やったー!」

 

「あ、いや、そういう訳では……。」

 

 ‌このまま夢菜に押し切られて、次の日、魄夢は接客の練習をすることになるのだが、出来なさすぎてお客さんを捌ききれなかった。そのため、途中で夢菜に交代だ。ちなみに交代の瞬間、女性客はしょんぼりとし、男性客は喜んだ。本人たちは気づいていない。

 

(それにしても、あの時感じた嫌な夢見せられた子、近いうちに会いそうな気がする……。って、そんなわけないか!)

 

 ‌考えても仕方ないことを考えるのはやめて、いつも通りの日常に戻る。

 

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 ‌天界、ロイルの研究所。

 

「ふむ、ほぼ完成に近いですね。あとは最終調整、テストを終わらせて問題がなければ、すぐにでも動かせます。」

 

 ‌そして、神造人間の調整をしていたロイルの部屋に、ノックしてから入る者がいた。

 

「ロイルさん、大事な話が。」

 

「ん?おや、珍しいじゃないかベル君。君がここに来るなんて。」

 

 ‌銀髪ロングを後ろでたばねた、高身長の天界人だ。彼も、今回の降臨メンバーの一人である。自分に自信を持てないが、実力はほかから認められている。戦闘時に発動する技が、性格を変えるほど強力なのだ。序列は六位。あのねこまの、ひとつ上だ。

 

「えっと……その、降臨、というか。下界に干渉してもいい時期がかなり早まって、あと一、二ヶ月後には干渉してもいいって、唯一神様が。」

 

「なんだって!?それは本当か!?」

 

「!?……う、うん……。あと、ベルじゃなくて、ベル=燦=グロピウスってフルネームで呼んでほし……聞いてないね。はぁ。」

 

 ‌ベル=燦=グロピウス……略してベルの訴えもロイルには届かず。ロイルは今の驚きで思考に入っていた。

 

(あと一、二ヶ月後だって……!?いくらなんでも早過ぎないか……?その時はまだ半年経ったくらいだぞ……!?元々一年様子見ということなのに、特例すぎる……。たしかに、これまでの異世界人に比べて、下界に与えた影響は今の時点で大きい。)

 

 ‌そんな彼を見て、ベルはさらに声をかける。

 

「えっとね、まだ唯一神様が仰ったことがあるんだ。最近、ロイルさん下界の様子は見てる?今まあまあ凄いことになってるんだ。」

 

 ‌その言葉を聞き、ロイルは急いで下界監視モニターを起動させる。この声は届くんだ……と肩を落としてるベルは眼中にない。

 

「なるほど、理解しました。つまり唯一神様は、今のこの兄妹が再会して、潰しあって終わるならそれでよし。もし、両方、もしくは片方が生き残るのであれば、少し様子を見て決める。その期間が今言った期間ってことですね。」

 

「さすがロイルさん、理解が早いや。そうだよ、その解釈であってる。それとね、唯一神様が、ロイルさんに個別に話したいことがあるって言ってたよ。」

 

 ‌個別に話したいこと。一体何なのかさっぱり分からないが、ベルはこんな嘘をつくような人では無い。わかった、と返事をしようとした瞬間、さらにもう一人部屋に入ってくる者がいた。

 

「ロイルさーん、って、なんで君もいるのさ、ベル。」

 

「俺は……唯一神様のお言葉を伝えに来ただけ……。」

 

 ‌入ってきたのは、ねこまだ。正直言ってこの二人は仲が良いとは言えない。

 

「まーだそんなオドオドしてんの?戦う時はあんなに気が強い癖に、バカにしてんの?」

 

「し、してないよ……。それに、そんなに強くな」

 

「まただよ!またそんなこと言うんだ!僕に勝っておきながら!それが煽りってわかんないわけ!?」

 

 ‌どうやら、戦闘時は技で豹変して相手をボコボコにするのに、普段は気弱で自信ない、というのが気に食わないらしい。技の影響というのは彼も分かってはいるが、実際そんなギャップを見せられると思うところがあるのだろう。

 

「まあまあ、二人とも仲良くしなさい。同じ降臨メンバーだろ?私は、唯一神様のところに行くから。部屋で暴れないでよ?今最終調整中なんだから。」

 

 ‌それだけ言って、ロイルは唯一神様のところに向かう。天界の中心、空中に建てられた城に唯一神様はいる。普段は天界の誰でも入れる訳では無い。無論、ロイルだって普通にふらっと入ったりはできない。が、今回は唯一神様からのお呼びのため、門番に話して身分証明をすればすんなり入れた。先に門番に話を通して置いてくれたのだろう。

 ‌案内人に連れられ、城の中を歩く。据付には来れて居ないが、ちらほらロイルが作ったものが見受けられて、少し嬉しい気持ちになる。

 

(こうして、自分が製作したものが実際に使われているのを見るのは、いつになっても嬉しいものですね。)

 

 ‌そんなことを思っていると、唯一神様のいる部屋の前に着いたらしい。「どうぞ。」と案内人が扉を開けて言う。ロイルは心を引き締め、部屋へ入る。

 

「来たか、ロイルよ。」

 

「はっ、ロイル、ここに。」

 

 ‌基本的に、唯一神様の顔を謁見することは出来ない。オーラで隠されているため、顔を上げても見えないのだ。見たことがあるのはおそらく、もっと近しい天族、もしくは唯一神様が出るほどになった敵。後者に関しては生きているわけが無いが。

 

「どうだ、神造人間の件は。順調か?」

 

「はい、現在最終調整の段階に入っております。遅くとも、あと一週間程度で完成になるかと。」

 

「ふむ。それは良かった。そこで提案なのだが……。」

 

 ‌ここで唯一神様から告げられた提案は、本当に驚くものであった。思わず伏せた顔の口角が上がる。

 

「承知致しました。そのような特権を頂き、誠に感謝申し上げます、唯一神様。」

 

「うむ。この件については天界全体に、こちらから広めておく。要件はそれだけだ、下がって良いぞ。」

 

「はっ。失礼致します。」

 

 ‌唯一神様の部屋から退室し、また案内人に連れられて城を出る。城から出た後も、口角が下がることは無かった。

 

(まさか、このような特権を頂けるとは……。長年生きてきましたが、ここまで心躍るのはいつぶりでしょうか。クク、楽しくなってきましたよ……。ククククク……)

 

 ‌帰る道中の彼を見た者は皆、どうしたのだろうと不思議に思ったが、この後発表された彼が得た特権を聞いて、納得したのだった。

 

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 ‌現界、魔界への扉。

 

「よし、入れ。」

 

「ああ。」

 

 ‌レーヴァテインが開けた魔界への扉、空間の裂け目のような所に入る。中は真っ暗だが、不思議と真っ直ぐの感覚はわかる。レーヴァテインと共にその中を歩く。

 

「すぐに魔界に出る。出たら魔物もいるかもしれないから、油断するなよ。」

 

「了解。」

 

 ‌そうして歩いていたら、出口と思えるような裂け目が見えてきた。そこに向かおうと急ぎ足になったその瞬間。

 

「キャハハハ!」

 

「!?」

 

 ‌謎の魔物が、複数体現れた。戸惑う焔斗と魔物の間にレーヴァテインが入り、紫焔で焼き払う。しかし、まだ魔物は湧いてくる。

 

「す、すまん助かった。なんだ、こいつらっ。」

 

「……ちっ。あの魔女、使い魔を残していきやがったな。おい、次焼き払ったあと、えんてぃは出口から出ろ!遠く見えるがすぐそこだ!この中でこの扉を操れない者が、もし攻撃を受けたら、一生ここに閉じ込められるぞ!俺はこの雑魚どもを片付けてから行く、いいな!」

 

 ‌ここに敵がいる、というのは相当やばいらしい。完全に理解できた訳では無いが、ここはレーヴァテインに従うことにした。

 

「よし、行け!」

 

 ‌そう考えている間にレーヴァテインが第二波を焼き払う。その隙を縫って、焔斗は出口に駆け込んだ。それを確認して、レーヴァテインは出口側に回り込み、使い魔が外に出ないよう立ち塞がる。

 

「おおかた、えんてぃだけ魔界に送ると思ってたんだろうが……。残念だったな、こんな雑魚じゃいくらいても五分も要らない。」

 

 ‌そう言いながら禁忌ノ焔を纏い、使い魔達を殲滅し始めた。

 

「……ここが、魔界か。」

 

 ‌裂け目から出ると、魔界の景色が一気に広がった。ダークテリトリーに似ている、というのが最初の感想だ。次に、現界より明らかに強い空間魔力の中で、いっそう強い魔力を感じた。数人が同じ場所にいるようだ。その中の一つに、何故か親近感の覚える魔力があった。

 

(紅葉……紫紅の、魔力か?)

 

 ‌居てもたってもいられず、その魔力のある場所へ移動を開始した。




今回はここまで!いかがでしたか?

おまたせしてすみません、再会編開幕になります!

今回登場したSAOif民モチーフは、

Revatainnさん(レーヴァテイン)

トモさん(トモ)

しゃろんさん(しゃろん)

夢菜さん(夢菜と、魄夢考案者)(初登場)

ベル=燦=グロピウスさん(ベル=燦=グロピウス)(元if民)(初登場)

ねこまさん

でした!ありがとうございました!

次回
再会編2話『』……タイトル考え中です!お楽しみに!
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