再会後、一先ず一件落着となった焔斗と紫紅は、魔王城ナンバンで休息をとる。次の日には出発するという早いスケジュールではあるが、いつまでもここでお世話になる訳にも行かない、と判断した。魔王からの討伐依頼。簡単なように言われていたが、そう簡単には何故か思えない二人。そんな疑問を抱えながら、封印の地へ向かう。
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ㅤ魔界の空を、兄妹で手を繋いで飛んでゆく。別に飛行に必要な訳では無いが、二人とも何となく手を繋いだ。確かに隣に愛する妹が、兄がいると強く実感するために。ちなみに、地面の影の中にはしれっとレーヴァテインがいる。現界に戻るメンバーで扉を開けるのは彼だけなので同行してもらっている。影にいるのは空気を読んでいるからか、単に隠れたいだけなのかは分からない。
「封印されてる魔物、一体どんなやつなんだろうな。」
「んー、あの魔王シハク様が面倒って言うくらいだし、そこそこは強いんじゃない?あたし達の敵にならないような魔物を練習台に選ぶはずないと思う。」
ㅤ確かに、紫紅の言う通りだ。シハクは練習になると言った。ならば、それ相応の強さでなければ困る。勝てないことは想定していな……いや、それは分からない。むしろ生死をさまよう激戦になることも予想される。それなりの覚悟は必要かもしれないと思った。
「あ、そうだ。寄りたい所あるんだけどいいか?」
「?どっち?」
「大丈夫、このまま行ってれば視界に入る。」
ㅤわざわざ止まって方向を聞いてくる紫紅に、焔斗はそう答える。紫紅を助けに行く際にお邪魔した、ゴブリンの村に連れていこうと思ったのだ。
ㅤしばらく飛んでいると、焔斗に見覚えのある村が視界に映る。
紫紅に合図して地上に降り立つ。
「ここ?随分小さい村だけど……。住んでるのは、ゴブリン?」
ㅤそう問いかけてくる紫紅に、ここのゴブリン達とあったことを簡単に話す。
「なるほど、ね。それはあたしもお礼しなきゃ。」
ㅤそう呟く紫紅に、ここに突っ立っててもなんだからと村に入ろうと促す。しかし、村に入るより先に、向こうから迎えがあった。
「強き者よ。無事、再会できたようで何よりでございます。」
ㅤ片膝をつき頭を垂れるめちゃ強そうなゴブリン。やはり、この状況はいつになっても慣れない気がする。
「結局、ここで暮らしててもそこまで魔界に住んでる人達とは関わり持たなかったけど、あたし達のイメージのゴブリンとは違うわね。」
「だろ?あ、一応紹介しとく。この可憐な美少女が俺の妹、紫紅だ。よろしくな!」
ㅤそう言って紫紅の肩を抱き寄せながら紹介する。
「も、もう、やめてよお兄ちゃん。何その紹介の仕方、はずかしいよ〜。」
ㅤ恥ずかしがりながらも、嫌ではなさそうな紫紅。可愛いなあ。
「いやはや、噂には聞いておりましたが、本当に可憐なお嬢様ですな。我々にはむしろ目に毒かもしれません。」
ㅤそう言ってガハハと笑うゴブリンの長。ちらほらと後ろに見える男ゴブリンは、紫紅に見惚れているような者もいる。可愛いもんね、わかる。
「言っとくけど、紫紅は俺より魔力が強いからな。可愛いのはわかるけど下手に手出したらどうなっても知らないよ。」
「お兄ちゃん以外興味ないから気をつけてね〜?」
ㅤそれはそれで心配なのだが、とりあえずゴブリン達は顔を青ざめさせてささっと消える。一応、魔力を感じればわかるはずなのだが、可愛さゆえに感じるのを忘れていたらしい。仕方ないね、可愛いもの。
「そういえば、あんたの名前は?」
「あ、申し遅れました。ここのゴブリンの長、メーゴスです。」
ㅤ改めて握手を交わして挨拶をする。相変わらずごっつい手だなと思った。ちなみに、紫紅を見つめていたゴブリンがいたので、彼女が悪戯心でウィンク投げキッスをしたら、そのゴブリンが幸せそうにぶっ倒れていた。魅了スキルでも手に入れたのかな。
「これから、二人でちょっと強めの魔物を倒しに行くんだ。ちょうど道中だったし寄ったんだよ。」
「なるほど、大丈夫だとは思いますがお気を付けて。」
ㅤなかなか、この固い感じ消えてくれないなあと思いながら会話する。本当はもっと砕けた会話がしたいのだが。
「なんか、何もせずにここにいるのも悪いし、もう行くよ。ってか、意外と妹にメロメロになってる奴もいて、これ以上被害者増やさないように。」
ㅤ焔斗は苦笑しながら、紫紅が可愛くてノックアウトされたゴブリン達を横目に見る。これにはメーゴスも苦笑し、「そうですね。」と答える。
ㅤ短い時間ではあったが、ゴブリン達に別れを告げ(倒れるのが面白いのかウィンク投げキッスでさらなる被害者を増やす紫紅)、今度こそシハクからの依頼の地へ向かう。
「ゴブリンさん達面白かったね!」
「あんまりからかってやんなよ……。」
ㅤ触れることなく可愛さだけで何人ものゴブリンをノックアウトさせた紫紅がくすくすと笑う。あまり調子に乗りすぎるとそのうち痛い目に合いそうなので、早めにやめさせた方が良さそうだ。
「……近いな。ってか、あれか?」
ㅤしばらく飛んでいると、前方に闘技場のような施設が見え始める。てっきりもっと封印っぽいところかと思ったので拍子抜けだ。しかし、その闘技場には魔力の壁のようなものが球場に貼られており、恐らくあれが封印なのだろう。
「……似てるね。」
「ああ。」
ㅤその闘技場は、SAOでキリトとヒースクリフが、一回目に戦った闘技場に酷似していた。この世界に来てから思ったのだが、所々SAOと似ているところがある。これが、何を意味するのかはまだ分からない。
「見えないな。」
「そうだね、やっぱり中に入らないとダメなのかな?」
ㅤシハク曰く、とてもよく動き回るため、もし封印を解いて戦うとなると色々と面倒なことになるとのことだ。そこで、逆に封印の中に二人が入り討伐。後に封印している結界を解除してしまえばいい。
「行けるか?紫紅。」
「いつでもいいよお兄ちゃん。」
ㅤ紫紅と頷き合い、シハクから教えてもらったように、結界に魔力を流し込む。すると、人一人通れる分の穴ができる。紫紅を先に通して、焔斗も中に入り結界を閉じる。
ㅤ闘技場の中の通路を歩いてゆく。コツ、コツと二人の足音が響き渡る。そして、戦闘フィールドに出る。その瞬間、
「キシャァァァァァァ!!!」
「!?……なっ!?」
「お兄ちゃん避けて!」
ㅤ封印されていた魔物の見た目に驚き、一瞬動きが止まる。紫紅の声がなければ、回避出来なかったかもしれない。ひとまず二人で空中に退避する。
「スカル……」
「……リーパー?」
ㅤ封印されていた魔物は、SAOの七十五層フロアボス、スカルリーパーに酷似していた。少し違うと言えば、骨の翼が付いていることくらいか。そして、翼があるということはつまり───
「来るぞ!」
「ん!」
ㅤ地面から飛び上がり、そのまま焔斗達の所へ急接近する。あれだけ脚のある奴が飛んでまで接近してくると、とても見た目気持ち悪い。
ㅤ大きな鎌の付いた両腕で二人を切り裂こうと、猛烈な攻撃が始まる。正直、知っているスカルリーパーの攻撃速度よりかなり速い。この攻撃がどこまで脅威か分からないので回避に徹しているが、このままだとジリ貧だ。
「紫紅、俺が受ける。その隙を攻めろ!」
「っでも……、分かった!」
ㅤ心配なのか何か言いたそうだったが、そんな暇はないと分かったのか強く頷く。
ㅤ鎌が焔斗に振り降ろされる。それを盾で正面から受け止める。が、空中に浮きながらとなると衝撃に耐えきれず、下に叩き落とされる。
「ぐっ……重いな!紫紅降りろ!空中じゃダメだ、慣れて無さすぎる!」
ㅤ恐らく、ずっと空中で戦うのに慣れている者であれば耐えれるだろう。だが、まだ飛べるようになったばかりの二人では、普通の戦闘はまだしも、今のような状況では魔力のコントロールが難しい。ここは大人しく地上戦が無難だろう。
「お兄ちゃん、あんまり舐めてちゃだめそう?」
「ああ、様子見なんてしてる暇なさそう、だっ!」
ㅤ会話している間にもスカルリーパーに似た魔物はどんどん攻撃を仕掛けてくる。それを回避して一旦距離を取り、纏装を発動する。
「『獄焔纏装』!」
「『紅雷纏装』!」
ㅤ二人は息を合わせて魔物に接近する。魔物は少し驚いた様子を見せたが、すぐに目の前の二人を殺すべく、鎌を振り降ろす。それを、焔斗が受け止め弾き、紫紅が追撃してさらに体勢を崩させる。
「やるよお兄ちゃん! 」
「任せろ!」
「「『焔雷激光』!!!」」(えんらいげきこう)
ㅤ紅い焔と紅い雷の猛攻が魔物を襲う。焔と雷が触れる度爆発を起こし追加で傷を与えてゆく。無論、その爆発には巻き込まれないように戦っている。
「キシャァァァァァァ!!!」
「なっ!?」
「きゃ!?」
ㅤこのまま押し切ろうとしていたが、魔物が甲高い雄叫びを上げ、強力な魔力の波動を起こして焔斗達を闘技場の壁まで吹っ飛ばす。
「ぐ……。」
ㅤ闘技場の壁を貫通することはなく、埋まる程度に叩きつけられる。この二人にダメージを与えるほどの攻撃なら、普通の壁は貫通するはずだ。だが、ここは余程固い素材で作られているのかそんなことは無かった。貫通して衝撃が逃げない分、体の内部に衝撃をモロに受けることになった。
「お兄ちゃん!逃げて!」
ㅤダメージは受けたものの、焔斗ほどでは無い紫紅が壁からの脱出を試みながら叫ぶ。そもそも、この二人は力に差がある。紫紅の方が圧倒的に強いのだ。戦い方を紫紅に合わせて攻撃は出来ても、受けた時のダメージは桁違い。焔斗は未だ動けずににいた。そして、弱った者から仕留めるのが魔物というもの。魔物の鎌が焔斗の心臓を貫こうと迫る。
「くっ!」
ㅤ焔斗は自身の魔力を爆発させ、無理やり壁から脱出する。迫り来る鎌を上手く躱し、紫紅の元へ飛ぶ。
「大丈夫?お兄ちゃん!」
「もちろんだよ紫紅、もう一人になんてしない。」
「……っ!うん!」
ㅤパァっと笑顔になる紫紅。今の言葉に元気をもらったのか、「よぉーし!」とストレッチをしながら魔力を練り上げる。
「紫紅、俺のバフ、掛けるぞ。」
「え、できるの!?お願い!」
ㅤその返事を聞き、『焔ノ鼓舞』を発動させる。紫紅を焔斗の焔のオーラが纏う。数々のバフ、この世界では支援魔法が紫紅の能力を底上げしていく。
「お兄ちゃん、こっちでもバファーなんだ!」
「ほんとはもっと戦えるといいんだけどな。今の実力差だと、こっちの方がいいかなって。まあでも、俺も自分にかけられるし戦えるからな。」
ㅤ支援役も攻撃役になれる、それは敵にとって厄介なことでしかない。今現状での唯一の救いは、この支援魔法を自身にかけても、元の紫紅の強さほどでは無い、ということくらいか。技術で差がないように見せてはいるが、割とギリギリなのである。
「行くよ!『菖蒲雷撃』!(しょうぶらいげき)」
ㅤ焔斗の支援魔法もあることから、魔力の消費が激しい『紅雷纏装』を解き、『紫雷纏装』状態で攻撃を仕掛ける。この状態でも、支援魔法なしの『紅雷纏装』より威力が上がっている。それほどまでに、焔斗の支援魔法はチート級だった。
ㅤ紫紅のメイスが、魔物の骨をどんどん砕いていく。さすがに一発で破壊とまでは行かないが、それでも確実にダメージを与えていた。
「やっぱりお兄ちゃんは凄いや!力が溢れてくるよ!」
ㅤ笑顔でメイスを振り回し、対象を破壊していく様はどう考えてもヤバい奴にしか見えないが、一応まともである。
「キシャアアアアア!」
ㅤ魔物が素早く後ろに撤退し、口を大きく開く。紫紅は構わず距離を詰めようと突っ込む。
「紫紅、気をつけろ!なにかしてくるぞ!」
「わかってるよお兄ちゃん!」
ㅤ魔物の口内で高速に練り上げられた魔力弾が、紫紅に向かって放たれる。もしかしたらこれを結界に当てたら出られるんじゃないだろうか、と思えるほどの威力だ。だが、紫紅には無意味だった。
「そんなのであたしは倒せない!」
ㅤ飛んできた魔力弾を、メイスで思いっきり打ち返す。その際、紫紅の魔力も込めたサービス付きだ。雷の速さで迫る魔力弾を躱せるはずもなく、魔物に直撃し、爆散する。ボロボロになった魔物が、地響きを立てて倒れ込む。
「やった!やったよお兄ちゃん!倒した!」
「ああ!……いや、待て紫紅、まだかもしれない。」
「え?」
ㅤ一瞬喜びかけたが、肝心の魔物の魔力の気配がほとんど衰えてないことに気付く。紫紅を一旦焔斗の傍まで下がらせて様子を見る。
「っ!動いた!」
「やっぱりまだか!」
ㅤゆっくりと起き上がる魔物。そして、
「キシャアアアアアアアアアア!」
「う!?」
「うるさ!?」
ㅤ耳をつんざくような雄叫びを上げながら、今まで受けた傷が再生していく魔物。嘘だろ、と見守る中、再生が終わると一際大きな雄叫びを上げ、全身が黒く変色した。白い骨の時より目の赤い光が際立つ。
「強化か?気をつけろ!」
「う、うん!」
ㅤ雄叫びも止み、動かずに止まっている魔物。いつだ、いつ仕掛けてくると内心に焦りがではじめる。すると、微かに動いたか、と思った瞬間、魔物の顔が目前にいた。
「な!?」
「速すぎるわよ!?」
ㅤ距離をとっていたのは約百メートル。それを、ずっと見ていたのにも関わらず、接近されるまでの動きがまるで見えなかった。冷や汗をかいてくる、本当に勝てるのかと不安になる。どうにかこの時の攻撃は躱しきったが、本当にギリギリな上、そこまで連撃をしてきていない。本気を出されたらやばいかもしれない、と思う。
「お兄ちゃん狙われてる!」
「くそっ!」
ㅤ厄介な支援魔法を掛ける焔斗から仕留めようと、魔物はターゲットを焔斗に固定する。目に捉えられぬ程の速さで接近、攻撃を繰り返す相手に、焔斗は限界を感じていた。
(まずい、このままじゃ押し切られる……!)
「お兄ちゃん!いまたすけ、きゃ!?」
「無理するな!大丈夫だ!」
ㅤ無理に間に割り込んでサポートしようとする紫紅。だが、焔斗の所にたどり着くまでに、魔物の多い足や、尻尾そして翼に邪魔をされ、思うように近づけない。
「ちっ!」
ㅤ埒が明かない、と焔斗は一旦大きく飛んで空に逃げる。この選択が、不味かった。魔物も飛べるが、そっちはそこまで速くないだろうという推測で動いてしまった。
「嘘だろ!?」
ㅤまるで瞬間移動かのような速度で、空中にいる焔斗の背後に回る魔物。そのまま回転しながら、尾で薙ぎ払うように攻撃を仕掛ける。もちろん、尾の先には鋭い刃がついている。
「ぐっ!」
ㅤ何とか防ぎはしたものの、空中では踏ん張ることも出来ずにそのまま吹き飛ばされてしまう。地面にたたきつけられて怯んでいるところに、急接近してきた魔物が鎌を心臓目掛けて振り下ろす。
「させない!」
ㅤ焔斗を吹き飛ばしたことにより、間に入る隙が出来たことを見逃さなかった紫紅が、魔物の攻撃を防ぐ。しかし、弾き返すほどの力は出せず、受け流すような形で対応する。焔斗に当たるかどうかスレスレのところに鎌が突き刺さる。このまま反撃しようと構える紫紅、その瞬間。
ㅤグサッと、後ろでなにかが刺さる音が聞こえる。恐る恐る振り返ると、体を海老反りのようにした魔物の尾が、焔斗の胸に突き刺さっていた。
「お、お兄ちゃ……ん?」
ㅤ突き刺さった尾が引き抜かれて、鮮血が吹き出る……ことは無かった。焔斗の体が焔となって消える。
「なめんなよ骨野郎!『狂焔ノ槌樂』(きょうえんのついらく)」
ㅤ魔物の脳天から思いっきりメイスで叩き込む。不意をつかれた魔物はもろにそれを受け、顔面を地面に叩きつけられる。
「一旦離れるぞ!」
「う、うん!」
ㅤさすがに今ので倒せる訳もなく、無理に押しても危ないので一旦退く。そして、焔斗は紫紅に手を差し伸べる。
「紫紅、やれるか?」
「もちろん!倒そう、二人で!」
ㅤ二人で頷き合い、手を繋ぐ。お互いの魔力を共鳴させ、高め合う。
「「『紫雷紅焔纏装』!」」
ㅤお互いが、紫の雷と紅い焔を同時に纏う。こうなれば手を離しても大丈夫だ。もしかしたら出来るかもと思っていたが、無事成功した。
「『焔ノ鼓舞』」
ㅤ更に、焔斗による支援魔法で能力が底上げされる。二人とも第一段階の纏装術の掛け合わせだが、完全に第二段階の纏装より強くなれている。
「やるぞ、紫紅。」
「おっけー、お兄ちゃん。」
ㅤ立ち直った魔物がこちらを見て、一瞬たじろぐような様を見せる。が、直ぐにあの高速な動きで二人を始末しようと接近してくる。
「「遅い。」」
「キシャアアアアア!?」
ㅤバキッと音がなり、魔物の両腕の鎌が粉砕される。焔斗と紫紅が軽く一発、鎌の腹部を叩いただけで粉砕された。続いて後ろに回り、尾の刃も粉砕する。
「「たぁ!」」
ㅤ魔物を二人がメイスでぶん殴りぶっ飛ばす。先程までとは形勢逆転、完全に魔物を圧倒していた。
「最後は決める?」
「うん!一緒に!」
ㅤボロボロにされ虫の息の魔物に向かって、トドメの一撃を撃つべく、二人は魔力を練り上げる。
「終わりだ(よ)!『紅蓮竜胆雷焔撃』!」(ぐれんりんどうらいえんげき)
ㅤ練り上げられた魔力による、二人の合体技。魔力の共鳴なんてものは、普通の人にはできない。余程寝食を共にしたものか、兄弟などの血縁。そしてその上に、相手への絶対的な信頼が必要となる。ブラコンとシスコンの兄弟愛による絆が、この絶大な力を生み出したのである。
ㅤ雷焔に飲まれて跡形もなく魔物が消滅する。下手すりゃ死ぬくらいのめちゃくちゃ相手だったが、なんとか勝ててよかったと安堵する。もう一度大丈夫なことを確認して、結界を完全に解く。
「……。」
「……ん?どうした紫紅。頬膨らませて。」
ㅤちら、と紫紅の方を見ると、なぜかは分からないが頬を膨らませて黙り込む姿が目に映った。一体何なのか分からず問いかけると、怒ったように答えた。
「お兄ちゃん、心臓に悪いからあーいうのは事前に言ってよね!!!死んじゃったこと思ったんだから!!!」
ㅤ恐らく、先程の刺された時のことであろう。そんなこと言われても、咄嗟にやった事だから伝えようにも出来ないのである。と説明すると、魔力による念話的なのがあると教えてもらった。これで魔力を感じれる距離なら、何時でも通話のようなことが出来るらしい。ちなみに、今はそれを使って紫紅がトモに依頼達成の連絡をしている。便利なものだ。
「よし、おっけー!行こっかお兄ちゃん!」
「ああ、だけどその前に腹ごしらえにしよう。」
ㅤ魔力回復も兼ねて、一先ずトモから貰った弁当で食事にすることにした。あまり焦りすぎるのも禁物だ。追わない、と決めたが、例の黒幕はどう動いてくるかも分からない。もしもの時に対応できるよう、休憩も大切である。弁当箱を預けておいたレーヴァテインが影から出てくる。
「……お前ら、俺は荷物持ちじゃないぞ……。」
「う、ごめん。戦闘中に落としたりして食べれなくなったら嫌で……。」
「まあいい……。食べ物を粗末にするのはダメだからな……。」
ㅤそう言って、焔斗に弁当箱を渡すと、再び影に潜り込んだ。彼は食べないらしい。
「あの人、現界の魔王?だっけ。強いのはわかるんだけど、なんか……。」
「まあ、元人間だしな。強さの面での恐ろしさは戦ってみればわかると思うけど、今はやめとけ。」
ㅤ首を傾げる紫紅にそう説明し、トモからの弁当でしっかりと休憩をとった。
今回はここまで!
いかがでしたか?
今回登場したif民モチーフは、
Revatainnさん(レーヴァテイン)
でした!ありがとうございました!
次回、第9話
『ただいま現界、初めまして現界』
お楽しみに!