平凡メイサーの異世界冒険譚   作:えんてぃ

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シキと出会い、ミカルコに無事ついた焔斗達。
紫紅と約束していたクッキー屋《Dream Canola flower》に入り、美味しいクッキーを頂きながら、今後のことについて話していると、その店の店員からいきなりここで働かないかと食い気味に提案される。
また、魔女や天界も、侵略と降臨に向けて準備が進んでいた
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再会編最終話『動き出す魔女と天界』

 

「ええ、と......?」

 

ㅤ唐突に、食い気味にそう言ってくる店員、夢菜さん。後ろの厨房で大きな音がしたのもあって、反応に困っていると、夢菜の笑顔が少し引き攣る。

 

(魄夢、落としたな〜??後で説教!うん!)

 

ㅤどう考えても夢菜の行動のせいで起こった事なのだが、そんなことには気づいていない。仕方ないので厨房の方に行こうと夢菜が振り向いた時、これまた鬼のような速度で厨房から人が出てきた。黒いパティシエ衣装を着た青年が、夢菜の所まで来て「ちょっと来い。」と言って連行する。

 

「私、ここの厨房の人、初めて見ました。」

 

「えっ?そんなにレアなの?」

 

ㅤ周りの客の反応を見ると、どうやら本当に珍しいらしく、「え、何あのイケメンやば。」だの「あんなかっこいい人が作ってくれてたの!?やばい嬉しすぎて死んじゃう」などと聞こえてくる。思わず「いや生きろよ。」とツッコミそうになったが堪えた。

 

「本当に、ここの厨房の人は謎が多くて。あの店員さんが接客してるから、もちろん作る人は別にいるんだろうとみんな分かってはいたんですが、姿を見た人はいなくて。いや、噂程度には流れてましたよ?でも誰も信じれなくて。これは、とっても貴重な体験をしました……!」

 

ㅤシキは心底嬉しそうに語る。そんなにレアだったのか、と二人は唖然としながら、先程のことも何かよく分かっていないので、もう少し居ることにした。

 

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ㅤ《Dream Canola flower》厨房。

 

「ちょっと何?魄夢!ていうかさっき調理器具落としたでしょ!しっかりしてよ、いつもこんなことないのにどうして?」

 

「……ほとんど夢菜のせいだよ。なぜ急に人を雇おうとする!?」

 

ㅤ客席側に聞こえないように、声を抑えながら口論する。

 

「いーじゃんだってあの女の子可愛いよ!看板娘できるよ!人手だって実際欲しいし、お兄さん?の方はついでだけどさ!」

 

ㅤそれ聞いたら泣くぞ、と思いながら魄夢は言い返す。

 

「だからってあんな誘い方は無いだろ。他の客もいる前で。本人達も戸惑っていたじゃないか。」

 

「うぐっ、それは……そうだけどぉ……。だって、あのまま会計して帰っちゃったらって思うといても立っても」

 

「じゃあ会計の時に言えばよかっただろ。」

 

「はっ!その手があったか!いやでも、後ろに他のお客さん並んでたら無理じゃん!」

 

「……確かに。いやでも、どちらにしろ今のはダメだろ。」

 

ㅤ客が少ない上に注文の品は全て出しているので、こんな会話が出来るが、普段はできない。今も魔法で食器を洗っているというのもあるが。あれだこれだと話していると、会計を呼ぶ鈴が鳴った。

 

「あ、はーい!……とにかく、あの二人は誘うから。」

 

「……はあ、分かったよ。ったく。」

 

ㅤ結局、焔斗達を仕事に誘うことになった。雑用でもいいから人手が欲しかったのは事実なので、最終的に魄夢が折れた。いつも魄夢が折れているなんてことはない、多分。

 

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ㅤさすがに随分戻ってこないので、焔斗達は会計をしようと店員さんを呼ぶ。結局これをすれば店員さんが出てくるので問題は無いはずだ。

 

「すみませんお待たせしました〜!……あ。」

 

「会計、と、さっきの件について詳しく聞かせて欲しいんですけど。」

 

「あ、会計ですね!その件についてはお客様が増える前に中で……。」

 

ㅤ会計を済ませた後、店員さん、夢菜に促されるまま、恐らく休憩室であろう部屋に入る。ちなみに、話には関係ないがシキもついてきた。時間はまだ大丈夫らしく、何よりレアな魄夢を見られるかも、とのことだ。そんなに見る価値あるかな、と失礼なことを思いながらも、別に邪魔な訳では無いので了承した。

 

「えっと、まずは先程は驚かせてしまい申し訳ありませんでした。」

 

ㅤ焔斗達を席に座らせ、紅茶を用意した後、夢菜が深々と頭を下げる。

 

「そんな、大丈夫ですよ。お気になさらず、それより、詳しい話を聞きたいんですが……。」

 

ㅤ焔斗がそう答えて話を進める。夢菜は焔斗を見て話す中、チラチラと隣にいる、慣れない雰囲気にモジモジとしている紫紅を見ている。

 

(かーわいい……♪)

 

「あの、聞いてます?」

 

ㅤたまに上の空になっているように見えて、合間でそう問いかける。すると夢菜はハッとして元の真剣な顔に戻る。この店員大丈夫なのか、と少し心配になった。悪い人では無い、とは思うが。

 

「……と、いうわけでこのお店で働いてみませんか?」

 

ㅤ話された内容を簡単にまとめると、今現状なんとかなってはいるものの、雑用でもいいから人手が欲しい。だが、変な人は嫌だ。また、このご時世、まともな人は働ける年齢になると何かしら職を持って働いている。冒険者も職業のひとつだ。最近は魔物も少し増えてきたことから、作物の収穫も、目立たない程度ではあるが減ってしまい、益々飲食店で働きたいという人が減っている。そんな時に、先程の焔斗達の会話が耳に入り、思わず飛び出してしまったらしい。

 

「いいですよ。な?紫紅。」

 

「う、うん。働いたことは無いけど、精一杯頑張る!」

 

「本当ですか!」

 

ㅤ夢菜が目を輝かせるが、焔斗はすかさず「だけど」と制し、

 

「そうなるとこっちの事情も知ってもらう必要があります。訳も分からない人を雇う訳には行かないですよね?」

 

ㅤ信じてもらえるかどうかは大変怪しいところだが、ここで隠し事をしても仕方がない。焔斗と紫紅は包み隠さず全て話す。

 

「……と、いうわけなんです。それでもいいんですか?」

 

ㅤある程度関わった人がターゲットになる天界の話をする時は少し怖かったが、夢菜は「それは仕方ないことだよ。」と言ってくれた。そう言って貰えるとこちらとしても安心できる。というか、

 

「天界なんて、よく信じられましたね。かなり非現実的な話だと思うんですが。」

 

ㅤそう問いかけると、夢菜は「うーん」と少し悩む様子を見せて、「ま、いっか!」と言うと説明を始めた。

 

「これこそ信じてもらえるかわからないですけど、私、ある程度の嘘なら見抜けるんです。特に、今みたいな非現実的な事は尚更。心を読める、とは違うんですが。何となくわかるんです。」

 

ㅤこういうことを聞いていると、やはりここは異世界なんだなと実感する。というか、関わった人なんて曖昧な対象、本当に誰が考えたのだろうか。どこからがアウトなのか分からないので困ってしまう。

 

(積極的に関わる気はないけど、もう深く考えるのはやめよう。完全に断ち切るなら誰もいない森の中で隠れて暮らすのが正解なんだけど。俺だけならいいが、紅葉……紫紅にまでそんな暮らしをさせたくはない。)

 

ㅤそんなことを考えながら、夢菜と今後のことについて話す。途中、魄夢が入ってきたので彼にも事情を説明すると、巻き込むなと少し険悪な雰囲気になったが、何とか納得させた。

 

「えっと、じゃあ早速明日から色々教えていただくということでよろしくお願いします!」

 

「よろしくお願いします!」

 

ㅤ焔斗と紫紅は頭を下げながらそう言う。と、そのついでに聞いてみることにした。

 

「あ、ちょっと聞きたいんですけど、この近く、いや少し離れててもいいのでお手ごろな値段で評判の悪くないホテ……宿屋って知りません?」

 

「……それなら少し離れたところに」

 

「魄夢ちょっと待って。」

 

「え。」

 

ㅤ魄夢が何処か紹介してくれそうな雰囲気だったのだが、何故か夢菜に遮られ、何やらコソコソと話し始める。魄夢が険しい表情になるが、何やら説得している様子だ。一体何を話しているのだろうか。

 

「よし!じゃあ決まりね!」

 

ㅤ嬉しそうにそう言う夢菜がこちらを向き、笑顔でとんでもないことを提案してきた。

 

「二人とも、今日からここに住もっか!」

 

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ㅤ別空間。メフィーの魔女の館。

 

「さて……そろそろ動くかね。」

 

「本当に、メフィー様自ら動かれるのですか?」

 

ㅤひっそりと様々な準備を整え、ついに動き出そうとするメフィー。しかし、彼女自ら動くのは本当に珍しく、魔女達も戸惑っていた。

 

「何、外は嫌いだが、たまには体を動かさねばのう……。まあ、表立って動くのはお主らであるし、目立った動きをすることは無い。」

 

「さ、左様ですか……。承知しました。我々魔女一同、全力で取り組ませていただきます。」

 

ㅤそう言ってメフィーの前に跪く、総勢五百名の魔女が動き出す。──────リベルタ王国に向かって。

 

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「さて、降臨の日まで近くなってきましたね。」

 

ㅤロイルは自分の研究室でねこまとベルと雑談しながら研究を進めている。

 

「そういえば、いつ開くの?天界会議。」

 

「うう、あれ緊張するんだよな……。」

 

ㅤ天界会議。それは不定期に行われており、基本的に会議が必要なほどの何かがあると開かれる。今回の議題はもちろん、降臨についてだ。誰が、誰を始末するか、それを決める必要がある。そのために、降臨メンバーを全員招集して会議を開かねばならない。

 

「ええ、それは来週か再来週あたりに、全員の日程が合う日に行う予定ですよ。なのでお二人も都合の悪い日があれば教えてくださいね。」

 

ㅤ笑いながらそう言うロイル。そんな彼に二人は苦笑しながら答える。

 

「僕、言うほど忙しくないし、何時でもいいよ。」

 

「お、おなじく……。どうせ暇だし……。」

 

ㅤお茶を飲みながら、ねこまがロイルに更に問いかける。

 

「そう言えば、アレは上手くいってるの?特例貰ってたやつ。いいよね〜、羨ましい。」

 

「はは、ご心配なく。既に動いてますし、とても順調ですよ。自分でも怖いくらいにね。ただ、少し自由な自我を持たせすぎたかもしれません。しかし、それ無くして完璧な人間とは呼べず……。」

 

「僕も少し見たけどさ、ほんとにすごいよね。人間共と大して違いがわからなかった。上手く”紛れてる”。」

 

ㅤその言葉にロイルは嬉しそうにニヤつきながら、今の様子をモニターで映す。

 

「ええ、やはりここまで違和感を無くすには仕方の無いことでした。あとはやる時にやってもらうだけです。それより、あなた達も、万が一にも敗戦する、なんてことはやめてくださいよ?」

 

ㅤ悪い顔をしながらロイルが二人に語り掛ける。ねこまは再び苦笑し、余裕の表情で答える。

 

「安心してよ、これでも基礎トレーニング、戦闘シュミレーションは怠ってないんだ。誰が相手になるかまだ決まっては無いから具体的な対策はまだだけど、大体のことは理解してるし、なんとなく対策も考えてるよ。」

 

「ね、ねこまはすごいな。とても真似出来ないよ。」

 

「……あのねえ、だからそれ煽ってるんだって。」

 

ㅤもはや恒例となった言い合い(というよりねこまの一方的な攻め)が始まり、今度はロイルが苦笑する。

 

(ま、異世界人がどこまで強くなるかも分かりませんし、ある程度は対策した方がいいですね。備えがあるに越したことはないですし。)

 

ㅤ今回の降臨メンバーなら、というか、天界勢なら負けることなどありもしないが、ロイルの性格上、やれる事はやっておいてもらいたかった。

 

ㅤ現界と魔界が、神と天使と天界人に攻め入られる日が、刻一刻と迫る……。

 

 

 

 




今回はここまで!いかがでしたか?
今回登場したif民モチーフは、

夢菜さん

シキさん

ねこまさん

ベルさん

でした!

大した動きもなく、フラグ立て回のようになりましたが、再会編はここまでとなります!次回から新編!と、言いたいところですが、正直今誰が出ていてどうなってるか、あと見た目がどうかとか、能力が何だとか。分からなくなってる人も多いと思います!
なので、ちょっと時間かかるかもですがやります。

次回
『現時点登場キャラ紹介並びに新キャラ紹介』

お楽しみに!
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