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「次は、こっちね。」
闇華達は、次のライブの王都に向かう途中、近くにある鬼族の集落に立ち寄ることにした。闇華の計算では、鬼族は天界勢と戦えるだけの戦闘力を持つ。無闇に関係者を増やしたくは無いが、強敵と戦う以上、戦力は少しでも必要だ。
(全く、改めて考えると天界の規則ってめちゃくちゃね。)
「闇華ちゃん〜、少し休もうよ〜。」
同行している来羅が声を上げる。焦りからか、少し飛ばしすぎていたようだ。来羅の少し後ろにいる桃歌もかなり疲れた様子だ。
「っと、ごめんなさい。そうね、少し休みましょうか。……ん?」
近くの岩場で休もうと、近づいたその時、岩陰に信じられないものが目に入った。
「これは……!?」
「どうしたの闇華ちゃ……!?」
「これって、鬼……?」
そこには、ボロボロになった鬼族が数名、横たわっていた。
「……息は、あるわね。でも、早く治療しないと。」
鬼、と言っても、見た目は人に近い鬼人だ。そのうちの1人が目を覚まし、闇華達を見る。
「……き、君たちは……旅の、者か……?」
「そうよ、喋らないで。今簡単な治癒魔法をかけるから。」
「ま、待て……!ここは危険だ、早く逃げ、ろ……!」
その者がそう言った瞬間、闇華達のすぐ後ろの地面が割れ、大きな何かが現れた。
「シャァァアアアア!!」
「な、何っ!?」
「きゃあああ!?」
「桃歌ちゃん!」
黒いとても大きな蛇だ。その大蛇は、出てきた瞬間桃歌を攫い、その太い体で締め上げる。
「このっ、桃歌ちゃんを離せ!『嵐斧・魔空衝』!」(らんぶ・まくうしょう)
来羅の渾身の一撃が、大蛇を襲う。驚いた大蛇が一瞬力を緩め、桃歌が解放される。その隙を逃さず、闇華が雷の速さで桃歌を救出する。
「あ、ありがとうございます……。」
「大丈夫よ、離れてて。」
一旦、鬼人達の倒れているそばに桃歌を避難させる。が、すかさずそこに蛇が追撃を仕掛ける。
「させるかー!」
しかしそれを来羅が許さない。再び横から斧による強打を打ち込み、大蛇をぶっ飛ばす。
「よし、私も……!『闇ノ迅雷』!」
闇華の雷が、大蛇を襲う。かなりの威力がある魔法だが、大蛇は想像していたより強く、そこまでダメージを与えられなかった。
「シャァァアア!」
「しまっ!?」
素早い大蛇の攻撃が、闇華を襲う。間一髪のところで回避したものの、少しだけ攻撃がかすめてしまう。
「つっ……!」
「大丈夫!?」
「ええ、このくらい平気よ!時間はかけられない、一気に行くわよ来羅!」
そう言って、二人は『魔力協奏』(マジックコンツェルト)を発動し、
「「雷よ轟け、風よ唸れ!『轟唸風雷』!!(ごうてんふうらい)」」
闇華達の全力の一撃が大蛇を襲い、無事討伐する。ズシーンと倒れる大蛇。非戦闘員や倒れている者もいたため、守り切れるか少し不安もあったが、今の彼女たちの敵ではなかった。
しかし、直後にまた何者かが現れた。
「誰!?」
「俺の大事な家族、仲間をやったのは、お前たちか?」
鬼人達が十名ほど、闇華達の前に現れる。倒れている同胞を見て、怒っている様子だった。しかし、すぐ奥に倒れる大蛇を見て、彼女たちが犯人でないかもしれないと思った。
「おのれ!我が同胞をよくも!その大蛇を使役して襲ったらしいが残念だったな!我ら鬼人はそうヤワじゃない、さしずめ、大蛇がやられたから自分達で始末しに出てきたのだろうが、そうはさせんぞ!」
「えっ?ちょ、ちが……!? 」
否定するより先に、鬼人達のトップと思わしき者が、目に見えぬ速度で倒れた鬼人達を回収していた。
「いつの間に!?って、だから勘違い……!」
「仮にそれが真実だとしても、いや、真実なんだろう。俺も大抵の嘘はわかる。だけど、俺達の住処に入ろうとしている以上、悪か否かは見定めさせてもらう。剣、には限らないが、戦えばそれは分かる。だから戦え、どちらかひとりで良い。俺と一騎討ちをしようじゃねえか。」
(なんっでそうなんのよ戦闘狂!)
闇華がそう思っていると、彼女の肩に手を置き、来羅が前に出た。
「ヤミちゃんは下がってて、大丈夫、任せて。節狐さんの時みたいな無様な姿は見せないから。」
そういえばこっちにも戦闘狂居たな、と思いながら闇華はため息をつく。
「はぁ、分かったわよ。多分あの感じだと殺し合いって訳じゃなさそうだし。頑張ってね。」
「うん!」
そして、倒れていた鬼人達は助けに来た鬼人のうち数名に抱えられて来た道を戻って行った。
「……あたしは、来羅。あなたの名前は?」
位置について鬼人の男と向き合い、そう問いかける来羅。そして、問いかけられた鬼人の男は答える。
「俺は、エレン。この鬼族の長にして、閃光と呼ばれる者だ。いざ、尋常に、勝負!」
そして、来羅VS エレンのバトルが始まった。
「『嵐斧・魔空衝』!!」
まず、来羅が地面を蹴り、風の魔力で加速しながら獲蓮に接近して先程大蛇に対して使った技と同じ物を叩き込む。それを、エレンは大剣で難なく防ぎ、受け流す。行き場の失った暴風が霧散する。
「まずは小手調べってことかな!ふんっ!」
体勢を崩した来羅に、エレンが大剣を振るう。先程の攻撃を防がれたのに驚いた来羅だったが、冷静に大剣を受け流す。
「予想通り強い、けど……!」
節狐戦で、自慢のパワーで負けるという辛い思いをした来羅は、あれから自身を鍛えており、今ではあの時とは比べ物にならないパワーを手に入れていた。
「『嵐斧・獄風旋』!(らんぶ・ごくふうせん)」
強く大きく振り回された斧に、獲蓮が吹き飛ばされる。
「くっ、やるな。」
「まだまだ!『嵐斧・」
来羅が、次の技を放とうとした時、エレンがふっ、と笑う。
「でも、俺には勝てない。」
何かが光ったと思った瞬間、ドゴンッという音と共に、今度は来羅が吹っ飛ばされる。
「かはっ!?」
「閃光の男と呼ばれた俺を、なめないことだ。」
来羅の意識は刈り取られそうになり、さすがに止めに入ろうか悩んでいる闇華が目に映る。鬼族側の陣営も、止めるか否か悩んでいるようだった。それは、来羅が死んでしまいそうだから。負けそうだから。
(また、負けたの……?)
節狐戦でも、焔斗の支援あってこその力で、支援魔法がかかる前は完敗もいいとこだった。
(天界のこともあるのに、こんなところで負けてばっかりなんて、いられる、ものか!!)
「ん?」
「来羅?」
来羅の体から凄まじい魔力が溢れ出す。それは、さすがに止めようと決断しかけた闇華達が考え直すほどのものだった。
「まさかっ!?ばか!まだそれを使うのはやめなさい!」
闇華の制止も聞かず、来羅は魔力を解放した。
「『嵐の調べ・破滅の章』!(あらしのしらべ・はめつのしょう)」
空は雷雲が覆い尽くし、暴風が辺に吹き荒れた。
「あたしはもう、負けない……!」
「……面白い!受けて立とう!」
今回はここまで!いかがでしたか?
今回登場したif民モチーフは、
Erenさん(エレン)(初登場)
Yamikaさん(闇華)(元if民)
ララさん(来羅)(元if民)
でした!
ありがとうございました!
また、お知らせです。今回から、今までより1話ごとの文字数を少なくし、更新頻度を増やそうと目論んでおります。
と、言うのも、中身ぎっしり読み応えのある各話を、といつもやっていたのですが、なかなか時間が取れなかったり、思いつかなかったりと。そんな中で、更新が遅くなり、どんな話だったか忘れられては元も子もありません。
そのため、今回のような密度になった次第です。
仕事の休憩時間とかに
ぱぱっと1話読み、なおそれが終われば別ごともできるくらいの量でやりたいと思ってます。
1万超くらいの文字数の読み応えを期待してくださっている方には申し訳ないですが、今後ともご愛読いただけますと幸いです。
次回
『破滅の風音』
お楽しみに!