平凡メイサーの異世界冒険譚   作:えんてぃ

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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━魔王レーヴァテインと一戦交え、自分の弱さを改めて知った焔斗。一方その頃、紫紅は魔界にて謎の二人に出会っているのだった。彼らは一体━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


第4話『魔界三銃士』

 

「わぁ♪女の子だね♪」

 

ㅤ春輝と呼ばれた男が嬉しそうに微笑み、抱きしめようとしてくる。紫紅はギリギリのところで脱出し、仕掛けてくるならばと反撃を開始した。

 

『紫雷槌!!!』(しらいつい)

 

ㅤメイスに紫の雷を纏わせ、脳天から叩きつけようとする。しかしその渾身の一撃は春輝に片手で止められてしまう。

 

「くっ!」

 

「もー、ちょっとは落ち着きなよ〜、可愛いんだからさ♪」

 

ㅤメキ、バキ、バーン と、春輝の握力だけで元の世界のゲーム内では最高レベルの強さを誇る紫紅の紅いメイスが粉々に砕け散った。

 

「そ、そんなっ!」

 

「ふふ……♪」

 

ㅤ次元が違いすぎる。そう察した紫紅はせめて逃げようと全力で走り出すが、

 

「申し訳ありませんが、逃げられたら困りますので大人しくしてもらいますね。」

 

ㅤ先程トモと呼ばれていた男に前を阻まれ目が紅く輝いた。それを見た瞬間体が金縛りにあったかのように硬直し動けなくなってしまった。

 

「う、うごけな……」

 

「少し話を聞いて欲しいんです。お時間頂けますでしょうか?異邦のお方。」

 

ㅤ丁寧にお辞儀をする彼をよく見て、敵意がないことを確認した。春輝の方は殺意はないが、別のやばい感じがするのでとりあえず離れておきたい。

 

「……わかりました。聞くわ。だからこの縛り外して、逃げないから。」

 

「……いいでしょう。」

 

ㅤ紫紅の言葉が嘘でないと分かったからか、割とすんなり金縛りを解除してくれた。目の色が黒になる。どうやらあの技を使う時だけ目が紅くなるらしい。

 

「やっと警戒を解いてくれたね♪じゃあゆっくりと話を……」

 

「ごめんなさい、あなたは近づかないでください。反射的に逃げそうです。」

 

「……俺だって傷つくんだよ?」

 

ㅤ案の定、春輝が近づいてきたのできっぱりと断る。少し涙目になっていて可哀想と一瞬思うが、騙されてはダメだと自分に言い聞かせる。

 

「……それで、聞きたいこ」

 

ㅤグギュルルルルルルルルルル

ㅤ紫紅が何を聞きたいのか確認しようとした時、盛大な音が鳴り響いた。……お腹の。

 

「……お腹、空いてるんですね。」

 

「……ごめんなさい、もう一日以上飲まず食わずで……。」

 

ㅤ紫紅の腹の音だった。この世界に来てから何も口にしていないのだ、無理もないだろう。

 

「……はあ、これを。一応現界人も飲める水です。食事は城に戻ってとってもらいましょうか、今の状態で話すのは頭も回ってないのでおすすめ出来ません。」

 

「それがいいね♪トモの料理は美味しいし♪」

 

「……正直不安だけど、仕方ないわね。」

 

ㅤ紫紅はトモから水を受け取り飲んだ。別に変な味はしない、問題は無さそうだ。しかしさすがに疲れていたのか歩こうとするとふらついてしまう。

 

「ぁ……」

 

「おっと、仕方ありませんね。少し失礼しますよ、ええと」

 

「紫紅……」

 

「……紫紅さん。」

 

ㅤ紫紅が倒れそうになるとトモが体を支え、抱き上げた。俗に言うお姫様抱っこだ。とはいえ、紫紅は頭が回ってないため歩かないで良いなら助かる、という程度の認識しか持ててないが。

 

「いいなぁ♪僕にも抱っこさせてよ♪」

 

「申し訳ありません春輝様。その場合紫紅様が疲れてしまいますので、今は御遠慮下さいませ。」

 

「ちぇ♪しょうがないなぁ♪」

 

ㅤ一行が出発してから少し、紫紅は少し霞む目で2人の容姿を再確認した。春輝は魔界には似合わぬ白を基調としたいかにも白馬に乗って姫様を助けに来そうな服で、羽付きの白ハットを被っている。顔はまあイケメンだと思う、物語で出てくるだけなら女性からの人気も高いだろう。少し伸ばした銀髪に赤い目、口角は常に少し上がっており、見た目をいつも気にしていそうな感じだ。

ㅤ一方トモは、赤を基調としたデザインは完全に執事服。赤のショートヘアに黒目、赤枠の片眼鏡とワントーンながらいい雰囲気を出している。焔斗は普通の黒執事のため、何だか兄がそのまま赤くなったみたいで変な感じだ。

 

「っと、看板が見えてきたのでもう少しですよ。紫紅さん、もう歩けますか?」

 

「……ええ、ありがとうトモさん。」

 

ㅤ紫紅は下ろしてもらいながら看板を見た。看板には、

 

《この先魔王の城

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤナンバン城ʕ 」•́؈•̀ ₎ 」シャキン》

と書いてあった。ʕ 」•́؈•̀ ₎ 」シャキン……。

ㅤ紫紅は深く考えることをやめた。多分深く考えることでは無いはずだ。これを書いた人がこの2人より上の位の人でないことを祈っ

 

「兄さんの看板はいつ見ても愉快だね♪」

 

「シハク様は、魔王としてかっこよくありたいのでしょうか。仲間として面白くありたいのでしょうか。私でもたまにわからなくなります。」

 

ㅤ……上の人だった。しかも魔王らしい、え?

 

「魔王!?魔王って何よ!?そんなのいるの!?ていうか絶対序盤に出会っちゃダメよね!?ね!?」

 

ㅤあまりに衝撃的過ぎて紫紅は声を上げてしまった。その反応に2人はキョトン、としてから

 

「ああ♪なるほど♪君の状況が少しだけ読めた気がするよ♪」

 

「ええ、本当に。この世界の常識ですら知らない、と。やはりあなたはこの世界の住人ではなさそうですね。」

 

ㅤ詳しく話を聞くと、そもそも謎の魔力を感じて調査に来ていたらしい。そしてその地点の近くに紫紅が居たため、原因が紫紅であると確信したらしい。そもそも、普通の人(ここで言うと現界人)は、基本的に1人で魔界で生きられないらしい。理由は至極単純で、ここの魔物が現界の魔物より遥かに強すぎるからだ。来るとすればそれこそ知名度の高い人物しか来ないため、見たことも聞いたことも無い紫紅が居た事によりほぼ確信していた、ということだ。

 

「ふぅん……つまり、あたしからはどこからどうやって来たのか。その魔王様含めて話を聞きたいわけね。と言ってもあたしもよく分かんないわよ?経緯は話せるけど……」

 

ㅤそう、紫紅だって何が何だかさっぱりなのだ。いきなり神だのなんだの言われて転移させられて、ただ兄の焔斗とゲームがしたかっただけなのに……。

 

「そういえば、お兄ちゃんは知らない?トモさんと同じ執事の格好をしてるんだけど。あ、服色は黒で、髪は紫色で目は赤よ。」

 

ㅤ転移して即戦闘だったため考えないようにしていたが、兄の焔斗が居ないのだ。魔力どうこう言ってたので何か知っているかと思って聞いたのだが……

 

「その人物に見覚えも聞き覚えもありませんが……」

 

「謎の魔力、ということなら現界の方でも感じたからそっちにいるんじゃないかな♪」

 

ㅤ現界。ここより魔物は遥かに弱く、現界の魔王に喧嘩さえ売らなければ、大して生き苦しむことも無いであろう魔界より上の座標に存在する世界。それならば安心だと紫紅は思ったが、当の本人は死にかけるわ現界の魔王とお近づきになるわと散々であった。そんなことは今知る由もないのだが。

 

「っと、着きましたよ。ここが私共の城、ナンバン城です。」

 

ㅤそう言われて、足元を見て歩いていた紫紅は顔を上げる。そこには魔王城です、という雰囲気抜群のお城があった。やっぱ最初に来るとこじゃないよここ……と思いながら2人について行き中に入る。

 

「……早かったじゃないか、2人とも。」

 

「ただいま兄さん♪」

 

「ただいま戻りました、シハク様。こちら、客人の紫紅様でございます。」

 

「……初めまして、メイサーの紫紅です。」

 

「ふむ、我は”魔界の紅凍魔王”、シハクだ。大魔王を目指してそこの2人とともに”魔界三銃士”として活動している。」

 

ㅤ魔王。その名に恥じぬオーラを纏っていた。戦おう、逃げよう、なんて思う余裕すらない。目の前に存在しているだけで精一杯だ。

 

「シハク様、申し訳ありません。この者、異世界から来たようで何もわからず。そして今は1日以上何も食しておらず、とりあえず何か召し上がってもらおうかと戻った次第でございます。」

 

「……何、腹が減っているのか。それはいけない、早く何か食べさせてあげなさい。……というよりちょうどいい、みんなで夕飯にしよう。トモ、夕食の準備を。その前に軽くつまめるものを紫紅さんにお出しするんだ。」

 

「かしこまりました。では用意して参りますので、お座りになってお待ちください。」

 

ㅤトモは紫紅の席を案内し、一礼してから部屋から去った。厨房へ向かったのだろう。一体どんな料理が出てくるのだろうか……。やっと食事を取れる喜びと未知の世界での料理に一抹の不安を抱く紫紅であった。

 




今回はここまで!いかがでしたか?

今回のif民モチーフのキャラは3人!

魔界三銃士の、
シハクさん、トモさん、春輝さんです!
ツイにタグ付けしますね。

次回

第5話『紅き氷』

おたのしみに!
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