平凡メイサーの異世界冒険譚   作:えんてぃ

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平凡メイサー、前回までは!
天界に対抗するため、鬼族の力を借りようと、鬼人達の住む集落へ向かった闇華達。しかし、その道中で、倒れた数名の鬼人達を見つけ、更には大蛇に襲われる。
難なく討伐し安心したのも束の間、そこに現れたエレンの提案で、来羅が1VS1で戦うことになり、その中で来羅は未完成の纏装を使用し、暴走する。仲間を傷つける可能性のある技を使ったことに苛立ちを感じたエレンが、彼女をなんとか気絶させ、彼女を担いで集落に戻ったのであった。


第5話『鬼族の選択』

「どうだ?闇華さんの様子は。」

 

来羅との戦闘が終わり、彼女を背負って集落に戻ったエレンは、迎えてくれた鬼人の仲間にそう問いかける。

 

「毒の進行が早く、懸念はありましたが、解毒薬が間に合ったので今は落ち着いています。念の為、安静にしてもらってはいますが、その。やはり仲間のことが気になるようで精神的には休めてないようです。」

 

「分かった。この、来羅さん、だったか。この人の治療も頼む。」

 

エレンは背負っていた来羅を、その鬼人に受け渡す。彼は少しビビった様子で来羅の体を受け止める。

 

「もう、大丈夫なんですよね……?」

 

「ん?ああ、もちろん。任せろって言っただろ?」

 

 

そう笑顔で言って安心させる。実際、気絶したことで魔力の暴走も止まり、次に目を覚ました時は通常状態に戻っているだろう。もしかすると、魔力欠乏による脱力感などはあるかもしれないが。

 

「「エレンさん!」」

 

先行して戻っていた柊磨と風花が、駆け寄ってくる。来羅の暴走を目の当たりにした彼らは、話に聞いただけのほかの者よりエレンが心配で仕方がなかった。

 

「二人ともありがとう、よく客人を死なせずに戻ってくれた!」

 

「エレンさんこそ、よくご無事で!」

 

「さすがです!エレンさん!」

 

柊磨は、程よく焼けた肌に青髪青眼で、高身長の鬼人の青年だ。鬼族期待の若者で、今こそ戦力はベテランには及ばないものの、そのベテランが彼と同じ歳だった頃よりは数段強い。また、よくモテるが鈍感なため気づかない。

次に、風花は白く美しい肌に、桃色髪のショートヘア、低身長の鬼人の少女だ。戦闘向きと言うよりは、索敵や妨害、逃走を得意とする。臆病者だと言われがちなこの能力だが、厳しい戦闘になればなるほど彼女の存在は必要不可欠となる。鬼族には珍しい白い肌のため、煙たがられることもあるが、その儚さから一部の男性からは猛烈なアプローチを受けている。が、どれも断っている。

 

エレンは、この集落の族長ということになっている。本人は、慕われるのも悪い気は確かにしないのだが、もっと友達のように接して欲しいと思っている。さん付けをやめる、とかそういうのだ。

しかし、他の者に言わせれば、そんなことは出来ない。自然とさん付けになる不思議な力がある、などと言われ、もう半ば諦めてはいる。

 

「闇華さんは医療施設か?」

 

「奥の医療施設で安静にしてもらってます。毒による体力の消耗は見られましたが、それ以外に特に目立ったダメージはありませんでした。それどころか、治った途端に、さっきの場所に戻るなどと言い出して、そっちの方が大変でしたよ。」

 

暴れた訳では無いらしいが、やはり来羅のことが心配だったらしく、毒抜きが終わるや否や、戻らせてと言われたらしい。勿論、医者が首を縦に振ることなど無かったのだが。

 

「これだけ大切に思ってる仲間でも、上手くいかないこともあるもんだなあやっぱ。......いや、大切に思っているからこそ、なのか。」

 

エレンが独り言を呟く。仲間とは、なんて哲学的なことを考えかけるが、直ぐにその思考を振り払う。そんなものは考えても仕方が無いし、エレンは今、ここにいる仲間を家族のように大切に思っている。それで充分だ。

 

「入っても大丈夫か?」

 

入口の垂幕の前で念の為、そう声をかける。中で少し話し声が聞こえた後、「どうぞ。」と鬼族の医療班の声がしたので、中に入る。

 

「っ!来羅は!?」

 

エレンの顔を見るやいなや、闇華が布団から飛び出してそう問いかける。が、寝ていた状態から急に立ち上がったため、すぐにふらついてしまう。それを、素早く医療班の女性が受け止める。

 

「闇華さん、だから言ってるでしょう?お願いですから安静にしててください。」

 

支えられながら、ゆっくりと座らされる。「ごめんなさい。」と謝りながら座る闇華は辛そうだ。どうやらあの蛇の毒は相当なものだったらしい。先にやられてしまっていた同族達も、まだ布団で眠っている。そう考えれば、闇華の回復力はすごいと言えるだろう。

 

「まず、結果から話すと、来羅さんは無事だ。それと、気絶させたのもあるが、魔力の使いすぎで少しの間目を覚まさないと思う。」

 

それを聞いて闇華は、ホッと胸を撫で下ろす。来羅が無事なら、彼女が心配することは何も無い。一気に彼女のピリピリとした雰囲気が崩れ、疲れたように姿勢も少しぐったりとする。

 

「良かった。......ありがとう。」

 

闇華はエレンに向かって礼を言う。それを聞いてエレンは、首を横に振った。

 

「確かに、止めたのは俺だけど、あの来羅さんは理性が残ってたんだと思う。だからこそ、あの状態での攻撃がそこまで闇華さんにダメージを与えなかったんだ。」

 

「そう、かもしれないわね。来羅は強いから。」

 

少し微笑みながら、彼女はそう答える。エレンは医療班の女性に目配せで(少し、彼女と話してもいいか?)と問いかける。女性は、少し悩む様子を見せたが、ちら、と闇華を見てから頷いた。

 

「それで、闇華さん。何故ここに来たか、教えて貰っても?」

 

エレンがそう問いかける。闇華はこの質問を予想していたのか、一瞬だけ目を瞑り、語りだした。

 

「……と、言うことよ。それで、あなた達の力を借りたくてここまで来たの。でも、力を借りるより前に、大きな借りを作ってしまったわね。」

 

闇華が語り終え、しばしの沈黙。その沈黙を破ったのは、医療班の女性だった。だがそれは、彼女が言葉を発したのではなく、床を強く踏み込んだ音だった。

 

「やめろ!」

 

「っ、しかし……!今の話が本当なら……!」

 

ナイフを片手に、闇華を殺そうとした医療班の女性を、エレンが言葉で止める。

 

「今、彼女を殺したところで何の意味もないだろ。落ち着くんだ。もう関わっている時点で、俺達は標的になりうるんだよ。それに、君じゃ闇華さんには勝てない。」

 

「……はい。申し訳ありません。」

 

冷静さを取り戻した女性が、ナイフを机に置いて、静かに座る。彼女の反応も仕方がない。客観的に見れば、闇華は鬼族を危険に巻き込んだのだ。怒るのももっともだろう。

 

「ごめんなさい、その反応は予想していたけれど、それでも、あなた達の協力が欲しかったの。さっきの事で借りを作った上に図々しいかもだけれど、どうか、お願い。力をかして。」

 

エレンはそんな彼女を見て、少し考えた。仲間に危険が及ぶようなことはしたくは無い。この事態を避けるには……と考えたところで、もう手遅れだということを再確認する。なら、と、エレンは皆が無事でいられるような策を考え出した。つまり、

 

「……こうなってしまった以上仕方がない。協力、させてもらうよ。まあ、断わっても攻め入られると言うなら、な。……仲間は何とか説得する。闇華さんも相当考えた上での決断だろう?顔を見ればわかるさ。」

 

「……ありがとう、本当に。」

 

闇華は頭を下げて礼を言う。改めて考えても本当に自分勝手な願いだった。ただ、結局は世界を滅亡させられるかもしれない、というもしも、があったから動いたのだが、逆に言えばもしかしたら関わらずに済んだかもしれないのだ。

 

「礼は、いらない。俺自身も複雑な気持ちだからな。それより、その天界の奴らについて詳しく教えてくれ。それと、今襲われる可能性の高い人達とその居場所を、わかる範囲でいい。」

 

「……ええ、分かったわ。さっきも話した通り──────」

 

ここで闇華が話したことをまとめると、

・天界勢は一人一人が魔王に匹敵、もしくは超越している強さということ。

・降臨の原因となった異世界人は、彼らも被害者ではあるが、今は商業街ミカルコにおり、そこで迎え撃つことになるだろうということ。

・彼らが既に関わった獣人族、リベルタ王国に対しては、この件を全て話し、対策に動いてもらっていること。

 

その他、もしかしたら関わっていない人も巻き込まれ、世界が滅亡するかもしれないということも改めて説明した。エレンは難しい表情を見せていたが、やがて、軽くため息をつく。

 

「想像以上に逃げ場がなさそうだな。ちなみに、東のミカルコ、南のリベルタ。西はともかく、大陸中心の王都はどうなっている?」

 

「……王都にも、協力要請に行くわ。このあとね。もしかしたらなんて言ったけど、異世界人と関わり、その後の行動に影響を受けたもの全て、なんて雑把すぎる対象なのよ。影響を受けた者が更に別の者に接触したらなんて、人が集まる王都は必ず狙われるわ。」

 

その言葉を聞き、エレンも理解してはいたが、一つの問題点について問いかける。

 

「……闇華さん、人間じゃないだろう。一緒にいた来羅さんも。もう一人の桃色髪の……」

 

「桃歌さん、と言っていました。」

 

「桃歌さん、は人間かもしれないが。最悪殺されるぞ。」

 

王都と言えば聞こえはいいが、魔物は絶対に許さない、駆逐するような国だ。人間の脅威になるのだから仕方ないのだろうが、友好的な魔物、もしくは混血ですら容赦なく殺している。唯一の救いは、その王都の騎士団長がその制度を変えようとしていること。しかし、その部下は血の気の多い者や、魔物に恨みのある者ばかりなので、接触するならば最初に騎士団長に出くわさなければならない。この難易度は相当なものだ。

 

「……それでも、やるしかないの。今の騎士団長の強さは本物よ。説得は困難かもしれないけれど、それでも。」

 

闇華のその言葉と目つきを見て、彼女が本気だと悟る。ならば止めまい、とエレンも覚悟を決める。

 

「分かった。俺はこれから各部隊長を集めて、この件に関して対策を練る。そのあと、協力の証として共に晩酌をしよう。それまではゆっくり休んでいてくれ。……来羅さんも、おそらくその頃には目を覚ますだろう。」

 

そう言って最後にエレンは微笑む。恐らくこれが彼の本性なのだろう。堅苦しいのは性にあわず、何も無ければみなで気楽に笑って過ごしたい。そんな感じのする笑顔だった。

 

「よし、柊磨、各部隊長を集めてくれ。遠出している者は魔力通話で繋ぐ。」

 

「了解ですエレンさん!」

 

柊磨に指示を出し、会議をするための天幕へ向かう。その道中、見慣れた人影が視界に映り、声をかけた。

 

「ヒビキ、話は……聞いていたみたいだな。出席してくれるか?」

 

語りかけた相手は、この鬼族の中で唯一の人間、ヒビキ。彼が使う魔法は少し特殊で、物を生成する魔法を使う。見た目は、黒髪のショートに青眼。鼻まで覆う黒いマスクをしており、首には緑のマフラーまでつけている。夏場は暑くないのか、と聞く者も多数いるが、彼曰く、冷却機能の魔法を付与してあるから大丈夫らしい。

服の方は革と布製の黒を基調とした服装だ。

 

「了解です、エレンさん。すぐに向かいます!」

 

そう元気に返事をすると、ヒビキは天幕の方へ駆け出していく。

 

「……そろそろ呼び捨てで呼んでくれねえかな。」

 

実はヒビキは、この集落ができる以前からの付き合いなのだ。何故か頑なにさん付けを辞めようとせず、理由を聞けば「エレンさんは、エレンさんなので。」の一点張りである。もちろん、呼び方ひとつで信頼関係に影響なんてありはしないが、エレンとしてはもっとフレンドリーに接して欲しいのであった。

 

「と、もうみんな集まっているのか。早いな。」

 

エレンが到着する頃には、今ここにいる部隊長、幹部は全員集まっていた。別任務で離れている部隊長とも、魔力通話装置で繋がっている。

 

「ありがとう、それじゃあ早速話すよ。俺達、いや。世界に迫る危機について──────」

 

数分後。闇華から聞いた内容をそのまま伝え、その上で自分の考えを述べ終えたエレン。その場の皆は、当然ながら動揺していた。

 

「馬鹿なッ、それが本当ならそのきっかけを作った者を今すぐ処刑すべきだ!」

 

最初にそう声を上げたのは、長の座は降りたが、集落の安泰のため、様々な取り組みを続けている男老鬼人、ローガン。いつも冷静な彼だが、今回ばかりはスケールが大きすぎて取り乱している。

 

「落ち着きなさいな。そんなに頭に血を登らせていたら、血管がブチ切れて早死するよ。」

 

ローガンにそう言って落ち着かせているのは、医療班長の女老鬼人、ポーラ。

 

「それに、彼女達の強さは本物です。。一人はよく分かりませんが、闇華さんと来羅さんは。エレンさんが彼女達の話を本当だと信じたなら、本当なんでしょう。……なら、貴重な戦力を削る訳には行かないはずです。頭をお冷やしになってください、ローガン様。」

 

先程会ったヒビキ。彼は武具製造、物資管理の隊長を務めている。使う魔法は生成魔法。鍛治等、精密な調整や技術が必要なもの以外は彼の魔法で創造できる。無論、彼自身もそこそこ戦える。戦闘時は、身体強化魔法を使用して戦う。武器は片手直剣。

 

「……ふう、すまんのう、お主らの言う通りじゃ。儂としたことが。少し冷静になるわい。」

 

そして、今後についての会議が始まる。

 

「逃げるっていう道は無いのかい?」

 

「俺だって仲間に傷ついて欲しくない。だから出来るものならそうしたい、けど。おそらくは無理だ。逃げて背中を狙われるよりは、万全な状態で迎え撃った方がいい。」

 

「エレンさんに同感だな。それに、強敵が来ると分かっていれば、自ずと鍛錬の精度も上がる。皆の士気にもつながる。」

 

そう発言したのは、戦闘部隊総隊長、レイグ。戦闘における全ての部隊を総まとめし、作戦の指揮を執る軍師だ。

 

「我々、影迅隊は、その手の情報が無いか探りながら鍛錬に励む。」

 

戦闘系ではあるが、レイグとは別系統である、主に影で動く暗殺や情報集めを得意とする部隊、『影迅隊』。その隊長である、エイナがそう呟く。

 

「医療班としては、怪我人を出して欲しくないからねえ。出来れば逃げ隠れしたかっとのだけれど。改めて考えると、確かに迎え撃つのが最適だね。」

 

ポーラも最終的には同意してくれた。これで、天界に対する方針は決まった。あとはいつ来ても大丈夫なように備えるだけだ。

 

「よし!それじゃあこれで会議は終わりだ!各自、準備に──────」

 

そう言って、エレンが会議を締めようとしたその時。

 

カンカンカンカンカンカン!!!

 

と、集落への敵襲を知らせる鐘が鳴った。




今回はここまで!いかがでしたか?

今回のif民モチーフキャラは、

エレン(Erenさん)

闇華(Yamikaさん)(元if民)

来羅(ララさん)(元if民)

ヒビキ(ヒビキさん)(初登場)

でした!ありがとうございました!

次回
『何のために戦う』
お楽しみに!
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