平凡メイサーの異世界冒険譚   作:えんてぃ

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平凡メイサー、前回までは!
天界に対抗するため、鬼族の力を借りようと、鬼人達の住む集落へ向かった闇華達。しかし、その道中で、倒れた数名の鬼人達を見つけ、更には大蛇に襲われる。
難なく討伐し安心したのも束の間、そこに現れたエレンの提案で、来羅が1VS1で戦うことになり、その中で来羅は未完成の纏装を使用し、暴走する。仲間を傷つける可能性のある技を使ったことに苛立ちを感じたエレンが、彼女をなんとか気絶させ、彼女を担いで集落に戻る。
そして、闇華から天界について聞いたエレンは、その事を鬼人族幹部を招集して周知する。今後の対策についておおまかに固まり、解散しようとしたその時、敵襲を知らせる鐘が鳴り響いたのであった。


第6話『ヒビキVSシャーザ 忌み嫌われた恐るべき力』

 敵襲の鐘が鳴り響く。会議中だったエレン達は、即座に自分の役目をまっとうする。各々の部下に指示を出し、住民を守り、迎撃する体勢を作ろうとした。が、

 

 ドォォォォーーン!

 

「報告します!集落南西にて大規模な爆発発生!被害甚大!住民の避難を優先中です!」

 

 直ぐに対応しようと、天幕から出ようとしたエレンの元に戦闘員の一人が現れ、そう報告してきた。既に集落の内部にまで侵入されているらしい。

 

「戦闘員は住民と非戦闘員を守りながら迎撃体勢!急げ、誰も死なせるなよ!それと、敵の位置を教えろ!」

 

 完全な不意打ち。常に警備している見張りをも突破した謎の相手にほんの少しの恐怖を覚えるが、とにかく最善を尽くすべく、エレンはそう叫ぶ。

 

「迎撃体勢に関しては、既に展開中です!それと、敵の位置ですが……。」

 

 一瞬、言葉にするのを躊躇う様子を見せた彼だったが、悔しそうにその口を開いた。

 

「全方位、つまり、囲まれております……!」

 

 

 ──────3時間ほど前

 

「何ィ!?鬼人族どもの集落に送り出した大蛇が仕留められただとォ!?」

 

 そう、甲高い声を上げるのは、蛇人族族長、クーシャ。緑のロングヘアーで、痩せ型の男性だ。目は金色で、爬虫類特有の目をしている。

 彼ら蛇人族は、エレン達鬼人族と長年対立関係にあり、集落こそ近くにあるものの、お互いの考えが全くもって合致せずに、協力関係にはならなかったのである。ただ、相手を敵視しているのは蛇人族側だけであり、エレン達鬼人族は、手を出さなければ文句を言うつもりもない不干渉の姿勢を取っていた。

 

「は、はいっ!し、しかし、謎の女の暴走により、族長は対応に追われているようです!本来の目論見と違う形ではありますが、今がチャンスかと……!」

 

「ほう……?それは良いではないか。結果良ければ全て良しだからなァ?……よし、総員、作戦通りの配置に向かえ!決して影迅隊どもに気取られるなよ!」

 

「「「おおおおーーーーー!!」」」

 

 蛇人族達は、今の鬼人族族長、エレンのいない隙に、襲撃の体勢を整えていたのだ。しかし、総員とは言えど、大した人数はいない。昔は今の10倍程の人数が居たが、クーシャの作戦により、彼が強くなるための贄となったのだ。

 

「……証明してやる、貴様ら鬼共より、我が族が力があるということをなァ!シャハハハハハ!」

 

 ──────時は戻り現在。

 

「貴様ら!血迷ったのか!ぐっ!?」

 

「うるさい黙れ!俺たちの方が、貴様ら鬼より強いんだァ!」

 

 襲撃を受けたエレン達鬼人族は、急遽迎撃態勢を取ったが、相手の想像以上の個々の戦力に苦戦していた。

 

(おかしい。少数精鋭と言うなら頷けるが、実力的には幹部級の奴ら全員来ている気がする。普通、指揮系統は最低1人自陣に残すものだと思うが……それに、少数精鋭にする意味がわからない。奴らには、それこそ俺達とは比べ物にならない人数が居たはずだ。)

 

 敵の人数に違和感を覚えながらも、エレンは住民を守りながら戦い、苦戦を強いられている所を助けるべく、全体を見回す。一方では、敵の幹部の1人と思われる者と、ヒビキが戦っていた。

 

 ──────

 

「ヒャハハ!鬼共の中にただの人間が混じってらァ!こいつァ食ったら鬼共のかてえ肉より美味そうだ!」

 

「……フッ、ただの人間がここに当然のようにいる時点で、警戒すべきですよ?」

 

 そう言って、ヒビキは戦闘準備に入る。相手は蛇人族幹部の一人。

 

「知るか!俺たち蛇人族の方が鬼共より優れている!そして、たかが普通の人間ごときが、この、シャーザ様に勝てるわけが無いんだよ!ヒャハハハ!」

 

 ヒビキを圧倒的に下に見た言葉の後、甲高く笑いながらヒビキに突っ込むシャーザ。彼は大柄で、ヒビキよりもふた周りほど大きかった。そんな彼が大剣を片手剣のように振り回し、突進してくるのだ。並の戦士では一瞬で切り刻まれて終わりだろう。だが、ここにいる時点でヒビキの戦闘準備は完成していた。

 

「変換・生成、鉄の剣。射出!」

 

 ヒビキがそう言葉を発すると、シャーザの右側の空間から、鉄の剣が生まれ、シャーザに向かって轟速で射出される。

 

「へっ、甘いわ!」

 

 シャーザはそれを難なくなぎ払い、再びヒビキを斬り刻もうと襲いかかる。その一瞬の遅れで体勢を整えたヒビキは、シャーザの振り回す剣の軌道をほぼ直感で読み、回避していく。

 

「何っ!?」

 

「分かりやすくて、ありがたい斬撃ですね。」

 

 苛立ったシャーザがさらに斬撃を速めようと、一瞬だけ力を貯めるために動きが止まった。その隙に、ヒビキが脇腹に自身の片手直剣で斬撃をお見舞する。

 

「ぐっ!?やるじゃねぇか、だが、その程度の斬撃じゃあ痛くも痒くもねえぞォ!」

 

 

 ヒビキの斬撃は、全くもってダメージを与えることが出来ず、シャーザの反撃が彼を襲おうとする。

 

「一撃なんて言ってませんよ!」

 

「なっ!?」

 

 ヒビキは、素早くその場から後ろに飛び退く。そして、得意の生成魔法を発動させる。

 

「瞬時生成魔法陣、起動!『剣ノ五月雨』(つるぎのさみだれ)!」

 

 彼がそう唱えると、シャーザの足元と頭上に挟み込むように魔法陣が現れ、足元の魔法陣からは岩が錬成され、シャーザの下半身に絡みつき、動きを封じる。そして、頭上の魔法陣からは、無数の剣が錬成され、勢いよく降り注いだ。

 

「ぐおおおお!?」

 

「生成魔法は、甘く見られがちですが、使い方次第で多彩な戦い方ができるんですよ。」

 

 ヒビキが得意気に微笑みながら、そう告げる。剣の雨が止み、砂煙が薄れ、そこから傷だらけのシャーザが現れ……なかった。

 

「なっ!?」

 

「残念だったな!戦い方は面白いが、威力が全く足りてねえぞ!」

 

 背後から大声がして、振り返る。先程の攻撃が終わったあと、砂煙の中からヒビキに悟られない速度で抜け出していたのだ。

 

「しまっ、」

 

「細切れになりやがれ!『蛇ノ型・琉多斬』(じゃのかた・りゅうたざん)!」

 

 無防備な状態のヒビキに、シャーザの技が襲いかかる。辛うじて反応したヒビキは、自身の周囲の空気を薄い岩に変換して守るが、そんなものはいとも容易く破壊された。

 

「ぐっ……がはっ!?」

 

 身体中に複数の切り傷が付き、出血しながら吹っ飛ばされる。幸いにも、腕を切り飛ばされたりすることがないよう、最低限の回避は出来ていた。

 

「ほう?あの状況で、その程度の傷で済むとはな。腕の一本くらい切り飛ばせると思っていたんだが……。まあ、どちらにしろ、それじゃあまともに動けなかろう。」

 

 シャーザは、倒れているヒビキにトドメをさすために、少しずつ歩いて近づく。ヒビキは確かに強い。が、それは生産職にしてはの話だ。彼は器用なため、生成魔法を駆使した多彩な攻撃、それを使うタイミングを見極める頭脳、直感を持ち合わせていた。そのため、一般的な戦士よりは圧倒的に強い。だが、先程シャーザにも言われたように、常時は管理や生産の仕事をしており、別段鍛えられている訳でもないため、一撃が軽い。

 

「ヒビキさん!今助け、」

 

「邪魔だ雑魚がっ!」

 

「うあああ!」

 

 ろくに戦ったことも無いヒビキの部下達が、尊敬する上司を救おうとシャーザに飛びかかるが、当然虫のように振り払われ、斬りつけられる。

 

(皆さん……!……アレを使うしかないのでしょうか……。ですが……!)

 

 次々と、自分を助けるために来た部下が倒れる様を見て、ヒビキは迷う。彼が持つ特殊な力。それ故に親に捨てられ、族長のエレンのみがこのことを知っている。

 

(いや、何を迷っているんですか……!仲間を助けるために使うことは、間違いじゃない!……やるしか、ない!)

 

「おん?ヒャハハ!まだ立つ力があったか……!面白い、そうでなくっちゃなぁ!」

 

「ヒビキさん、お逃げを……!せめて助けが来るまででも!」

 

「お断りします。そして、シャーザ。あなたを殺します。」

 

 今まで見た事がないようなヒビキの殺気に、部下達は一瞬身震いする。いつも優しい彼が、ここまで感情を荒ぶらせているのは初めて見た。

 

「……ふ、ヒャハハハハ!俺を殺す?そのザマで?笑わせるなァ!やれるものならやってみろよ!てめぇのカスみたいな攻撃、優しく受けてやるからよォ!」

 

「それはありがたいですね、ではお言葉に甘えて。」

 

 そして、ヒビキはふらつきながらもシャーザの目前へ行き、手のひらをシャーザの腹部に押し当てる。

 

「あぁん?なんだそれ。なめてんのか!」

 

「あなたの負けです。『変換魔法・砂』。」

 

「?何を言って、!?」

 

 ヒビキがそう言うと、彼が手のひらを押し当てた所から、シャーザの体が砂に変わっていく。これが、ヒビキの特殊で忌み嫌われた力。通常、生成魔法等の生産系魔法の使い手は、上級者でも、先程ヒビキも行った、空気を物質に変える、物質変換が限界である。ところが、ヒビキの場合、生物を物質に強制変換させ、死に至らしめることが出来るのだ。

 それを知ったのは幼少期、ほんの思いつきでまさかと思いながら、自身の兄へ行使した時だ。無論、兄も冗談半分で、「やってみようぜ!」と言った感じのノリだった。そして、結果は言わずもがな。兄はヒビキの手によって砂へと変わり死んで、二度と戻ることは無かった。

 それを見た彼の両親が、ヒビキを化け物のように恐れ、病んでしまった彼を癒すためのピクニックと嘘をついて共に遠くへ外出し、そのまま荒野に捨て去ったのだ。

 それを拾ったのがエレンであり、彼のみが事情を知っている。皆にも話すようエレンは提案したが、ヒビキはトラウマからそれを拒否した。エレンだけでも受け入れてくれるならそれで充分だ、と。

 

「これでもう、ここにはいられないかも知れませんね。」

 

「く、そ、がぁ……。」

 

 シャーザの全身が完全に砂に変わり、そして崩れてただの砂の山になる。それを見たヒビキの部下たちは、唖然としていた。彼らにも恐れられ、嫌われるだろう。そう、ヒビキは思った。

 

 ──────

 

(ヒビキ、すまん。大丈夫や、絶対俺がその力のことをみんなに話して、説得するからな!)

 

 目の端で、ヒビキの戦闘を一部始終見ていたエレンは、心の中でそう強く思った。

 そして、エレンは再び、強大な魔力を感じる方へ走り出す。




今回はここまで!いかがでしたか?
今回登場したif民モチーフキャラは、

エレン(Erenさん)

ヒビキ(ヒビキさん)

でした!ありがとうございました!

次回、第7話
『蛇人族族長の圧倒的力』

お楽しみに!
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