平凡メイサーの異世界冒険譚   作:えんてぃ

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平凡メイサー、前回までは!
闇華から天界について聞いたエレンは、その事を鬼人族幹部を招集して周知する。今後の対策についておおまかに固まり、解散しようとしたその時、敵襲を知らせる鐘が鳴り響いたのであった。
その後、幹部のシャーザと戦闘で、苦戦しながらもヒビキは勝利をした。トラウマの技を使うことにより。
そして、その頃、蛇人族族長、クーシャのいる所では、壮絶な戦いが繰り広げられていた。


第7話『蛇人族族長の圧倒的力』

「やばい!後ろだ、風花!」

 

「えっ、きゃああ!」

 

 ヒビキがシャーザを倒した頃、蛇人族の族長、クーシャを相手取っていたのは、期待の若手鬼人、柊磨と風花。そして、

 

「来羅、合わせるよ!」

 

「おっけーだよ!闇華ちゃん!」

 

「『轟唸風雷』(ごうてんふうらい)!」

 

 なんとか戦えるまでに回復した、闇華と来羅。彼女達は、今回の恩を返そうと、今回の襲撃の応戦に参加したのだ。無論、恩が無くとも、協力はしただろうが。

 かつて、本能解放状態の節狐に対して絶大なダメージを与えることが出来た『轟唸風雷』をクーシャに打ち込むが、彼の強さと、二人の体力が万全では無いのが相まって、ダメージを与えることは出来なかった。

 

「そんな技が通用するとでも思ったかァ!?シャハハハハ!」

 

 そして、クーシャは目にも止まらぬほどの高速で闇華と来羅に接近し、斬り刻む。

 

「はやっ、!?」

 

「くっ、!」

 

 二人を斬り刻み、突き飛ばした後、着地した彼の影からもう一人、鬼人が飛び出してくる。『影迅隊』隊長、エイナだ。

 

「死ね。『断命ノ太刀』(だんめいのたち)」

 

 完璧に首を捉えた、普段は暗殺に用いる技が、クーシャに直撃する。だが。

 

「何かしたかァ?シャハ!」

 

「何っ!?」

 

 本来、彼女の技は、彼女自身が認識されていない相手に対して絶大な殺傷力を誇るのだ。しかし、既に戦闘状態で警戒体制のクーシャに向かって打ち込んだとしても、大して効果が無いのである。今回のようなケースは、エイナですら初めてだったため、ここまで効果がないとは思わなかったのである。

 

「ぐああ!?」

 

「どいつもこいつも弱いなァ?やはり、我々蛇人族の方が、貴様らのような鬼共より優れているのだァ!シャハハハハ!」

 

「風花!頼む!」

 

「もちろんだよ、柊磨!沈め、『底なし沼』!からの、『落石召喚!』」

 

 柊磨の合図で、風花が魔法を発動し、クーシャの足元が底なし沼に変わり、彼の頭上からいくつもの落石が発生する。

 

「ぐっ!?小癪なァ!」

 

 その怯んだ隙に、柊磨が一気に距離を詰め、全力で攻撃をする。

 

「くらえ、バケモノめ!『鬼烈・滅砕斬』(きれつ・めつさいざん)!」

 

「ぐぅぅぅ!?」

 

 さすがに、クーシャもダメージを受けたと思われる手応えがあった。しかし、致命傷にはならず。

 

「舐めるなよガキがァ!」

 

「なっ!?」

 

 底なし沼から抜け出したクーシャが、柊磨に襲いかかる。柊磨も完全に油断してしまっており、無防備な状態。このまま受ければ致命傷は間違いないだろう。

 

「くっ!」

 

 柊磨は、覚悟を決めて目を強く閉じる。しかし、その後に感じたのは痛みではなく、暴風だった。

 

「はあぁ!」

 

「何っ!?」

 

 来羅が、クーシャをぶっ飛ばしたのだ。しかし、彼女は回復しきっておらず、全力が出せていなかったはず。それなのに、今柊磨の目の前にいる来羅は、強く吹き荒れる風を纏っていた。それこそ、エレンとの戦いで暴走する直前に近い魔力だ。

 

「まさか、また暴走を!?」

 

「違うよ。『風の調べ・破滅の章』はね、まだあたし一人じゃコントロール出来ないの。だから、ほら。闇華ちゃんに制御を手伝ってもらってるんだ。」

 

 そう言われて、柊磨が闇華の方を見ると、彼女は来羅の方へ手を伸ばし、自身の魔力を送っているように見えた。恐らく、来羅の魔力に、少し自分の魔力を加えることによって制御のサポートをしているのだろう。

 

「このアマぁぁ……!」

 

「今度はあたしが相手してあげるよ!醜い蛇さん!」

 

「黙れえええ!」

 

 先程の不意打ち、そして長くつづく彼らのしぶとさに、クーシャは頭に血が上っているようだ。一瞬にして来羅との距離を詰め、斬撃を放つ。が、

 

「無駄だよ。」

 

「何ィ!?」

 

 その攻撃を、触れもせずにただ纏っている風だけで弾く来羅。そして、その手に持つ斧を、クーシャに叩きつける。

 

「『嵐斧・滅風衝』(らんぶ・めつふうしょう)!」

 

 荒ぶる風を纏った斧が、を棒切れのように吹き飛ばす。彼は、そのまま受身を取れず、岩壁に衝突する。

 

「がはっ!?」

 

「まだ終わりじゃないよ!はぁっ!」

 

 そして、クーシャに叩きつけられていた荒ぶる風の凝縮体が弾け、さらなる追撃が彼を襲う。

 

「ぐっ!?」

 

 さすがに、かなりのダメージを与えることが出来たらしく、クーシャの体には無数の傷、出血が見られた。そして、

 

(今だ……!)

 

「『断命ノ太刀』!」

 

 初撃が効かなかった後、ずっと好機を伺うために影に潜んでいたエイナが、弱った今がチャンス、と影から飛び出し、クーシャに斬撃を与える。

 

「ぐあっ!?」

 

 今度は、確実に手応えがあった。クーシャの首元から出血が起こり、ドサッと倒れる。しかし、さすがと言うべきか、まだ絶命には至っておらず、息がある。

 

「くっ、まだ息があるのか……!」

 

 エイナが悔しそうな声を漏らす。一撃必殺の仕事をしている彼女にとって、ここまでして獲物を仕留められないというのは、相当悔しいはずだ。

 

「あたしがとどめを刺すね。みんな少し下がってて。」

 

 そう来羅が告げ、クーシャに接近した、その時。ドクン、とクーシャの体が脈打った。

 

「ッ!来羅ダメ!離れて!」

 

 それを見た闇華が、大声で叫ぶ。

 

「え?」

 

 それを聞いて、振り返った来羅。警告のつもりで叫んだことが裏目に出てしまった。

 

「シャハハハハ!俺が負けるかァ!」

 

 目にも止まらぬ速度で起き上がったクーシャが、来羅を殴り飛ばす。

 

「きゃああ!?」

 

 脈打つ音は続いており、その度にクーシャの体が大きく、より筋肉質な体になっていく。唖然とする皆の前で、その音が終わる頃には、元より二周りも大きくなっていた。装備していた剣など持つつもりもなさそうだ。

 

「っんでだよ、ありかよ、そんなのありかよ……!」

 

 クーシャの体から溢れる圧倒的な魔力に、柊磨が理不尽を嘆く。だがそれでも、戦わねばならない。

 

「はああああ!」

 

 先程飛ばされた来羅が、高速で飛び出し、クーシャに全力で斧を叩き込む。しかし、

 

「効かん!効かんわァ!シャハハハハ!」

 

「そんなっ!?」

 

 その攻撃を首にくらってもビクともせず、高笑いをするクーシャに、来羅は絶望する。

 

「まずはお前からだ!鬼族ですらない部外者め!」

 

「くっ!」

 

 急いでその場から離れようとするが、クーシャに頭を掴まれてしまう。

 

「うあっ!」

 

「シャハハ!さっきまでの威勢はどうしたァ?おら!」

 

 クーシャは、来羅の顔面を思いっきり地面に叩き付け、押し付ける。

 

「ぐ、う……!」

 

「このまま殺してやるぞォ!シャハハハハ!」

 

 クーシャがもう片方の拳を強く握り、来羅を叩き潰そうと構える。

 

「やめてえええええええ!」

 

 そこに、雷を纏った闇華が突撃して何とか拳の軌道を逸らし、来羅が潰されるのを防いだ。

 

「『地獄の雷』!!」

 

 そのまま、クーシャに多数の雷を浴びせ、来羅を救い出して大きく距離をとる。

 

「来羅っ!、無事!?」

 

「ありがとう、闇華ちゃん。大丈夫だよ、まだ、戦える。一緒に、戦お?」

 

 本音を言えば、来羅には休んでもらいたかったが、今の戦況を考えると、動けるなら動いた方がいい。

 

「……よし!、やるよ、来羅!」

 

「おっけー!闇華ちゃん!」

 

「「『魔力協奏』(マジックコンツェルト)!!」」

 

 闇華と来羅の魔力が共鳴し、さらに膨れ上がる。だが、クーシャの魔力量には全く届かない。それでも、戦わなければいけない。

 

「「はああぁ!」」

 

「雑魚がァ!」

 

 クーシャ向かって突撃する二人。しかし、皆の思っているとおり、その攻撃にはビクともせず、二人まとめてラリアットをくらってしまう。そのまま、思いきり岩壁にぶつけられ、意識はあるものの、倒れてしまう。

 

「ぅあっ!」

 

「あっ!?」

 

 そして、エイナと風花も、強力な攻撃を受け気絶してしまう。残っているのは、柊磨のみ。

 

「み、みんな……!」

 

「シャハァ……。あとはお前だけだ小僧。早いとこぶっ殺して、エレンのやつもぶっ殺して、鬼共は皆殺しにしてやるよォ!シャハハハハ!」

 

「くっ!」

 

 圧倒的な力の差に足がすくみ、動けない柊磨に、クーシャの拳が迫る。死を覚悟して目を閉じた。しかし、来ると思っていた衝撃が来ることはなく。恐る恐る目を開けると、そこには、クーシャの一撃を受け止める、戦闘部隊総隊長、レイグの背中があった。

 

「総、隊長……!!」

 

「何を怯えてやがる、柊磨!お前の役目はなんだ!民を守ることだろ!」

 

 心強い助けが来た、と感動する柊磨に、レイグは叱責を浴びせる。

 

「し、しかし、こいつはあまりにも異常で」

 

「言い訳などいらん!相手がどんなに強かろうと、勝ち目がなくとも立ち上がれ!負けるとわかっていても、戦わなきゃならんことが、俺達にはある!そうだろ!!」

 

 レイグのその言葉に、柊磨はハッとする。彼も、若いとは言えど、この集落を守る盾であり、剣であるのだ。そんな自分が、脅威を前に挫けてどうするのだ、と。

 

「それにお前、風花はどうした!傷つけられて何も思わないのか!!」

 

 レイグ的には、このセリフは少し賭けの要素があった。柊磨が風花に想いをよせているのは噂で知っているが、その真偽は本人に確認できていなかった。だが、もし本当なら、これも燃料になるはずだ、と。

 

「風、花……?」

 

 柊磨は、その言葉を聞いて風花の方を見る。クーシャの攻撃によって、ボロボロになり、気絶している姿を。

 

「何を、やっているんだ俺は……」

 

 レイグが聞いていた噂は本当で、柊磨は風花に想いをよせていた。今の現状、集落の民は傷つけられ、仲間は倒れ、片思いの相手すら守れず、倒れている。そんな状況に、怒りが湧いてくる。

 

「情けねえ……!」

 

 いくら死んではいないとはいえ、守れなかった自分への怒り。そして、そもそもこんなことをしたクーシャへの怒り。その感情が柊磨を奮い立たせる。

 

(よし、いいぞ、柊磨はその気になれば、少なくとも俺に匹敵するレベルになるはず。情けないが、俺一人じゃこいつは倒せねえ、今ここで、)

 

「今ここで限界を超えろ!柊磨ァ!……ぐっ!?」

 

「シャハハハハ!さっきからうるさいんだよ!大人しく死ねェ!」

 

 柊磨に語りかけながら、クーシャと戦っていたレイグが、段々と劣勢になっていく。彼の体を殴り飛ばそうと、クーシャが構えた時、一瞬で凍りつきそうな冷気を纏った斬撃が、クーシャを襲った。

 

「ぐぅっ!?なんだ、今のは!?」

 

 クーシャが攻撃された方向を見ると、そこには、先程まで絶望で心が挫けていた柊磨が、刀を振り抜いた体勢で堂々と立っていた。

 

「全部、俺が守る。『纏装・氷刃ノ闘鬼』(てんそう・ひょうじんのとうき)」

 

 柊磨が纏う冷気、そこから感じる殺気に、クーシャは一瞬思考が止まる。その隙に、レイグは一旦クーシャから離れ、柊磨の横に移動する。

 

「そうだ、それでいい、柊磨。お前はやれば出来るやつだ!俺も負けていられねえ、本気で行くぞ、ついてこい!」

 

「当然です、総隊長。あいつは、全力で叩き潰します。」

 

 そして、レイグも本気を出すために纏装状態になる。

 

「『纏装・武ノ覇気』(てんそう・ぶのはき)」

 

 その様子を見ていたクーシャが、狂ったように大声をあげる。

 

「舐めるなよォ!!!くそ鬼共がァ!」

 

 そう言いながら、二人に向かって突進していく。

 

 怒涛の第三ラウンドがはじまるのだった。

 

 




今回はここまで!いかがでしたか?
今回登場したif民モチーフは、

Yamikaさん(闇華)(元if民)

ララさん(来羅)(元if民)

でした!ありがとうございました!

次回『奮闘の鬼戦士』
お楽しみに!
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