幹部のシャーザと戦闘で、苦戦しながらもヒビキは勝利をした。トラウマの技を使うことにより。
そして、その頃、蛇人族族長、クーシャのいる所では、壮絶な戦いが繰り広げられ、柊磨が覚醒する。今、まさに決着がつこうとしていた━━━━━!
「今助ける!『剣舞・鬼人裂斬』(けんぶ・きじんれつざん)!」
柊磨達が、クーシャに苦戦している頃、エレンはまだ、その場所にたどり着けずにいた。なぜなら、道中で仲間が危険にさらされており、助けない訳には行かないからだ。敵陣営の幹部は相当な強さで、鬼人でもまともに相手ができるのは少数だった。無論、一般の隊員達も精一杯応戦してはいたが、やはり力及ばない者が多かった。そのため、エレンが見かける度に助けていたのだ。
「エレンさん!ありがとうございます!」
「おう!まだ気ぃ抜くなよ!じゃ!」
助ける度にお礼を言われるが、正直一秒すら時間がおしい。早く異様な魔力のある所へ向かいたいのだ。
(……さっきまでより魔力が膨れ上がってる。早く行かねぇと……!)
足早にその場所へ向かうエレン。魔力を使えば一瞬だが、相手の強さが分からない今、そして道中の戦闘を加味して、少しでも魔力を温存しておきたかったのだ。今は戦っている皆を信じるしかない。
(皆、俺が行くまで、死ぬんじゃねぇぞ!)
──────
「『鬼烈・氷砕斬』(きれつ・ひょうさいざん)!」
「『覇鬼・覇皇撃』(はき・はおうげき)!」
柊磨とレイグの斬撃が、クーシャに襲いかかる。柊磨の方は、速く、凍てつく斬撃。レイグは、柊磨程の速度は無いが、重い一撃。
「ぬぅ!?……こいつら、急に力が増しやがった……!?」
余裕の笑みで、二人の攻撃をまともに喰らったクーシャだったが、想像を超える威力に驚きを隠せない。クーシャの体にも傷をつけることが出来、見てわかるほどのダメージを与えられている。しかし、
「そんな程度じゃ、俺は殺せねえぞぉ!?」
クーシャは引くことも防御に徹することも無く、変わらず攻撃の手を緩めない。目にも止まらぬほど速く、重い一撃が、何度も繰り出される。
「ちっ。」
「柊磨!戦闘において気合いは大事だが、冷静さは失うなよ!苛立つのは分かるがな……!」
「分かってますよ、隊長!」
その後も、どちらも引けを取らない攻防が繰り広げられた。レイグと柊磨の連携も相当なもので、クーシャはやり辛く感じていた。逆に、クーシャのタフさは異常が過ぎ、二人を肉体的にも精神的にも疲弊させていた。そして、
「ぐぅぇ!?」
レイグの一撃が、クーシャの不意をつくことが出来、クーシャが大きく怯んだ。この隙を見逃す柊磨ではない。
「いけぇぇええええ!柊磨ァァァ!」
「『絶氷・零ノ太刀、柊華』(ぜっひょう・ぜろのたち、とうか)!」
柊磨の全力の剣技が、クーシャに炸裂する。無数の絶対零度にも近い氷の斬撃が、クーシャを襲う。
「ぐぅ!?か、体が……!」
その凍気は、クーシャの身体を徐々に凍りつかせて行った。段々と身動きが取れなくなるクーシャ。
「く、そ……が。」
そして、遂には完全に凍りついてしまう。その心臓部には、一輪の氷の華が咲いていた。
「隊長、お願いします!」
普通の生物なら、これで完全に絶命なのだが、相手が相手のため、さらにとどめを刺すべく、隊長のレイグに声をかける。
「よくやった柊磨!最後は任せろ!」
柊磨の攻撃に巻き込まれないよう、近くにいる倒れた仲間を集めながら離れていたレイグ。仲間達をそっと置き、一気に凍ったクーシャの所まで距離を詰める。
「喰らえッ!『覇鬼・爆砕斬』(はき・ばくさいざん)!」
接近の勢いも載せた、重い一撃を、凍ったクーシャにぶつける。クーシャは粉々に砕け散った。
「……ふぅっ。」
柊磨はその破片を暫く見つめ、動きがないのを確認してから、纏装状態を解除する。まだ幹部が残っているかもしれないので気は抜けないが、どうしても疲れがどっと襲ってきた。
「みんなは……。」
「大丈夫だ。幸いにも、死人はいない。」
他の皆の様子を確認しようとした柊磨に、レイグが声をかける。どうやら、皆満身創痍ではあるものの、生きてはいるようだ。早急に治療が必要ではあるが、今の間に応急的な止血等は済ませたらしい。流石は歴戦の隊長である。
「……よくやったよ、想像以上だ、柊磨。」
「……ありがとう、ございますっ。」
レイグは人を激励することはあれど、褒めることはなかなかない。それだけに、この賞賛は柊磨の心に沁みた。
「さすがの俺達も、もう動けない。医療班をここに呼ぼう。アレは持ってるか?」
「あ、持ってますよ。」
柊磨が持ち出したのは、ヒビキ特製の信号弾。魔力による念話は、魔力を使うかつ、相手の位置が特定出来ていなければ厳しい。そのため、魔力が無くても、すぐに救援や医療班を呼べるためのの信号弾を独自に開発、錬成していたのだ。
「それじゃ、撃ちますね。」
「ああ……。ッ!柊磨!」
柊磨の言葉に頷いたレイグだったが、急に顔色を変えたと思うと、叫びながら柊磨をつきとばした。
「なっ!?」
突然の行動に驚きを隠せない柊磨だったが、その直後、それを何倍にも超える衝撃の光景が目に映る。
「シャハハハハァ!」
「がッ……!?」
「隊長ぉぉお────ー!!」
倒したはずのクーシャが、レイグを叩き潰していた。レイグは白目を剥き、ピクともしない。嫌な予感が柊磨の脳内によぎる。
「くそっ!」
とにかく反撃しなくては。そう思った柊磨は、もう一度先程の纏装状態になり、凍気を纏った斬撃を繰り出す。しかし、
「無駄だァ!!!」
「ぐぁっ!?」
先程の戦闘でほとんどの魔力を使い切り、尚且つ気持ちが冷静になってない状態では、クーシャに対抗などできるはずもなかった。あっけなく弾き返され、そのまま吹き飛ばされて壁に激突する。
「くっ、そ、なんで。」
「シャハッ、想像以上より更にやるようだなァ、クソ鬼共。まさか『脱皮』まで使わされるとは思わなかったぜェ。」
柊磨の問いかけに答えたかは不明だが、今の発言でクーシャがなぜ生きているかは想像がついた。先程の凍らせる前の一瞬、あの時に高速で脱皮し、本体は避難して身を隠していたということだろう。さらに恐ろしいことに、先程までより魔力が格段と強くなっている。
「あぁああ!!」
死にものぐるいで、柊磨は勇敢に立ち向かう。しかし、そんな悪あがきが通用するような相手では無い。
「無様なものだなァ!シャハハハ!」
「ガッ!?」
柊磨の頭を鷲掴みにしたクーシャは、そのまま彼の頭を地面に叩きつけた。
「ぐ、ぅ……。」
「まぁだ息があるのかァ!?全くしぶといやつだなァ!」
クーシャはそう笑いながら、柊磨にとどめを刺すべく、拳を振りかざす。
「ぅ、あ」
意識が朦朧とした柊磨に、その攻撃を受ける術も、回避する術もない。また、その場に居る者たちも、皆瀕死状態で、彼を助けることなど出来なかった。
「死ねぇぇええええ!」
振り下ろされる拳。死が目前に迫る。
(くそ、結局俺は、負けるのか……。頑張ったのにな、適わなかった……。ごめんみんな、先に逝くよ……。)
柊磨にはもう、闘う意志はもちろん、生きる意思すら無くなっていた。そっと目を閉じ、その時を待つ。
しかし、覚悟していた感覚が来ることはなく、代わりに瞼の向こうで、クーシャの拳と何かがぶつかる音が聞こえた。
「え……?」
「なにィ!?」
柊磨は目を開く。その目が映したのは、ここの鬼人達にとって一番頼りになる背中。多くの若者が将来彼のようになりたいと、追いかける、決して特別大きくは無いけれど、不思議と頼もしい背中。黄色く光るオーラをまといながら、彼、エレンはクーシャの攻撃を弾いていた。
「……ッ!エレン、さんっ!」
もう死ぬと、覚悟を決めていた柊磨は、エレンの登場に大きな安心を感じ、ほんの少しだけ涙ぐむ。そんな彼をチラリと見ながら、エレンは、
「……柊磨も、みんなも。ほんまによー頑張ってくれた。医療班も連れてきた。もうゆっくり休め。あとは、任せろ。大事な家族を傷つけた輩は、俺が倒す。」
そう言いながら、エレンはクーシャの方に向き直る。クーシャの方は弾かれた衝撃で尻もちをつき、目の前にエレンが居るということに理解が追いついていない様子だった。
「や、やっと現れたな!鬼族の長ァ!!シャハハハ!殺してやるぞォぉ!」
やっと何が起きたか理解したクーシャが、高らかに笑いながらエレンに殺気をぶつける。
「おい、良くもここまでやってくれたな、クーシャ。……覚悟しろよ……?」
いつもの元気で明るいエレンは、見る影もなく。クーシャを見るエレンの目は怒りに満ちていた。
今回はここまで!いかがでしたか?
今回登場したif民モチーフキャラは
Erenさん(エレン)
文面のみで
ヒビキさん(ヒビキ)
でした!ありがとうございました!
次回、〜天界勢侵略編〜《黒魔女の章》
第9話『戦う理由』
お楽しみに!