平凡メイサーの異世界冒険譚   作:えんてぃ

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ㅤクーシャ相手に奮闘した柊磨達。しかし、『脱皮』を駆使したクーシャに出し抜かれ、柊磨を庇ったレイグが瀕死に。絶体絶命のピンチになる。そこへ、ついにエレンが到着し、族長対族長の戦いが開幕しようとしていた。


第9話 『戦う理由』

「覚悟、だと?……シャハハハ!?ふざけるなよクソ鬼が!覚悟するのは貴様の方だァ!今から貴様を殺して、我ら蛇人族が鬼共より優れていると、証明するんだよォ!」

 

 エレンの言葉を聞いたクーシャが、早口にそう叫び散らかした。それを表情一つ変えずに聞いていたエレンは、左腕を突き出し、手のひらを上にして、クイクイっと挑発する。

 

「〜〜〜!!舐めやがってええええぇえ!」

 

 その挑発に容易く乗ったクーシャが、エレンに突撃してその拳を打ち込む。しかし。

 

「なぁッ!?」

 

「あれだけ吠えていた割には、その程度なんか?」

 

 その攻撃はエレンに片手で軽々と受け止められる。拳を離そうにも、エレンに掴まれた拳が離れない。

 

「……強さを証明するために戦うと言ったな?なら、俺だけを狙えばよかったはずだ」

 

「ふ、ふん!族長の首は確かに証明するには充分だなァ。だが!より決定的に力の差を見せつけるには、殲滅が一番なんだよォ!」

 

 拳を掴まれたままでありながら、クーシャは焦りを隠してそう吐き捨てる。

 

「……それが、お前の戦う理由か。なら、俺は。」

 

 そこまで言うとエレンはクーシャの拳を離し、閃光の如き蹴りをクーシャの鳩尾に打ち込んだ。

 

「ガッ!?」

 

 目にも止まらぬ速度でクーシャの巨体が吹っ飛び、岩に激突する。そんな彼を鋭く見ながら、エレンは声に熱意を込めて言い放つ。

 

「なら俺は、傷つけられた仲間のために戦う……!」

 

 ガラガラと崩れ落ちる岩の隙間から腕が出てきて、クーシャが起き上がる。

 

「相変わらず人、いや、鬼の良いやつだァ……。そんなに死にたけりゃ、今すぐぶっ殺してやるよォ!」

 

「そのザマでか?」

 

「ほざけっ!」

 

 エレンが煽ると、クーシャは魔力を高めて突撃してくる。先程までは、不意をつかれたのと会話に気を取られたせいで集中できていなかったが、今度は違う。明らかな力と速度でエレンに襲いかかる。が、

 

「ちっ、速い!」

 

 力はともかく、閃光の速度を持つエレンに速さで敵うはずもなかった。エレンの方は的確に、合間を縫って重い一撃をクーシャにお見舞いしている。無言で淡々と、仲間を傷つけられた怒りを込めて。

 

「く、そがぁぁあ!」

 

 クーシャが叫ぶと、見境なしに全方位に魔力弾を放出する。無論、エレンにはそんな攻撃は当たらないのだが。しかし、

 

「!?ぐっ。」

 

「かかったなァ!」

 

 クーシャは、魔力弾で惑わせながら、自身の周りに薄く魔力の膜を纏っていた。それに触れたエレンは、ダメージにはならないほどの軽い反撃を受ける。ただ、一瞬動きを止めるのには充分すぎた。

 クーシャの拳が、ズドン、エレンにめり込む。防御が間に合わなかったエレンはそのまま吹き飛ばされ、足で踏ん張り壁への衝突は何とか免れる。しかし、その隙にクーシャは意外な行動を取った。

 

「やはり、悔しいが今の俺では貴様に勝つのは厳しいようだァ。来い!全員集まりやがれぇ!」

 

 そう声をあげると、各地で戦っていた蛇人族の幹部が”死体を含めて”一瞬でここに集まった。そして、

 

「なっ!?何を!?」

 

 エレンが、思わず素に戻って叫ぶほどのことが目の前で起きた。なんと、クーシャは手元に集めた幹部を喰らい始めたのだ。そして、彼の魔力がどんどん膨れ上がっていく。

 

「ふぅ……何故か少し足りないようだが。消し炭にでもされたか?まあ良い、力はあり余るほど溢れているゥ……!シャハハハ!」

 

 足りない分は、ヒビキが例の力で屠った幹部達になるのだが、それは今のクーシャには知る由もない。

 

「クズが……!仲間を、家族を、なんだと思っていやがる!」

 

「はァ?俺が強くなるための糧、利用するための駒だろ。むしろ、俺の一部になれたことを光栄に思っているはずさァ!」

 

 高らかに笑うクーシャと、散らばった”食べカス”を見て、エレンは吐き気を催すほどの嫌悪感を覚えた。

 以前、クーシャ達蛇人族と対立した時のことを思い出す。あの時は、ここまでクズじゃなかったはずだ。やり方は卑劣だったが、仲間と協力しているように見えた。負けたとしても、また皆で作戦を立てて挑戦してくるのだと思っていた。それが、ここまでになるとは。

 

「行くぞ、『剣舞・鬼人裂斬』(けんぶ・きじんれつざん)」

 

 エレンの斬撃が、クーシャを襲う。が、ダメージが入った様子が無かった。

 

「なっ!?」

 

「やはり、今は俺の方が強いようだなァ!!」

 

 突き出されたクーシャの拳を、得意のスピードで躱すエレン。しかし、纏装状態の斬撃で無傷となると、有効打がほとんど見当たらない。あとは、時間のかかるものやかなりの陽動が必要なもの。とてもタイマンでやれる技じゃない。

 

(いや、気持ちで負けてどうする俺!やるぞ!)

 

 負ける、という恐怖は打ち消し、今は目の前の戦いに集中する。クーシャの猛攻を躱しながら、隙を探す。彼の蓄えた力にリミットがあるなら時間稼ぎは有効だ。無論、逃げてばかりでは警戒されるので、弱点と思われる部位を重点的に狙って攻撃を繰り返している。

 

「シャハハハ!打つ手なしかクソ鬼ィ!楽しくなってきたなぁ!?」

 

 エレンとクーシャの激しい攻防が繰り広げられていた。

 

 ──────一方その頃、けが人として運ばれた柊磨達は、医療班による全力の治療を受けていた。

 

「俺はいいから!隊長の方に回ってくれ!頼む、隊長は俺を庇って……!」

 

 もちろん、レイグの方にも人員は回っているのだが、怪我が酷すぎるため柊磨も気が気でなくなっており、騒いでしまう。

 

「お黙りなさい!」

 

 他の患者もいるため、声を抑えていたが、それでも尚強みのあるポーラの声が柊磨の口を止めた。いや、声を抑えているからこその圧だったとも言えるだろう。

 

「柊磨、よくお聞き。私達医療班のやることは、怪我人全員を治すこと。そこに優先順位なんてものは無い。レイグの方にはとっく精鋭を回してる。分かったら、黙って治療を受けなさい。あんたがこうしている間に救える命がどれだけあると思っているんだい……!」

 

 早口でそう言われ、柊磨もさすがに冷静になる。大人しくベッドに倒れ込み、治療を受ける。

 

「ごめん、ポーラさん。俺がどうかしてた。」

 

「ふん、その歳にしちゃあ物分りが良くて助かったよ。気持ちはみんな同じだ。その事を忘れちゃいけないよ。」

 

「はい」と答え、目を閉じる。エレンとクーシャが戦っている魔力がひしひしと伝わってくる。どっちが優勢かはもはや分からないが、つい先程クーシャの魔力がまた膨れ上がったのは確かだ。

 エレンなら、大丈夫だという安心感と共に、今は安静にすることを選んだ柊磨であった。

 

 ──────また他の場所。

 

「エレンさん……!今、向かいます……!くっ。」

 

 ヒビキは、シャーザとの戦いの後さらに何人かの幹部と戦い、ボロボロになりながらもエレン達の居る場所へと向かっていた。

 

(敵側の魔力がまた大きく上がりました……。そして、エレンさんの魔力が先程まで攻撃的だったのに対して、今は様子を見るような一歩引いた感じになっています。これはつまり、現状直ぐに決定打を打つ術がなく、攻めあぐねている証拠。私が行くことで良い方向に転ぶと良いですが……)

 

 恐らく、敵側はまだヒビキの能力を知らない。かなりの格上相手に、あの能力がどこまで通用するのかは不明だが、今現状可能性があるのはこれしか思いつかなかった。

 

「私が、この力で、カタをつけます……!」

(例え、命に替えても。あの時の恩を返す時です……!)

 

 己の意志を固めながら、目的地に向かうヒビキであった。

 

 




今回はここまで!いかがでしたか?

今回登場したif民モチーフは、
Erenさん(エレン)
ヒビキさん(ヒビキ)
でした!

 お久しぶりです、約7ヶ月ぶりの投稿となりました。ここまで開くと、内容を忘れている方も多いと思います。それでも読んでくれている方に感謝しかありません。
 さて、ついにエレンとクーシャが激突しましたね。仲間を思うエレンと、仲間を贄にして力をつけたクーシャ。正反対の2人がぶつかり合っています。現在はエレン劣勢ですが、この後どうなるのでしょうね。お楽しみに。(笑)
 実際、私の頭の中ではアニメのようにビュンビュン動きながら戦っているのですが、これを文章に落とし込んで伝えるのがかなり難しく。皆さんに上手く伝わりますように、と願いながら投稿しております。……百パーセントとまでは言いませんが、五十パーセントは伝わっていますように、なんて。(笑)
 天界の方や魔女の動向や、しばらく出てない主人公ズはどうしているのか、気になっていると思います。忘れてはいないのでご安心を、もう暫くお待ちいただけますれば。

 雑談はこの辺りにして、次回タイトル発表、行きますね!

 次回
 第10話『絆』
 エレンは、1人じゃない。

 お楽しみに!
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