平凡メイサーの異世界冒険譚   作:えんてぃ

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ジーマ村にて、村人の暖かい歓迎により傷も癒え、情報も得ることが出来た焔斗。
目的のシンレ館に向けて出発したが、道中謎の斬撃に襲われる。
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第7話『焔vs炎』

「っ、誰だ!」

 

「へぇ……今のを防ぎ切るんだぁ……なかなかやるじゃないの、あんた。」

 

ㅤ木々の間から飛んできた炎の斬撃を叩き落とした焔斗。すると木の陰から狐耳、赤髪ロングに赤目で片手直剣を持った獣人が出てきた。メガネもかけている。おそらく、というかほぼ確定でこの獣人が村人達が言っていた者だろう。

 

「あたしは節狐(せつこ)……。獣人の戦闘好きさ。とにかく強い奴と戦いてえ、そしてシンレ館はやべえ噂だらけ。ならば、シンレ館に繋がる一本道のここを通る奴はほぼ確定でお強いわけだ。」

 

ㅤ戦闘好き。情報通りだった。ただ意外だったのは少し取り巻きが居ることだ。てっきり一人で行動するタイプだと思い込んでいたが、対多数は焔斗の苦手とする状況である。

 

「戦闘好きと言う割に、取り巻きに頼ってんじゃねえよな?まあ見た感じ、あんたほど強いわけじゃなさそうだけど。」

 

「ああ、安心しな。こいつらはあたしのお目付け役、というかなんというか。なんにせよ、戦いの邪魔はしてこないからさ。邪魔したら、あたしが許さねえしな。」

 

ㅤどうやら別に全員で襲いかかってくる訳では無いらしい。それなら助かると思いながら、焔斗は武器を構えた。

 

「悪いけど俺も急いでる。とっとと終わらせてもらうぜ。」

 

「舐められたもんだねえ…… 」

 

「『お世話の時間』(執事タイム)!」

 

「は?」

 

ㅤ魔王には通用しないだろう、とその時は使わなかった技を使用した。『お世話の時間』(執事タイム)。指を鳴らした後3秒ほど時を止めて行動できる技だ。圧倒的格上には通用しないのと、同じ時止めの技を使う敵には効果が無いため、割と使うことは少ない。

ㅤ焔斗が指を鳴らした瞬間。節狐の体にメイスがめり込んでいた。

 

「カハッ……。」

 

「時間はかけたくない、そう言っただろう?」

 

ㅤ全力で吹き飛ばす。一応、魔力もメイスに込めていたので威力はそこそこあるはずだ。木々をへし折りながら、節狐は吹っ飛ぶ。

 

「節姐さん!!!」

 

ㅤ取り巻きが心配そうに名前を呼ぶ。さすがに、この程度で倒せるとは思っていないが、少なくともダメージは入ったはずだ。

 

「やってくれるじゃねえか……今のはちと効いたぜえ?」

 

「まあ、さすがにそこまでダメージはないか……。」

 

「ったりめぇだろ?獣人なめんなって。」

 

ㅤほとんど無傷だった。そう、ほとんど、である。つまり何度も何度も打ち付ければ倒せる。幸い、時止めを使えばそこまで時間を取られることも無い。

 

「『お世話の時間』(執事タイム)。」

 

ㅤもう一度時を止める。そして殴りこもうとした瞬間だった、止められた時の中で節狐は動いたのだ。

 

「なっ!?」

 

「そうちまちまと、つまんねえ戦い方してんじゃねーよ!」

 

(こいつ、気合いで時止めを破りやがった!?)

 

ㅤ節狐は戦闘狂である。バチバチとぶつかり合う派手な戦闘が大好きだ。それが出来ない戦闘なんて、真っ平御免。ましてや相手は、もっと派手な戦いができるくせに、あえて針でつつくような戦い方をしている。そんなのは認められない、その一心だけで焔斗の『お世話の時間』(執事タイム)を破ったのだ。

 

「ははっ!これでもくらいな!『爆殺炎舞』!!」

 

「チッ……めんどくせぇ!」

 

ㅤ片手剣に炎を纏わせ、狂ったように舞う。放たれた炎の斬撃が物に触れた瞬間、大爆発を起こす。そこは森だったはずなのに、いつの間にかクレーターだらけの土地になっていた。怖いのは、その爆発に節狐自身が巻き込まれても気にしていないという点だ。取り巻き達は何やら防御結界を張って凌いでいるが、彼女にその様子はない。そこまでダメージ喰らわないとしても、一応はできるだけ自分には当たらないようにするのが普通だ。こういうところが、戦闘狂と呼ばれる所以だろう。

 

「逃げてばっかじゃつまんねえ!どうしたどうしたぁ!?もっと攻めてこいよォ!」

 

「くっそ、喰らえ、『螺旋焔』!!」

 

ㅤなんとか攻撃の隙を見つけて『螺旋焔』を放った。渦上に真紅の焔が節狐に迫る。

 

「いいねぇ!そう来なけりゃ楽しくねぇ!……!?」

 

ㅤ節狐は『螺旋焔』をあえてよけずにくらう。かなりのダメージの様だったが、彼女の戦意は全くもって下がっていない。だが、何故か驚いた様子だった。

 

「おいあんた、今の炎の色。ガチの紅だったじゃねえか……!なんでただの人間が……。」

 

「?この色って、魔力によって色が変わるとかじゃねえのか?」

 

「んなわけあるか!常識だろ!」

 

ㅤ怒られてしまった。間違えていたらしい。それにしても、先程から出てくる単語が気になって仕方がない。

 

「なあ、もしかして俺の焔の色ってなんか特別なの?」

 

「知らねえのか……?」

 

「知らねえっすね。」

 

ㅤそう答えると節狐は「あはは!」と笑い、魔力を込め始めた。

 

「お、おい!質問に……」

 

「”真紅の焔”。俗に言う炎とはまた別種の属性。燃やす、という点において変わるところはないが、”禁忌の焔”に対抗する手段と言われている。そんなやべーの使うやつと戦えるなんてよ……。全力で行かなきゃ勿体ねえよなぁ!」

 

「な、なに?」

 

ㅤ”真紅の焔”。これが焔斗が使っている焔の呼び名らしい。そしてそれは、魔王レーヴァテインの使う”禁忌の焔”に対抗する手段、と彼女は言った。なぜ、と思ったが、魔王レーヴァテインが俺に向かって言った言葉に説明がついた。彼は、自分の焔に対抗する焔を使う相手を見つけた。だからこそ殺さずに、強くなれと言ったのではないだろうか。

 

「この世界丸ごと燃やせそうなくらい、魔力が高まるぜぇぇえええええ!!いくぞ!『本能かいほ……」

 

「節狐様!お待ちを!」

 

「!?」

 

ㅤこれは本気でやばい、と思った、その瞬間だった。取り巻きの中でもリーダー格と思われる人物が出てきて、制止の声を上げた。

 

「なんだァ!?邪魔はすんなって言ったよな!?」

 

「節狐様!お聞きください!もう出発しなければ帰省する時間に間に合わなくなりますぞ!」

 

「何?もうそんな時間なのか?……ったく。タイミングの悪い。」

 

ㅤ焔斗には何が何だか分からなかったが、どうやら戦う気は無くなったようだ。溜め込まれていた魔力が霧散し、節狐の雰囲気も普通に戻った。

 

「……やらねえのか?」

 

「あたしも、やりてぇんだけどよ。流石にお国の決まり破るのは不味いんだよ。だからよ、またどこかで絶対戦おう。なんだかあんたとはまたどこかで会いそうな気がするからよ。……絶てぇ死ぬんじゃねえぞ!?わかったな!?」

 

「あ、ああ……。」

 

ㅤそれだけ言い残すと、節狐一行は出発してしまった。ちなみに、先程の戦闘で引火した木々は会話中に、取り巻き達がしっかり消火していた。

 

「……嵐のようなやつだったな。さて、気を取り直してシンレ館に行くとするか!」

 

ㅤそこから歩いて五分くらいだろうか。意外と近かったのか、シンレ館に到着した。「よし……。」と気合いを入れ直し、焔斗は扉を開ける。

 

「試練を受けられると聞いてきた!焔斗という!誰かいないか!」

 

ㅤ薄暗く広い玄関。ここからでも見えるおびただしい本棚にびっしりと詰まった本。しばらく待っても返事がなかったので、もう一歩踏み込んだその瞬間。

 

「っ!?」

 

ㅤ首筋にものすごい悪寒が走り、全力でその場から飛び退いた。その瞬間、今まで焔斗が居た場所に一筋の線が走った。気づいていなければ首から上が飛んでいただろう。間一髪だった。

 

「え〜?避けちゃうのぉ〜?ひっさしぶりに人が来たから生首取れると思ったのにぃ〜。まあ、戦いも楽しみたいってのもあったから、これはこれでいいけどね♡」

 

「あんたが……しゃろんさん、ですか?」

 

ㅤ焔斗がそう問いかけると、目の前の魔女っ娘(?)はニヤリと笑って答える。

 

「その通り!私こそがこの館の主にして、魔女のしゃろん!お兄さん、私を楽しませてね♡」

 

 




今回はここまで!いかがでしたか?

今回のif民モチーフは、お話だけにレヴァさん、

そしてメインでせつこさん。

最後にちらっとしゃろんさんが出てきています!

次回
第8話『思い込みをぶち壊せ』

お楽しみに!
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