【完結】血錆の騎士とはじめて愛された竜   作:澱粉麺

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ティアー・ディスペア…

 

 

 

 

二つ月が、煌々と輝く晩だった。

 

ただ月明かりのみを頼りに、静かに鎧を着込む。

部屋には彼以外は居ない。

二人とも任務だろうか。

それについては、あまり気にはしなかった。

 

 

がちゃり、と剣を背に負う。兜をぐいと頭に嵌めた。暗くなった視界は、彼の内の昂った心を鎮めてくれるようで、落ち着いた。

 

この身一つでどれまで行けるだろうか。

それはわからない。

だからこそ、それを試してみたかった。

『普通』にとって己はどれほど異常なのか。

それを知ることもまた、副産物として楽しみだった。

 

 

 

「………!

………起きていたのか」

 

 

 

そんな彼の目の前に立ちはだかるのは、がたがたと震えながら、手を広げてこちらを睨む少女。銀髪は月の光を浴びてきらきらと輝くようだった。そんな、彼の最愛の者は。

 

手に、短剣を持ってイドに向ける。

 

 

 

「…退け。

貴様の遊びに付き合ってる暇は無い」

 

「さもなくば、殴り飛ばしてでも退かせるぞ。

今すぐに消えろ」

 

 

敢えて強い言葉のみを浴びせかける。

それで退いてくれるように。

二度と、自分を思い出さないように。

のちに自分を想って、苦しまないように。

せめて苦々しい思い出となりたくて。

 

身体をびくつかせて、震えを更にひどくする幼女。まともに立たない程に恐れて震え、視線も合わず、息も荒く。

それでいて、イドの前からは退こうとはしなかった。

 

ただ、首を横に振った。

 

 

 

「いや、いや。

しんじゃう気なんでしょ」

 

 

「……!?」

 

 

 

イドは、初めて彼女の声を聞いた。

それまでは誰かを通して聴こえた声。

初めてのそれは恐怖に塗れて、そして何より。

何よりも、悲しみに塗れていた。

 

 

「そんなのいや。クシーは、……に、しんでほしくない。なんでいこうとしちゃうの。どうして?」

 

 

ぼそり、と。

イドを呼ぶ時だけ声が一段と小さくなり、なんと言っているかは聞き取れなかった。それでも、彼を指している事だけはわかった。

 

そうして、イドは初めてこの時になって、彼女が自分とニコから距離を取っていたのかがわかった。

 

 

 

「……そうか。

お前は、俺たちが怖いんじゃあなかったのか」

 

「お前は、お前が産まれて、ただ死を願う俺たちを。

そして、そうせしめる自分が、怖かったんだな…」

 

 

 

心を読む、だとか。そのような現実離れな事をしていたのかもわからない。ただ、人以上に感情の機微に聡いだけの子だったのかもしれない。

 

いずれにせよ、少女は、気付いていた。

自分の存在があるにつれ。イドもニコも、自分自身の死期を悟ったかのように生きる為の力を失うことに。

 

 

「……う、うう、えぐっ、うええ…」

 

 

ぼろ、ぼろ。

大粒の涙を流して、泣きじゃくるクシー。

それを誰にも相談できず、それを誰にも言えず、ずっと、ずっと自分が悪いのかもしれないと思い続ける彼女はどれだけ辛かっただろう。

 

父に、それを暴露されて。

娘はただ唯一言い訳のように持っていた短剣すら取り落として、膝をついて泣き崩れた。

 

 

 

「…すまない。俺が悪かった。俺は、お前を見て。

ただそれで満足していただけなんだ…」

 

 

ああ。俺が居た証は、そこに居てくれる。もう俺が消えようとも、彼女が在り続けてくれるのだと。そう思っていただけなのに。

だから、君は何も悪くないのに。

そう、もっともっと早く言ってやればよかった。

 

 

「お前のせいなんかじゃないんだ。

ごめん。ごめんなあ。辛かったなぁ…」

 

 

イドは、愛娘の背中をそっと抱いた。

しゃがんで、膝をついて、視線を合わして。

ぎゅっと抱きしめて、彼女に腕を回した。

少女もまた、いっぱいに彼の首に腕を回す。

 

 

「………これから、することも。

許してくれなんて言わない。

許して貰わなくて構わない。

だけど、ごめん。これは、ただの…」

 

 

 

俺のわがままなんだ。

 

 

 

どずっ。

 

鈍い音が鳴り響く。

幼女の腹に拳がめり込んだ音。

騎士の籠手が、クシーの腹に当たり。

その激痛で、そのまま意識を失った。

 

 

 

(……ごめんな。本当に、ごめん)

 

 

彼女とこれ以上話せば、俺は死ぬのが怖くなる。

生きていたいと、少しでも思ってしまう。

そうすれば、きっとこの戦いには勝てない。

それではだめなんだ。

君の為に、それを使い尽くす。

ただそれだけが、俺の。俺が思った全てだと。

 

そんな一人よがりを、思考しながら。

 

 

気絶した彼女を寝床に置いて、そっと部屋を出た。

最後に、苦悶に歪んだ娘の顔を撫でた。

もうきっと、二度と見ることはないその顔を。

 

 

 

「よォ。ひどい事すんねェ、鬼畜め」

 

 

「……やれやれ。

今日の襲撃は、そんなに筒抜けだったか、ゴイ」

 

 

「そりゃあまあ、なァ。

お前さん、隠し事ド下手だからな」

 

 

 

扉を開けた先から、声が聞こえてくる。

太い声。彼の頼れる同僚の姿。

今や最後の、イドの友人。ゴイの姿だった。

 

その身には鎧を纏い、槌を手に持っている。

完全武装の姿であった。

 

 

 

「…あんたも、俺を止めに来たのか」

 

 

「だったらどうする?」

 

 

「押し通る。力ずくでもな」

 

 

「…そりゃ、困るねェ。どうにも、本気らしい」

 

 

 

ぴり、とひりつく空気。

本気だった。脅しでは無い、本当に、自らを邪魔するならば、斃してでも通らんとする気迫を感じる。

実際にそれをやるならば、殺さず、ただ気絶させるのみだったのだろうが。そうできるほどの力量差が、今や二人の間にはあった。

 

 

「……んでだよ…」

 

 

ゴイは、ぎり、と槌を握りしめた。

片方の手で振るえるように小さくなったそれは、しかし殺人的な重みを誇っている。ただ最近は、振るわれることも少なくなったもの。

その柄が、ぱきり、とひびが入るほどに。

強く握りしめられた。

 

悔しさ。口惜しさ。怒り。

握る力に出たその感情は、その次には。

彼の声に出ていた。

 

 

 

「なんで!何で俺に相談しちゃくれねェんだよッ!なんでそうやって一人で抱え込む!なんで一人で全部やろうとしちまうんだ!なんで、なんで!俺を巻き込んじゃくれねェ!?」

 

「お前だけなわけがないだろォ!こんな場所ぶっ壊したいのも、あの子も、お前も!幸せになって欲しいのは俺だって同じに決まってるだろうがよォ!!」

 

 

 

恐ろしい力で肩を掴まれ、吐露され驚いてしまったのはきっと彼が、イドが、ただ自分の事しか考えていなかったからだろう。

本当に考えついていなかったのだ。

そんな事、少しでも考えればわかったろうに。

 

ゴイが、一番悲しんでいる事。怒っている事。それは、自分を置き去りにしようとするイドそのものについでだった。

 

 

 

「…訂正がある。俺は、幸せにならなくたっていい。ただあの子が幸せになるんなら…」

 

 

「んな訳あるか!

いいか、人間ってのは、ヒトってのはなぁ!

『幸せ』を求めるものなんだよッ!

それを恥じてどうする!?それを否定してどうすンだよ!」

 

 

「……ッ」

 

 

「王城の奴らを見ろよ!私欲に塗れた奴らさ!王さまなんて、ずっと生きてたいなんてくだらねえ幸せを求めて、俺たちみたいなのを作りやがった!」

 

「…それでいいじゃねえかよ…?

それこそが、ナナも言ってた。

人間らしく生きるってことなんじゃねえのかよ…」

 

 

 

イドは、胸ぐらを掴んでそう捲し立てた兄貴分の言葉に、はと心づいた。それでもただ返す言葉もなく、目を瞑って、彼の腕を取った。

 

 

「なあ、頼む。

俺にも手伝わせてくれ。

…俺だってもうきっと長くねェ。

だから、だから最期くらいよォ…」

 

「………お前の兄貴として。

ちょっとでも、かっこつけさせてくれよ…」

 

 

「……ゴイ……」

 

 

暫く、沈黙が続いてから。

イドは意を決したように動いた。

 

 

そうだ。

俺はただ、彼女に。クシーにだけは背負わせない。

ただ代わりに、この人にも。

俺の、唯一の兄にも背負ってもらうのだと。

 

言葉をすら言わずに。

イドはゴイの顔をぐいと見た。

 

彼らは互いにそれぞれの目を見て。

そうして互いの意を感じ取った。

言葉は必要ない。

ただ、それだけで良かった。

 

 

 

「…行こう」

 

「ああァ、行こう」

 

 

 

 

そう、なった。

 

二つ月が照らす夜の下。

銀色の鬼が。蒼色の鬼火が二つ灯される。

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

「伝来、伝来ェ!

実験動物どもが裏切りやがった!

ありったけの兵士を集めてこい!クソッ!」

 

 

 

口汚い罵倒にも似た報告が出され、瞬間に叩き潰される。槌が顔面にめり込んだ肉塊が、それ以上言葉を発する事は無い。

 

 

「オラオラオラァ!退きな、雑魚どもォ!

こんなんじゃ何十万人居ようが足りねえぞォ!」

 

 

ゴイの大音声が場を支配する。

この戦場に於ける彼の太い声は、その場を支配し、恐怖を統制して相手を威圧させる。そのような効果を持つ兵器であった。

引き、逃げていく兵士たち。

その背姿を敢えて追ったりはしない。

 

 

「…む。ゴイ。

少しは恐ろしげなのが出てきた。用心しろ」

 

 

「おォイド、ビビってるのか?

あの程度のボンクラによ」

 

 

「ハ。冗談言うな!」

 

 

退却していった純人間の兵士たちの代わりに、『混じり物』が、次々と投入されていく。研究者の手慰みで作られたような冒涜の産物。それを、ただ外敵を殺すべく次々と送られてくる。その物数は恐ろしいもので、普通ならばそれになす術もなく圧殺されていただろう。

 

そう。普通であるならば。

だがこの二人は、普通などとは程遠い。

『混じり物』。

その中のトップ・オブ・トップ。

凄惨な死地を幾度となく超えて錬成された血の刃。

それこそが、レムレス騎士団。

 

 

ごう。

蒼い炎が二つ、漂った。

 

 

 

ゴイは、終始冷静だった。

飛びかかってきたマーマンの混じり物を、その顔を真っ向から槌で潰し地面で押し潰す。その隙に掛かるインプを、義手から放たれた鋲が穿ち落とし、その刹那を使い横にいるコボルドの首ごと落とすような回蹴。そうしてから、威嚇を続けるキマイラに相対し、ニヤリと笑った。

 

 

イドは、終始狂い続けた。

ただ、目の前に来たものを切り捨てる。切って、払って壊して薙いで殺して焼いて全てを無にしていく。ただ、それだけだった。ただ、その純然な破壊の渦はシルキーもグールもオーガもスキュラも、全てが巻き込まれて平等に死んでいった。衝動のままに、吠えた。見たもの全てが背筋がぞくつくような、慟哭だった。

 

 

 

「オオオオオオオッ!!」

 

 

「ははははッ!もっと持ってこいやァッ!!」

 

 

 

結論から、言って。

この時の王国には、この二人を同時に相手取って勝つことのできる人材や、存在などありはしなかった。

止める事など、出来はしない行軍だった。

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

「血ィ、ついてんぜ」

 

 

「それはあんたも同じだろう…

というか、拭った所で変わらないだろう」

 

 

 

戦乱の音が、止む。

残り、生きてそこに立つは二人の騎士のみ。

手始めに襲った実験場。

そこに残る生き物は、ゴイとイドのみだった。

 

 

 

 

「さァ、次はメインディッシュかい」

 

「ああ、城に向かう。

それで全てを壊して、終わりだ」

 

 

 

二人は臓物と血を身から払ってから地下から外に出る。二つ月は相変わらず雲一つも無く夜闇を照らしており、二人の姿を克明に映す。

互いに返り血は少ない。それは彼らが、潰し切りながら、蒼い共食いの炎で全てを焼いていたからだ。

 

 

率直に言うならば。

彼らはここで、油断していたのだ。

己達を倒す戦力など、もう居ないのだと。

 

それ自体は、間違いなく真実だった。

だからその判断が間違いだったわけでもない。

油断が、致命的になったわけでもない。

だけれど、しかし。

 

 

 

「…ッ!?」

 

 

「なっ…」

 

 

二騎士は共に、背後から恐ろしい気配を感じた。

それが何の気配なのかは分からない。

歴戦の戦士である二人が、全く感じ取った事のない、全てから離れている異常な冷たい気配。それほどに異質でありながら。

それでいて、ただ一つ確かであるのは恐ろしい。

死の気配であるということだけは、わかった。

 

 

 

「……なァ、イド。

楽しかったなぁ、今日はよ」

 

 

 

じゃきり。

槌を構えて、背に向くゴイ。その行動の意味がわからない程、イドは愚かでは無かった。

 

 

「……ゴイ!」

 

 

「いいか。お前ぜってェ死ぬんじゃねぇぞ!

死なば諸共とか、命を賭けて、とか!お前のそういう自己満足の為に俺ァ命を張るワケじゃねぇ!」

 

「てめぇも生きるンだよイド!

精一杯、幸せになれッ!

お前の幸せに、俺の全てを賭ける価値がある!」

 

 

 

「…………〜〜〜〜ッ!」

 

 

 

だっ、と。翔ける。王城へと向かって走るイドを見てゴイは安堵のため息を吐いた。ここで止まられてしまったら、結局のところ本末転倒だったのだから。

 

 

 

(…ったく。まあ、悪かなかったな。これで、あいつの為に死ねるんなら、この終わりかけの人生の最大の餞ってやつだ)

 

(ただ、少し気になるのは。

イドにとって俺ぁ、頼れる兄貴のままでいられたかな。それだけはだいぶ心配だなあ。あいつ、しっかり者だったしなぁ)

 

 

 

だから、そこまでは彼のこの最後の反抗は。

非常に心地よくて、満足のいくものだった。

例えどのような死に方をしてもいいと。

そう、思っていたのだ。

 

 

 

だがそれは。

 

 

ずるりと追いついてきた気配の持ち主を見て。

全てが、歪んだ。

 

 

 

(………おい)

 

 

 

「………んで…」

 

「……なんで、アンタなんだよ…!」

 

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

はっ、はっ。

翔ける。

走り、全力で走る。

 

その走りは先程の気配を放つ者から逃げるわけではない。ただ、王城を最速で撃ち壊せばきっと、ゴイを助けるのも間に合う。そんな、根拠のない事実に縋りたかったからだった。

 

 

だから、『それ』が目の前に立ち塞がった時。

イドは正気を失いかけた。

 

 

 

…ゴイは、時間稼ぎを全うした。

その相手に全力で戦い、打ち止め、通せんぼうをした。その身体が動かなくなるまで。その血が全て尽きるまで。

イドは、走った。

全力で、全身で。それこそ、戦う体力をすら無くしてもいいと思う程に、全力で王城へ向かったのだ。

 

それぞれは、最善を尽くした。

だから、彼の不幸は。

 

ただそのそいつが。

彼を追いかける『そいつ』が常軌を逸していた。

ただ、それだけだった。

 

 

 

その下手人の手には、生首が握られている。

ゴイの、生首だった。

 

 

どくん。

 

 

イドは、顔を歪める。鼓動が早まる。

ゴイの変わり果てた姿を見て。

そして、それを握る男の顔を見て。

 

 

どくん。

 

 

立ちはだかる者はただ一人。

目の前に立つ人物。

月が照らす白い鎧の姿。

 

その白い姿が、死神のように見えた。

 

 

 

 

「……………何故だ」

 

 

「なんでかって、言われたらなあ。

理由は長くなるぜ。それでも聞くか?」

 

 

「なんで」

 

 

「まあ、それくらいいっか?

折角なら聞きたいんじゃねえかな」

 

 

 

 

「なんであんたがゴイの首を持ってるッ!」

 

「…答えろ!ニコォッ!!」

 

 

 

目の前に立つのは、軽薄な死神。

彼の、唯一の憧れだったもの。

レムレス騎士団の、家族。唯一の仲間。

その一人だった。

 

 

 

 

「……何か、弱みを握られて。

はは、そんなふうに思ったろ、イド。

そう言ったら満足だったろうになあ」

 

 

「違うね。

誰かの命令とか、脅しとか、そういうのではない。

俺はただ、俺の意思でここに立ってる」

 

「お前たちをここから去らせはしない。

俺は、イド。お前と殺し合うのさ」

 

 

 

明確な狂気と、確固たる意志を持っての発言。

それを言葉で解決する段階はとうに過ぎている。

だから、イドは言葉を発しなかった。

ただ、大剣を引き抜いた。

憤懣と哀しみと、怨嗟をもって。

 

 

 

「そう、そうさ。それでいい。

俺にはもう、お前たちしかいないんだ。俺が、俺の存在する意味はお前と、皆だけなんだよ。俺みたいな出来損ないが存在する意味はただ、レムレス騎士団のお前らだけだ」

 

「だのに居なくなるんだろう。

イドもクシーも、ゴイも、ナナも。

全員俺の前から消えちまう。みんないなくなっちまう。どうせ、どうせ守ろうとしても何したって消えちまう。なんでだろうなぁ」

 

 

 

「だから、俺と殺し合おう。

俺との戦いを永遠のものにしよう。そうしたら俺はそれだけを最期に思って生き続ける。俺と一緒に居ないお前らを、俺が戦って戦って斃して殺して、ずっと一緒にいるんだ」

 

「ああ、そうだ。

ようやく、辿り着いたよ、イド。

ただお前たちと一緒にいたい。ただ、それが。

それだけが俺が、俺が──」

 

 

 

 

 

「俺が、思う『感情』なんだ」

 

 

 

ぼろぼろと、涙を流して澱みなく語る姿。

その落涙は、何に依るものなのか。

壊れた心の、液体なのかもしれない。

何にせよそれは、誰にも分からない。ただ確実であるのは。自らで刈り取った家族の命への哀しみは、そこには無い。

 

 

 

「………俺の、俺の憧れた『彼』は……

俺を拾ってくれて、育ててくれた、俺の憧憬は…」

 

「…『ニコ』は、『死んだ』んだ!

だから、その面で何かを語るなッ!」

 

 

 

蒼炎がまた、二つ重なり合ってほどけた。

一つは大剣に纏わり、焔の剣と成り。

一つは槍に纏わり、怨嗟の鎌と成った。

月が克明に、二人の白騎士を照らす。

 

嗤い続ける死神。

苦悶を浮かべる騎士。

 

 

 

「立ち塞がるなら!

あんたであろうとも、俺は殺す。殺してやるッ!」

 

 

 

ぶん、とゴイの首が投げ捨てられた。

その、ぐちゃりという残酷な血の音が殺合の合図となる。

 

 

 

つう。

生首の眼から、涙のように一滴、血が流れ落ちた。

 

 

 

 







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