拠点まで決まるとテントを立てたり食料を集めたりとそれぞれが仕事を分担して仕事をこなしていく。私と綾小路くんは平田くんから使えそうな薪を取ってきてと言われたので草むらをかき分けながら探している。こんなことを内心はしたくないけど、綾小路くんがやっている以上は私がやらない訳にはいかない。
「綾小路くんの方はあったかな?」
「ああ、足りないがある程度は集まった方だな。後は場所を移してみる」
「そうだね」
それから私と綾小路くんは薪を集めてテントまで戻った。それからは食事をしたりしてあっという間に時間は経過して就寝の時刻になった。
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でも、私はあんまり眠れなかったので外の空気を吸うことにした。そしれそれがなければ私は……。
いつも視線を感じている。それがいつまでも続いていた。綾小路くんに相談する訳にもいかなかった。でも、自分でも綾小路くんの恋人になればそれを毛嫌いするような奴らの視線があるのは分かっていた事なのでそこまで気にしていなかった。
もっと気を張っておくべきだった。だから私はこんな状況に陥っているのだろう。今の私は両腕を後ろで縛られて両足も同じように自由が利かないように縛られている。
「綾小路なんかにべたべたしやがって」
この男に見覚えはない。今の私には綾小路くんしか視界には入っていないと言ってもいいぐらいだから。もし、どこかで会っていたとしても記憶していない。
「………」
この状況は最悪。高度育成高等学校に入学して一番に最悪な日になりそう。でも、午前中に綾小路くんとずっと一緒に居られたからまだいいけど、そうじゃなかったら史上最悪な日というだけだった。
「おい、返事しろよ。櫛田」
「なに」
「俺のこと覚えてるか?」
「あんたのことなんか覚えている訳ない」
「まあ、そうだろうな。お前は綾小路にご執心だったからな。なら教えてやるよ。まだ学校に入学して間もない頃に俺はお前を誘ったことがあるんだよ。その時のお前は俺のことを見ると冷めたような目でこっちを見てきてな。俺にとってどれだけそれが屈辱的なことだったか分かるか。まあ、お前が分かるわけねぇけどな」
この男の説明を聞いて、少し思い出した。私がまだ綾小路くんと話すのも緊張していた頃に話し掛けてきた男子生徒がいた。私は勿論、綾小路くんしか眼中にないから断った。説明されなければそんなこと覚えている訳ない。
「…………」
「これからお前の体を好きにさせてもらうけどいいか?まあ、どんな返事をしたとしても変わる事はないけどな」
「最悪。あんたたち見たいな連中の顔を見るだけで最悪な気分」
「なんだと!」
「…………」
手足を触られるだけでも虫唾が走る。綾小路くんにだってまだ肌を触られたことがほとんどないのにこんな奴らに触れられること事態が最悪としか言いようがない。
「そんな減らず口を言えるのもいつまでか楽しみだな」
「…………」
でも、なんでか分からないけど…すごく怖いという気持ちが込み上げて来る。誰かに対して恐怖を抱くのも初めて。自分がこの後、どんな風な末路を辿るのか分からない訳ではない。
表では減らず口が言えたとしても内面は今にも泣いてしまいそうなほどに怖い。この相手が綾小路くんであれば私は喜んで体を捧げることが出来たと思う。自分が好きな相手であり、世界で一番愛している人だから。
「やっぱりこの胸はすげぇな。見ているだけだと分からなかったからよ~」
「や、やめて」
「あ?なんだ、聞こえねぇぞ!もっと懇願してみろよ」
私は自然と目を閉じてこれから行われるであろうことから目をそらそうとした。
目の前で男に叫ばれるのがどれだけの恐怖なのか知った。今にも逃げ出したい。こんな時に…綾小路くんのことが頭に浮かぶ。都合のいい話だけど、綾小路くんが助けに来てくれないかと考えてしまった。
「だれだよ?」
「悪いな」
「お前も櫛田で遊ばねぇか。こんなチャンス滅多にねぇぞ」
男は誰かに向かって話し掛けているのが聞こえて来る。男の名前が来たのかもしれない。それだとしたらもう諦めるべきなのかも。
「オレはそういうのに興味はないんだ」
そういうのと同時に私の上に男が倒れてきた。恐る恐る、目を空けるとそこには……月明りに照らされている綾小路くんが立っていた。一瞬、この光景が信じれなかった。自分がこうなれば良いという妄想が作り上げた都合の良い世界なのではないかと。
でも、何度目をこすっても綾小路くんは変わらず、私に視線を向けている。
「あ、あやのこうじくん」
「大丈夫か?櫛田」
「う、うん……」
綾小路くんから指し伸ばされた手を取って私は起き上がる。すると綾小路くんは私の背中に手を回して抱きしめてくれた。まさかの出来事に全く、思考が追い付かない。
「え、あ、あ、あやの、こうじく、ん」
「来るのが遅くなって悪い」
ただそれだけの言葉なのに…何でか分からないけど………目から雫が零れ落ちる。止めようとしても止められない。
「…っ…こ、こわかった…」
「ああ、分かってる。お前がこんな目に合ったのはオレの責任だ…」
それから私は綾小路くんの胸で泣いた。もう夜も静まり返っていたのでもしかしたら誰かに聞かれているかもしれないけど、そんなことが気にならないほどに綾小路くんの胸が暖かくてさっきまでの恐怖をなくしていった。
綾小路清隆に櫛田桔梗への恋心に近いものは生まれるのか?
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生まれる
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生まれない