もし、櫛田桔梗が綾小路清隆に一目惚れをしたら   作:主義

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目的

2学期が始まると…体育祭も近くなってくる。

 

 

オレとしてはいつもと変わらぬぐらいの感じの姿勢。

 

 

 

今の櫛田の状態は良くもないが悪くもない。だが…このまま行くことはあり得ない。櫛田桔梗という人間はとっくに壊れているのはオレも分かっている。

 

 

 

出会った頃の櫛田桔梗はいない。櫛田がクラスメートに浮かべている笑顔は必至に作っているもの。そして必死に作っているのも自分のためではなく、オレのため。オレに少しでも必要と思ってもらうためにはクラスで人気者という地位は捨てがたいと本人が自分で判断したんだろう。

 

 

一之瀬もそうだが、こいつらはそれぞれのクラスでそれなりに影響力がある。それはオレにはないものでこいつらにしか使えないもの。

 

 

 

 

 

それと櫛田にとっては何かしらの目的を与える方がいいのかもしれない。

 

目的を与えることでお前はオレにとって必要だということを示すことが出来れば、やる気も生きる希望を湧かせることもできるだろう。今の櫛田の状況は正直いつ自らの手で全てを終わりにしてしまってもおかしくない異常な危うさを持っている。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

今の教室は多くの生徒が昼休みを満喫している。

 

そして櫛田も友人らしき人たちと食事をしているが、話している時の笑顔は作られている。あれが本当の笑顔でないことはすぐに分かる。

 

だが、今日に関しては…いつにも増して笑顔が崩れそうだ。たぶん精神的にかなりキツイ状況にあると考えるべきだな。

 

 

本当は今日の放課後に色々と話そうと思っていたが、少し予定を早めるとするか。

 

 

そう決めたオレは席を立ちあがり、櫛田の元へと歩みを進めた。

 

 

 

 

櫛田も少ししてオレが自分のところに向かっていることに気付いたようだ。

 

 

「あ、あやのこうじくん!?」

 

 

「ちょっといいか」

 

 

「う、うん」

 

 

 

 

周りからは「おい、綾小路!!」とか「な、なんで櫛田はあんな奴を選らんだよ!」と泣き叫ぶ奴などがいたが、そんなことを気にせず場所を変えることにした。

 

誰からも見られる心配がなく、聞かれる可能性が低い場所として思いついたのは屋上だった。

 

 

「あ、綾小路くんがこんな風にするななんて珍しいね」

 

 

「そうだな」

 

目立つような行動は極力避けたいところだが、今回の場合はいい。なるべく早いうちに櫛田に伝えておかないといけない。

 

 

「まず最初に…オレにとってお前は大切な存在だ」

 

 

「…た、たいせつ…」

 

 

「ああ、お前は大切だ。お前とはこれからも良好な関係を気付きたいと思っているし、これからもオレの側に居てもらうつもりだ」

 

 

「私が綾小路くんの隣にずっといていいの?」

 

 

「いいんだ」

 

 

 

「そこでお前にはなるべく人脈を広げて欲しい。お前がクラスの奴らとも仲が良いのはオレも理解しているが、もっと広げてくれ。他クラスの奴らとも」

 

これは櫛田の側から考えれば嫌なことだろう。嫌な相手とも接してもらわないといけないかもしれないしな。

 

 

「そしてお前に嫌な想いをさせるかもしれないが、何人かハニートラップのようなことをして手足のように操れる人間を増やして欲しい」

 

櫛田に従う人間は結果的にオレの言うことに従う人間ということになる。そういう人間は何人いてもいいが、あまり広げ過ぎると色々と障害が出てくるかもしれない。そこら辺のことを考えながら慎重に広げて行って欲しいものだ。

 

 

「…それをすれば綾小路くんの助けになれるんだよね?」

 

 

「そうしてくれるとオレとしては有難い。だが、櫛田がどうしてもやりたくなければ無理強いをするつもりはない」

 

こういえば、櫛田が断る事はない。今の櫛田の状況から考えれば、オレに頼られるというのは本人にとって願ってもないチャンスのはずだ。このチャンスを見す見す逃すような人間ではないしな。

 

 

「やる!綾小路くんの助けになれるなら私は何でもするよ!」

 

 

「そうか。そう言ってくれるとこっちとしては有難い」

 

 

「ううん。綾小路くんは私に命令をしてくれればいいんだよ。私は綾小路くんの『道具』なんだから。綾小路くんの好きなように使ってくれて大丈夫。絶対に役に立って見せるね」

 

 

「あんまり無理はするなよ。オレは櫛田桔梗という人間のことを大切に想っているからな」

 

そう言いながらオレは櫛田の手を握った。

 

 

「あ、ありがとう。綾小路くんの期待に答えられるように精一杯がんばるよ!」

 

 

「ああ、期待している」

 

 

それから数秒の沈黙があってから櫛田は話し始めた。

 

「我儘を言っても良いかな」

 

 

「構わないぞ」

 

 

「も、もし…私がちゃんと綾小路くんの役に立てたら『本物』にしてくれないかな?」

 

 

「わかった」

 

本物というのは…今の偽りの恋人という関係ではなく、本当の恋人同士になるということだ。オレが櫛田のことを愛しているかはさほど重要じゃない。櫛田にとってどちらの返答が良いのかを考えるだけだ。

 

 

櫛田はオレとの関係がいつ終わるのかを危惧しているのは分かる。ならその危惧を少しでも解消してやるのが一番いいだろう。

 

 

「ほんとに…いいの?」

 

 

「ああ、櫛田がそれを望むのであれば」

 

 

「…絶対、綾小路くんの役に立って見せるよ。期待は裏切らない!」

 

そう話している時の櫛田は何かを心に決めているような感じだった。さっきまでいつ散ってもおかしくないような雰囲気を纏っていた人間が今では希望に満ち溢れているとまで言わないが、生きる目的を見つけたようだ。

 

 

「期待している。具体的なことに関しては今週末にでも話し合うとしよう」

 

 

「うん」

 

今すぐに誰かにハニートラップを仕掛けろという話ではない。少しずつ相手の心を掴んでいき、情報を奪い取っていき、骨抜きにするまで食いつくす。

 

 

櫛田にしても一之瀬にしても男性から見れば魅力的な人間に映ることは間違いない。あとはどれだけ話術があるかだが、そこら辺に関しては少しずつ上達させればいい。

 

 

「集合場所はオレの部屋でいいか?」

 

さすがにオレが櫛田の部屋に行くのはかなりリスクが高い。もし、見つかった場合などを考えて影響が少ないのは櫛田がこっちに来ていた場合だろう。

 

 

なるべく密閉されていて、聞かれる心配がないところがいいからな。

 

 

「うん、大丈夫だよ」

 

 

「そうか。なら今週末に詳しいことを話すとしよう」

綾小路清隆に櫛田桔梗への恋心に近いものは生まれるのか?

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