綾小路くんのお陰で中間テストの方も無事に乗り切った。綾小路くんと私で手に入れた問題用紙、回答用紙はクラスの人に配る事でDクラスの中間テストの成績は良かった。
一つだけ誤算があったとすれば須藤くんが赤点を取った事。でも、そっちも綾小路くんが茶柱先生に話を付けてくれたようで須藤くんの退学はなくなった。綾小路くんは「オレじゃなくて堀北が勝手にやったことだと」言っていたけど、絶対に綾小路くんがやったのは分かってる。綾小路くんは自分の手柄にすることを望んでいないのはここ最近、一緒にいて知っている。
一年前の問題用紙と回答用紙を手に入れた時も「櫛田が手に入れた事にしてくれないか?」と問われたことがあった。私としては綾小路くんの手柄を自分の手柄にしてしまうことに少し抵抗があったけど、綾小路くん、本人がそれを望んでいるのなら受け入れるしかない。
そんな現状報告のようなものをしているけど……今の私は冷静ではいられる状況じゃない。何でかと言うとそれは隣に…一目惚れした相手がいるから。
今の状況を簡単に説明すると…私と綾小路くんが一緒に寮まで帰っている。普通に言葉にしてしまえばただ、それだけなのに凄い緊張する。別に綾小路くんの隣を歩くのは今日が初めてじゃないけど今までは何も意識せずに歩いてた。でも、今日は私の方からで綾小路くんがそれを承諾してくれた。人を誘うのにあんなに緊張するのは綾小路くんだけ。
「あ、あやの、こうじくん」
自分でも変なところで切ってしまったり、オドオドしているのは分かってる。だけど、これは仕方ない。
「なんだ?」
こんな近い距離に綾小路くんがいる。端から見たら私達も…か、かっぷる…にみえるのかな。見えたらいいな…。
「い、いや、なんでも…」
教室とかだったら普通に話せるのに…二人きりになると言葉が出てこない。綾小路くんに迷惑じゃないかなとか考えてしまうと余計に言葉が出なくなっちゃう。
それから暫くの間、沈黙が続いた。私の方から沈黙を破る勇気も持てずに続いてしまっている。沈黙を破ってくれたのは綾小路くんの方だった。綾小路くんは急に歩みを止めて話し始めた。
「櫛田」
「な、なにかな?」
「つまらなくないか?」
「え?」
「お前がクラスに馴染めていないオレのことを心配して一緒に帰ろうと誘ってくれるのは嬉しいが、オレと帰っても別に楽しくないだろ」
綾小路くんは淡々と言っているが、私は綾小路くんの言葉が信じられなかった。
「わ、わたしは…綾小路くんと帰りたかっただけ…」
私は隣の綾小路くんにも聞こえないような小さな声で呟いた。綾小路くんがクラスに馴染めていないから誘ったんじゃない。私は綾小路くんのことが好きだから少しでも長く一緒に居たいだけ。
ここで綾小路くんに何も言わなかったら綾小路くんの言った事に肯定したと思われるかもしれない。
私は叫ぶように言った。この学校に来て初めて自分の気持ちをぶちまけた。
「綾小路くんは自分がクラスに馴染めてないから気を遣って誘ってくれたとか思っているみたいだけど、そんなわけないじゃん!私は綾小路くんと一緒に居たかっただけ!!誰でも良いわけじゃなくて綾小路くんじゃなきゃ嫌なの!!」
私は綾小路くんと接する時は…絶対に嫌われないようにしてきた。だけど、今の私は大きな声で綾小路くんの言葉に反論している。もしかしたら、綾小路くんに嫌われてしまうかもしれないけど、これだけは言わないと。
「……そうか、櫛田がそれでいいなら別にいいが」
綾小路くんは止めていた足を動かし始めた。多分、私の気持ちは綾小路くんに届いていないだろうけど、それは別にいい。私が自分で判断して綾小路くんと一緒に居るだけで…気を遣って一緒にいるわけじゃないと。
綾小路くんにとって私はただの一生徒に過ぎないだろうけど、いつかは綾小路くんに意識してもらえるように頑張らなくちゃ。
綾小路清隆に櫛田桔梗への恋心に近いものは生まれるのか?
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生まれる
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生まれない