綾小路くんに対しての想いが日に日に増してきているのが自分でも分かるほどに私は綾小路くんに夢中。だからこそ、綾小路くんの隣にいる『堀北』が許せない。隣の席であれば、授業中でも隣から様子を見る事が出来る。それだけでも私は充実した一日を送れると言うのに。堀北は毎日のように綾小路くんの横顔を見る事が出来るのも腹が立つ。
それ以上に堀北が綾小路くんと楽しそうに話しているのが何よりもムカつく。私の過去を知っている嫌いな奴と私が一番好きな人が一緒に居るだけでも最悪なのに楽しそうに話されるとはらわたが煮えくり返るほどに頭にくる。
でも、綾小路くんに対して堀北とは絶対に関わらないでとはさすがに言えない。綾小路くんの行動を制御するような真似はさすがに出来ない。それで嫌われるのは絶対に避けたいから。
だから、ストレスが溜まっていた。いつもの私なら絶対に人に見られないようなところでストレスを発散するけど、我慢できずに今日は校舎の屋上。もうこれ以上、怒りが収まらない。
「マジでうざい!!本当にムカつく!あいつさえいなければ!!」
私は怒りが収まらず、その後も思いの丈を叫んだ。
そして叫んでいる時は気にしなかったけど、誰かにこの姿を見られるわけにはいかない。振りえ返ってみるとそこには―――――――――――――
「…綾小路くん…」
正直、綾小路くん以外の男子ならどうにかなった、女子であれば弱みを使いながら黙らせることが出来た。だけど、綾小路くんだけは…絶対に知られたくない相手。他の人に知られるのはまだいいけど、好きな人にこれだけは知られたくなかった。
「悪い。盗み聞きするつもりはなかった」
今更、いつもの私で良い訳をしたとしても遅い。ここまできたら―――――
「聞いたでしょ」
私は綾小路くんに詰め寄って見上げる形になった。こんな風にお互いを見つめ合うような機会は今までなかったから気付かなかったけど、綾小路くんの見下すような目もいい。
なんか、新しい性癖に目覚めてしまうような感覚。誰かに見下されるのは死んでも嫌だけど、綾小路くんになら見下されるのもいいな。
「今、話していた事を誰かに話したら容赦しない」
「話したら?」
「ここであんたにレイプされそうになったっていう」
綾小路くんが相手だったら嫌じゃないし、むしろ綾小路くんが私のことを必要だと思っているってことだから嬉しいんだけどね。
「冤罪」
「冤罪ではないから大丈夫」
綾小路くんの手を掴んで、自分の胸のところまで持っていった。心臓の音が聞こえていないか心配。普段もこんな風に大胆な行動が出来たら良いんだけどな。
「ほら、冤罪じゃないでしょ。これであんたの指紋が服に付いてから」
「分かったから止めてくれ」
私は仕方なく綾小路くんの手を離すことにした。そして最後に釘をさすような言葉を一応、口にしておいた。
「裏切ったら絶対に許さないから」
まあ、話されたとしても綾小路くんが側にいてくれればそれだけでいいけどね。他のことが目に入らないほどに私は綾小路くんに夢中なんだ。
「ああ、わかった」
私は綾小路くんが立ち去った屋上で一息をついた。
「まさか……綾小路くんがいるなんて。嫌われていないといいな…」
さっきまでは考えていなかったけど、嫌われたかも。綾小路くんの表情は最初から最後まで何も変わっていなかったから大丈夫と思いたい……。だけど、可能性は零じゃない。人の気持ちに百パーセントはないのは私が一番分かってる。どんな仲が良くても一瞬でそれが崩れ去る……だから、怖いんだ。
綾小路くんに全てを知られて、見捨てられるのが。
「嫌い」なんて言われた日には全てが終わってしまう。もう私は自暴自棄になってしまうのは避けられない。前回と同じように何をしでかすか分からない。
「綾小路くん……愛してるよ」
綾小路清隆に櫛田桔梗への恋心に近いものは生まれるのか?
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生まれる
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生まれない