鯨と蛸の呪い合い   作:スクリーム1st

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初投稿です。至らない所もありますが、よろしくお願いします。



1話

「グォ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!!!」

 

それ(・・)は、凄まじい大音声で大気を震わせた。

それから逃げるものはなく、また立つものも居ない。

今ここに、その咆哮に耐えうるものはいなかった。

 

「ッ…クソッ!!」

 

しかし、ただ二人(・・)だけ、立ち向かう者がいた。

一方は煌めく銀髪を靡かせながらそれに指を向け、もう一方は黒髪を後ろで結い、掌に力を込める。

最強は並び立ち、ひとつ心に決めた。

 

「あの(カス)共、絶対許さねぇ!」

「分かるけど、今は目の前の対処だよ悟。…まぁ、同意はするけどね」

 

そんな目立つ餌を放っておく訳もなく、それは彼らに向かって突き進む。

深淵を思わせる大口を開け、その巨鯨(・・)は迫っていく。

彼らもタダでやられる訳にはいかない。銀髪の指先にエネルギーが集まり、黒髪の傍らに圧縮された肉が渦巻く。

 

「『術式反転・赫』」

「呪霊操術 極の番『うずまき』」

 

そして、巨鯨もまた決意をひとつ。必ずや彼らを退け、生き残ってみせる。そして、またこうも思っていた。

 

────どうしてこうなった、と。

 

 

~~~~~~~

 

(…ぅん?ここは…)

 

俺は、目を覚ますと、大海原のど真ん中に浮かんでいた。何故このような場所にいるのか、ここが何処なのか。

そもそも、感覚が存在している事がありえない。なぜなら俺は…死んだのだから。

 

って、色々状況を綴ってみたけど!どうなってんだよ今俺はよォ!!

いや落ち着け、ひとまず頭の整理だ、混乱してちゃ考えられるものも考えられん!

 

 

まず俺は、死んだ。その事実だけは覆しようがない。だって目の前にトラックのタイヤが迫ってくるんだぜ?もう無理じゃん。その瞬間意識飛んだし。

んで、そんな俺がなぜこんな海の上でゆったりしているのか。

まさか、非常に分かりづらい天国、とか?いやいや、まさかなんの説明も無しに放り出されるわけが無いだろう。天国なんて行ったこともないからわからんが。

そして最後に。俺の体。人の体ならまだ受け入れはできた。まぁこんなところで人一人が生きていけるわけはないが、そこまでならまだ俺のキャパも保ったんだ。

だが、俺の体は、なんか変なクジラのものへと変わっていた。

 

…何言ってるかわからんな、自分でも。なんだろう、肋骨がむき出しになったゾンビクジラ?みたいな感じとしか説明できない。

っと、誰かが近づいてくるな。なんかわからんけど感じる。こう、圧が分かるんだ。

そのなにかの方を見ると、そこには。

 

「ぶふぅ〜」

「…ォオオオン…」

 

つぶらな瞳の真っ赤なタコがいた。

どうやらここは、呪術廻戦の世界らしい。

 

~~~~~~~

 

ゆったりと流されながら多分数時間。段々とこの状況が分かってきた。

このタコ、陀艮が見えるということは、俺も呪力を持っているんだろう。

そして、あの世界で呪力を持った変なクジラ、とくれば自ずと分かる。どうやら俺は、呪霊として転生したらしい。陀艮の幼なじみポジションとして。

…なんか微妙だな。確かに俺が前世で一番好きな呪霊は陀艮だった。クジラもまぁ動物の中ではかなり好きな方だ。でもだからといってこれはちょっと…。

もしかしてコレはアレか?俺の力で陀艮が祓われる未来を変えろ、とかそういう事か?あれはちょっと可哀想だったな。いきなりでてきたゴリラにボコボコにされるのはさすがに初見殺しだろ。

 

「ぶふ、ぶふ?」

「オオオ」

 

まだ俺も陀艮も呪胎の状況、人語を喋れるはずもない。ただ無言でいる俺を心配してるのは分かったから、尾ビレで頭を撫でておく。

この数時間で把握した俺の能力としては、二つある。

一つは浮遊。空中遊泳と言った方が正しいか。まぁとにかく、何も無いところも水中と同じように泳げる。

二つ目、これが曲者で、口の中に入ったあらゆる物が消滅(・・)する。試しに海水を吸い込んでみたところ、どこまでも行けそうだったので慌てて口を閉じた。

俺がこれらの能力を苦もなく扱えるのは、多分呪霊としての本能みたいなやつだろう。経験がなくてもいいのは、便利だが少し気持ち悪い。

そして、当面の目標も決まった。強くなることだ。

今の呪胎としての能力では、到底特級には及ばない。この世界で呪霊として生きていくなら、絶対的な強さが必要だ。それこそ両面宿儺のように、身体の一部とかが呪物になるくらいには強くなっておきたい。

まぁ本音を言えば、単に俺が強くてデカい生物が好きってだけだ。あらゆる物を轢き潰し呑み込む、巨大な鯨。イメージだけでワクワクするわ。

それに、陀艮にもさっさと呪胎を卒業してもらわないと、あの結末は変えられないだろう。

あの戦いの敗因は、単純に経験が足りなかったからだと俺は見ている。故に早めの成長を促すことで、得た力に慣れてもらおうという訳だ。

 

「ぶっふぅ〜」

「ォオ?オオ」

 

という訳で、当面は海にいる呪霊狩りだな。爆食いして、とっとと強くなっちまおう。

 

 

 

 

 

そう決意して、二年が経った。

 

~~~~~~~

 

「どうした友よ!そのような打撃は私に届かんぞ!!」

「ハッ!こんなモンは所詮小手調べさ!ギア上げていくぞォ!」

 

この2年で、俺たちはかなり成長した。

 

陀艮は原作通りのクトゥルフライクな成長を遂げ、一級程度の呪霊では相手にならなくなった。

術式の練度や呪力も上がり、式神一体一体も大きく強くなった。

そして何より、その圧倒的な体力。今もこうして強めの打撃を喰らわせているが、特にダメージを負う様子はない。というかここ1年見ていない。1年前に呪胎から進化してそこからだ。

 

俺の方は、まず術式が強化された。今まで腹の中限定だった消滅の力を、少しなら外にも出せるようになった。かなり強い。

『封創海征』と名付けたこの術式を陀艮に使うことはないが、そこらの野良呪霊で色々とやってみている。結構な数の技を生み出したし、領域も展開できるようになった。消滅必中ってなんだよ最強かよ。

 

「ッチィ!水邪魔!!」

「君に触れられる度に消されているがな!」

「それでも鬱陶しいわ!お前が強くなって嬉しいけどさ!」

「…その時々見せる親のような感情はなんなんだ?」

 

そんな感じで、特級と目されるくらいには強くなれただろう。だが、まだまだだ。この世界には化け物が大勢いるからな。陀艮にもきちんと乗り越えて貰わないと困る。たった二年、されど二年。俺の中の仲間意識は、かなり強いものとなっている。

後、俺も当然ながら受胎から進化している。陀艮とはまた違う細マッチョな体型に、全身に待とう黒いローブのようなもの、フードから覗く輝く双眸。

陀艮に水鏡で姿を見せてもらったが、すごく怖い見た目だった。威圧感が凄かったよ。

 

その見た目に見合うようもっと強くなろう。そう思った時、もう既にそいつはそこに来ていた。

そいつこそ、この平穏な生活を終わらせるもの。ひと目でわかる巨悪。

 

「やぁ、組手の最中失礼するよ。ちょっと話があるんだ」

 

額に縫い目のある女。薄ら寒い笑み。

羂索。最悪の呪詛師が、俺達の前に現れた。

 




ストック無しの見切り発車投稿しちゃったすんません。
次話で主人公の名前出ます。次話だけあります。
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