鯨と蛸の呪い合い   作:スクリーム1st

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連続投稿。

ちょっと修正です。


2話

「俺たちに依頼だと?」

「ああ。君たちなら強さも十分そうだ。少し殴り込んで欲しい所があるんだよ」

 

額に縫い目のある女、羂索は語る。

曰く、近々『天元』と『星漿体』の同化があるらしい。こいつはそれを阻止するため、高専に行って星漿体を殺して欲しいのだとか。

それがあることは漫画を読んでたから知ってたけど、まさか俺たちに依頼をしに来るとは思いもしなかった。

 

だってあの時はまだ羂索が本格的に動いてる描写が無かったからな。そりゃ水面下では色々してたんだろうが、読者には知る由もないだろう。

 

「つまり、その『天内理子』という女を殺せ、と」

「その通り。あ、写真も渡しておくね」

「ふむ…見た所普通の人間に見えるが」

「それで?報酬はどうなんだ?まさかタダで働けとでも?」

「ああいや、それについてはこちらで用意してあるよ」

 

そう言いつつ、羂索はもう一枚の写真を取り出す。そこには、体育館のような場所で拘束されたおびただしい数の人間が写っていた。

 

「ホゥ…!」

「人間の命だ。そちらのタコくんにはお気に召すと思うが」

「俺には?」

「君にはこっちだ」

 

俺にもまた、写真が手渡される。そこに写るのは、前世での陀艮(親友)の仇。

 

「『伏黒甚爾』。現地での立ち合いになるがね」

「…いいだろう」

 

俺もそろそろ陀艮以外と戦ってみたかった所だ。というか、依頼のバッティング前提で俺たちに依頼を出してるって事は、必然的に天内理子(獲物)を取り合う形にならないか?

…ま、そこは現地で考えればいいか!どっちにしろ天内理子が死なんと五条は覚醒しないしな。

 

「早速そこに赴かせてもらおう」

「違えるなよ、人間」

「もちろん!それじゃ、成功を祈ってるよ」

 

そうして俺たちは、東京都立呪術高専へと向かった。

 

 

~~~~~~~

 

 

「おうおう、派手にやってますなぁ」

「友よ、標的は地下へと潜ったようだ」

 

俺たちが現場に着くと、そこではもう既に五条悟と伏黒甚爾が戦っていた。

今のところ互角の勝負を演じているように見えるが…あっ、五条が滅多刺しにされた。

俺たちも早く地下に向かわないと行けないところだが…ちょっと考えたことがある。

 

「なぁ陀艮…お前は先に行ってくれ。あの人間は俺が止める」

「何!?それはダメだ!あれは記憶が確かであれば『五条悟』では無いか!?それを容易く倒した人間に一人で向かうなど!」

「大丈夫だ。それに、さっき頼んだ通り(・・・・・・・・)にするには邪魔者は居ない方が良い。丁度入口に近いからな、門番をするにはいい場所だ。あとは、そうだな…あれが俺の報酬だ、って言ったら納得してくれるか?」

「…わかった。だが!死ぬなよ、友よ!」

「おうさ!」

 

話を終えた陀艮は、目にも止まらぬ早さで入口へと突っ込む。しかし、伏黒甚爾はそれを見逃すような男ではない。

 

「!?おいコラ待ちやがれ!」

 

飛びかかった彼を止めるため、俺は間に割り込んだ。

 

「っと…まぁまぁ落ち着きな。同化は俺たちが阻止してやる。それともなんだ?それだけじゃ不満か?」

「ケッ、生憎死体の回収までが依頼なんでな。お前を殺して押し通る!」

「やってみやがれゴリラ野郎!!」

 

筋肉と呪いは、衝撃を弾けさせながら激突した。

 

 

~~~~~~~

 

薨星宮、本殿。

そこでは、二人の男女が話し合っていた。

 

「もっと皆と、一緒にいたい…。もっと皆と色んなところに行って色んな物を見て…もっと!!」

 

ヘアバンドの少女、天内理子が思いの丈を告げる。まだ、生きていたい、と。

そんな彼女に、黒髪の青年が手を差し伸べる。黒髪を後ろで結った彼は、夏油傑。彼はその願いを聞き届け、共に行こうとした。

 

「帰ろう、理子ちゃん」

 

しかし、彼らは知らなかった。

平穏は、たった一つの異分子がいるだけで、いとも容易く崩れることを。

 

「…う「話は終わりだ」!?」

「!誰だ!!」

 

暗い廊下の先から、ぬちゃぬちゃと湿った足音がする。そこから放たれる呪力は、今まで夏油が目にしていた敵をはるかに凌駕していた。

 

「彼女は私が預かるが…異論は認めんぞ、人間よ」

(ッ!こいつ…強い!特級か!!)

 

血塗られたような赤い体色、蛸の頭、筋骨隆々の肉体、腰から生えた羽。呪霊、陀艮がそこに立っていた。

夏油は咄嗟に術式を発動させ、陀艮をその標的とした。

 

「ねぇ」

「ん?これは…」

「わ、わタし、きれい?」

「こんなものが障害になると?舐めるなよ人間。そして…お前は醜い」

 

陀艮の手足が古びたハサミに挟まれる。しかし、陀艮はそれを意に介さず進んでいく。当然刃が突き立てられるが、それは毛ほどの傷も残してはいなかった。

 

「異論は認めん、と言ったハズ…あまり邪魔をするなら、殺すぞ?」

「グぅッ!!」

「ひっ…」

 

呪力による威圧をさらに強め、陀艮は天内へと進んでいく。しかし、それに屈するタマならば、最強は名乗れない。ウザったい友人を頭に浮かべながら、夏油は陀艮へ言葉を投げかける。

 

「理子ちゃんをっ…どうするっ、つもりだ!」

「話す義理はないが…傷つけることは無い、とだけ言っておこう。それ以上近寄るなよ、人間。そこを超えれば、私は約束を破らねばならなくなる」

「…縛りをっ結べ…!」

 

呪霊の言葉を信じる訳には行かないが、その言葉を聞いて、少し安心したような気分になった。その安堵を確固たるものにするため、夏油は更なる要求を重ねた。

 

「そこまでやってやる関係か?私と貴様は。黙っていろ」

 

陀艮は、夏油の見えないほどの速度で背後に近づき、当て身をした。無論精神的な拮抗はあったが、友との絆を傷つけることの恐怖が勝った。

 

「なぜ、お前はこんなことをするのだ?盃鑼(はいどら)よ」

 

時は、呪術高専に着く前へと遡る。

 

~~~~~~~

 

「星漿体を殺すな、だと?」

「あぁ。人間を思いやる訳じゃあないが、少し情が湧いてな」

「人への情、か。昔からお前は変な奴だと思っていたが、やはり私には理解出来んな」

「おいおい、それはちょっと酷いんじゃねえの?ま、分かるけどさ」

 

俺は、陀艮にあるお願いをしておいた。それは、天内理子を殺さずに(・・・・)、俺の元に連れてきて欲しい、というものだ。

 

「しかし、連れてきてどうするというのだ?私は…人間はあまり好かない」

「そこは大丈夫さ。俺が世話をするからな。ま、少しは目を合わせる機会もあるだろうが」

 

陀艮もコレだけじゃ納得できないだろう。純粋だった頃から人間をかなりの数食ってきたし、汚い部分も数多く見てきた。主に、密漁者とか。

 

「…喰らってしまうかもしれんぞ?」

「その時は俺がお前を殺す。知ってんだろ?俺は思いを曲げない」

「本望だと言ったら?」

「…ったく、しょうがねえやつだなホントに!」

 

ここまで懐いてくれたのは嬉しい誤算だ。可愛い。

天内理子を回収するのは、ある疑問を覚えたからだ。天内理子本人が強ければ(・・・・・・・・・・・)、あの懸賞首状態も打開できたんじゃないか、ってな。

まぁ本編での過去編はもう終盤っぽいし、今更彼女を鍛えても意味は無い。でも、一度抱いてしまった思いは止められないのだ。

 

「…つまり、彼女は実験動物だと?」

「人聞きの悪いこと言うなよ、これでも衣食住は保証してやるつもりだ」

「あるいはお前が、最も呪霊らしいのかもしれんな」

 

…今すごい失礼なこと言われた?俺はまだ人としての心を失ってはいない!…多分。

なんだかんだで呪霊暮らしも長いからなぁ。人も結構食べてきちゃったし。

ただ、陀艮と共通して志していることがひとつ。『悪人以外は食わない』だ。…結局食ってるって?うるせぇやい!

陀艮もそういう奴らしか相手にしてこなかったしな。人間は食べ物、悪いヤツという意識が染み付いてしまっているのかもしれない。俺の責任かもなぁこりゃ。

 

「まぁなんだ。そいつと接していくにつれて、少しは苦手意識も薄れていくかもな」

「苦手ではない!嫌悪しているのだ!」

 

そんなに必死に否定しなくてもいいのに。まさか、ほんとに無理だったりするか?いや、それはないか。受け入れてくれる感じだし。

 

「ホントに嫌になったら言えよ、すぐ追い出してやるからな」

「苦手ではないと言っているのだが…それより、依頼人はどうするのだ?殺害対象を殺さず、あまつさえ保護したとなれば、黙ってはいまい?」

「アイツな、依頼する時、縛りも何も結んでねぇんだよ(・・・・・・・・・・・・・)。それが何を意味するかわかるか?」

「…舐められている、か」

「その通り!一泡吹かせてやんのよ」

 

俺たちをバカだと思っていたこと、後悔するがいいぞ羂索よ。

 

 

こうして、陀艮と俺、盃鑼(はいどら)は、約束を結んだのだった。

 

 




ダゴンと来たらハイドラかな、と。
漢字は適当です。後になって変わるかも。
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