鯨と蛸の呪い合い   作:スクリーム1st

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ちょっと少なめです。申し訳ない…。


3話

「ハハッ!その程度か伏黒甚爾!」

(この真っ黒野郎、両手になんか仕込んでやがるな?触れられたらマズイ、か。それに、なんで俺の名前を知ってる?)

 

伏黒甚爾は、その類稀なる感覚で盃鑼の術式を感じ取っていた。効果までは分からないが、両掌(そこ)から立ち上る死の気配。

触れないように注意しつつ打撃を叩き込んでいくが、それが効いている様子は無い。

伏黒の体力も無限ではない。その上、短期決戦のつもりで組んだ戦闘ペースから来る消耗は酷かった。その動きからは疲労が垣間見え、嵐のような連打にも綻びが生じていた。

術式への警戒、依頼失敗への焦り、単純な相手の技量。様々な要素が、伏黒の集中力を削いでいた。

直後、伏黒の警戒の網に穴が生まれる。盃鑼はその隙を見逃さず、間を縫って脇腹へと手を伸ばした。

 

「ぐおおっ…!?」

「あそこから避けるのか。やっぱその肉体、技術…欲しいな」

 

(削り取られたッ!それに…欲しいだと!?何考えてやがる!)

 

盃鑼の術式、『封創海征(ほうそうかいせい)』により、伏黒の身体は見るも無惨な事になっていた。

身体中のあらゆる所が欠けている。二の腕、右手の小指、側頭部。先程削られた脇腹などは、もはや肋骨などが露出してしまっている。

 

(この状況からして長期戦は不利、そもそもフィジカルが足りねぇ…ったく、生まれて初めてだぜ、こんな悩みを持つのは!)

 

伏黒は戦い方を変えた。撤退前提の戦法、普段ではありえない選択だが、それには盃鑼の態度が関係していた。

 

(あの余裕そうな雰囲気…認めたくはねぇが、だいぶ手加減してやがる。流石にここで死ぬのは勘弁、だったら逃げて生きる!)

 

伏黒は盃鑼の腕を避けつつ、抜け出す隙を見計らっていた。しかし、盃鑼は突然動きを止めると、伏黒に話しかけた。

 

「やはり良い…お前、俺と一緒に来る気は無いか?まぁ断っても連れていくけどな」

「何をさせる気だ?永遠にサンドバッグにするとかじゃねえだろうな!」

「うーん…強いて言うなら、指南役(・・・)?」

「ハッ、誰に!」

 

自分が圧倒されているというのに、なぜそんな奴に教えを乞う必要がある?馬鹿にされてんのか?と、伏黒は少し憤りを覚えた。しかし、感情の乱れは負けに直結すると知っているため、無理やり抑えた。

 

(だが、攻勢が止まったのは良い…ここで決め「仕方ない、来ないなら…一度死ね」…があっ!?」

 

思考の間に合わない速さで、盃鑼は伏黒の胸板に手刀を突き込んだ。肉体を容易く貫通され、伏黒の意識は暗転した。

彼が最後に見た物は、

 

「反転術式…これで暫くは目を覚まさんだろ」

 

自分で空けた穴を塞ぐ盃鑼だった。

 

~~~~~~~

 

上手くいって良かったー!!

これ、本編で見た時から「反転術式使えんなら誘拐にもってこいじゃね?」とかおもってたけどその通りだった!!…俺、転生前から思考が呪霊寄りだった?

ま、考えるだけなら誰でもやるだろ!俺は実行に移しちゃった訳だが…。良くないけど、手っ取り早いからなぁ。

 

「さてさて…せっかく鹵獲したとこだし、陀艮来たらさっさと帰るか」

「っは、待てよ」

 

あ?っておい、五条もう起きてんじゃん。復活すんのは結構あとだったはずなのに…俺の介入で覚醒が早まったのか?

でもなぁ…ここで相手すんのも疲れたしやりたくないなぁ。

よし、適当に流して逃げよう。

 

「悪いがお前の相手をしてる暇ねぇんだよ、そのまま寝てろ。獲物とられたってんなら…まぁ見逃してくれや」

「…あー…いや、そうじゃない。今俺の感じてる全能感…それを確信に変えるほどの冴え渡った思考。今の俺を…お前で試させてくれ」

 

ッ!なんだこの呪力…薄気味悪いな、さっき負けた時とは別物ってことか。

ここは陀艮が来るまで耐久が無難…でも、それだとつまらない(・・・・・)

どうやらこの体は、俺の思ってる以上に戦いを欲してるらしい。

まずは…手数で様子を見る。そう思い、俺は軽めのラッシュを繰り出した。

 

「うーん…なんか遅くね?」

「そうかい、じゃあ速めで行くぞ!」

 

先程より一段階速くなった拳を、五条は悠々と避けている。余裕すらあるな、バケモンが。これでも割と本気寄りなんだが。

だが、俺の拳は速さじゃない。そこから放つ術式こそ本命。六眼で見えてるんだろ?だが、それも身体が追いつかなければ意味は無い!

 

「シィッ!」

「…」

 

連打に織り交ぜた本気の一撃。空気を裂きながら進んだそれを、五条はなにも変わらないと言うように避けた。

そして、指先が俺に向いた。これは、奴の体術を見誤ったか。

 

「『術式反転・赫』」

「ぐ、おおッ!!」

 

一気に反対側の壁へと吹き飛ばされた俺は、血を吐きながら己の慢心を呪った。その思いに反して、目の下の割れたような口は、三日月に歪んでいた。

 

(分かってたはずだ…アイツがチート性能だってことも、あの伏黒(ゴリラ)相手にも余裕で勝ってたことも。この選択には反省点しかない…けど、楽しいんだよなこれが!!)

 

精神構造が元のそれからかけ離れつつあることを自覚し、盃鑼はひとつ溜息を吐いた。

 

「芽吹いたとは分かっていたが、それほどとはな五条悟!よし、お前は俺の最高(・・)でケリをつけてやる」

「は、ハハハハハハハッ!なるほど最高か!俺も今、最高に気分がいい!分かったよ海藻野郎、俺も俺の本気でやってやる」

 

高まった呪力をぶつけ合い、俺たちは笑い合う。たとえここで砕けても良い、俺はそう思いながら、奴へと駆けて…

 

「友よ!!」

 

「ッ!!」

 

…いやいや、何考えてんだ俺は。砕けて良いわけないだろ?陀艮を残して逝って良いわけないだろ!

そもそも俺はなぜ強くなろうとした?戦いたかった訳じゃないはずだ。陀艮消滅の未来を避けるため、この領域(ステージ)まで足を踏み入れたんだろう!?

 

 

だったらこの場で優先すべきは…逃げだ。

俺は、五条の一歩手前で踵を返し、空へと浮かび上がった。

 

「!おい待ちやがれ海藻!!ふざけんな!これで終わりか!!不完全燃焼も良いとこだぞ!!!」

「悪いな、五条。俺もお前とはサシでやりたかった。でもな、立場が違うんだよ、俺とお前は。…言えるのは、それだけだ」

 

そう言い残して、俺と陀艮は、天内と伏黒を抱えて全速力で飛び去った。

そうさ、これで充分だ。羂索が報復に来るのを見越して作った新拠点へ行って、コイツらを鍛えて(死から救って)、のんびり生きよう。その為に強くなったんだ。俺は。

 

「陀艮。計画通りだな」

「ああ、そうだとも」

 

 

──俺の中で燻った戦意は、未だ消えてはいなかった。

 




伏黒は、五条からの連戦で消耗してた、さらに盃鑼が耐久戦に持ち込んだので短期決戦を目指した伏黒はさらにキツくなったって感じで考えてます。
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