ちゃんと表現出来てるかな。
展開が強引になってしまう…。
「こんな呪具、どうやって手に入れたんだよ」
「教えると思うか?」
「いいや?」
数分ほど歩いた所に、伏黒を捕らえている小部屋がある。この洞穴は意外と広いのだ。
小部屋を塞いだ大岩を退けた瞬間、伏黒が飛び出して来た。どうやら俺を素手で殺そうとしたみたいだ。
まぁ、そんなことはできない。伏黒の手首には、手枷型の呪具『
天与呪縛ですらもそれには勝てないらしく、呆気なく引っ張られて壁に激突した。
「俺はお前に話を聞きに来たんだ。乱暴な真似はしないで欲しいね」
「お前には言われたくねぇよ。
無視だ無視。さて、どうやってコイツを協力させるかな。
イヤ、今まで考えてなかった訳じゃあないんだよ?でもどうしてもビジョンが浮かばない。
……あーもう何も考えたくねー!こうなったらストレートに行く!!
「なぁ、天内の教育を手伝ってくれ、って言ったらどうする?」
「いいぜ」
「だよねーダメだよね……ってええ!?ホントにぃ!?」
「俺としちゃあ一度終わったようなモンだからな。タダ飯食えんならそれもいいってだけだ。最後の一発もダメだったしな」
「潔く諦める、って事か。意外だな、柄じゃ無さそうだ。それに、ココの飯は三食海の幸だぞ」
「ハァ!?肉くれよ肉!!」
なんかよくわからんけど、交渉成功、でいいのか?殺すのは少しやりすぎだと思ったが、逆にそれが功を奏すとはな。
「あ、報酬は別にくれよ?」
「あぁ!?あー…じゃあそうな、時々呪具やるよ」
「……お前それ先に言えよ。裏切るかもしれねえだろ」
「やっぱ裏切るつもりだったんだな!」
うわー危ねぇ!一瞬信じちゃったじゃねーかバカ!!
でも、今回のは流石に俺も簡単に信じすぎたな。逆になんで疑わなかったんだよ。今思い返しても怪しいわ。
てか呪具好きなんだな。武器庫呪霊を殺さずに攫って来たのは正解だったか。いや、商売道具として大切だからか?天与呪縛は手札少ないしな。
海底を探せば、呪具の一つや二つ簡単に手に入る。何百年も前に沈んだものが、呪力に守られて現存したりしているんだ。最初は浪漫に突き動かされて探しまくってしまった。あの時ははしゃいでたが、お陰で天内の武装には困らないから、結果オーライだな。
色々考えながら、俺は詰閂を伏黒から外す。
(ホントに外すのかよ)
「じゃー、はいこれ」
「あ、俺の
「ほいほい。それ使って、俺達の役に立ってくれよー」
そう言って俺が部屋から出ようとすると、背後から殺気を感じた。すぐさま振り返り、呪具を振りかぶった伏黒の腕を押さえ込む。
「あぶねえな!まだ裏切る感じなのか!?」
「へっ、服従させたきゃ、万全の俺を殺せよ」
「えー……?そういう感じ?」
こいつマジの戦闘狂か?それとも弱いやつには従う気はないってか?動物みたいな感性してんな。
それにしても、呪霊から呪具を取り出すまでの速さが尋常じゃなかった。これは教官としても期待できそうだな。
もっかい本気でやり合うのも……まぁありっちゃありか。俺も陀艮以外との戦闘経験を積んでおきたい。
「わかったよ。また今度な」
「ケッ……じゃあここで決めとくぞ。一ヶ月にひとつ、俺に呪具を寄越せ。出来なかったら星漿体を殺す。いいな?」
あれ、俺割と凄いやつ仲間にしようとしてない?人質取られたんだが。
でもこうしてみると、やっぱ世界が違う、って感じがする。
俺は自分で言うのもなんだが、多分平和ボケしているんだと思う。この前の戦闘でも、五条という危険が目の前に迫っていると言うのに、俺には危機感というものがほとんど生まれなかった。
でもコイツは違うんだろうな。俺とは覚悟の面で段違いの精神をしている。
今だって、俺に恐怖は無い。その代わり、本気にもなれない。中途半端に強くなって、それに胡座をかいているだけだ。
「?オイ、聞いてんのか?」
「……あぁ、悪い。ちょっとボーッとしてた」
「真面目にやれよ。俺達のこれからを決める大事な話し合いだ。俺としちゃあ、ここで全部終わりにしたっていい」
「命を捨てる覚悟、か。ああ、俺は多分わかってないんだろうな。それがどんなに重いか」
今も伏黒は、目の前で怪訝そうな顔をしている。こんな表情も、死んでしまえば全て失う。というのに、この世界の人間は簡単にそれらを捨てる覚悟をする。
……怖く、なってきた。
なんで俺だったんだろう。神がいるなら、今すぐ問い詰めてやりたい。
「ま、本当に捨てるかはお前にかかってるんだがな」
「…そうだよな。俺がここでお前を切り捨てる判断をすれば、お前は死ぬ。だよな?」
「あ?何当たり前のこと言ってんだ。そういうことで話進めてんだろ。ま、星漿体殺してお前らが許してくれんなら、俺は生き残るが」
「……許しても、いいかもな」
「…は?」
その瞬間、俺は伏黒に胸ぐらを掴まれ、洞窟の壁に叩きつけられた。考え事をしていたからか、俺は何も反応出来なかった。
「ふざけてんじゃねえぞ、テメェ」
「…」
「今お前が言ったことを考えると、だ。お前は星漿体に何の思い入れもない、ってことになるな?」
「…ああ」
「だがお前がそんな冷徹な野郎には今んとこ見えねぇ。ってこたァ、お前は救った命に責任も持てねぇ半端野郎だ、そうだろ、な?」
最悪だ。全部見抜かれてしまった。軽い気持ちで、あの場に行ったことも、俺が、半端だってことも。
「じゃあそんな奴に殺された俺はなんだ?カスか?クズか?もう一度言うぞ、ふざけんな。お前のアホみたいな行動は、お前の周り全てに影響を与えてるってことを自覚しろ」
「……すまん」
「チッ。俺はもう寝る」
手を離され、俺は壁に沿ってずり落ちる。
なんて体たらく。獲物に諭される狩人が何処にいる。今の俺はネズミ以下だ。
俺は、アイツを一度殺した。その事実を今、再確認した。俺は、人を一人、殺したんだ。陀艮には殺すなと言っておいて。
あるいは、俺も一度終わったことで、夢を見てるような気分だったのかもしれない。でも、そんな事を考えても、俺がダメだったって事には変わりない。
俺には、もう一度命を与えられる価値があるのか?
~~~~~~~
「ガキ叱ってるみたいだったな。アンタはどう思った?イラついたか?」
「いや、私も助かった。盃鑼を甘やかし続けた私の責任でもあったのだが、それを君に押し付けて申し訳ないとも思っている」
「そうかよ。……あいつは恵まれてるな。俺とは違う」
伏黒が皮肉げにそう言うと、陀艮は黙り込む。そんな様子がつまらなく感じたのか、伏黒はため息をついた。
洞窟に帰ってきた時、陀艮は伏黒に一つの相談を持ちかけていた。
それこそが、盃鑼の精神を叩き直そう計画。
今まで命に対して軽薄な態度を取り続けてきた盃鑼に、命の大切さを教えてやろうという計画だ。
陀艮は海の呪霊だ。海には、生命の源という側面もある。そこに影響されたか、陀艮は敵でも味方でも、命を重んじる性格になっていた。
陀艮は、今まで人を殺す時は、しっかりとその事実を噛み締めながら実行に移していた。命は自らの糧になり、それは彼らの命を絶やすことから成り立つ。そういう事を考えていた。
しかし、盃鑼はそうでは無かった。人間を殺す度、彼は自らの成長しか考えていなかった。『これで陀艮とも対等に戦えるか』などと、自らの勝手で閉ざした未来にはほとんど目を向けていなかった。
思うに、彼はまだ子供なのだろう。呪胎が二つある呪霊なのかもしれない。そうであるなら、私は彼を適切に導き、教えてやらねばならない。陀艮はそう考えていた。
伏黒は、最初こそ面倒だと提案を突っぱねていた。彼にとって、自分はもう終わった存在であり、そもそも生きていることこそおかしいのだ。そして、何故自分を殺した相手を教育してやらねばらないのだと、少しの怒りもぶつけていた。
陀艮は、彼にやってもらう事でしか盃鑼の価値観を変えることは出来ないと考えていた。
もちろん陀艮が叱ることで、彼に反省を促す事は出来るだろう。しかし、今までの甘い考えは抜けない。いや、
このままでは、油断により盃鑼が死んでしまうとさえ考えていた。
最終的に、伏黒は星漿体殺害の報酬、3000万を陀艮から支払う事でそれを引き受けた。陀艮にとって、窃盗は避けるべき事では無い。呪霊であるが故に、人間の金などどうでも良いのだ。
伏黒にとって、盃鑼の成長など実にどうでもいい事だった。しかし、話をしているうちに苛立ちを覚え、つい話に熱が入ってしまった。
「ま、コレであいつも色々と考え始めりゃ俺にも面倒はないんだが」
「仕事は最後まできっちりこなせ」
「ハァ…ハイハイ了解しましたぁ」
ここに、歪な協力関係が出来上がった。それを、盃鑼はまだ知らない。
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