鯨と蛸の呪い合い   作:スクリーム1st

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更新遅れて本当に申し訳ございません。
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説明が足りていない部分があった為、加筆させて頂きました。


8話

「どこだー?」

 

思い立ってから20分ほど。俺はまだ伏黒を見つけられていなかった。

加えて陀艮も見つからない。

主要な部屋はほとんど探した。広間、キッチン、風呂場、伏黒の自室。

これらの部屋にはいなかった。となれば……。

 

「地下の運動場、だな」

 

元々は俺と陀艮が気兼ねなく術式の練習を出来るように用意した場所だ。かなり頑丈にできており、全力でやり合っても崩れはしないと思う。俺の術式は硬度に関係なく削り取ってしまうので、そこは注意しないといけない。

広さもかなりのものだ。正確に計ってはいないが、天内が端まで走りきるのに10分ほどかかっていた。

 

俺がそこに近づくと、伏黒の声が聞こえてきた。

 

「……だな?」

「……あぁ……」

 

ん?なんか陀艮の声変じゃね?なんか、掠れてるというか。

 

「おーい、ちょっと話が……」

 

そう思いながら、俺は運動場に入った。

 

 

 

足が、止まってしまった。

 

 

「あ、クソ。もう来やがった。まだ終わってねえのによ」

 

入口から少し離れたそこでは、伏黒が陀艮に天逆鉾を突きつけていた(・・・・・・・・・・・)

体温が下がったような気がする。

 

「……何してんだ?」

「見て分からねえか?殺しかけだよ。お前が邪魔に入ったんでまだトドメは刺してねえが」

「……俺のせい、だな」

「ん?あー、ま、そうだな。お前が俺を野放しにしなけりゃこんな事にはならなかった。流石に油断しすぎだわ」

 

確かに、油断してたのかもしれない。

陀艮や俺は奴には殺せないし、天内にはある呪具を持たせてある。

たとえ窮地に陥ったとしても、どちらかが異変に気づいて助けに入るだろう、と。

一見可能に見えるが、それは理想でしか無かったのかも、しれない。

 

ダメだな。まるで成長してない。

結局は、急に変わろうとしても変われないんだろうな。

 

「関係は終わりって事で、いいんだな?」

「ハッ、今更かよ。それに、俺は最初から仲間になったつもりはねえよ」

「……見抜けなかったのは認めるさ。策が穴だらけだった事も、な。でも、それとコレとは話が別だ」

「ッ!!」

 

俺に色々考える事は合ってない。それは今までの事で痛感した。

思えば、俺は色々と一人でやろうとし過ぎていた。陀艮を頼っていなかった。

俺たちは対等だ。だが、無意識に見下していた。そこが、最大の失敗。

 

「許せない事は……俺にもあるんだよ」

「かかってこいよ。強さだけのガキが」

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

掌を開き、大きく上から振りかぶる。伏黒は一瞬天逆鉾を構えるが、衝撃自体は殺せないと気づいたのか、既のところで身を引いた。

外れた指先が、斜めに地面を削る。大振りの攻撃が当たらないとは分かっていたので、そのまま距離を詰めようとする。

伏黒は呪霊から取り出した小さな杭型の呪具を投擲する。それを弾きながら、今度は逆袈裟に腕を振る。単調で代わり映えのない攻撃に対応されない訳もなく、杭を突き刺される。

 

「……こんなもんかよ。最初ん時とは大違いだな?お仲間に裏切られて傷心中か?お花畑野郎」

「……」

「ダンマリかよ、つまんねえな。ならいい、とっとと殺す」

 

途端、伏黒の動きが変わる。猫のように俊敏で、滑らかな動き。

今まで考えた戦い方が、全て覆るような異次元のギアチェンジ。

当たらないだろうな、俺なんかの攻撃は。

先程刺された呪具の影響か、身体は動かない。ただ、斬り刻まれるのを待つだけ。

 

なら、いい。

 

 

全部削れば(・・・・・)、関係ない。

 

 

「ッ!うぉおッ!!」

 

全方位に向けて、呪力の波濤を飛ばす。

俺の呪力は消滅の呪力。雑に飛ばしたから隙間は多いが、当たれば死ぬ。

 

「はァッ……!っぶねぇなクソ……」

 

躱すよな、そりゃ。だから俺はお前を連れて来た。

それももう、全部終わりかもしれない。

いや、かもしれない、ってのも甘えだな。

 

俺が、終わらせようとしてるんだ。

 

 

 

「領域展開─────嚥湛斯海(えんじんしかい)

 

 

 

瞬間、俺と伏黒以外の全てが塗り変わる。

岩の壁は、蠢く肉と骨の柱に。

砂まみれの床は、底が見えない暗闇に。

俺の世界が、広がっていく。

 

「はっ、は……もう勝ったつもりか?いや、最初から負けるとは思って無かったんだろ?あんな戦い方するって事はよ」

「……あぁ」

「舐めんなって、言っただろうが!!」

 

先ず削るのは、天逆鉾を持つ奴の右手首。落ちたそれを拾われる前に、肉壁を動かして奪い取る。

懐から別の短刀を取り出し、飛びかかってきた奴の両脚を必中の術式で膝まで削ってやる。空中に居る伏黒は、当然バランスを崩し頭から墜落する。

 

「ッ…!がァッ、ぐぁ…」

「大丈夫だ。俺が全部、呑み込んでやるから」

 

そうして、俺が奴を消そうとした瞬間。

 

「盃鑼ッ!!」

「…!?なっ……なんで」

 

無傷の陀艮が、領域を破って叫んだ。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「すまなかった……全て私のせいなのだ……」

「あーいってーなクソ、マジで削りやがってよ」

「……むぅ」

 

俺達三人は、地面に座り込んで集まっていた。

いきなり領域に割り込んできた時はどうしたことかと思ったが、まさかコレが全て陀艮の立てた計画だったとはな。

 

正直、まだあまり怒りは消えていない。

何故普通に話し合いをしなかったのか、何故ここまで強引な手に出たのか……色々とあるが。

俺達は未熟だ。これに尽きる。

 

俺はそもそも精神年齢的に未熟だし、陀艮は冷静だが教育の経験はなかった。

互いに未だ発展途上。そういう意味で見れば、今回の件は仕方なかったとも言える。自分を許す訳では無いけど。

 

「なぁ陀艮…おい、こっち見ろ」

 

「私には……目を合わせる資格など…」

 

「いいから」

 

肩を掴み、強引にこちらを向かせる。

 

「お前もさ、俺がみっともねえとこ見せたから、俺の為にやってくれたんだろ?」

 

「そうだ…だが」

 

「俺はそれだけで嬉しいと思ってるよ」

 

陀艮が目を見開く。

これは俺の本心。ちょっと怒ってても、その想いが消えることなんてない。

 

「……な」

 

「な?」

 

「ならァァァァァァん!!!」

 

「えぇ!!??」

 

陀艮がいきなり立ち上がり、咆哮する。

 

「ダメだ!私はお前の心をさらに傷つけた!普段殺さないお前が、伏黒に本気の殺意を向けていた…それが!どれだけ重いことか…ッ!」

 

そうか…あの時の俺そんな感じだったのか。正直あんまり覚えてないんだよな…怒りが抑えられなかったとか、術式の理解が深まった感じはあるけど。

体が馴染む…というか。

 

「…俺は確かに、あの時めちゃくちゃキレてた。でも、こうしてお前は生きてたんだ。それでいい。ついでに、俺はもう一段階強くなれた。それで、納得してくれよ、な?」

 

「むぅ……出来ん。出来んが……お前が良いなら」

 

ふぅ、なんとか抑えてくれたみたいだな。良かった。

 

「よし、寝ようぜ」

 

「オイ、俺の脚どうするつもりだ」

 

「明日治す。今日は疲れたから寝る。譲らねぇぞ」

 

「ハイハイ、治してくれんなら文句ねぇよ」

 

「盃鑼」

 

運動場から出ようとすると、陀艮に呼び止められた。なんだ?やっぱりスパッと割り切れる物じゃ……。

 

「ありがとう」

 

「…?ああ」

 

なんだ?何に対しての礼だったんだ、今の。

あーでも、眠い。限界。無理。

 

寝る。

 

 

~~~~~~~

 

 

次の日。

俺達は天内も伴って、もう一度運動場へと集まった。

目的は、俺の術式についての説明だ。

 

「さて、今回の騒動で、分かったことがある」

 

「何なんだ一体…こんな朝からよ」

 

「もう昼だぞ、お前は少し生活を見直せ」

 

「まぁまぁ陀艮。それでだな、分かったことっつーのは……」

 

「分かったぞ!この拠点の不便さじゃ!!」

 

「ちげーよ、当分このままだ。……分かったのは、俺の術式の正体(・・・・・)だ」

 

「「「!」」」

 

三者三様の反応だ。伏黒は少し目を見開くが、すぐに欠伸する。天内はガッカリしつつ、少し驚いているようだ。陀艮は……なんだあの表情、よく分からん。

 

「俺は最初、あらゆるものを消滅させる術式だと思ってた。実際出来たしな。だがそうじゃなかった…コレは、あらゆるものを呑み込む術式だ。治してたのも、吐き出してただけらしい」

 

「じゃ、この脚もお前のゲロって事か?汚ねーな」

 

「治ったんだから文句言うな、自分で言っただろうが」

 

「よく考えたら、治る時もいきなり出てくる感じじゃったし…別におかしくはないかもしれんの」

 

そこで、陀艮から疑問の声が上がった。

 

「というか、お前は自分の術式を知らなかったんだな」

 

「あぁ、よく考えたら仕組みとか全然分かってなかったんだよな〜、不思議なことに」

 

「分からずに攻撃してたのかよ……治ってなかったらどうするつもりだったんだ」

 

本来呪霊は、生まれた時から自分の術式を理解している……らしい。陀艮から聞いた話だが、まぁ自分の根源をよく知らないってのもおかしな話だし、信憑性は高いだろう。

……俺が転生者だってのも、言えねえしなぁ。

 

「つーかよ、なんで吐き出すだけで元に戻るんだ?」

 

「海は飲み込んでから吐き出しても元に戻るだろ?……そういう事だ」

 

「いやどういう事なんじゃ!?」

 

「知らん」

 

「一番大事な所だろうに……」

 

しょうがないだろ、本能で『そういう事だ』って刻み込まれてるんだし……これが呪霊の感覚か?

 

「ま、海だって吐き出した後、多少は混じる物もある。俺の場合呪力が流れ込んでる訳だが、お前の体なら大丈夫だろ」

 

「ま、俺のは特別だからな」

 

「超人め……」

 

天内が恨みがましく伏黒を睨みつける。まぁそうだろうな。

天内は、頑張って習得した戦闘技術を、単純な肉体性能で押し切られて負けている。それも、何度もだ。納得いかないところもあるだろう。

 

「さて、俺の話はこんなもんなんだが……陀艮、ちょっと頼みがある」

 

「……!なんだ!友の頼みなら断るはずもない!」

 

負い目からか、食い気味に返事をしてくる陀艮。もういいって言ってるんだが、やっぱ引きずっちまうもんだよなぁ。

まぁ、コイツもいつかは納得してくれるだろう。というわけで。

 

「組手、しようぜ」

 

「ッ!良いとも!!」

 

 

こうして、俺と陀艮は運動場へと向かった。

 

 




術式の解釈、自分でもこれでいいのかとか思ってます。
思ったことあれば、ご指摘等よろしくお願いします。
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