Muv-Luv Alternative : Reincarnation 作:アレクシア少佐
リモートワークは最高ですね...!
- 2001 / 10 / 25
目が覚める。
...思えば、軍人としてこの世界に生きて...記憶がかなり曖昧だが、少なくとも2年3年も経つ。
最初の頃こそ、元の世界の夢も見ていた気がするが...最近はめっきり見なくなってしまった。
時間を確認する。
...起床ラッパまで、1時間もある。
しかし...二度寝するほど眠気も無いし、折角だし軽くランニングでもしよう。
訓練の時間。
今日の午前中は、射撃訓練らしく、みんな射撃に勤しんでいる。
衛士となり、戦術機に乗るとはいえ、戦闘の基本は歩兵のそれと変わらない。
もちろん、戦術機ならコンピュータがある程度補正をしてくれるため、動かない的に弾を当てるだけなら簡単だ。
だが、実戦での的はBETAだ。練習用の的に比べてデカいとはいえ、前後左右に動き回るし、案外すばしっこい奴らなので油断ならない。
ちゃんと狙いを付けて撃つ、といった基礎中の基礎はもちろん、歩兵に通ずる技能は必須になる。
...背中に銃を背負っている状態から、素早く射撃体勢に移行し、一呼吸置いて狙いを付け射撃。
パァンッ、と軽快に、気持ちのいい射撃音。
「...良し。」
腕はなまっていないようで、300メートル先の的に弾が当たっている。
構え直して、次は400メートル先の的を狙う...。
しばらく集中して射撃していると。
「射撃止めッ!分隊集合ッ!」
と、榊の声が聞こえる。
何かあったかな、と思いつつも、簡単に片づけをしながら向かう。
「どうしたのだ?」
「白銀が何かあるみたい。」
冥夜が疑問を口にする。
さて、『前回』何か言ったっけ...?
私自身、BETA襲来や...親しい人の死など、強烈な出来事は記憶に焼き付いていて覚えている。
...時々、脳裏にフラッシュバックしてしまって、気持ち悪くて、情けなくて、何もできなかった悔しさで、胸がいっぱいになってしまうが。
訓練の内容は身についている...と思う。
だけど、それら強烈な出来事に塗りつぶされて...何を話したかまでは、曖昧なところがある。
「なんですかー?」
「みんな...怒らないで聞いてくれ。」
「...無理。」
「彩峰、正直すぎるのもどうかと思うよ...。」
「...いいわよ、とりあえず言ってみて。」
榊がそう促すと、タケルは恐る恐る、といった表情で話し始める。
「今見てて思ったんだけど、みんな訓練に慣れすぎて、意識が間違ったところにいってる感じがするんだ。」
「...どういうことだ?」
冥夜が問いかける。
...私は自分の射撃の精度が、どれくらい変わってしまったのか確認するために、周りを全然見れていなかったな。
「委員長には言ったが、構えてから撃つまでが早すぎるんだよ。つまり...射撃場に馴れた撃ち方になってるよ。今やってるのは生身の訓練だけど...ここで変な癖をつけると、戦術機に乗った時の射撃感覚に悪い影響が出る。」
そうだ、みんなの撃ち方が作業じみていたというか...。
「戦術機って...どういうこと?」
「戦術機だと...例えば、ロックオン機能とか、本来人間が処理している判断が自動だったり高速化されているじゃないか。だから、みんながやってる今の呼吸に馴れすぎると、反射的にトリガーを引いちまってムダ弾を増やすことになる。」
「そうだね。実際の戦場では逐一、BETAも友軍戦術機も入り乱れて近接格闘戦をすることが多い。...IFFがあるから誤射の危険性は少ないとはいえ、反射的にトリガーを引いて、射撃した先に戦闘中の友軍機が...なんて事故も起きてるはずだ。それに、BETAは想像以上の数が湧いてくる。いくら補給があるとはいえ、残弾数には気を付けておかないといけない。」
BETAの進軍速度は速いし、何処からどう動いていくのかもBETA次第。
限りある弾を無駄にせず、確実に1匹1匹BETAを駆除しなければならない。
...まぁ私もタケルも、銃をぶっぱなしながら長刀で戦うのがメインだけど。
「ふむ。言われてみれば、だな。タケルとサクラの言う通り、実戦を考慮するのであれば極力無駄撃ちは避けるべし、か。それに、戦場で冷静さを保てるかと言われれば、初陣ではおそらく無理、だろうな。せめて無駄撃ちを減らす努力でもしておいた方が、事故も減るというもの...か。」
冥夜が自分に言い聞かせるように、そう呟く。
それに対して、彩峰やたまが納得するように頷く。
「オレはそこまで考えてたワケじゃねぇけど...それもそうだな。簡単な作業、簡単な動作だからこそ、非常時でも慌てないように...だな。」
みんな、それぞれで納得してくれている。
...みんなの成長を、少しでも助けられているならいいな。
それからみんな、今説明した内容を実践しようと、訓練に戻っていく。
...私も訓練に戻ろうかな。
「サクラ、ちょっといいか?」
「ん?何、冥夜。私で良ければ。」
訓練再開、しようとしたとき、冥夜に呼び掛けられる。
「サクラは、もう任官しているんだったな。負傷で落ちた体力を戻すために訓練をしていると聞いている。そこで相談なのだが...今日のように、何か思うことがあれば教えてほしい。」
「なんだ、そんなことか...。とりあえず、冥夜もだけどみんなは総戦技を合格してから、かな。そこはほら、衛士としての基礎だからさ、私から言えることは少ないよ。...今まで通り、神宮司教官の言う事をよく聞いて。...私が言えたことじゃないけど、チーム内のいざこざや隠し事は、なるべく早めに無くしておいたほうがいいよ。もちろん、冥夜個人の重要な秘密とか、言いたくないことは言わなくていい。」
207B分隊には、冥夜は言わずもがな、みんな親が官僚だったり...何かしら秘密を抱えている。
それらは必要に迫られない限り、言いたくないことだろう。
「ふむ。そうだな、私にも言いたくない、知られたくないこともある。だが、それを抜きにしても、私個人として...仲良くしろ、ってことだな?」
「...身も蓋もない言い方をすれば、そうだね。私は冥夜はもちろん、榊たちみんなとも仲良くなれれば、この先ずっと仲良くできれば...って思うよ。」
「...そうか。私はもう、そなたのことは友人だと思っているのだがな?私はまだ友人認定されて無かったのか...。」
冥夜がわざとらしく、やれやれと言った表情でそんなことを言う。
「なっ...それは卑怯だなぁ。私だって冥夜のことは頼れる友人だと思ってるよ。」
「ふふっ...。長く話し込んでしまったな。教官に見つからぬうちに、訓練に戻るとしよう。」
冥夜は嬉しそうに...笑って、少し恥ずかしそうに、そう言う。
...冥夜と友人になれたこと、冥夜の笑顔...照れ顔が見れて、満足な気持ちだ。
「さて、昼飯行こうぜ!」
午前の訓練を一通りこなし、気づけばお昼休み。
「「「......。」」」
な、何か空気が重い。みんなが、タケルを凝視している...。
「...今更、そなたがどのような実力を発揮しようが、驚きはしないが。」
ああ...射撃訓練の話か。
「別に...たまよりも凄いことやった訳じゃない。おまえらだって、あれくらいできるだろ?」
できて当たり前、みたいな事をタケルが言っているが、冥夜と彩峰、榊の疑いの視線は続いている。
それもそうだ...少尉任官済み、と知らせている私はともかく、タケルは兵役免除されてたヤツってことになっている。
初めての訓練のはずなのに、走り込みはついてくるどころか追い抜いて前に行くわ、銃の解体組立も早いわ、射撃精度もたまに迫る...。
「白銀、兵役の経験、あるんじゃないの?」
「な、何で!?」
...客観的に、というかもはや他人になってしまってよくわかる。
自分はこんなにも、バカなガキだったのか...。
「はぁあ...そんなことも分からないほどバカだったのか...。」
「なっ!誰がバカだ!」
私もみんなも、やれやれと言った表情をしている。
「流石におかしいわよ。サクラさんは少尉任官してるから当然だけど、あなたはつい最近入隊したばっかりじゃない...。」
「......そんな人が、何でも普通以上にこなせるなんて、変。」
じー...とみんなの視線がタケルに突き刺さる。
「そうだよね。射撃も狙撃も体術も出来るもんね...。」
「それに、おかしなことに座学もね。」
まるで訓練兵として教えられること全部、元々知っているみたいに何もかもできる、入ったばかりのタケル。
どうやっても怪しい...。
「そなた、サクラとは姉弟だと言っていたな。座学や体術はサクラに教えてもらっていた、で何とか説明がつくが...。」
「そうね。それにしても、銃の取り扱い、まして射撃や狙撃まで事前に練習できるなんておかしいわよ。」
「うっ...。」
私が教えていた、で説明がつく部分もあるにはある。だが、銃を扱うところまでは...。
「で、でも、今は仲間なんだしっ...過去がどうでも、隊全体に良い影響があれば...。」
「それはもちろん、そうなんだけどね...。」
そうだ、犯罪者とかでない限り、過去の経歴は関係ない。
...それこそ、みんなの経歴や背景には、色々とこの国の偉い人だったり...。
「と、とにかく!腹が減ってるから、先にPX行ってるぞ!」
あ、タケルが逃げた。