Muv-Luv Alternative : Reincarnation   作:アレクシア少佐

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2. 目覚め

どれだけの時間、寝ていただろうか。

 

目を閉じていても分かるくらいの周囲の明るさに刺激され、意識を取り戻す。

 

...ついさっきまで、夕呼先生と、霞と、『BETAによって人類が危機に瀕している世界』と、別れを告げたばかりのような、そんな気分だ。

心なしか、涙が流れている...気がする。

 

一周目...の記憶は、もはや曖昧になってしまっているが、それでも数年分くらいの記憶はあるだろうか。

オルタネイティヴ5の発動、人類の敗北、地球からの脱出...大切なものが失われていくのを、何もできずにただ眺めているだけのオレ...。

 

二周目...一周目の記憶は、この時点で既に曖昧になっていたが、絶望と後悔、もう何も失いたくない、人類を救う、希望を繋ぐ...ただそれだけのために。

 

甲21号作戦、横浜基地防衛戦、そして桜花作戦。

あれだけの経験をしておきながら、オレは今もまだ、自分はガキだと思う。

 

だがそれでも、一周目の無力だったオレ、二周目の途中までの、ただ理想だけを並べ立てて夕呼先生に当たっていたオレ...よりは、成長したんだと、思う。

 

「......?」

 

...ん?

これまでの経験を思い出し、感慨深くなり、目に涙も溜めていたが、よくよく思い返してみれば...。

夕呼先生は確か、オレはもう因果導体ではないから、転移して意識が戻る頃には、色々と記憶も無くなる...再構成される、と言っていなかったか?

 

...目を開ける。

 

よく見知った、何度も見た、オレの部屋の天井だ。

『あの世界』で、オレについて調べてくれた夕呼先生に見せられた...と思う、オレの部屋のように、荒れ果ててはいない。

 

本棚、ラジカセ、簡単なデスク。

 

...オレの部屋だ。

 

そこまで確認してふと、オレの背後...窓側に、人の気配を感じる。

 

純夏か?冥夜か?それとも、霞か?

...まさかな、と思いつつも、しかしなぜか心臓が破裂しそうな程に緊張しながら。

 

背後を確認する。

 

 

 

...オレが寝ていた。

 

どういうことだ?昔テレビで見たような、所謂「幽体離脱」ってやつか?

今のオレの意識はこの後消え去り、目の前に寝ているオレが本物...というか、本体なのか?

 

自分を、物理的に客観視してみると...衛士として鍛えていたとはいえ、結構筋肉あるなオレ。

 

何とはなしに、触ってみる。

 

ぺたり。

 

ぺたぺた。

 

...何の問題も無く、触れるが。

 

自分で自分を触る、奇妙な感覚に襲われつつも、案外筋肉ついてたんだなぁと感心する。

 

 

いや、待てよ。再構成されているのなら、衛士として鍛え上げた肉体も、元々の学生ぐらいになっているのではないのか?

 

ということは、...今のこの幽体離脱?の状況はさておき、ここは『BETAの存在する世界』なのか?

 

 

そんなことを考えてしまい、モヤモヤしていると。

 

目の前の『オレ』が、突然ガバッと起き上が...ろうとして、オレに気づき。

 

「...。」

 

「...。」

 

視線が交差する。

 

『オレ』は急に、顔が赤くなっていく。

 

「どうして赤くなってるんだよ!」

 

...あれ?

 

自分が発したとは思えない高い、女みたいな声。

 

「いやアンタこそ誰だよ!オレにアンタみたいな女の知り合いはいねぇっ!」

 

...。

 

女だって?オレが?

 

「どういうことだ...。」

 

「アンタが分かんなかったら、オレに分かるわけないだろ!」

 

...取り合えず起き上がってみるが、確かに髪は肩くらいまで伸びている。

衛士として鍛えてきた身体には、触ってみれば程よく柔らかな、林檎が二つ実っている。

極めつけは...過酷な戦場を共に潜り抜けてきた『相棒』がきれいさっぱり消えてなくなり、跡地には女の子のソレが...いや、今はそこまで確認しなくてもいい。

 

そして、再構築されたのかどうなのかは知る由もないが、なぜか白陵柊学園の女子制服を着ている。

...一応、下着もちゃんと付けているようだ。

 

「...今、...私の正体を話しても、信じてはもらえないだろう。いや、信じられるほうが怖い、な。」

 

オレ、と言いそうになったが、女になってしまったからには、言葉遣いにも気を付けたほうがいいだろう。

...どうなるかは分からないが、あいつら...207Bのところに、潜り込める可能性は高い。

今のうちに、矯正していくほうがいい...と、自分でも驚くくらいに冷静に考えられている。

 

「疑う気持ちは分かる。だがそれよりも、どうしてお前は泣いているんだ?」

 

「...。」

 

目の前の『オレ』...いや、オレ...私が女になってしまったのだ、目の前の『オレ』こそが、白銀武であり、自分は別の何者か...。

 

「いや、なに。長い...とても長い、変な夢を見ていただけさ。楽しいこともあれば、辛いこと...絶望だってある、悪夢だったさ。」

 

長い夢を見ていた、悪夢だったと聞き、この白銀武はまさしく、前回...二周目の『オレ』だ。

私...がなぜ、三周目になっているのかは分からないが、...まりもちゃん、甲21号作戦から散って逝ったヴァルキリーズのみんな...伊隅大尉。

そして、桜花作戦...207Bのみんな...冥夜。

 

今度こそ、あいつらを。みんなを。

失う事無く、あ号標的を撃破できるのだろうか。

 

「そうか。...本当に夢だったら、良かったんだけどな...。」

 

「どういうことだッ!?」

 

私が後悔するように、そう言うと、白銀武は動揺したのか、胸倉を掴んで詰め寄ってくる。

 

「そう焦るな、焦っても何も始まらない...。まずは服でも着替えて、外に出るぞ。」

 

そうだ、焦ったって何も解決しない。そんなこと...前回、前々回で、痛いほど思い知らされたじゃないか。

 

「そう...かもな。じゃあ着替えるから、出ていてくれないか?」

 

「ん?...ああそうか。」

 

そういえば、自分は女になったのだった。意識だけは男なのも、辛いものがある。

...という事は、いざ訓練兵になれたとして、あいつらと一緒に着替えなければならないのか?

 

今から既に、心が躍るようで、下手すれば月詠さんに切られそうで怖い。

 

「月詠さん...か。そういえば、前回...カシュガルから帰ったとき、挨拶できていなかったな...。」

 

冥夜を守ると、心に誓い。

月詠さん、3バカに武御雷を用意してもらい。

武御雷をハイヴ内で大破させたどころか、冥夜、たま、委員長、彩峰、美琴...純夏。

凄乃皇に乗っていた私、霞以外誰一人として生きて帰ることができなかった。

 

グッと心臓を締め付けられる。

 

自分を責める気持ちも、無いと言えば嘘になる。

だが、今ここで自責の念に駆られたとて、何かできるわけでもない。

 

それならば、再び最初から...折角の三周目だ、二度とそんな思いをしないようにするべきだろう。

 

「おう、お待たせ。」

 

「じゃあ行こうか、『横浜基地』へ。」

 

横浜基地、と言った時、白銀武は動揺したかのような、緊張したような表情を浮かべている。

...前回の私だって、外に出て、瓦礫の山となった町、自分の家にもたれ掛かって壊れている撃震を見て愕然と、絶望した覚えがある。

 

「何をぼーっとしてるんだ、早く行くぞ。」

 

白銀武の手を取り、強引に外へ連れ出す。

 

...今回こそは。

みんなを、誰一人として、失ってたまるか。

 

 

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