Muv-Luv Alternative : Reincarnation   作:アレクシア少佐

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3. 横浜基地

ぼんやりしていた白銀武の手を取り、強引に家の外に出る。

 

「...はは。」

 

白銀武が、諦めたかのように笑う。

夢ではなかった、と絶望している。

 

「どうした、そこで大破しているロボットがかっこよくて乗ってみたいのか?」

 

一周目、何も知らずに「ロボットかっけぇ!」とウキウキだったのを思い出す。

 

「な、そんなわけ...いや、そうだな、こんなロボットに乗って、戦ってみたい、な。」

 

戦うしかない、やるしかないんだ、と決意を固めていそうな白銀武。

 

...まあ、自分の経験...記憶にあるのだ、それくらいのことは分かる。

 

 

 

 

 

 

何も話す話題も無く、無言で気まずい中ただ歩いていく。

 

瓦礫しかない、何もなくなってしまった町。

所々に放置されている、戦術機の残骸。

 

...BETAによる本土侵攻、横浜ハイヴ建設によって変えられてしまった町。

 

 

 

 

 

 

物悲しく瓦礫の街を横目に、横浜基地の桜並木...に辿り着く。

 

「ああ、ちょっと待ってくれ。」

 

「なんだ、忘れ物でもしたのか?」

 

「いや。少し、挨拶をするだけだ。」

 

基地に一番近い桜の木。木の横には墓標のように、鉄屑が置かれている。

 

ビシッと敬礼をする。

 

 

――まりもちゃん、伊隅大尉、ヴァルキリーズのみんな、...冥夜。

 

この世界で、最初で最後の、前回の世界で己を貫き死んでいったみんなへ、祈る。

そこには、謝罪と、今度こそ...という決意。

 

そして最後に。

 

――ありがとうございました。みんなの生き様を、笑って語れる日が来るかは分かりませんが...裏切るような真似はしません。

 

 

向き直り、行くぞ、と声をかける。

 

「...ここで死んでいった戦友か、友人が?」

 

「...そんなところだ。自らの命を賭して、人類の勝利を信じて、礎になっていったよ。」

 

 

 

 

横浜基地だ。

 

国連太平洋方面第11軍横浜基地、と長ったらしい基地名が書いてある。

その横には警備兵の詰所、奥に見える建物の屋上には、大きくてダサいレーダー。

 

「こんなところで何をしているんだ?」

 

...。

 

「外出していたのか?物好きな奴だな。どこまで行っても廃墟だけだろうに。」

 

彼らは戦術機に乗れない、適正が無かったため警備兵になった人たちだ。

 

...横浜基地防衛戦では、大型のBETAはもちろん、戦車級、闘士級、兵士級が無数にいたはず。

最終的にはなんとか守りきれたとはいえ、相当な数の死傷者が出ていたはず...。

 

その中には、彼らも...。

 

「隊に戻るんだろう?外出許可証と認識票を提示してくれ。」

 

...そんなものは持っていない、当たり前だ。

まだどこにも、所属していない...どころか、この世界の白銀武は既に死んでいる。

『私』は、自分自身でさえ誰なのかも分からない。

 

「どうも、ご苦労さん。」

 

「......?何を言っている?おいおい、ここを通る前に許可証の掲示が先だ、冗談はよしてくれよ。」

 

ガッと白銀の足を蹴る。ここでモメでも、遺恨を残すだけだ。

 

「ああ、うちのバカが申し訳ない。私たちは、許可証も認識票も持っていない一般人だ。ただ、香月夕呼博士に会いに来たんだ。確認を取ってくれないか?」

 

ウソをついても、隠したりしても、結局殴られるんだ。

だったら最初から、正直に話してみよう、と思っただけだ。

 

「...許可証も認識票もない、軍人でさえない一般人だと...?それで、香月博士に会いに来た...?」

 

「何のために?...とにかく、問い合わせてみよう。お前達、名前は?」

 

「おい、いいのか!?」

 

「博士に関係することは、すべて報告しろって言われてるだろ?」

 

「それはそうだが...とにかく、ハッキリするまではおとなしくしていてもらうぞ。」

 

...私の名前、考えてなかったな。

 

まあ、最近頭をぶつけて記憶が曖昧だ、とでも言ってごまかしておこう...。

 

 

「おい、なんで馬鹿正直に言うんだよ。」

 

「どうせ持ってないものは持ってないんだ、なら正直に言ったほうが、多少は印象もマシだろ?」

 

......。

 

「シロガネタケル、とそこの女。おとなしくついてきてもらおう。」

 

警備兵二人が、険しい顔になり銃を構える。

 

...まあ、こうなるよな...。

 

「どういうことだ!?」

 

「博士は貴様らなど知らんと言っている!」

 

「さあ来いっ!」

 

「はいはい、分かりましたよ。おい、白銀武、抵抗したところで無駄さ。」

 

「...女のほうは妙に物分かりがいいな。スパイじゃないのか?」

 

ここでこいつら警備兵を倒したとて、余計に印象が悪くなるだけだ。

それに、夕呼先生のことだ...前々回、前回も助けてくれた。

 

どうせ、今回も近くで見ているのだろう。

 

「そんなことをしている暇なんてあるのかっ!?時間がないんだよ!」

 

二周目の白銀武は我慢できなくなり、案の定騒ぎ始める。

 

..客観的に見てみると、この時のオレ...私って、こんなにもガキだったんだな。

 

「こんな、人間同士で銃を向けてるくらいなら、BETAに銃を向けたらどうなんだ!?」

 

「――黙れッ!」

 

抵抗しだした白銀武は、日本人らしい警備兵に殴られる。

 

「...最初からおとなしくしておけばよかったものを。」

 

おとなしくしていた...と思うが。今になって騒ぎ始めただけで...。

 

「...バカが、そんなことをしているから...負けるんだよッ!」

 

「なんだとッ!?」

 

「騒がしいわねぇ...何が負けるって?」

 

予想通り、近くまで来て見ていたのだろう、夕呼先生だ。

 

「こ、香月博士!」

 

警備兵が驚く。そりゃそうだ、基地副司令でもある夕呼先生が、まさかスパイかもしれない奴の近くまで来ているのだ。

 

「連絡をくれたのは、あなた?」

 

「はっ!そうですっ!」

 

「それで、この男がシロガネタケル?女の子がいるなんて話は...。」

 

「はあ、女のほうは記憶が曖昧だとかで、名前が分からないと。明らかに怪しいですが...。」

 

記憶喪失っぽくない振る舞いをしている奴が、自分の名前も分からないとか言っているのは、明らかに怪しいと思うが...名前を考えていなかったのだ、仕方ないだろう。

 

「夕呼先生っ!話を、話を聞いてください!」

 

「...先生?あたしは教え子を持った覚えはないわよ?」

 

「こんな時間は無駄だ無駄っ!急がないと、人類にとって最悪の事態を招きますよっ!」

 

白銀武が喚く。なんとしても、夕呼先生の興味を惹かなければ、と必死になっている。

 

「さっきからこの調子で。とにかく博士、危険ですからお下がりください。」

 

...仕方ない、か。

 

「香月博士、警備兵のお二人、私が怪しいのは重々分かっている。だがその上で、香月博士に一つ、聞いても?」

 

警備兵二人が夕呼先生を守るように銃を構えて立ち、「一つだけだぞ。」と言ってくれる。

...騒いだりしていない分、まだ信用はあるのか?

 

「そうだな...香月博士。オルタネイティヴ4が失敗すれば、5が即実行される...。4の目的は知っているし、その目的の情報を、持っている...と言えば?」

 

「ッ!?」

 

夕呼先生の目が、一気に険しくなる。

 

「ほら、もういいだろ?行くぞ。」

 

警備兵に連れていかれそうになる。

 

「...待ちなさい。」

 

「は?...いや、しかし...。」

 

案の定、夕呼先生は引き留めてくれる。

だが...4と5の内容と、4の目的となる情報を知っている...となればどうなるだろうか?拷問でもされるかもしれない。

 

「...4の目的と、目的の情報を香月博士に提供する...のはどうです?」

 

「...あなた、名前が分からない...と言ったわね。そのくせ、情報を持っている...矛盾してるわね。」

 

「そうですね。ですが...香月博士。『因果律量子論は正しかった』ですよ。」

 

そうだ、夕呼先生の言っていった因果律量子論が正しかったせいで、BETAだらけの世界に来ることになってしまったし、今回三度目をやっているんだ。

 

「......。」

 

白銀武と警備兵は、訳がわからないという顔をしている。

だが、夕呼先生には私が何を言っているのか、本当に情報があるのかを判断できるだけの材料は揃っているはず。

 

「それに、そうですね。後で確認するんでしょうが...その辺りの草陰に、『彼女』もいますよね。」

 

霞のことだ。一周目でなぜ、夕呼先生が営倉から出してくれたのか...。

 

霞は、オルタネイティヴ3にて『造られた人間』、ESP発現体だ。

一周目も二周目も、彼女にリーディングをさせ、白銀武が妄想を言っているわけではないことを確認していたんだろう。

 

だとすれば、夕呼先生と同じく、この近くで様子を見ていると思うのが自然だろう。

 

私が草陰に彼女がいる、と言った辺りから、ぴょこ、と可愛らしい霞のうさ耳が見える。

...笑って、霞に手を振っておく。

 

「...ごめんなさいね。彼と彼女、あたしの知り合いよ。」

 

「「えぇ!?」」

 

白銀武、警備兵二人が驚く。

 

「しかし...先ほどはッ!?」

 

「今思い出したのよ。それに、忘れてるだけの知り合いなんて沢山、確認の為にも迎えに来たんじゃない...。連れて行って、いいわね?」

 

「いや、しかし...。」

 

「何かしら...伍長?何か言いたいことでも、あるのかしら?」

 

必要な情報だと判断した夕呼先生は、上手いこと言い繕ってくれた。

 

「い、いえ...何も!」

 

「そう、じゃあ、連れて行くわね?...さ、二人とも、ついてらっしゃい。」

 

 

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