Muv-Luv Alternative : Reincarnation   作:アレクシア少佐

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4. 執務室

「流石に疲れたみたいね。」

 

前回と同じく、夕呼先生に連れられて横浜基地に入ることができたものの、検査やらなんやらで4時間近く待たされる事になった。

...まあ不審者二人を入れるわけだから、変なものを持っていないか、変な病気とか持ち込んでいないかとか、不安になるのも頷ける。

 

...夕呼先生の執務室。つい先日、...前回の世界で、桜花作戦のレポートを提出しに来たばかりだ。

 

「はは、そりゃ4時間も検査されたら、疲れもしますよ。」

 

「あなた達なら、その理由も分かると思うけど?」

 

「そうですね。...数日監禁されるよりは遥かにマシです。」

 

...最も、オルタネイティヴ4の機密を持ち出せそうな物品がないか、なども含まれているのだろう。

隣にいる、二周目の白銀武は知らないことだが...このすぐ隣には、純夏の脳髄がシリンダーに収まっている。

そして真下...未だ停止されていない、人類が利用している『と思い込んでいる』BETAの反応炉がある。

 

それら機密が漏れることは、オルタネイティヴ5推進派に狙われることになる。

...人類同士で、いがみ合っている場合ではないんだけどな。

 

人類に残されている猶予は、もはやそう多くもない。

その事実を、痛いほど分かってしまった今になって考えてみれば、G弾の集中運用でハイヴすべてを消滅させる...という気持ちも分かる。

甲21号作戦、そして桜花作戦で行ったハイヴ攻略、どちらも多大な犠牲が出てしまったのだから...。

時間だけでなく、物資や、戦う兵士の数でさえも足りるかどうか怪しい。

 

「さて、あなたの要求に応じて、家に調査に行かせたんだけど...。」

 

...ああ、前回の白銀武は、夕呼先生に別世界から来た、ことを証明するために、家を調査させたんだったな。

どのタイミングで中身が廃墟になったのかは分からないが、調査結果はただの廃墟だったと。

 

そして前回同様、調査結果を知った白銀武は、頭が真っ白になっている。

 

「じゃあ、今度はこっちの番。...そっちのあなたは、深く知っていそうだから後で聞くわ。...あなたの家を調べてくれば、話を詳しく聞かせてくれる約束だったわよね?」

 

「...はい。」

 

門のところで出したワードだけでも、すべてを知っているぞと言ったようなもんだ。

だからまずは、白銀武から聞くらしい。

 

「じゃあ、単刀直入に聞くわね。オルタネイティヴ計画のこと、どこで知ったの?」

 

「...初めてその言葉を知ったのは、今年の...12月24日の夜、基地司令の口からです。」

 

「......。」

 

「理由は分からないけど、オレはもう一度、この日に戻ってきた...。だから、何をどうすればどうなるのか...知っているんです。」

 

...一周目の記憶を頼りに話す、白銀武。

 

「いいわ、質問を続けましょう。」

 

「...信じてくれるんですか?」

 

「誤解のないように言っておくけど...信じるかどうかは、質問が終わってからの話よ。こう見えても学者の端くれよ?とりあえずは仮説を立てて、その枠内で考えてみようってだけ。」

 

「...それだけですか?」

 

「ええ、それだけ。」

 

少しの間を置いて、夕呼先生が質問をする。

 

「じゃあ続けましょうか...それで?基地司令は何て言ったの?」

 

...一周目の教室、基地司令が入ってきて話をし始めたのを思い出す。

 

「この横浜基地は、対BETA戦における極東防衛の要であると同時に、人類勝利のカギを握る極秘計画の研究拠点だ、って...。それがオルタネイティヴ計画...ここでは、その第4段階、オルタネイティヴ4が進められていた...。そしてこの計画は、夕呼先生が中心になって進めていた計画で、この基地が建設されたのはそのためだ、ということです。」

 

「...驚いたわね。」

 

「まだ、続きがあります。オルタネイティヴ4は、12月24日で終わるんです。」

 

「...。」

 

「その日、オレ達は基地司令に呼ばれて...そこで初めて、オルタネイティヴ計画について知らされたんです。...オルタネイティヴ4の挫折と、5への移行の事を...。」

 

もう何年も昔のことのように思える。

 

「終わる理由は簡単です。オルタネイティヴ4は結局、何の成果も残せなかった。それで5に移行した...。それを聞いてオレ達はいきなり、どん底に叩き落された...。先生もそうだったと思う。」

 

そうだ、オルタネイティヴ4の計画がどのようなものか知らなかったが、いきなり地球を捨てる、限られた人間十数万人だけが宇宙の彼方へ脱出する、と聞かされたんだっけ。

夕呼先生は、自身の計画を遂行できなかったことに絶望し、私達は突然地球を捨てるなどと言われ、訳も分からないまま戦場へ駆り出された。

 

「...あと、2か月?」

 

夕呼先生にしては珍しく...焦るような、不安を言葉にする。

 

「だから言ったでしょ?もう時間がないんです!」

 

...ガキだな。夕呼先生を焦らせたって、結果が良くなる訳ないのに...。

 

「先生はそれまでに...半導体150億個の並列処理装置を、何とか手のひらサイズにしなくちゃいけない!先生には...やらなきゃいけないことが、山ほどあるはずだ!きっと、隣の部屋にある脳と脊髄だって無関係じゃないんでしょ!?」

 

...。

 

「ッ...何が目的なの?」

 

拳銃を構える夕呼先生。

 

「ま、まあまあ...オルタネイティヴ5の発動を阻止して、人類の勝利を目指す、だろ?白銀武?」

 

思わず口をはさんでしまう。...一度体験しているとはいえ、心臓に悪い。

 

「そうだ、彼女の言う通り、人類の勝利のためです!」

 

「...くだらない妄想はその辺りにして、本当の目的は何?返答次第では、生かしておかないけど?」

 

...どうにか乗り切った覚えはあるのだが、どうやって乗り切ったか覚えていない。

私の話をする前に、白銀武の脳みそが飛び散るなんて御免だ。

 

「...それが、先生の望みなんですか?たったの十数万人だけが宇宙に逃げて...残りの十億人は地球に残って、滅びを待つ...。それが、先生の望みなんですか!?」

 

「...。」

 

「違いますよね!?そう思ってるなら、ヤケ飲みして泣き喚いたりなんてしませんよね!」

 

...オルタネイティヴ5へ移行が決定し、ヤケ飲みしてベロベロになった夕呼先生。

どんな絶望だっただろうか...人類のため、未来のためと研究していたものを、いきなり打ち切られるのは。

 

「...先生がオルタネイティヴ4を完成させてたら、あんな事にはならなかったはずでしょうッ!!」

 

目に涙を浮かべる白銀武。

感情に任せ、思っていることを口にしている。

 

「オレは死ぬのは怖くない。一応軍人やってたんですよこれでも...先生のおかげでね。」

 

「...あたしが?」

 

「そうです...オレは元々、BETAのいない世界の日本で、ただの学生だったんです。」

 

BETAのいない世界、か。前回の世界は3か月くらいだったはずだが、濃密すぎて何年もいたような気がする。

 

「...BETAが、いない世界...?」

 

「ある日目覚めたら、こんな狂った世界にいたんです。オレは夢だと思って学校に行ったら...この横浜基地になっていて...。門番に捕まって、尋問されて監禁されて...やっと、夕呼先生に会えたんです...。でも今回は...彼女が居た。実はオレも彼女の事、何も知らないんですけどね。でも、彼女のおかげで監禁もされず、夕呼先生に会えました。」

 

...そして、一周目のことをざっくりと話していく。

興味を持ってくれたのか、セキュリティの高いIDをくれたこと。

衛士訓練校に入れてくれたこと。

元の世界の話をよく聞かれたこと。

霞に会わせてくれたこと...シリンダーに入った脳みそを見せてくれたこと。

 

「でもあなたが言っていること、どうやって証明できるの?どうやって信じればいいって言うの?」

 

「...知りませんよ。でも、先生は確か...あり得なくはない、研究に協力しろって...。」

 

「あなたが秘密を暴露しないって保証は、どこにあるのかしら?」

 

「...オレの知ってる情報には正直、なんの根拠もない。真実を知っている人以外、誰がオレの言うことを信じるっていうんですか?まして、この世界でオレの身元を保証できるものもない。ほかの人間に言ったところで...気狂いにしか思われないでしょ!?...オレの情報は、先生がいなきゃ何の役にも立たないんだ...。」

 

「...ちょっと待ちなさい。」

 

キーボードを叩き始める夕呼先生。

しばらくすると、銃を降ろす。

 

「...まったく、面白いことになったわね。確かに、あり得ない話じゃないのよ。」

 

「先生...あの、工作員じゃないって、証明されたんですか?」

 

「元々工作員だなんて思ってないわよ。暗殺が目的なら、最初会ったときに何かしているでしょうしね。でも、ただの頭のおかしいヤツにしては、知りすぎていたってだけよ...あたしの頭の中にしかなかった事まで...。しかも検査結果といい...これといい...。」

 

霞からリーディングの情報でも貰ったのだろうか。

 

「...あなたの言っていること、少なくともあなた自身が嘘だと思っていないことが、証明された。もちろん、100%じゃないわ、あたしにしか分からない理由があるのよ。」

 

「...そうですか。」

 

「じゃあ次は、あなたの番ね。」

 

ようやく、私の番らしい。白銀武の話を先にさせたのは、被る部分が多いからだ。

 

「そうですね、夕呼先生。何から話したものか...。」

 

「じゃあ、そうね。まずは名前さえも分からない、なんてのは嘘でしょ?名前だけ忘れて、オルタネイティヴ計画について知ってるなんて記憶喪失、都合が良すぎるもの。」

 

そりゃそうだ。

 

「まずは自己紹介から、でいいですかね...。私...オレは、精神的にはそこの白銀武と同じ人間だった...はずだ。最も、そこの白銀武は『この世界』については、二周目だろ?私は三周目、と言えばいいのか...今の一連の押し問答も、前回経験した。」

 

「お前が...オレと同じ?でも、オレは二周目で、お前は三周目って...。」

 

声にこそ出さないが、驚く夕呼先生と、明らかに動揺している白銀武。

 

「ああ、だからお前の話を先にさせたんだけどな。ある程度は省ける。同じ話を二回聞いても、仕方ない。そうですよね?」

 

「...そうね。」

 

同じ人間...とはいえ、肉体は別物だが、同じ世界に存在しているということに、驚いているらしい。

 

「...そうですね、目的自体は、彼と同じと思ってもらっていいです。オルタネイティヴ5への移行の阻止と4の完遂。あとは...なるべく多くの大切な人を救う。」

 

「...どういうことだ?二周目の未来に...何があったんだ?」

 

「詳しく話せば、お前も傷つくだろうが...一周目以上に、みんな死んだ、と言えば分かるか?」

 

...おそらく、207のみんなが死んでいくのを想像しているのだろう。

 

「自己紹介は、そんなところだ。ただ今後、女として生きていくことになるのに、白銀武という名前じゃ、同じヤツが二人いても紛らわしいし、女なのにその名前はダメだろ。新しい名前が欲しい...ぐらいか、追加で欲しいものは。」

 

「そう...名前については、IDを渡すときまでに考えておいてあげるわ。次の質問...あなた、オルタネイティヴ4の目的と、目的の情報を持っている...って言ってたわよね?どうやって知り得たのよ?」

 

「二周目のオレ、が今後手に入れる情報ですが...目的は、対BETA戦を有利に進めるための、BETAについての情報収集。手段については...二周目のオレにはまだ、言わないほうがいいですかね?」

 

「...そうね。後でレポートにまとめておいてもらう予定だから...それにお願いするわ。」

 

レポート書かされるのか...まあ、仕方ないか。桜花作戦だけでも、膨大な情報だ。

 

「それで、目的の情報...ですが。甲1号目標、カシュガルハイヴの...あ号標的と、カシュガルハイヴ攻略の情報、でどうです?」

 

二人が立ち上がり、詰めよってくる。

 

「カシュガルハイヴ攻略ですって!?それはいつ行ったのよ!」

 

「く、苦しいです先生...。今年の年末から来年にかけて...12月31日から、1月2日まで、です...。」

 

「今から2か月後!?それこそ時間がない...なんでそんなに急いでカシュガルに行ったんだ!?」

 

二人して、私を掴んで揺らす。...戦術機の揺れよりも激しいかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

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