Muv-Luv Alternative : Reincarnation   作:アレクシア少佐

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5. 邂逅

カシュガルハイヴ攻略、あ号標的討伐について質問攻めにされ、その間ひたすら白銀武か夕呼先生に胸倉を掴まれて揺さぶられていた。

 

結局、揺られ続けて気分が悪くなり、白目を剥き始めたところで、揺さぶられる地獄からどうにか解放された。

...要塞級23体相手にするよりもキツかったかもしれない。

 

気持ち悪さもある程度マシになったところで、改めて話す。

 

「まず...カシュガル攻略を急いだ理由ですが...例の半導体150億個の装置によってBETAの情報伝播モデルが判明。今のところのBETAの情報伝播モデルって、各ハイヴごとに司令官みたいなやつが居る、という認識ですよね?」

 

「...そうね。」

 

「しかしBETAは、実はオリジナルハイヴにだけ司令官みたいなやつがいて、各ハイヴはオリジナルハイヴに情報を送り、宇宙に謎の射出をするだけの施設だった...らしいです。」

 

あんまり記憶力が良いほうではないが、そのような内容を夕呼先生が言っていたはずだ。

 

「そして、光線属種の登場や、各戦線で行われている陽動がしばらくすると対処されてしまう、という事例から...BETAの対応力は、初めて戦場で使われてから約2週間ほどだと推測されました。」

 

「...そういうことね。それなら、カシュガル攻略を急ぐのも納得だわ。」

 

「要するに...例えば、アフリカ戦線で超強力な武器を使って、2週間すると...」

 

「全ての戦線...ヨーロッパでも極東でも、その武器はもう対応されてしまう、ということだ。」

 

事の重大さに気づいた二人が、険しい表情になる。

 

「それで、カシュガル攻略が急がれた...というワケです。」

 

「だとしたら、今すぐにでもカシュガル攻略をやるしかないんじゃないですか!?」

 

白銀武が叫ぶ。それはそうだ、『BETAは学習し、対応する』と聞かされれば、カシュガル攻略は早ければ早いほど良い。

時間をかければかけるほど、人類の反抗手段の全てが対処されてしまい、滅びを待つだけになってしまうだろう。

 

しかし。

 

「それはその通りだ、白銀武。早ければ早いほど良い。だけどな...カシュガル攻略、ひいては甲21号目標の攻略の時もだったが...ハイヴ攻略には、まだ材料が揃っていない。それに...。」

 

夕呼先生を見る。

 

「...今のあなた達の話は、頭のおかしい二人組の妄言かもしれない、という可能性もあるのよ。むしろ、そっちの可能性のほうが高いわね。普通、未来の記憶を持っているだとか、他の世界から来ただとか、信じられると思う?」

 

「ッ...なら、オレ達の話を信じてもらうには、どうすれば...。」

 

...前回もそうだった。

 

――座して手に入れられるものは何もない。

 

――自らの手を汚すことを、厭うてはならないのです。

 

そうだ。教えてもらったじゃないか。

何かを成そうとするならば、何かを犠牲にする必要がある...。

そして、それをするかどうかを決めるのは自分だ。

 

甲21号作戦のときも、横浜基地防衛戦のときも、カシュガルハイヴ攻略のときも。

...みんな、自分で決めて犠牲...いや。未来への希望を託してくれたじゃないか。

 

「白銀武。私達の話を信じてもらうには、証拠が必要だ。そう...証拠が。」

 

「流石は、三周目の白銀武、かしら?分かってるじゃない。」

 

「いえ...前回、二周目の夕呼先生に言われたことを思い出しただけです。まあ証拠と言っても、今すぐに何かあるわけでもないですし...。」

 

白銀武は証拠、と言われて考えを巡らせたようだが、特に思い当たることもなかったらしく、悔しそうな表情をしている。

 

「...そうね。カシュガル攻略を急いだ理由と、BETAの情報伝播モデルについては分かったわ。あ号標的の情報については...レポートにまとめてもらってから聞くわ。」

 

内容が内容なだけに、レポートを読んでもらってからのほうが夕呼先生にも余裕ができるだろう。

...話せることも膨大だしな。

 

「なあ、今の...BETAについての話とは関係ない質問になるんだけどさ...」

 

話がひと段落したところで、白銀武が私に質問をしてくる。

 

「純夏...純夏は、『この世界』にいるのか?『前のこの世界』では夕呼先生に調べてもらって、いないってハッキリ言われたんだけど...。」

 

...そう、だよな。やっぱり、純夏のことが、気になるよな。

他のみんなは、全員いるのに。

 

純夏だけが、『この世界』にいない。

 

「...そうだな。白銀武、今はまだ知るべき時ではない。少尉任官後に改めて、でいいか?」

 

純夏が既に死んでいるかもしれない。

私も...白銀武も、そう考えていた。横浜基地周辺が、瓦礫の山なのだから当然だろう。

あわよくば、東北のほうに逃げ延びていて生きている...自分は横浜基地にいるから、会えないのだと。

 

BETAという侵略者と戦っている、混乱の最中、戸籍などデータが紛失していてもおかしくはない。

 

だが真実は、死よりも残酷なものだった。

それを知った時の衝撃は...だが同時に、生きていてくれて良かった、と安堵したのも事実だ。

 

「...分かった。少尉任官後に、...純夏のこと、教えてくれよ。」

 

表情に出てしまっていたのか、察してくれたのか...。

 

「とりあえず、こんなところかしらね。男のほうはもう一度訓練兵で、ってことでいいとして...。女のほうは、どうする?適当な理由を付けて少尉復帰、とかでもいいけど?」

 

「そうですね...座学とか戦術機運用とかは問題ないと思いますが...女になったこの身体が、どれくらい体力が落ちているのかも分かりませんし、もう一度鍛え直そうと思います。」

 

男から女になってしまったのだ。

今後BETAと戦うにしろ、日常生活を送るにしろ、身体能力の確認は必須だ。

現状、何ができて何ができないのか...。

 

「分かったわ、じゃあ二人とも訓練兵ってことで。」

 

 

 

 

 

その後は、夕呼先生がIDなどの準備をしてくれている間、記憶を頼りにレポートにまとめていた。

時折、ズキリと頭に痛みが走ることもあったが、慣れない事務作業のせいだろう...。

 

白銀武は、隣の部屋で霞と何か話している様子だった。

 

...1時間くらいか、そんなことをしていると、夕呼先生に呼ばれる。

 

「はい、あんたたちのIDよ。変なところには入れないようにしてあるけど、私の部屋へは入れるようにしてあるわ。」

 

夕呼先生がはい、と言って手渡す...はずもなく、霞がおずおずとIDをくれる。

 

「...ありがとう、霞。」

 

こくん、と可愛らしく頷く霞。

 

霞には、全部分かってしまっているだろうから...素直に思っていることを言う。

 

「白銀、桜花?これ、新しい名前...ですよね。」

 

貰ったばかりのIDカードを見て目につくのは、顔写真に国連のロゴ、そして名前。

『白銀 桜花』と記載されている。

 

「そうよ。読みはサクラね。あんたが話してた『桜花作戦』から取っただけよ、文句ある?」

 

...そういえば夕呼先生は、そういう人だったな...。

 

「はぁ、まぁ。それじゃあ今からは、『白銀桜花』として、生きていきます。」

 

そう宣言した時、激しい頭痛と眩暈に襲われる。

 

何がどうなっている...!?

 

経験したことのないはずの、あるはずのない記憶が、まるで昔経験したような...。

思い出す、というよりも、焼き付けられる、という感覚だろうか。

 

「おい、大丈夫かッ!?」

 

突然の激しい頭痛に、フラフラしてしまったのか...白銀武が、支えてくれる。

 

「ああ...大丈夫、のはずだ。」

 

また、夕呼先生に相談することが増えてしまった。

今相談しておきたい気持ちもやまやまだが...もう夕方だし、レポートを書いていた疲労もあって限界も近いらしい。

 

夕呼先生にも、自分の都合で時間を割いてもらうのも申し訳ない。

 

 

 

 

 

 

 

突然のことに驚いたが、頭痛などがある程度治まる。

待っている間に夕呼先生に告げられた、グラウンドに行け、という言葉を思い出し、白銀武と共に歩き出す。

 

「なぁ...お前に聞きたいことが山ほどあるんだけどさ...。」

 

「白銀武、その話は...明日以降、にしてくれないか?すぐにでも寝たいくらいなんだ...すまんな。」

 

「いや、それは仕方ない。オレだって、レポートを書けなんて言われたら...って、お前はオレだったな。そりゃそうなるな!」

 

...お前はいいよな...そこまで深く知っているわけでもないから、ただ待っていただけなんだし...。

 

「ああ、そういえば。私のことは、サクラ、と呼んでくれよ?もう別人になっちまったしな...。」

 

「...そう、だな。しかし...女になったオレって、想像もしたことがなかったな...。」

 

そりゃ、軍人としての訓練に明け暮れ、座学も受け、戦術機に乗れたと思えばBETAと戦ったり...。

そんな妄想、してる余裕なんてないしな...。

 

元の世界でも、そんなこと考えたこともなかった。

 

 

とにかく、無事に207小隊に組み込まれた。

ここからは...みんなを、死なせないための戦いだ...。

 

 

 

「もし、そこの二人」

 

誰かに呼び止められ、えっ?と振り向く。

 

「「あ...。」」

 

冥夜、だった。

 

そうだ、グラウンドに来れば...みんながいるなんて、分かっていたのに。

 

目の前の冥夜を見て...カシュガルハイヴの最後の瞬間...。

仕方がなかったとはいえ...冥夜を、自分の手で...撃ち抜いた、あの瞬間を思い出してしまう。

 

思わず、涙を流してしまう...。

 

「そなた、どうして泣いておるのだ?もしや、そこの男が...。」

 

別人だと、分かってはいても。

 

「い、いやいや...オレは何もしてないぞ!?」

 

また冥夜に会えたことが嬉しくて。

 

「...そうか。言い残すことは、それだけでよいか?」

 

冥夜の覚悟や気持ちを、痛いほど知ってしまったから...。

 

「ま、待て待て!!おい、サクラもなんとか言ってくれ!!」

 

また会えた。

いや、この世界では初対面のはずだが...それでも。

 

前の世界の後悔、また会えた嬉しさ、色々な感情が混ざり合う。

 

「...冥夜ッ!!」

 

衝動的に、感情的に...ぎゅっ、と冥夜を抱きしめてしまう。

 

「...貴様、女子相手にどんなことをしたのだッ!?」

 

「いや違うって!!サクラ、余計誤解を招くようなことをするなッ!!」

 

いつかどこかで、嗅いだことのある冥夜の匂い。

今を生きていると分かる、冥夜の体温、心臓の鼓動。

 

 

「冥夜ッ!!ごめん...本当に、ごめん...。」

 

関係ないと、別人だと分かっているのに。

謝ってしまう。

 

「そなた、何故私の名を...いや、何故謝るのだ?そこの男が、そなたに不埒な真似をしたのであろう?」

 

...ん?どういうことだ?

 

ひとしきり冥夜を抱きしめて、泣いてしまって落ち着いてきた。

そこで、冥夜からそんな話を聞く。

 

「だからぁッ!!誤解なんだって!!」

 

白銀武が青い顔をして、必死になっている。

 

「誤解も何も...貴様と話していた女子が、私が話しかけた途端に泣き出したのだぞ?疑うまでもないであろう!!」

 

...ああ、成程...。

確かに、傍から見れば、そう見えなくも...いや、そうにしか見えないな...。

 

「あー、...そこの男に何かされたとかじゃないから、大丈夫...。」

 

大丈夫だ、と言い切ろうとしたところで。

 

「...そなたもしや、脅迫されているのか!?貴様ッ、どこまで下種な...!!」

 

「だあああっ!!違うって言ってるじゃねえかッ!!」

 

...冥夜の誤解を解くのは、大変かもしれない。

 

 

 




名前どうしようかなと迷った挙句、桜花作戦の桜花が名前として使えるじゃん!
夕呼先生なら興味のないことは適当に済ませるはず...ということで。

それに、三周目の白銀武にとっては、大きく意味のある名前になるかな、とも。
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