Muv-Luv Alternative : Reincarnation   作:アレクシア少佐

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7. 訓練

「はぁっ...はぁっ...はぁっ...」

 

入隊宣誓も終わり、いよいよ訓練が始まった。

とりあえずは走り込みからなのだが...。

 

キツすぎる!

 

こんなにキツかったか!?と叫びたくなる程、メッチャキツイ。

...まあ、男から女になって、筋肉自体が減っているだろうしな。

 

白銀武の身体はもちろん、前々回...1周目を引き継いでいるから、この程度の訓練など余裕そうにクリアして、追加で走っている...。

 

まあ...1周目みたいに、まりもちゃんに怒られるほどへばってはないけどさ...。

 

男から女になってしまった、体力もそれ相応に落ちているだろうと予想して、

ある程度ペース配分を考えていたのが幸いだった。

それでも...キツいんだけどな。

 

身長が男の時より低くなった分、体重も落ちてるだろうし大丈夫だろ、と侮っていた。

...身長が縮んだ代わりに、胸に付けられた重りで結局...。

 

「はあ...はあ...。キッツ...。」

 

ぜえぜえと、息を切らしながらもなんとかゴール。

冥夜達ともそんなにつかず離れず、マズマズと言ったところだ。

 

「よし次!ケージにあるあの装備を担いで10キロ行軍!早く行けっ!」

 

お、鬼...。

 

「りょ、了解です~...。」

 

「なんだ...完全装備じゃないのか。」

 

タケルは余裕そうだな...って、前回の私もあんなこと言ってたっけ...。

 

「そうか白銀。貴様は徴兵免除で体力が余ってるって言うんだな?」

 

「いや、その...。」

 

...明らかな墓穴だったな。藪蛇ってヤツか?

 

「だったら貴様は完全装備でやれ。ついでに分隊支援火器のダミーも担いで行っていいぞ!?」

 

余計な事を言ったせいで、重量物を増やされるタケル。ざまあみろ。

 

「......了解ッ!」

 

腹を括る決心をしたようだ。

 

「はぁ...。」

 

この合間に、水分補給をしておく。

 

「サクラ、大丈夫か?病み上がりだというのに、よく走り込みについてこれたな。」

 

「んっ...はぁ、大丈夫だよ冥夜、これくらい。それにしても...想像以上に、体力が落ちててキツイ。」

「あんまり無理をするでないぞ?どうしてもつらければ、私に言うがよい。」

 

...なんか、男の時よりも優しい気がするな...。

いや、冥夜は元々優しいヤツだ、それは間違いない。

 

「はは...ありがとう。」

 

軽く礼を言って、完全装備を担ぐ。

...胸の重量物と合わせて、男の時よりも肩にのしかかってくる...気がする。

 

胸のデカい女って、大変なんだな...リンゴより少し小さいくらいの大きさの私でさえ、走っただけでへばっているのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

...一通りの訓練が終わった。

肩と背中が、もう動かすのも辛いくらいの筋肉痛だ。

手足にも疲労が残っているが、まだ動かせる。

 

みんなは部屋に戻ったが...私は夜風に当たりたくて、グラウンドにいる。

 

そよそよと風を浴びながら、星空を眺める。

 

...みんな...今度こそは、絶対に誰一人欠けさせやしない。

 

物思いに耽っていると、冥夜の姿が見える。

 

「冥夜!...自主訓練か?」

 

「サクラか。そうだ、日課にしているのでな。サクラはどうしてここに?」

 

「私は...夜風に当たりたくてな。今日一日の振り返りとか、これからの事とか。考えるには丁度いいだろ?」

 

「そうか。...サクラ、そなたは時折、男のような口調になるな。神宮司教官とはまた違う...いや、悪いというわけじゃないぞ?」

 

...最近は、「私」と言うのにも無意識に言えるようになってきたが、普段の言葉遣いまではなかなか直せない。

 

「そう...だね。戦場が長かった、というのは言い訳になる...んだけど、直そうとは思っているんだけどな。これがなかなか...。」

 

「ふふっ、それでも気にしてはいたのだな。気にしていることをわざわざ指摘しまって悪かった、許すがよい。」

 

他愛のない会話。だけど、冥夜が笑ってくれる。

たったそれだけのことだが、それでも救われるような思いだ。

 

「...ありがとう冥夜。」

 

「む?何のことだ?」

 

「最初、泣きながら抱きしめてごめん。訓練の時、気遣ってくれてありがとう。今...話せて、嬉しいよ。」

 

思っていることを、言葉にする。

 

――貴様に背中を預ける仲間のために、自らの憂いは取り除いておけ。

――そして、それを後回しにするな。

――でなければ万が一の時に後悔する。自分を責め続ける事になるぞ。

 

たしか...甲21号作戦の前に聞いた...伊隅大尉の、最後の教えを思い出す。

 

ふと、照れくさくなって、笑いつつも目をそらしてしまう。

 

「そのようなことか。私にとっては...普通の事、なのだがな。嬉しいと思ってくれているのであれば、私も嬉しい。」

 

「っ...喋っているだけなのも何だし、ちょっと走りながらにしよう、冥夜。」

 

「ふふっ...そうだな。」

 

冥夜に嬉しいと言われて...喜んでしまう。

もう、女になってしまったのに、まだ冥夜のことが好きなのかもしれない。

男だったら...もう少し悩みも少なくて済んだのにな...。

 

 

 

自分の事、冥夜の事、みんなの事、訓練の事...。

どうでもいい雑談をしながら、冥夜と二人きりで軽く走る。

 

走り始めてしばらくした頃、誰かの人影を見つける。

 

「ん?何だ、白銀か。」

 

「何しに来たんだよ、タケル?」

 

かつての自分だが、今は私が冥夜と走っているんだ、と思って多少邪険に扱ってしまう。

 

「冥夜と...サクラか。っと...悪ぃ...。」

 

「別に構わぬが...順序というものがあるぞ?」

 

「サクラはいいのかよっ?」

 

「サクラは...まあ、初対面でな...。それに、訓練中も先に先に行ってしまうそなたよりも、私達の近くにいるサクラのほうが、仲良くなるのが早いのも当然であろう?」

 

冥夜との...初対面を思い出し、ちょっと恥ずかしい。

 

療養明けってことで、訓練中は冥夜が私の面倒を見てやれ、と神宮司教官に言われていたようだ。

みんなの中で、しっかり者でこういうことに向いているのが、冥夜だろうしな。

しかしそのおかげで、みんなと...特に冥夜と、ここまで打ち解けられたのは嬉しい誤算だ。

 

「...そんなもんか。すまんな、オレなれなれしいらしくてな...。」

 

「分かっていても癖は直らんか...もっとも、だから癖と言うのであろうが。」

 

冥夜がそう言いながら、タケルを見る...と、私の方もチラッと見てくる。

はいはい、男言葉の癖はなかなか直りませんよっと...。

 

「気を付けるよ...それより、二人で何してるんだ?」

 

「見ての通りトラックを走っていた。」

 

「まさか、何か罰でも食らったのか?」

 

「まさか。自主訓練だ、一応日課にしている。サクラとは偶々一緒になっただけだ。」

 

「今日の訓練で、思っていたよりも体力が落ちていたからな...。私は軽くランニング程度に、だな。」

 

折角雲もない夜なんだ、気持ちの良い風に当たって軽く運動くらい、いいだろう。

 

「私は一刻も早く衛士となり、そして戦場に立ちたいのだ。」

 

「...何でまた?」

 

「月並みだが...私にも、護りたいものがあるのだ。」

 

...この話はもう、3度目になる。

 

「そうか。それは何か...と聞いてもいいか?」

 

「この星...この国の民...そして、日本という国だ。」

 

...やっぱり、何度やり直したって冥夜は冥夜だ。

 

それでも、死の瞬間...最後の最後には、冥夜は実の姉...殿下のことを案じていた...。

 

冥夜が、この星、そして日本という国と民を護りたい...という想いは本物だと知っている。

だけど、心の中では...殿下の影として、ではなく御剣冥夜個人として...。

実の姉、煌武院悠陽殿下のことを、想っているんだ。

 

それはとても...素敵な事だと、思う。

 

「白銀、そなたにはないのか?」

 

「ん?...あるよ。」

 

「聞いてもよいか?」

 

「...地球と、全人類だ。」

 

...途方もない、大きな目標だ。

だけど、その中には冥夜やみんなも、含まれていることも知っている。

 

「別に対抗したわけじゃないぞ、念のため。」

 

「誰もそんなことは言っておらん。」

 

「そなたは...立派だな。」

 

「「そうかな?」」

 

っと...タケルと言葉が被る。目標だけ見れば...立派かもしれない。

だけど...守り切れないものも、手が届かないものだって、存在するってことを知ってしまった。

 

「なーんでサクラは、いちいちオレの言うことに突っかかってくるかね?」

 

「ふっ、バカでガキなタケルが、立派だって!良かったな!」

 

茶化すように、明るく振る舞う。...こうでもしないと、また冥夜に...謝ってしまう気がして。

 

「なんだと~!」

 

べち、と頭を軽く叩かれる。

 

「ふふっ、仲が良いのだな、二人は。それで...サクラ、そなたの護りたいもの...も、聞いてもよいか?」

 

「そうだな...冥夜やタケルみたいに、大勢を護る...ことは、私個人じゃ無理だった。だから...だから、共に戦場で戦う、仲間を...みんなを、死なせない、護りたい、かな。...結局、1人じゃ護れるものなんて手の届く範囲でしかないから...身の丈に合った護りたいもの、だよ。」

 

勿論、世界を...人類を護りたいという気持ちもある。

だけど...そのために、みんなを切り捨ててでも...なんて、もう嫌だ。

 

私の話を、神妙な顔をして聞いているタケルと冥夜。

 

「身の丈に合った...手の届く範囲、か。サクラの言う通りかもしれんな。私1人がどれだけ努力しあがこうとも、失うものは必ずあるだろう。」

 

「...そうか、だからまずは、自分の周りの大切なものを護る...手の届く範囲を、護れるようになってこそ、か。」

 

「そういうこと。私が冥夜を護って、タケルが私を護って、冥夜がタケルを護れば...ほら、誰も死なない...じゃない?それに、3人いれば...自分たちだけじゃなくて、榊や彩峰、珠瀬...みんなも守れるんじゃないかな?」

 

ガキの発想かもしれない。ただの、夢物語...届かぬ理想かもしれない。

それでも、前回できなかったこと...例えば、まりもちゃんにヴァルキリーズのみんな、全員でカシュガル攻略をすればどうだろう?

もっと大勢...国連軍だけじゃなく、米軍や帝国斯衛軍...みんな巻き込んだら、散って逝く人も...。

 

「...私は国を、民を護りたいというのは本心だが...そうだな。まずは、私の手の届く範囲...サクラの言うように、身の丈に合ったものから、護れるようになるとしよう。身近なものさえも護れぬようでは、大勢も護れまい。」

 

「...そう、だな。焦るだけ無駄、だよなサクラ?どうせオレが焦ったところで、今のオレにできることは、まずはみんなで少尉任官すること...くらいしかないしな。考えるのはその後でもいいだろ!」

 

二人とも、納得してくれたようだ。

冥夜はともかく、タケル...は、焦って失敗してしまう事が多かった...だから。

今度こそは、できるだけ焦らせないように...私が。

 

タケルは私自身だ、戦術機の操作や戦闘はよっぽど信じられる。

冥夜やみんなだって、最後の作戦まで一緒に戦ったんだ...信じるに足る。

 

タケルの心は、精神は...前回の私だ、ほとんど分かり切っている...。

今回は私というイレギュラーが存在するから、どう変化していくかは分からない。

 

「...ありがとう、二人とも。二人の元々の思いも、大切なことだと思う。だから、それも忘れないでほしい。」

 

 

 

 

 

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