始まります。
「でな、そん時なのはちゃんがな〜」
「ふっ、そんな事があったのか?それで最近2人でいないと思った」
「せやから、私らで何か出来んかね?」
「…考えとこうか。明日くらいにまた話そ」
ここは時空管理局の食堂。
俺はとある女性と向き合って会話をしながら昼食をとっていた。この女性は局の中でも珍しい方言をしており、出身地では“オオサカベン”というらしい。
そんな彼女も俺もあまり暇な仕事ではないが、最低でも週に一度は一緒に昼食をとるようにしている。これは俺の提案ではなく女性の提案だ。彼女が言うにはそうしなければ俺の食生活が乱れるから、らしい。
これがいつもの日常だ。昼食が終われば僕も彼女も仕事に戻るだろう。
バキ!バキバキバキバキ!パリンッ!
そんな日常は何の前触れも無く壊れた。
俺自身、何が起こっているのかイマイチ理解できない。
強いて言葉にするなら「空間にヒビが入り、破れた」だ。
このヒビは建物に入っているわけではなく、空、空間に入っているのだ。
周囲の人物は誰も何も気が付いていないような様子をしている。おいおい、笑って食ってる場合かよ。とか言う俺自身も体が動かない。動けないのだ。
程なく、地面を残して食堂の景色は崩れ去った。そして俺が立っている地面も崩れ、どこともわからない渦の中へ飲まれるように落ちていくのだった。
…。
……。
………。
見慣れた天井だ。
無茶な任務をした時のよくお世話になっている天井。
「お、目を覚ましたかい」
周囲のカーテンを開いて白衣に身を包んだ人がやってきた。ここは医務室だな。
「驚いたよ。キミ、食堂で急に倒れたそうじゃないか。寝不足かい?まだ若いんだから体を大事にしなよ」
慣れた手つきでライトを当てる。
「問題はなさそうだね。今日はこのまま帰りな。上司には私が言っとくから」
「申し訳ねぇなバァさん」
「………。あ、あぁ。あぁ。分かったよ。うん。早く帰って寝なよ。…こりゃ重症だ(ボソッ)」
医務室の婆さんに礼を言って出る。
気分は…良くない。
なんか、頭の中でセミが小さく鳴いているような感覚がする。うるさい。今は家へ帰って休もう。
「おや。おい、どうしたの。ふらふらじゃないか」
俺の家は管理局から少し離れた場所にある一軒家だ。毎日車で通勤している。
家へ帰るために局を出ようとするとたまたま通りかかった同僚に止められる。
「すまねぇ。今日は体調が優れねぇから帰るわ」
「……あ、あぁ。そうか倒れたんだってな。でもお前、家は真反対だろ。ボケたか?」
…何言ってんだ。俺の家は帰るために車がいるんだ。まずは駐車場に行くのが当たり前だろう。真反対にあるのは職員用の寮だ。
確かに俺は寮で過ごしていたが、それはもう3年くらい前の話だぞ。
「ったく、ついにボケたか?俺がおぶって連れて行くよ」
お、車まで連れて行ってくれるのかそりゃ助かる。
「悪ぃな。だが大丈夫だ。お前も会議があるんだろ」
「……お前マジでヤバいな」
さっきからコイツらなんなんだ。人が一言返事言うだけでフリーズしやがって。容量がギリギリ状態のPCかっての。
おまけにマジでヤバいだの。失礼もいいとこだなオイ。
「…着いたぞ。お前の部屋だ」
「…ウソ…だろ」
なんでだ。俺は一軒家に住むようになって寮は出たはずだ。それも3年前に。あれから俺の部屋に別の人が入った話も聞いていたんだ。
なのになんで俺の部屋がまだあるんだ!
それに家具も。俺が当時使っていたまんまじゃないか。
…どうなってやがる。俺はあの人と同棲してたはずだぞ。なのに…。そういえばあの人に連絡入れてないな。
「おい、俺は横になっとくから。俺の嫁さんに一言言っといてくれ」
そう。俺は3年前にあの人と結婚したんだ。それから一軒家で同棲しつつ、お互い忙しいから昼だけでも一緒に食べるようにしてるんだ。
「……は?何言ってんだ。お前独身だろ?」
「お前こそ何言って…ぁあ!!」
ない。ない!ない!!
あの人ととの婚約指輪が無い!それに一緒に写真を撮ったはずなのにそれも無くなっている。どう言う事だ。
「なぁ、特別捜査官の八神はやて二等陸佐を知らねぇか」
「八神…そんなヤツ管理局にいたっけ…?」
いたっけだと?八神はやてはあのJS事件を解決した機動六課の隊長だった人だぞ。ミッドチルダで知らない人はいないくらい有名人だぞ。それを“いたっけ?”ってお前、えぇ?
そんで3年前に結婚した仲なんだぞ。当時は軽いニュースになったモンだよ?俺インタビュー受けたんだぞ?
「お、おい、どこ行くんだよ!大人しくしとけって!お前今日おかしいぞ!普段は返事の一つもくれねぇじゃねぇか!どうしちまったんだ!」
こんなんじゃおちおちベッドで横になってられねぇ。人事に連絡を入れて聞いてやる。
『八神二等陸佐ですか…二等陸佐に限らず、管理局にそのような名前の方はいませんよ』
何をぬかしてやがる。だったら高町空尉だ。…クソ、連絡先がない。登録してあるはずなのに!
だったらフェイト執務官だ。あの人ならいるはず…って連絡先少なくないか?元より多くはないにしても友人だけでも20はあったぞ。それが今やほぼ0じゃねぇか。
クソ、誰もあてになんねぇ。何がなんだか知らねぇが、ここからは自力で調べるしかないな。
あれから1週間経った。
初めは小さな違和感だった。周りの反応がおかしい、寮の部屋がある、婚約指輪が無い…。その小さな違和感はやがて大きなモノとなった。
それが気になって調べてみたら。人はダメだ。頼りにならない。
書物だ。俺が知りたいのは今のはやてだ。彼女はスゲーヤツだから管理局での活動は何かしらの報告書になっているはずだ。
ない。としたら…管理外世界の地球の書物しかない。調べるには…無限書庫しかないか。
あれから3週間経った。無限書庫に入り、はやての故郷である地球のニュースを約10年分調べ上げた。すると小さな記事にこのように書いてあった。
『9歳の車椅子の少女、交通事故で死亡。 海鳴市』6/11
俺が聞いた話によればはやては過去、海鳴市という街に住んで当時は車椅子だったとそうだ。記事の時期もはやての年齢に合致する。
となるとなんだ。はやては既に死んでいるというのか?約10年前に。ウソだろ…?
だとするとどういう事だ?俺はあの日はやてと一緒に昼食を食べていたが、実は10年前に事故で死んでいたってか?
…………非現実的な話だが、もしかすると過去が変わったから現在が変わったのか?
「んだ、これ」
たまたま取り出した本と一緒に出てきたファイル。これは過去に起こったプレシア事件の報告書だった。
その報告書も俺が知っている内容と異なっているが、今はどうでも良い。事件が起こった場所、アルハザード。ここは時空が歪んでいるとか…。
この歪みを利用すれば過去へ行けるのでは?
過去に行けばはやてを救えるのでは?
そこからは早かった。次元渡航船をハイジャックし、アルハザードへ向かう。
管理局から奪った数個のロストロギアを利用してはやてのいた世界、時間に繋がるゲートを作り出した。
(これは完全なる犯罪行為だ。それでも行くのか)
完成したゲートを前に、今までの自分が言葉をかけてくる。これが理性と言うのだろうか。
でもな、もう遅いんだよ。次元がヒビ破れたあの日からこれ以外の方法は無いんだ。はやてが助かるのであれば、俺は罪に問われても構わない。彼女を助けれるのであれば、俺はそれでいい。
「待っててくれはやて。今から行くよ」
俺はゲートの中に飛び込んだ。
それからアルハザードが、世界がどうなったか、俺は知らない。
ぶっちゃけます。SS後のはやての階級が分からんのだ。
だからSS時の階級にしました。
〜いろいろ補足コーナー〜
・主人公
管理局に勤めている。
八神はやてとは機動六課の時に知り合った。
はやてと結婚するまでツンツンしており、誰に何を言われても返事はなく無愛想。触るものを全て傷つけるオーラを纏っていた。仕事は出来る人だった。
そんな彼だが六課はやてと出会い、他人の中にズカズカ入り込んでくる原作組と触れ合って、丸くなった。
・その後の世界
主人公が過去へ向かった後の世界。
彼が開けたゲートはそのままらしい。