まだ単行本になってない魔法が登場します。
ドーンッ!!!
轟音と土埃が舞い上がる。
地面に黒い液体が垂れる。
「ア!ア!アァァァァァッ!!!」
白いヤツは自分の手首を必死に抑えていた。
手首はひび割れ、その間から妙な黒い液体が溢れている。
「…土壇場で完成しやがった」
世界樹創成魔法〈ミスティルテインの刃〉
闇魔法〈闇纏・居合い斬り〉
ギリギリだった。ヤツの放つパンチが目の前に来るまで動かず刀の形成に集中し、完成したと同時に5mに展開していたマナゾーンを収縮し居合い斬りの要領で斬りつける。
「ア、アァァ!」
ヤツは自分から距離をとった。そして刀をとる。すると傷は一瞬で塞がった。
「ッ!?」
ヤツは四つん這いの姿勢になり、そして2本の角の間に赤い魔力の球体が形成していく。
「ウルゥァア!」
〈虚閃〉
圧縮された魔力はヤツの叫び声と共に一直線に放たれる。
俺は避けもせず、躱しもせず、マナゾーンを消し、ただ手をかざす。
「…」
闇魔法〈黒穴〉
闇の魔力によって形成された闇の穴。ヤツの圧縮された魔力は穴に吸い込まれて消えた。
「…今ならできる気がする」
〈黒穴〉と〈マナゾーン〉を併用する。10年後の俺はこの技に何度も挑戦したが、全く上手くいかなかった闇魔法最高の技。
10年後よりも総魔力量は少ない。魔力も体力の限界なんて既に超えている。デバイスによるコントロール補助も無し。それでも謎の自信があった。
〈黒穴〉を出した状態で〈マナゾーン〉を展開する。〈黒穴〉は上空へ上がって行き、領域内に留まる。〈黒穴〉が止まったと同時に〈マナゾーン〉の領域内のが薄暗くなる。
「完成した。これが闇魔法最高の技。その名も」
闇魔法〈黒月〉
マナゾーンの領域を5mに広げ、ゆっくり歩く。いずれ領域内に入ったヤツは肩から崩れて膝を地面につける。
この〈黒月〉は〈黒穴〉の特性を合わせ持っている。〈黒穴〉は自分以外の魔力を吸収する能力だ。範囲が狭いのがネックなのだが、〈黒月〉ならば、俺以外の領域内の人の魔力を吸収する。常人であれば入ってものの1分もすれば魔力を全て干上がっているだろう。
「白い液体。お前の正体は“刀”だな」
〈闇纏・居合い斬り〉でヤツを斬って距離を取った時、俺は見逃していなかった。刀を手にした瞬間、傷と同時に身につけている“黒いキモノも”直ったことを。
俺はこの戦いの中で一度もキモノを斬る事はできていなかった。傷すらまともに与えれていない。それでも“キモノは破れていた”。
自身の攻撃の反動で破れたというなら分かる。ものすごい衝撃だったしパワフルな行動もとっていた。だがそれだとキモノが直る現象は説明できない。ましてや傷と同時に直るなんて分からない。
そこで俺が出した結論は身につけているキモノも“含めて”ヤツはなのだ。
あの白い液体はグリフィス准尉を飲み込んだものだ。だがキモノはそれ以前から着ていた。だったら結論は一つしかないだろう。黒いキモノは刀の変形と共に身につけていた。
「…グ、グアァァ…」
この考えが正しい事は今のヤツが物語っている。
今までとは打って変わった弱々しい声。魔力を強制的に吸収され続け惨めに地面に両肘両腕をつく姿。そして魔力と主に吸収されていく黒いキモノ。
「グリフィス准尉。今救いますからね!」
〈黒月〉収縮。その際、闇魔法の引力を応用してヤツの持つ黒い刀を引きつける。俺の持つ刀は鋒を向けて突きの構えをとる。
(もっとだ。凝縮した〈黒月〉を更に超凝縮しろ!〈ミスティルテインの刃〉に集中さて…………放つッ!!)
闇魔法〈死突〉
放たれた極限まで凝縮された〈黒月〉は透明な突きとなり、鋒の直線上にある黒い刀も木々も山肌も、全てを貫通する大砲となった。
黒い刀は刀身に間が空いて破損した。落ちた鋒部分と柄部分は端から徐々に崩れ、最終的に全て砕けて粒子となり消滅した。刀が完全消滅した事によりグリフィス准尉を覆っていた白いナニカも崩れて消滅した。
「グリフィス准尉の安否を、あれ、地面がおきあが…」
グリフィス准尉の安否を確認するために一歩を踏み出したのだが、起き上がってくる地面に頭をぶつけて視界が真っ黒になる。