「っは!」
知らない天井だ。俺はどうしてこんな所へ…。
「うっ、」
体を起こそうとするが激しい痛みによって動かない。腕を使おうにも少し動かせば激痛が走り、足に関してはほとんど感覚がない。
「…あら。ダメよ〜まだ動いたら。完治したわけじゃないんだから」
動けない俺を覗き込むように金髪の女性が覗き込む。
その金髪と赤い瞳は…まさか。
「“クラールヴィント”お願い」
彼女が使う指輪型デバイスから振り子のような物に変形し、俺の体のあいこちに当たる。先端が冷たいのでくすぐったい。
「ありがとうございます。シャマルさん」
「本当よ。体のあちこちがもう酷い有様なんだから。こんな無茶しちゃダメよ」
そう言われる俺の腕は包帯でぐるぐる巻きになっている。見てはないが、体のあちこちにも包帯を巻いてあるのを感じる。
クラールヴィント。このデバイスを使う人なんかこの人しかいない。シャマルさんはクスッと笑っておでこに軽くデコピンをする。
「あの…グリフィス准尉は…?」
「…一緒にいた彼は隣にいるわよ」
「え?」
首を逆方向へ回す。すると驚き。発掘された棺の中身と間違えてしまうほどのミイラマンがそこにいた。
「うぁん」
口が十分に動いていないのか何か言っているが何いてるか分からない。全身の9割が包帯で目以外が真っ白なの面白すぎw
ガラガラ
「目が覚めたんや」
扉が開き、部屋に車椅子に乗った少女がやってきた。
「はじめましてやな。私は八神はやてといいます」
…よく知ってる。俺はこの人を守りたくてこの時代までやってきたんだ。無事なら良かった。
それにしても茶髪にアクセサリーって10年前とあんまり変わってないんだな〜。
「…ども」
何を話せばいいんだろう。頭の中が真っ白になった。
色々話したいような…何も話したくないような…なんだこの複雑な感情。
「アンタが私の未来の旦那さんなんやな〜」
「えぇ。まぁ」
・・・ん? 何 て 言 っ た ?
「随分ヤンチャな人を好きになるんやな〜未来の私」
ん?
「ちょ、ちょ、ちょ」
「あぁ、急に動いたらあかんよ」
耳を疑う衝撃発言でついつい手が動いてしまう。が、動くはずなく鋭い痛みが全身を駆け巡る。
はやては肩を軽く押して俺はベッドに横になる。
「ちょ、え?なんで俺の事を知ってんの?え。何?ドッキリ?」
「う〜ん。なんて言うか…あ、口で言うより見てもろうた方がええな」
そう言うとはやては部屋を出た。しばらく、一通の手紙を持って戻ってきた。その手紙にはこう書かれてあった。
【10年前の私へ
今その世界には黒髪の男の子がヤンチャしていると思います。
まぁまぁ強いので負ける事は無いと思うけど、今頃ボロボロになって倒れているはずです。
その人をどうか助けてあげて下さい。
その子は未来で私と家族を支えてくれる大切な人になります。
他は言わんでもええやろ。
10年後の私より
PS.本人が起きたら顔面を叩いて下さい】
手紙には1枚の写真が写っていた。
その写真には茶色の制服を着たはやてが時計を持った自撮りだった。時計には日付も載っており、その日付ははやてが消えた日の次の日だった。
「…ん?何がどういう事だってばよ」
「
隣のミイラマンが声を上げる。手元にはフリップあり【今回の件】と手書きで書いてあった。
【元の世界→僕が10年前の世界で八神ニ佐を殺害→八神ニ佐は歴史から消える OK?】
OK。
【世界が書き変わる→ヤミニ佐だけ取り残される(原因不明)→ヤミニ佐が10年前の世界へ→僕を止める<今ココ> OK?】
おk。
【八神ニ佐が生存した世界に変わる→逆にヤミニ佐が歴史から消える→(同じ時間に同一人物は存在できない説)→10年後の世界から何かしらの方法で手紙を届ける→10年前の八神ニ佐がヤミニ佐の事を知った<今ココ>】
…ん?
「つまり、どういう事だってばさ」
【八神ニ佐の代わりにヤミニ佐が歴史から消えた。そして未来の八神ニ佐が今のヤミニ佐を助けるように指示を出した。そして僕達は助かった】
「…はやては助かったんだな。だったらよ、」
「良くないで」
とにかく過去へ来た目的が果たされたのであれば俺は満足だ。だが、はやてはそうではないそうだ。
「私は許さんで。誰かのために自分が犠牲になるなんて絶対に許さへんで。もう…大切な人を失うんは嫌や」
はやての目には薄らとした涙が写っていた。
…そういえばはやてはそういう人だった。目の前の事に必死過ぎて忘れていた。
俺がはやてお出会ってからもよくあった。問題が発生した度に身を削ろうとする俺をいつも引っ叩いていた。
「せやから、罰や」
どんな事を言われても甘んじて受けよう。
「私を…これから…ずっと守ってな…」
顔を赤くしながらはやては言った。
「あぁ。もう二度とあんな思いはあんまりだ。もう誰にもお前を殺させない。俺が守ってやる」
包帯でぐるぐる巻きの腕ではやてを手をそっと握った。はやては噴火した様に顔が真っ赤になる。
「も、もうやめや!シャマル!後は任せたで!」
「は〜い」
赤面したはやては凄まじい速さで車椅子を操作し、部屋から出て行った。
「ふふふ、私達も混乱してないわけじゃないわ。でも安心したの。はやてちゃんが未来で幸せなのを知れて、ね」
シャマルさんも軽く笑いながら自分の心境を打ち明けてくれた。そりゃいきなり“この人が未来の旦那です”と言われて飲み込める人は少ないだろう。
それでも自分達の主が幸せなのを知れるのは嬉しいのかもしれない。
(そういえば、未来でシャマルさんに似たような事を言われたな)
あれは俺とはやてが結婚する事を守護騎士達に報告しに行った時だった。その時のシャマルさんは「はやてちゃんを幸せにしてくれる人が現れて安心した〜」と言っていたっけ。…同時に「主を泣かせたら殺して殺す」とも言われたっけ…。
う、シグナムさんの記憶が蘇って来た。寝て忘れよ。
〜いろいろ補足コーナー〜
変わった未来ではヤミ同様、世界がヒビ破れてはやてだけが取り残されました。はやては次元の穴を発見し、手紙を出そうとしますが、考えてください。ミッドと地球では離れています。ヤミは時間の流れ移動する形で解決しました。はたして、手紙だけ送る事は可能でしょうか?
…これは余談ですが、ヤミと暮らすようになったはやては時々“未来の出来事を語る”ことがあるそうですよ。この夫婦は似た者同士なのかもしれませんね。ナニとは言いませんが。
次回、エピローグ
無事はやてが死ぬ未来を変える事に成功したヤミ。2人はこれからどう過ごしていくのか…