高町家を出て数時間。適当に歩き回ってある事を確信をした。街並みは10年後とほとんど変わっていない。
そりゃ、道路が広くなったとか知らない店があるとかは多いが、街並みそのものはあまり変わっていない。
記憶力は悪くはないと思っていたのだが、本当にその通りだ。一度、見覚えがある大通りに出て、スーパーに立ち寄る。そこから自分の記憶を頼りに家へ向かう。
周りの人は少し怪我をしている少年が歩き回っているのを見てほっこりとした顔をする。どうせ“友達とケンカでもしたのかな”とでも思っているのだろう。
形はどうであれ、魔法さえ使わなければ俺はこの社会に溶け込めるんだ。
そうして約30分。途中知らない道に入り2回ほど迂回をしたが、無事に俺は八神家へ辿り着いた。
(ついに着いてしまった。あぁ、なんだろうこの我が家感)
というか我が家だ。10年後の。
基本はミッドに過ごしているから俺がこの家を使ったのは地球に滞在する数回しか使った事がない。
「あぁ〜緊張する〜」
インターホンに指を近づけるがボタンを押せずにいた。
(はやてと会ったら俺は何て話しかければいいんだ。こんにちは?いや、本日はお日柄がよく?それともはじめまして?俺の事は何て言えばいいんだ?未来の旦那やで!とか言えるわけもなく、同僚?友達?守護騎士たちに会ったらどうしよう!………ってかよく考えたら俺この先ノープランじゃん…)
今更気がついたのだった。
俺はここに来るまでは完璧だったのだが、いざ八神家に着いてからの事は考えていなかった。
(…まぁなるようになるか)
色々考えるのは一旦やめて当たって砕けよう。
拒否されても俺の目的は10年後のはやての存在が消えた原因を探して阻止する事にある。はやてが無事ならば問題はない。
「あの〜、ウチに何か用ですか?」
振り返ると金髪でおっとりとした雰囲気の女性がそこにいた。俺はこの人を知っている。
シャマルさん。はやての守護騎士の一人。後方支援に長けており、俺たちを後ろから支えてくれる人。医務室に勤務しており、怪我をした時なんかよくお世話になる。
シャマルさんが手にもっている袋には野菜などが入っているのを見るに買い物帰りなのだろう。
「えぇっと…な、なんでもないです〜」
「あ、ちょっと待って!」
「はい!?」
(不審者と思われた?!他の騎士を呼ばれたら勝ち目は無いぞ俺)
シャマルさんはゆっくり俺を見る。そして買い物袋を地面に置き、ゆっくり近づいてきた。
「っ!」
シャマルさんの手が近づく。かくなる上は追われる覚悟で応戦するしか…!
「君、どうしたの?傷だらけじゃない。友達と喧嘩したの?手当するからウチに上がって」
今の俺を怪我人と勘違いしてるのか?めっちゃ良い人じゃん。知ってるけど。
でも世話になるわけにはいかない。
「いえ、大丈夫です。シャマルさんに治療して頂かなくてもこのくらい大丈夫ですよ。それじゃあ…いてっ!」
立ち去ろうとするが、緑の魔法陣から作られる結界に閉じ込められる。デコを打ったじゃないか!
「…君、何者なの?」
さっきのおっとりとした空気から一転して真剣な顔つきで、その手にはペンデュラム型のアームドデバイス〈クラールヴィント〉を俺へ向けられていた。
「いや、何者って聞かれても…」
「どうして私の名前と私が治癒できるのを知っているのかしら。私はまだ名乗ってないし、手当するとは言ったけど治癒とは言ってないわよ」
う〜わ。戦犯じゃんこれ。
あまりにテンパってしまったので自分の知るシャマルさんを話してしまった。だってシャマルさんは10年後と顔がそんなに変わらないんだもん。こうやって少し目を閉じて声を聞くと、つい最近任務で怪我して帰った時に説教されながら治してもらった記憶が蘇ってくる。というわけで容姿が変わってないシャマルさんが悪い。戦犯シャマル。まぁどう言っても戦犯は俺でこの状況はマズイんですけどね〜。
「今、私の仲間を呼んだわ。観念しなさい」
「…!」
もう程なく他の守護者達がやってくるだろう。シャマルさん1人ならまだしも全員を相手に生き残れるなんて思っていない。
だがこのまま逃げてしまうわけにもいかない。
やる…か?